先住民族による環境に対しての非常事態宣言を報じるカナダCBCニュース
・CBC
何もかも変わってしまった
カナダの北極圏にユーコン準州ある先住民族の地域社会の代表が、「環境が何もかも変化してしまっている」として、非常事態を宣言したことが報じられていました。
この「カナダの先住民族」ということで思い出しましたのが、このブログの初期の頃の記事で、
・「太陽の位置がずれてきている」と語るイヌイットたち
In Deep 2011年7月11日
というものでした。
これは、カナダの先住民族であり映画監督でもあるザカリアス・クヌットという方が撮影した『イヌイットの知識と環境異変』というドキュメント映画の中で、先住民族たちが、次々と、
「星や太陽の位置が変わってしまった」
というような、劇的な環境の変化について述べているものでした。
たとえば、イヌイットのひとりは、映画の中で以下のように述べています。
先住民族エリヤー・ノードラクさんの発言
「地球の軸の位置が傾いてきているんだ。これがいつ頃始まったのかは正確にはわからない」
「以前は、夕暮れの時に太陽は、高い山の頂上の近くを通って沈んでいった。しかし、変化が起きて以来、太陽はその位置を越えて沈んでいってしまう」
あるいは、以下のように述べていた方もいらっしゃいます。
先住民族サムエリ・アマックさんの発言
「星が見えない時には、私は周囲を監視するようにしている。最近、星がいつもと違って見える。もはや星は以前の位置とは変わってしまったんだ」
「私の世界は変わった。土地も空も自然も何もかも」
このイヌイットの人たちは、その後、アメリカの NASA に「地球の地軸がズレた」という内容の手紙を出すことになりますが、それについては、後でご紹介します。
今回のユーコン準州の非常事態宣言は、「気候変動に対して」という名目となっていますが、自然と共に生きる傾向の強いカナダの先住民族たちは、自然の変化を私たち以上に感じているのだとは思います。冒頭のカナダの報道をご紹介します。
なお、カナダの民族で、先住民族イヌイット(エスキモー最大部族)と、先住民族メティ以外は「ファースト・ネーション」と呼ばれるのだそうですが、今回の先住民族は、グウィッチンという民族で、ファースト・ネーションの方々です。
Old crow, Yukon, declares climate change state of emergency
CBC 2019/05/21
カナダのユーコン準州の先住民族の集落オールドクロウで、気候の変動に対しての非常事態が宣言された
カナダ・ユーコン準州最北部の地域社会オールドクロウの当局者は、以下のように述べた。
「私たちの目の前ですべてが変化しているのです」
ファースト・ネーション (カナダのイヌイット、メティ以外の先住民族)であるグウィッチンの代表者であるダナ・ティジャ-トラッム (Dana Tizya-Tramm)氏は、オールドクロウの伝統的な生活様式が、気候変動によって脅威にさらされているとして、非常事態を宣言した。
ティジャ-トラッム氏は、5月19日に、非常事態を宣言した式典の後、以下のように述べている。
「私たちの集落には、これまでこの地域で誰も1度も見たことのないような鳥たちが出現している光景を目の当たりにしています」
「そして、雪も変化している。川も変化してしまっているのです。私たちの目前で何もかもが変化してしまっているのです」
ファースト・ネーションであり、環境保護活動家でもあるロッライネ・ネトロ (Lorraine Netro)氏は、気候変動の影響を元に戻すために今すぐに人々が活動を始めないと、どうなってしまうか懸念していると語った。
ネトロ氏は以下のように言う。
「私たちファーストネーションは、私たちの住む土地、そこにある水、そして、私たちの地域に住む動物たちと精神的につながっているのです。全力を尽くして、将来の世代に向けて、この土地とこの水を大切にしていくことが私たちの唯一の責任なのです」
ティジャ-トラッム氏は、この非常事態宣言は、資金提供の要請ではないと述べた。しかし、他の先住民族のコミュニティも運動に続いてくれることを望んでいる。
「北極圏に住む人であろうと、あるいはそうでなくても、ここから先住民族全体の気候に対しての合意を作成したいと思っていますが、北極圏の先住民族から始まるべきだと思っています」と彼は言った。
ここまでです。
現実の話として、「気候変動に対して人為的に何かできるか」というと「できない」と思われます。
しかし、できるできないはともかく、非常事態を宣言せざるを得ないほどの変化を先住民族の方々は日常で体感し続けているということなのかもしれません。
なお、先ほどの「地球の地軸が変化している」と述べていたイヌイットの人たちが、NASA に手紙を出していたことが、2015年に報じられています。
その概要もご紹介したいと思います。
Inuit Elders tell NASA Earth Axis Shifted
Natural News 2015.03.08
イヌイットの長老たちが NASA に地球の地軸がずれていることを報告した
カナダの北極圏やグリーンランド、シベリア、アラスカの地に住む先住民族イヌイットの長老たちが、アメリカの NASA に手紙を書いた。
内容は「地球の軸が移動している」ことを NASA に告げるためのものだ。
「空が変化してしまった」と主張するイヌイットの長老たち
イヌイットの長老たちは、北極圏の気候変動について記している。それは、氷河が溶け、アザラシの毛皮の質が落ち、そして、海氷が消えていっている状況だ。
しかし、長老たちは、この気候変動の原因が人間活動による炭素排出によるものだとは考えていない。
部族の長老たちは、これらの変化の原因は「空の変化」にあるとしている。長老たちは、太陽が「かつて昇った場所に昇っていない」と語っているのだ。そのため、イヌイットたちの地は日中の気温が上がり、そして、太陽の照る時間が長くなったという。
夜の星と月も、以前とは違う位置に照っていると彼らは言う。
そして、このことも気温に影響を与える。
イヌイットたちは、1年間のうちのいくつかの期間を完全な夜(極夜という太陽が沈んだ状態が続く期間)の中で生活しており、星や月の位置を把握することは、生活するための手段でもある。
かつては、イヌイットたちは、風をナビとして天気を予測をすることができた。
しかし、もはや長老たちにも天気の予測ができないのだという。風が積雪を変化させており、陸上での天気の予測をすることができなくなったと述べる。
そして、ホッキョクグマの個体数が増加しており、イヌイットたちの生活圏でホッキョクグマが彷徨う原因ともなっている。
科学者たちの報告は
2011年に、日本での大地震によって、日本列島が約 2.5メートル移動し、そして、地球の軸が移動したことが米国 CNN で報じられたことがある。
報道では、アメリカ地質調査所の地球物理学者ケネス・ハドナット氏による「この時点(2011年4月20日)で、ひとつの GPS が、2.5メートル移動していることを知りました」という言葉を引用している。
また、イタリアの地球物理学火山研究所は「日本でのマグニチュード 9の地震が、地球の軸を、ほぼ 10cm移動させた」と推定している。
天文学者たちは、地球の自転軸にはズレがなかったことには同意したが、しかし、この最近の 10年間では微妙な極性の移動(地球の磁極の変化)があったことを報告している。
地球の重力場を詳細に観測している NASA の人工衛星グレース( GRACE )を使った観測を続ける米国テキサス大学の研究チームは、2005年に、北極点の移動が変化していることを発見した。それまで南に向けて移動していてものが、東に向けて移動していた。
ここまでです。
この記事は、2011年3月11日の東北の大地震が、地球の「地軸の移動」に関係している可能性にふれていますが、そのあたりの現実的なところは、正確にはわかりようがないですが、イヌイットの人たちの「感覚」は信じていい部分ではないのかなとも思います。
そういえば、上のイヌイットの方々の言葉の中に、
> ホッキョクグマの個体数が増加しており
という部分がありますが、この 2015年頃の報道メディアでは、さかんに「北極のホッキョクグマが激しく減少している」ということを報じていました。その原因は「地球温暖化だ」というような主張を添えて。
しかし、実際の調査では、ホッキョクグマは、21世紀に入ってから著しく「増えていた」ことがわかっています。
ホッキョクグマの生体数を報告する科学サイトより
なお、その後さらに増えていまして、2001年に 2万1千頭から 2万5千頭の生息数だったホッキョクグマは、
「 2015年には、最大で 3万1千頭になっている」
と報告されています。
ホッキョクグマにとって、住みやすい環境が北極圏を支配しているようです。
ただ、増えすぎているのか、今年 2月には、
「ロシアの街がホッキョクグマに占領される」
というようなことを以下の記事でご紹介したこともあります。
地球は現在、全体としていろいろと変化していますけれど、北極圏の変化もまた、とても大きなものとなっているのかもしれません。
この変化を止める手段を私たち人間は持たないと私は考えています。
今起きていることは、人為的に手を加えて、どうにかなるような小さな出来事ではないことが、たとえば今の世界中の気象などを見ていても、おわかりになるのではないでしょうか。