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4月12日にメルマガ夢見と古代ギリシャと「痛みとの個人的歴史」が混沌とを発行させていただきました。

2019年からの世界 人類の覚醒と真実 宇宙の中の地球

火星で生命存在の証拠となるメタンガスが奇妙なかたちで発見される。…しかし、火星の生命存在は40年前のバイキング計画で、すでに決着がついていたことも思い出し

投稿日:

火星でのメタンの発見を伝える2019年4月10日の米ニューヨークタイムズ


NY Times




 

生命存在の証拠となるメタン

最近、「火星の大気からメタンが検出された」というニュースでありました。

メタンの何が重要かというと、

「メタンが大気から検出されることは、そこに生命存在があることの示唆あるいは証拠となり得る」

からであり、欧州宇宙機関(ESA)などは、長く火星のメタン検出の探査機を運用しています。

そして、この 4月に、ヨーロッパの科学者たちが、「火星の大気からメタンを検出した」と発表したのですが、しかし、その一方、「最新の探査機では検出されていない」という不思議なことが起きています。

まずは、そのことを報じていた米国ニューヨーク・タイムズの記事をご紹介したいと思いますが、この記事に出てくる探査機は、以下のようなもので、どちらも ESA をにより運営されています。

探査機マーズ・エクスプレス(2003年より運営)


Mars Express

探査機エクソマーズ・トレース・ガス・オービター(2017年より運営)


ExoMars

このうちの、古いほうの探査機マーズ・エクスプレスでメタンが検出されたことが確認されたのに、最新のメタン探査機能を持つエクソマーズ・トレース・ガス・オービターは「何も検出していない」ということが、どういう意味かということが論じられているようです。

ここからです。


A Gas Could Hint at Signs of Life on Mars. Why Hasn’t a New Spacecraft Found It?
NY Times 2019/04/10

発見されたメタンガスは、火星に生命が存在する徴候を示唆する可能性がある。しかし、なぜ新しい宇宙船はそれを発見できないのか?

4月のはじめ、二機の比較的古い火星探査機が火星の大気中からメタンを検出したということが科学者たちから発表された。

ところが、それより精密な機器を備えたガス探査機「エクソマーズ・トレース・ガス・オービター (ExoMars Trace Gas Orbiter)」は、火星の大気からメタンを検出していないのだ。

大気中のメタンガスは、生命不在の大地と思われている火星の風景の大地に、生命が存在する可能性があるヒントを提供するものだ。

しかし今回の、ある宇宙船はメタンガスを検出し、それより高度な探査機能を持つ探査宇宙船のほうはガスを検出していないという事実が、科学者たちを混乱させている。

メタンガスを検出したのは、欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレス(Mars Express)で、 同探査機が 2013年 6月に収集した火星の大気のデータの綿密な分析の結果、火星の赤道近くのゲイルクレーター上に上昇するメタンの流れの存在を明らかにしたと科学者たちは報告した。

また、そのクレーターでは、メタンのレベルの上昇が検出された。

しかし、それよりもはるかに最新型であり、高性能の機器を備えている ESA の探査宇宙船エクソマーズ・トレース・ガス・オービター(以下、オービター)は、メタンをまったく検出していないのだ。

オービターは、ESA と、ロシア・ロスコスモス社との共同での計画だが、ロシア宇宙研究所の主任研究員は、こう言う。

「このふたつの事実を調和させることはあまりにも難しいのです」

メタンガスを検出したマーズ・エクスプレスは、2003年に火星の領域に到達したのに対し、メタンガス発見していないオービターは、2017年に火星に到着した最新の探査機で、マーズ・エクスプレスより、はるかに感度のいい検出機器を搭載している。

地球上では、ほとんどすべてのメタンは生物によって生産される。生物的ではない部分としては、地熱反応によっても生成される。

オービターのガス探査の主任であるオレグ・コラブレフ (Oleg Korablev)博士は、「オービターがメタンガスを検出しなかったこと」をウィーンで開催された科学会議で発表する共に、科学誌ネイチャーで報告した。

ネイチャーの記事によれば、2018年 4月から 8月までのオービターの科学的データは、メタンの徴候を示さなかったとしている。また、その後もメタンは検出されていない。

オービターの機器は、大気中に含まれるメタンの量が 50兆分の 1以上あれば検出するほどの敏感な検出性能を持っている。

しかし、マーズ・エクスプレスと、火星探査機キュリオシティが検出したメタンのプルームは、オービターが何も検出しなかった場所に高いメタンを検出したのだ。

アメリカ惑星科学研究所(Planetary Science Institute)の上級科学者、ドロシー Z.オーラー (Dorothy Z. Oehler)博士は以下のように言う。

「いったい何が起きているのでしょうか? 誰にもそれがわからないのです」

オーラー博士はマーズエクスプレスの研究に関わっているが、オービターの研究には関わっていない。

研究者たちは、マーズエクスプレスのデータと、地球上からの望遠鏡による測定に基づいて、10年半前に火星の大気中からメタンを検出したことを初めて報告した。しかし、当時のその測定法についての懸念などから、多くの科学者は「火星にメタンがある」ことに懐疑的だった。

最新のガスオービターは、メタンの検出で別の方法を用いる。火星の後ろから、惑星の大気を通過する日光を観測し、そして、大気によって吸収された特定の色の光が、特定の分子を識別する痕跡を認識する。

しかし、これまでのところ、ガスオービターはもメタンの痕跡は見出していない

なお、NASA の探査機キュリオシティもメタンを観測している。ただ、オービターとキュリオシティでは、観測している場所が違う。オービターは、まだゲイルクレーター上で直接測定をしていない。雲と塵が日光を遮るので、オービターは火星の表面から、少なくとも数キロ上を観測しているが、キュリオシティは、火星の大地の表面にあるものを観測している。

さらに、火星は昨年、惑星の大部分が巨大な塵の嵐に包まれた。 

2018年に、探査機キュリオシティは、6月に 1度だけメタンの測定を行った。当時の大気中のメタンが嵐の埃の粒子に付着して、火星の大気中からのメタンが一掃されたと考える科学者たちもいる。

NASA ジェット推進研究所の科学者で、探査機キュリオシティのメタン測定を主導しているクリストファー・R ・ウェブスター (Christopher R. Webste)博士は、は、2013年にキュリオシティとマーズエクスプレスが同じ場所で同時にメタンガスを観測したことを指摘し、

「火星のメタンは、大気中に散発的に漂流しているようなのです」

と述べている。

この謎に対して、科学者たちは、まったく排除できない異例の可能性を考えはじめている。

オースラー博士は、火星の岩石にメタンを生成する微生物が生息している可能性があるだけでなく、「メタンを生成する細菌が早いペースでメタンを作っている」可能性を述べる。

NASAで、火星での人間による汚染からの保護(地球の微生物などが探査機に付着して地球から火星に持ち込まれないようにするという意味)を担当するリサ・M・プラット (Lisa M. Pratt)博士も興味を持ち、以下のように述べた。

「火星の大気中でのメタンの不思議な出現、そしてメタンの消失は、火星の地下で起こり得る生命の最も説得力のあるヒントであり続けるのではないでしょうか」

「今、必要とされているのは、慎重に計画され、調整されたガスオービターと探査機キュリオシティの間での一連の観測になっていくと思います」


 

ニューヨークタイムズの記事はここまでです。

なお、今回の話を知りまして、

「 40年以上前、火星から採取された土壌の中に生命がいることが示されていた」

ことを思い出しました。

NASA の無人火星探査プログラム「バイキング計画」の中の実験でしたが、しかし、この時には、結果として、

「火星に生命は存在しない」という結論

と共に、バイキング計画は終了しています。

フレッド・ホイル博士は、自身の著作の中で、このバイキング実験のことと、そして、この際の NASA の実験の判断結果の過ちを述べています。

ちょっと長くなるかもしれないですが、抜粋してみたいと思います。

フレッド・ホイル「生命 (DNA) は宇宙を流れる」より

第6章「太陽系の生命探査」P123から抜粋

バイキング計画とは、1970年代に NASA が行った、一連の無人火星探査プログラムである。 1975年の8月にバイキング1号が打ち上げられ、翌年7月に火星に到着、火星周回軌道に入った後、7月20日に周回機から分離された着陸船が火星大気に突入し、クリュセ平原に軟着陸した。

1号と同じ年の9月に打ち上げられた2号の着陸船も、1976年の 9月3日にユートピア平原に軟着陸した。

両着陸船は、自動シャベルを使って砂を採取し、光合成、代謝および呼吸についての3種類の実験を行った。

なかでも重要だったのが、ラベル放出実験(LR)だ。

この実験では、殺菌されたフラスコの中で、放射性同位元素 14Cを含む栄養液と火星の土のサンプルを混ぜるという操作を行った。

土に微生物が含まれていた場合、栄養素を摂取して、14Cを含む二酸化炭素のガスが放出されるはずである。実際、 C14 を含む二酸化炭素が放出されるのが確認された。

次に、土のサンプルを 75℃まで熱して3時間おいておき、それから栄養液と混ぜるという操作を行った。その結果、ガスの放出量は90パーセントも減ったが、完全に0になったわけではなかった。地球上のある種のバクテリアや菌類が温度 75℃の環境で生きていることを思えば、この実験の結果も生物が活動している証拠だと解釈できた。

何よりも重要なのは、時間が経つにしたがって、もとの高い活動水準が回復されたことだ。これこそ、生物の特徴である。

最後に、土をさらに加熱してから同じ実験を行ったところ、ガスは放出されなくなってしまった。これは、加熱によってバクテリアが完全に死んでしまったことを示唆する。

バイキングのおこなった実験のうち、もう一つ重要なものがあった。

GC・MSと呼ばれるこの実験は、土を加熱した際に放出される気体をガスクロマトグラフと質量分析計で分析することで、微生物そのものではなく、土壌中の有機物を検出しようとするものだった。

この実験の結果は、がっかりするほど否定的なものだった。

有機物は存在しない。もし存在するとしても、ごくわずかであるという結果が出たのだ。

 

ここまでといたしますが、この時にも、今回の火星のメタン検出と似たようなことが、つまり、

・ひとつの実験では、火星に生命が存在することを示した

・ところが、もうひとつの実験では、火星に生命が存在することが否定された

ということになっていました。

これについては、ホイル博士の著作から、かなり長い抜粋を、

NASA の火星無人探査計画が無駄な理由: 1976年にバイキングがおこなった火星地表の質量分析から 36年経って進化しない観念
 In Deep 2012/08/12

という記事に載せさせていただいています。

 

しかし、バイキング計画では、実験終了後 10年間にわたって、火星の土壌を研究し続けた科学者たちがいました。

その科学者の結論について、ホイル博士の著作では以下のように述べられています。

フレッド・ホイル「生命 (DNA) は宇宙を流れる」より

バイキングの実験から 10年の歳月が流れ、その間も、火星で得られた実験結果を非生物的に再現するために数々の実験が行われた。

その中で、バイキング計画の研究員だったG・V・レヴィンと、P・A・ストラートは、 1986年に一つの結論に達した。

「バイキングの実験は、火星に生物がいることを示しているとしか考えられない」

というのが、それだった。

10年間におよぶ無数の実験により、LR実験で得られた結果を説明できるような非生物的なモデルはないことが確認されたからだ。

彼らはまた、このことがGC・MSの結果とは必ずしも矛盾しないことも示した。

GC・MSは、1グラムの土の中に1億以上の微生物がいなければ検出できないが、LRでは、1グラムの土の中に1万の微生物が存在していれば検出できることがわかったのだ。つまり、LRはGC・MSの1万倍も感度がよかったのだ。

結局のところ、GC・MSは、火星の土に有機分子がごく少量しか存在しないことを明らかにしただけだったのだ。火星のような厳しい環境では、微生物の代謝活動は極めて不活発だろう。それならば、有機物が少なくともおかしくはない。

 

実は、このくだりが、今回の欧州宇宙機関の探査で「メタンを検出できた、できなかった」という矛盾を生じさせている「理由」をも説明していると私は思います。

すなわち、この下りです。

> 火星のような厳しい環境では、微生物の代謝活動は極めて不活発だろう。それならば、有機物が少なくともおかしくはない。

 

火星に生命はいます。それは、いわゆる火星人のようなものではなく、ほぼ細菌のたぐいだとは思われますけれど、しかし、火星の環境は生命に対しては、大気の状況、気温の変化などから、わりと厳しいものだと思われます。

そのような環境では、ホイル博士は、「微生物の代謝活動は極めて不活発だろう」と難しい書き方をされていますが、要するに、

「火星に生命はいるのはいるけれど、数も少ないし、活動も活発ではない」

と。

ですので、検出できるできないは「観測している高さの問題」もありそうですね。

地上から数キロメートル上空などの、かなり高度の大気を探査している最新式の探査機エクソマーズ・トレース・ガス・オービターの位置までは検出できるメタンが届かないのではないですかね。

あるいは、記事に出てくる科学者たちが、「火星のメタンは、大気中に散発的に漂流しているようなのです」ということを説明するには、ものすごく平たい書き方をしますと、

「たまに大群で地上に出てきて、メタンを生成して、すぐ地下に戻る微生物」

というような奇妙な生物の存在もあり得るのかもしれません。

いずれにしても、現在の火星にそれなりの生命圏が存在することは確実だと思われます。

最近、「火星には広大な地下水が存在する」という仮説が、南カリフォルニア大学の科学者たちによって主張されているというような報道もありました。

以下の、フォーブス日本語版の記事に書かれてあります。

人類の移住を可能にするかもしれない「火星の地下水」
 フォーブス 2019/04/29

まあ、火星への人類の移住は、どうやっても可能にはなりませんが(宇宙線、放射線が強すぎて、大型動物は生きられません)、膨大な水が仮に火星に存在するならば、

「微生物たちの生物圏が火星の地下に広大にひろがっている」

という可能性はありそうです。

くどいようですが、火星には人類は決して行けませんので(火星に移動する間に宇宙線などで全員死亡すると思われます)、火星に生物がいるということが示すことは、それはつまり、「他のすべての惑星にも生物が存在する」ということを示しているということだけなのだと思います。

パンスペルミア説の観点から見れば、そして地球の「極限環境微生物」の存在を見れば、細菌やウイルスなら、少なくとも太陽系くらいの惑星の環境なら、そのすべての惑星に生息することができるはずです。

 

そういえば、昨年、「生物のすべての構成要素が、宇宙で作られている」可能性を示すフランスの研究を以下でご紹介したことがあります。

《特報》「地球の生命は宇宙で作られている」ことがほぼ確定 — 発見の最後の砦だった「RNA(リボ核酸)」が宇宙空間で形成され得ることをフランスの研究チームが特定したことにより「地球の生命の構成要素がすべて宇宙に存在」することが確実に

パンスペルミア説は、わりと科学的妨害を受けやすい学説ですが、しかし、流れは少しずつ真実に近づいていると私は思います。





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Oka In Deep

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