医学誌ランセットで見た奇妙な感染の年齢分布
新型ウイルスの感染者は、ほとんど指数関数的に増加していまして、歯止めが効かなくなっているように思えます。今日 1月30の情報については、以下の記事に記していますが、増加のペースが、「毎日、倍々となっている」感じです。
現在の感染者数は、7800人ほどとなっていて、2日で 2000人近く増えました。この倍々のペースが続きますと、明日(1月31日)には、患者数は、1万人を超えてくる感じです。
なお、1月20日からの「今後のコロナウイルスの患者数と死者数」の予測というものが存在していまして、これが、1月30日までの分に関しては、かなり近いものとなっています(1月29日に 7500人に達すると予測)。
これ以降の予測数値は以下のようになっています。
新型ウイルスの患者数の推移の予測のひとつ
・Dr.RAMARJUN (janasaink)
この予測では、2月21日には患者数が 5714万人となり、死者数が 117万人となると予測されています。
まあ・・・たとえば、仮にこういうようなことに近い状態になっていくのなら、もはや「自分は感染しない」と考えるほうがオカルトに近い話となってくるような気がします。私は、前回の武漢ウイルス研究所での研究についての記事を書いている時点で「あーこりゃ逃げられない」と思いましたので、もうそのつもりになっています。
たとえばですけれど、その以下の記事にありますような「遺伝子の改変」がなされていたようなものである可能性がある場合、つまり「誰も免疫や耐性を持ちようがない」ようなものであるならば、感染するのが普通のことであり、
「感染しないほうがおかしい」
ということになると思われます。
https://indeep.jp/one-chinese-scientist-could-be-linked-global-coronavirus-pandemic/
ただ、「感染しても症状が出ない例」もかなり多いようで、これは子どもや若者に限ったことなのかなと当初は考えていたのですが、たとえば、1月29日にチャーター機で日本に帰国された日本人のうち、3人の方から新型コロナウイルスが検出されましたが、
「そのうち 2人は無症状」
だと報じられています。お二人は、40代の男性と 50代の女性で、特にお若いという年齢でもありません。
あと、医学誌ランセットで、「新型ウイルスの発症年齢の分布」について知ることができたのですが、これが、予想していたものとやや違いまして、なんというか、
「ややスペインかぜと似ている」
のです。
以下のグラフは、医学誌ランセットに掲載されていたもので、新型ウイルスの初期の入院患者の年齢分布です。2020年1月2日までのもので、この時にはまだ患者は 41人しかいなかったですので、その分の症例です。
・Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in
18歳未満の入院患者は「0」です。
この新型ウイルスに唯一の希望があるところは、ここのところで、「子どもと赤ちゃんがほとんど発症しない」ということで、これは今でもそのように進行しているようです。
しかも、医学誌ランセットには、
「感染しても発症しない子どもの事例がある」
という他の記事も出ていまして、これは子どもが守られるという点では嬉しいところですが、ただ、症状が出ないので、保菌者であることが自分も周囲もわからないまま、子どもたちが感染を広げる可能性があるとしています。
1月30日のブルームバーグには以下のようにありました。
Doctors say 10-year-old boy was 'shedding virus without symptoms'
(10歳の男の子は、感染して症状がないままだった)発症していない10歳の子どもが保菌者だったことは「かなり予想外の発見だった」とユエン氏はランセットに書いている。
しかし、新しいウイルスが急速に拡大しているメカニズムを解明しようと研究している中国の医師たちにとって、このことは、あまり驚きではなかった。
なぜなら、中国の医師たちは、子どもと赤ちゃんたちの症状が軽いことを見続けているからだ。中国疾病対策予防センターの医師は、以下のように記者団に述べた。
「これまでの調査結果では、児童と乳児の症状は比較的軽度で、高齢者たちが、より重症の症状を示しています」
香港大学の病理学の臨床教授であるジョン・ニコルズ氏は、以下のように言う。ニコルズ氏は、 SARSウイルスを分離し、特定した研究員のひとりでもある。
「心配なことの 1つは、感染しても症状があまり出ない若い子どもたちが、保菌者として、さまざまな場所を歩き回ることです」
そのようなこともあり、子どもや若者については、この新型ウイルスに感染しても発症しない可能性が高いのかもしれません。
たとえ発症したとしても、子どもや若い人たちでは、重症化した人は、ほぼいないようですので、それは安心材料です。先ほどの年齢分布と、現状での現場の医師たちの発言等からは、「 二十代中盤くらいまでの若い人たちは、激しいパンデミックになっても、それほど心配はいらない」と、今の時点では考えていいかと思います。
なお、これまでの時点で、死亡した人の中で最も若い年齢だった人は 36歳の男性だそうで、現時点では、二十代などの死者は報告されていないということです。
通常の感染症とは違うのだろうか
若い人が助かることはいいことなのですが、ただ、この新型ウイルスは、「少し奇妙」なのです。
私は、「高齢になればなるほど重症化していくのだろうな」と思い込んでいたのですが、先ほどの年齢分布を見ると、何と、
「入院している中で最も多い年齢層は、25-49歳の最も基礎体力のある年齢層」
となっているのです。
まだ症例の少ない時点ですので、これだけでどうこう言うのはいけないのですが、しかし、あまりにも「異様なる年齢分布」には見えます。
普通、インフルエンザなどを含めて、どんな感染症でも、こういう年齢分布にはならないのです。
感染症で、発症したり重症化するのは、一般的には小さな子ども、そして高齢者ということになるのが普通で、体力がある 20代から 60代くらいまでの年齢層は、基礎疾患がないのであれば、感染症で重症化する例は少ないのです。
たとえば、下はひとつの例ですが、今シーズンの季節性インフルエンザでの入院患者数の推移(岡山県)です。 15歳から 49歳までが最も「少ない」ことがわかります。
2019/2020年 インフルエンザの入院患者数の年齢分布
・pref.okayama.jp
先ほどの新型コロナウイルスでの入院患者の年齢分布をもう一度載せます。
・Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in
新型コロナウイルスの患者の年齢分布が普通の感染症と「ほとんど逆」であることがわかるのです。
集中治療室に入っている人たち、つまり最も重症化している人の数も、その年齢層が多いのです。
もちろん、この年齢層の人口が多いからという理由はあるでしょうけれど、それにしても、ここまで極端な分布を描くというのは・・・。
ふと、「これだと、まるでスペインかぜと同じじゃないかよ・・・」と思いました。
1918年から始まった新型インフルエンザのパンデミックだったスペインかぜも、これと同じように、最も体力があるはずの青年層の死亡率が最も高かったのです。25歳から 35歳が死亡率のピークで、これは通常の感染症では「最も死ぬ人が少ない」年齢層なのです。下は、スペインかぜの死亡率の年齢別の分布図です。
青年から中年層で死亡率が急激に上がっていることがわかります。
このような最も元気な人たちが、多く亡くなっていったのです。
これについての理由は、今でも確定したわけではないですが、2014年に、「高齢者は、子どもの時に 1918年のスペインかぜと同じタイプのインフルエンザにかかっていた可能性が高く、すでに免疫を獲得していた」と、アメリカのアリゾナ大学の生物学者によって発表されました。
これが正しいかどうかは、ハッキリしていないですが、当時のナショナルジオグラフィックには以下のように書かれています。
「スペインかぜ5000万人死亡の理由」より抜粋
人類の医学史上、最も大きな謎の一つを解明したかもしれない研究結果が4月28日に発表された。
1918年に大流行したスペインかぜ(インフルエンザ)では世界中で5000万人が死亡したが、犠牲者が主に若い健康な成人だったのはなぜなのか、これまで明らかになっていなかった。
答えは驚くほどシンプルだ。1889年以降に生まれた人々は、1918年に流行した種類のインフルエンザウイルスを子どもの頃に経験(曝露)していなかったため、免疫を獲得していなかったのだ。
一方、それ以前に生まれた人々は、1918年に流行したインフルエンザと似た型のウイルスを経験しており、ある程度の免疫があった。
ただ、「免疫を獲得していない」ことと「重症化すること(死亡率の上昇)」が、必ずしもイコールなのだろうか、とは思います。また、スペインかぜの死亡率は、免疫を獲得したとされる高齢者でも高くなっていて、それだけの説明では合わない部分もあるのではないのかなと思わない面もないではないです。
しかし、今回は新型のコロナウイルスですし、自然発生したものだとしても、「どの年齢層も免疫を持っていない」ですので、普通なら、体力の弱い高齢者や、あるいは小さな子どもたちが重症化していくというようになるのが普通だと思うのですが・・・。
どうしてでしょうね。
さあ、どうする。
・・・とかいっても、実際はどうにもならないのですけれど。
新型ウイルスの感染力は強烈ですし、年齢分布も先ほどのように、スペインかぜのような奇妙なグラフを描いていますし、なるにまかせるしかないのですかね。
なお、アメリカでは、いわゆるプレッパー(非常時に向けて終末の準備をする人々)たちによる「パンデミックにどう備えるか」というような話題が、ウェブサイトなどで展開されていますが、たとえば、あるアメリカのサイトには、以下のような準備をしなさいとあります。
これは「自分の家を隔離室のように隔離する」ことを前提としているようです。
1. ボディスーツとN95マスク
2. 厚いプラスチックシートおよびダクトテープまたは塗装テープ
3. シンプルで掃除しやすい簡易ベッド
4. 強い高ミルのゴミ袋
5. 水分補給のためのスポーツドリンクなど電解質の飲料
6. 松葉茶など免疫力を刺激するもの
7. 高品質の消毒石鹸、漂白剤
8. 使い捨てラテックス手袋
9. 簡易トイレとして機能する複数のバケツ
10. 可能であれば最大7日間以上の水
こういうことを本気で書いているのかどうかはわからないですが、「一体どれくらいの期間、パンデミックが続くと考えているのだろう」とは思います。
たとえば、1918年のスペインかぜの場合、これは、東京都健康安全研究センターの資料から抜粋しますが、感染の強弱を繰り返しながら、「おおむね2年半続いた」のです。
スペインかぜの1回目の流行は1918年8月下旬から9月上旬より始まり、10月上旬には全国に蔓延した。
流行の拡大は急速で、11月には患者数、死亡者数とも最大に達した。
2回目の流行は1919年10月下旬から始まり、1920年1月末が流行のピークと考えられ、いずれの時も大規模流行の期間は概ねピークの前後4週程度であった。
このように、すべての期間としては、1918年8月から 1920年1月まで続いたのです。ピーク時だけでも 2ヵ月などの間続くのです。
パンデミックというのは、こういう長期間に及ぶことになる可能性があるものであり、ちょっとした備えで対抗できるというタイプの災害ではないです。
結局は、パンデミックから完全に解放されるには「感染して免疫を獲得する」以外の方法は残念ながらないと思われます。
新型コロナウイルスにしても、感染力の強さを見ている限り、都市などで生活している場合、感染そのものを避けるのは非常に難しいと思われます。
マスクや手の消毒で完全に予防できる程度の病原体であるならば、医療従事者が次々と感染したり、こんなに急速に指数関数的に患者が拡大したりはしません。大体、すでに中国などでは多くの人々が外出を避けているのに、それでも爆発的に患者数は増え続けています。
通常の感染症と次元が違うもののようにも感じます。
なお、英デイリーメールによれば、タイでも急速な勢いで新型コロナウイルスが拡大しており、タイ政府は、
「コロナウイルスの拡散をもはや止めることができない」
と認めたとあります。
その理由として、「ウイルスの拡散を止めるには、タイにはあまりにも多くの中国人訪問者がいる」とタイの保険大臣は語っていましたけれど、これが意味するところは、日本もほぼ同じ位置に今あるということです。
中国本土からだけに限れば、2019年度の中国からの訪タイ、訪日の人数は、
・タイを訪れた中国人 1099万人
・日本を訪れた中国人 960万人
となっていて、ここに香港や台湾を入れると、ほぼ同じような数字となり、つまり
「タイと日本への中国人訪問者数は、ほぼ同等」
なのです。
この春節にも、タイと日本には、おおむね同じような数の中国人が来ているはずです。
タイ政府が「コロナウイルスの拡散をもはや止めることができない」と言っているのなら、それは日本でも同じなのだと思います。
まずは、観光客が多く訪れる都市や地域から感染者が増加していくのかもしれません。なお、中国人観光客に人気の都道府県(検索順位)は、
1位 北海道
2位 東京都
3位 京都府
4位 沖縄県
5位 大阪府
となっています。
しかし、どこから感染が始まろうと、あまり関係ないです。何しろ、中国では、あの広い大陸で、感染拡大から1週間かそこらで全土に感染が広がったのですから、国土面積が狭い上に交通網が整備されている日本や韓国、台湾などはさらに早く広がるはずです。
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