驚異的なADHDの増加と「投薬」の増加
アメリカのジョージ・ワシントン大学の科学者たちが、アメリカ国内の ADHD (注意欠陥・多動性障害)の子どもたちの数が、ものすごい率で増加しているということを 2003年から 2011年までの 8年間の大規模調査で突き止めたという記事を見ました。
ADHD と診断される子どもたちの増加については、日本でも同じだと思いますし、私は、子ども(現在 10歳)が幼稚園に上がる前に、週に一回、療育で杉並区の児童施設に通っていたこともあり、そういうお子さんたちと非常に多く接した経験があります。
「多動」と書くと、やや落ち着きがないくらいに思われる方もあるかもしれないですが、「数秒じっとしていることができない」というような子どもたちもたくさんいました。
確かに、親御さんたちにしても大変だとは思うのです。
しかし、今回、私が少し驚いたのは、ご紹介する記事の中に以下のような下りがあったことでした。
なぜ、ADHD の子どもたちが増加しているように見えるのか、という理由を考えることは重要なことだ。なぜなら、ADHD と診断された場合、多くは、「リタリン」のような覚醒剤の処方が付随するからだ。
「アメリカは、まだリタリンを子どもに処方しているのか…」
と絶句しました。
リタリンというのは、病院で処方される、れっきとした正式な薬剤ですが、しかし、何年くらい前ですか、日本でも「リタリン問題」というのが起きていまして、どういう問題かというと、このリタリンを「娯楽」で使用して、依存や中毒になり、「ウソの病名を申告して、心療内科などでリタリンをもらう」ということが横行したのです。
なぜ、そんなことをするのか。
その理由は、この「リタリン」という薬の成分が以下のようなものだからです。
メチルフェニデートは、ナルコレプシーならびにADHD患者に対して使われるアンフェタミンに類似した中枢神経刺激薬である。慢性疲労症候群といった症状に対しても効果があるとされる。
日本ではリタリンとコンサータがメチルフェニデートを含む医薬品である。日本におけるリタリンの適応症はナルコレプシー、コンサータの適応症はADHD(注意欠陥多動性障害)である。
> アンフェタミンに類似した
という下りがあります。この「アンフェタミン」というのは、ご存じかもしれないですが、アンフェタミン - Wikipedia からの一文の抜粋だけでおわかりになると思います。
> (アンフェタミンは)日本では法律上の覚醒剤に指定されている。
つまり、リタリンというのは、薬効として、それと同じなのです。日本でもアメリカでも違法中の違法とされているものと同じなのです。
そういうものを子どもに処方しているということについての驚きでなのした(アメリカでは昔から気軽に処方されていたようですが)。
それにしても、上の Wikiedia によれば、
> コンサータの適応症はADHD(注意欠陥多動性障害)
とあるということは、今は、日本での ADHD の子どもたちへは「コンサータ」という薬が処方されているようです。そして、このコンサータという薬は、何かリタリンと違うものかと思っていました。
だって、ADHD に処方するということは、基本的には子どもに対して処方するものだと思うからです。
いくら何でも、アンフェタミンと同じものを子どもに常用させるなんのは・・・。
それで、ちょっと調べてみますと、調べるも何もすぐ出てきまして、こちらのページには以下のようにありました。
「リタリンはコンサータと同じ成分の薬で、以前はうつ病の薬として処方されていました」
ああ・・・。リタリンと同じものが、子どもたちに処方されている・・・。
もっといえば、これらの成分は、コカイン、モルヒネなどとも基本的に同じもので、依存性も群を抜いて高いです。
「日本ではどのくらい処方されているんだろう」
と思いまして、いくつかのページを見てみますと、2015年1月13日の読売新聞の記事が載せられている子供に向精神薬が処方されるケースが増加中というページがありました。
子供に向精神薬 処方増…全国初調査
読売新聞 2015/01/13
子どもへの向精神薬の処方件数が増加し、13歳~18歳では、2002年~04年と08年~10年との比較で、注意欠如・多動症に使うADHD治療薬が2・49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1・43倍になったことが、医療経済研究機構と国立精神・神経医療研究センターなどによる初の全国調査で分かった。
一人の子どもに異なる向精神薬を複数処方する例が多いことも判明した。抗うつ薬を処方された13歳~18歳の子どもの58%に抗不安薬・睡眠薬が、36%に抗精神病薬が併用されていた。
処方増の背景に、精神疾患症状が表れる子どもが増えていることなどがある。同センター薬物依存研究部の松本俊彦室長は「向精神薬の多くは、子どもを対象とした大規模な臨床試験が国内では行われておらず、長期的な効果や安全性が十分確認されているとは言えない。早急に臨床試験や詳しい実態調査を行うべきだ」と話している。
リタリンも深刻ですが、上の中にある、
> 抗うつ薬を処方された13歳~18歳の子どもの58%に抗不安薬・睡眠薬が併用
という記述には愕然とします。
私は最近、クレアで、「ベンゾジアゼピン系をやめようキャンペーン」というものをたまに書こうとしているのですけれど、上の「抗不安薬・睡眠薬」は、ほとんどがベンゾジアゼピン系です。
長い付き合いのあった私だから言えますが、長く飲めば飲むほど、人をベンゾジアゼピン依存に陥れ、精神・体調を損ない、そして、おそらく、認知の問題に関わり、長期の継続的な連用をした人の中には、かなりの確率で廃人化していくと思っている薬です。
仮にですが・・・コンサータのような、要するにアンフェタミンと同じような強い薬と、ベンゾジアゼピンのような、「脳をむりやりにリラックスさせる」薬を同時に処方されていれば、その子の人生は絶対におかしくなってしまいますよ。
こちらの記事に書きましたが、ベンゾジアゼピン系は、脳内に「リラックスをもたらす物質の GABA / ギャバ」というものを無理矢理に活性化させて、人を落ち着かせるものですが、その結果として、ギャバを抑制する、
・ノルアドレナリン
・セロトニン
・アセチルコリン
・ドーパミン
などの分泌が減ってしまいます。
これらはすべて、人間の正常な注意力、記憶すること、筋肉の緊張、情動反応、内分泌作用、 心拍数・血圧のコントロールなど、人間が生きるための自律神経の中でとても大事なものです。
それが長期連用していると、「ずっと少ないまま」だという。
今年の春頃、
・…薬漬け幼児だった私がその後の十数年経験した「免疫回復戦争」の地獄体験記
2015/04/21
という記事を書いたことがあります。
生まれた頃から病気がちで、特に小児ぜんそくをわずらっていた私は、とても小さなころから「薬漬け」でした。
そして、小児ぜんそく小学生の時に治ったのですが、今思えば、薬の副作用的なことだったと思いますが、その後、30歳くらいまでは「免疫がとても弱い人間」だったことを書きました。
よく生き残ったもんだと今でも思います。
もちろん、小児ぜんそくに関して、薬がなかったら私は生きていなかったのも事実でしょうし、私は、子どもの頃に飲んだ大量の薬にも、パニック障害を癒やしてくれたベンゾジアゼピン系の薬にも、感謝こそすれ、まったく恨みはないです。
これは今でも言えることですか、「死ぬか生きるか」の選択で、薬を拒否するのは無意味だと思います。
しかし、
「その薬は本当に飲む意味があるのか」
ということと、
「その後の人生がどのようになるかを冷静に考えているか」
ということを考えることは大事だと思います。
特に、ADHD に関しては、「親が我が子をどうするか」という大きな問題でもあります。
ADHD で、薬に助けられている方々がたくさんいらっしゃるのは確かでしょうが、もし現在、お子様にリタリンやコンサータのような薬が処方されている親御さんたちは、今一度、それが「どのようなものか」ということをお調べになるのもいいかと思います。その上で納得して使われるのなら、それでもいいのだと思います。
「親さえもどんなものか知らないで飲ませている」のはとても良くないことです。
リタリン(コンサータも成分は同じ)は、世界保健機構(WHO)の「スケジュール2」という、ヘロインや LSD などと同じ「最も中毒性が強い薬品の仲間」です。
それが、日本でもアメリカでもなぜか医療の世界でだけは合法なのです。
まあ、いろいろと書きたいことはあるのですが、今日は、予定がありまして、出なければなりません。
ここから冒頭の翻訳をご紹介しますが、「急激な勢いで ADHD の子どもたちが増えている」ということは、「リタリンなどを処方される子どもたちの数もそれと共に増えている」ということになります。
リタリンは、小説『エクソシスト』の中で、悪魔に取りつかれたリーガンが、最初に診察をされる精神科医で処方された薬としても記憶に残っています。
しかし、リタリンはリーガンには効きませんでした。悪魔にはリタリンは効かないのです。けれども、人間には効きます。そしてやめられなくなる。
New report finds 43 percent increase in ADHD diagnosis for US schoolchildren
Science Daily 2015/12/08
最新の報告書で ADHD (注意欠陥・多動性障害)の診断を受けるアメリカの小学生が 43%増加していたことが判明
8年間の研究期間中に、特に女の子で ADHD の急激な上昇を示した
2011年に、アメリカ国内で注意欠陥・多動性障害( ADHD )と診断された子どもと十代の若者の数は、全体の 12%に達していた。
これは、両親の報告に基づきアメリカ全体で行われている大規模調査によれば、2003年から 45%もの増加となった。
この分析では、現在のアメリカ国内の 5歳から 17歳までの子どもたちの 580万人が ADHD と診断されているということを示すと、調査チームのリーダーで、米国ジョージ・ワシントン大学ミルケン研究所スクールの疫学と生物統計学の准教授であるショーン・D・クリアリー( Sean D. Cleary )博士は述べる。
また、この研究では、研究期間内での、女の子においての ADHD の驚くべき増加を明らかにした。
「この調査での女の子での報告有病率は、2011年に 4.3%だったものが、2011年には 7.3%に上昇したことがわかりました」とクリアリー博士は言う。
これは 8年間で 55%増加したことになるが、博士は、「従来は、伝統的に男の子の方が ADHD の診断を受ける可能性が高かったものでした」と付け加えた。
この報告は、アメリカ母子保健局と、アメリカ疾病管理予防センター( CCD )の国立健康統計センターが主催した 2003年から 2011年までのデータに基づいて調べられたもので、医学誌クリニカル・サカイアトゥリー( Journal of Clinical Psychiatry / 臨床精神医学)において公開された。
「私たちは、ADHD の子どもの比率が非常に急激に増えていることを見出し、その率は、2003年から 52%の増加となりました」とクリアリー博士は言う。
「子どもたちが ADHD と診断された親御さんの方々は、その診断を認識すべきだと思います。なぜなら、ADHD は大人になっても続く可能性があるからです」
同時に、クリアリー博士は、この研究は、このような ADHD の急激な増加の元となる背景や理由について探るものではなかったと述べ、このような急激な上昇が起きている理由を見出すための研究が必要だと述べた。
そして、特別な注意が特定のグループに対して向けられていると、クリアリー博士は言った。
博士らは、アメリカの子供の健康に関しての全国調査から得たデータを見て、17歳以下の子どもの健康に関する情報を収集し、全国で断面調査(原因と考えられる要因と結果について二重分類し、両者の関連の有無を検討する調査)をした。
博士らは、子どもが医者や医療提供者から ADHD だと親たちに伝えられていた場合に、その親たちへの質問に焦点を当てた。
研究者たちはまた、彼らの人種や民族、そして、診断された子どもたちが男の子か女の子か、および、以前から ADHD の診断に関連するとされている社会的要因を辿った。
このような異なる人種や民族間のグループでの ADHD の有病率の差異に関しての研究は、以前にはほとんどおこなわれていない。
研究では、この8年間の研究期間中に、ヒスパニック系の若者で、83%もの上昇を示したことを見出した。
「さらなる、ADHD の増加の根本的な原因を特定するための研究が行われる必要があります」と、クリアリー博士は述べる。
そして、子どもが診断された親たちは、ADHD の診断を取り巻く問題のすべてを認識し、子どもの集中力や行動についての懸念を持っている場合、医師に相談すべきだと語った。
なぜ、ADHD の子どもたちが増加しているように見えるのか、という理由を考えることは重要なことだ。なぜなら、ADHD と診断された場合、多くは、「リタリン」のような覚醒剤の処方が付随するからだ。
リタリンのような薬剤は、ADHD に集中力と行動の持続を与えることで、確かに子どもと親たちを助けることができる。しかし、薬が過剰投与されることを懸念している専門家たちも多い。
ADHD の子供たちはクラス等で注意を払うことなどについての問題が発生する場合があり、自宅でも、衝動や不注意による間違いを犯す可能性がある。
また、アメリカ疾病管理予防センターによれば、物忘れが多くなることがあり、何もしない場合、家庭や学校での社会的状況での困難にぶつかってしまう可能性があるという。
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