2017年3月11日の英国BBCの報道より
・BBC
「海が廃プラスチックで汚染されている」という響きは、今までかなり頻繁に聞いていることではあります。
たとえば、その廃プラスチックによって魚類や大型の海洋生物などが相当影響を受けていることは、最近、相次いで報じられることのある「死亡した海洋生物の体の中がプラスチックだらけだった」というようなことでもふれられることがあります。
過去記事としては、
・ドイツの海岸に打ち上げられたクジラの胃の中は「プラスチックのゴミで満杯」だった
2016/04/25
などがあります。
しかし、冒頭の BBC の記事の衝撃は、同じ海洋のプラスチックの問題でも、クジラなどの報道から受けたものとは違う衝撃で、つまり、
「微生物がマイクロファイバーを食べることにより大量に死んでいる可能性」
「その循環から、プラスチックが食物連鎖に入っている可能性」
のふたつを示唆する、かなり衝撃的なものでした。
マイクロファイバーを摂取して体内で詰まった状態(白い円)のプランクトン
以前よく書いていたことがありますが、食物連鎖の問題だけではなく、植物などとの絡みでも「この世の根幹は微生物」という考えが私にはあります。
その微生物はいろいろな理由で大量死もしますし、消えたりもしますが、「プラスチックで殺されている」という理由にふれたのはおそらく初めで、「プランクトンがマイクロファイバーを摂取している」ということ自体も初めて知りました。
まず先に、冒頭の BBC の報道をお読みいただこうかと思います。
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Video captures moment plastic enters food chain
BBC 2017/03/11
プラスチックが食物連鎖に入り込む瞬間を撮影された
プラスチックのマイクロファイバーが、プランクトンによって摂取され、その材料が海洋での微生物の生態にどのように影響しているかをあらわした瞬間をひとりの科学者が撮影した。
この映像は、廃プラスチックが海洋および世界の食物連鎖に入り込んでいる可能性を示している。
毎年、世界の廃棄物の流出量からは約 1億 5,000万トンのプラスチックが「消えている」。
世界の海に漂う廃プラスチックは、国連にとって主要な環境問題として認識されている。
この映像を撮影したリチャード・カービー(Richard Kirby)博士は、「その光景を見たとき、これは、海の中での廃プラスチックの問題を映像により人々に伝えられるものだと思いました」と語る。
「私が興味をそそられるのは、マイクロファイバーの繊維が、生物の腸の中でループを作っているため、ヤムシ(海洋の線虫)のような小さなものの中でのマイクロ・プラスチックの動きを見ることができることです」
プランクトンの専門家であるカービー博士は、多くの人々が、クジラやアザラシ、鳥などの大型の海洋動物がビニール袋を飲み込むことは知っているが、小さな生物についてはあまり知られていないと述べる。
この映像では、プランクトンのような小さな生命の内部で、プラスチックの小さな繊維が内部の何かに詰まり、食物の進行が止まっている様子が実際に見ることができる。
「ヤムシの腸は、体の全長にわたって伸びているのですが、マイクロファイバーで詰まったことで、腸の頭のすぐ下から、その下に移動する食物はすべて停止していることがわかります」
カービー博士は、以前から、プランクトンにマイクロプラスチックが及ぼす影響を目の当たりにしていたが、撮影したのはこれが初めてだ。
博士は、このような出来事(微生物がプラスチックを摂取している光景)は、英国の水域から集めたサンプルでは比較的一般的だと言うが、同時に、これは英国での孤立した出来事ではないと付け加えた。
国連は、海で平方マイルあたり46,000の廃プラスチックがあると推定している。
国連環境計画(UNEP)は、クリーンシーズ(CleanSeas)キャンペーンを開始しているが、組織の代表であるエリック・ソルハイム(Erik Solheim)氏は海洋のプラスチック廃棄物は、それらが食物連鎖に入る可能性を指摘した。
国連は、世界の海洋には、51兆個のプラスチックが存在すると推定している。
今回撮影された海洋生物ヤムシ類は、世界中に 120種類以上がおり、海洋食物網では生態学的に非常に重要な役割を果たしているとされている。
ヤムシ類は他のプランクトン動物の貪欲な捕食者であり、また魚、イカなどプランクトンを食べる生物の重要な食料源でもある。
そして、この問題は、たとえば、「仮に今、プラスチックの生産がなくなったとしても消えることはない問題」でもある。
ブラスチックは、それが生産されなくなったとしても、長い間、食物連鎖の基本に入り、食物連鎖全体に影響を与える可能性があり続ける。
ここまでです。
いやもう終末的な話だなと思いますよ。
というのも、これに対しては、
「直近に対しての対策が存在しない」
はずだからです。
しかも、すでに進行していることでもありますし。
海のプラスチックはすでに「食物循環」に入り込んでいる
国連環境計画は「海をきれいにしよう」キャンペーンをおこなっているというようなことが書かれてありますが、そういうキャンペーンをやったとしても、この記事にありますように、
・世界の海洋には、51兆個のプラスチック
があり、これはまさに、「消えることはない問題」ということになりそうです。
プラスチックが食物連鎖に入ったことにより、おそらく、今現在、すでに私たちも食べ物からプラスチックを摂取している可能性がありますが、それに関しては、体にどう影響するのかはわかりません。
さすがに、最近書いていました認知症と大気汚染の関係で見られる PM 2.5 のような微細粒子というわけでなければ、「体内をプラスチックが駆け巡る」というようなことはないとは思いますが、人間への影響はそれほど直接的ではないとすれば、やはり問題は、「実際に、海の生物たちがプラスチックで死んでいる可能性」があるというほうですよね。
ちなみに、このプラスチック、特にマイクロファイバーについては、以前、
「魚の稚魚が好んで食べてしまうことがわかった」
という研究が報じられていたことがありました。
これは、スウェーデンのウプサラ大学の専門家たちが、魚の稚魚たちが、生きているプランクトンよりも、むしろ微細なプラスチックを「好んで」食べることに気づいたということが紹介されている記事でした。知らずにそうなっているのではなく、「むしろプラスチックのほうを選んで食べる」らしいのです。
当然、プラスチックはいくら食べても栄養にならないですので、成長が阻害されているということについての記事でしたが、しかし、先ほどのプランクトンの、
「プランクトンの消化器官が詰まっている」
という状態を見ますと、魚の稚魚でもその問題も起きているかもしれないです。稚魚は魚の種類によっては本当に小さなものですし。
なぜ「稚魚」なんてものを知っているかといいますと、まあ・・・一昨年くらいに私は何となく「メダカ」を飼い始めました。理由は特になかったのですが、しかし今の状況はといいますと・・・。
これに関しましては、先日の芸能記事に「名取裕子、メダカ200匹飼育「最初4匹だった…どうしよう」」というものがありまして、そこに、
女優の名取裕子が日本テレビ系「メレンゲの気持ち」に出演し、メダカを200匹飼育している事を明かした。
番組で自宅を公開。複数のバケツでメダカを200匹飼育している事に「最初4匹だったの。4匹から200匹になっちゃった。どうしよう」(略)
とあり、そのテレビ番組は知らないですが、私の場合も、この名取裕子さんの状況を照らし合わせていただければよろしいかと。
毎日、午前中は、各水槽と睡蓮鉢の世話で費やされ、ふと思えば、最近の買い物は「メダカ用品ばかりだ……」と気づくメダカ地獄……。
というような人は結構多いと思うのですが、そういうこともあり、メダカの稚魚を見る機会も多いのですね。今もこの記事を書きながら稚魚を見ていて、
「この大きさだとマイクロファイバーを飲んじゃうと一発でコロリだろうな」
と思うのでした。
どうでもいいですが、名取裕子さんの言い方だと「メダカを放っておいたら自然と増えちゃった」というような響きがありますが、それはあり得ません。
メダカの親は生まれた子どもを「見つけ次第食べちゃう」ので、卵とか稚魚をいちいち救出してあげないと、広い自然環境下ではともかく、一般の飼育の環境下では一匹たりとも大人には成長できないはずです。なので、名取裕子さんも「卵と稚魚の救出」をやっていて、こういうことになっちゃったと思われます。
飼い主の苦悩をよそに泳ぐメダカたち
まあ、誰にでも起こりうるメダカ地獄の話はともかくとして、どうやら、海でも、そして、当然、川や湖などの淡水でも、現在は、
「プラスチックが、プランクトンも魚の稚魚も殺している可能性大」
という時代になっているようです。
プランクトンも稚魚もブラスチックが大好きということになるようですが、しかし、昨年あたりからの報道を思い出しますと、実際には、「海の生き物たちは、どうやら、みんなブラスチックが大好き」かもしれないという可能性があります。
下の記事は、昨年 11月のアメリカの報道ですが、「海鳥たちが、海に浮いているプラスチックを好んで食べる理由とは」というタイトルから、海鳥たちもまた好きこのんでプラスチックを食べているという事実がわかります。
2016年11月10日の報道より
・Why Seabirds Love To Gobble Plastic Floating In The Ocean
この記事によれば、あくまで科学者たちの推定ですが、動物プランクトンと藻によって出されるジメチルスルフィドという独特のにおいのある化学物質があるのですが、プラスチックが海に漂って藻類に覆われると硫黄化合物の臭気に覆われ、それがジメチルスルフィドと同じような臭気を放つためではないかとされています。
いずれにしましても、先ほどもふれましたものを加えますと、海では、
・クジラなどの大型海洋生物
・海鳥
・プランクトン
・ヤムシなどの海洋微生物
・魚の稚魚
などが「好んで」プラスチックを食べている、ということになっていて、そして、おそらくは、それにより元気になるということはなさそうですので、生態に何らかの支障をきたしている可能性も高そうです。
もともと、現在は、「海流の異常」などの問題で、海の生態系は微妙な段階にはぃっているかもしれないという感じにはなっているところではあります。
[参考記事] 突如増えた黒点と地球近傍小惑星。その下の地球では「海流が死につつある」ことが判明(2015/03/26)
そして、今回の問題に関していえば、これは環境問題ではあるのかもしれないですが、冷静に考えてみて、私たちに根付いている生活スタイル自体の問題であることにも気づきます。
たとえば、
「今の生活からプラスチックがすべて排除される日」
などということが考えられるかというと、それは難しいことだとしか言いようがない気がします。
今の私たちの文明はプラスチック一色といっていいほど、プラスチックがあふれているわけで、いつくらいからこんなにプラスチックだらけの世の中になったのかはわかりませんが、それでもたった数十年くらいの間のこととはいえそうです。
プラスチックそのものは 100年以上の歴史を持つようですが、たとえば、今から 100年前の日本にはプラスチックはさほど生活の中にはなかったでしょうし。
たった 100年でこんなに世界も地球も変わってしまうのですね。
まさに絶滅プロトコル。