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生物兵器の主は死なない : 無治療では致死率90%の「炭疽菌」が永久凍土が溶けたシベリアの土の中から噴出し被害が拡大。該当地域は非常事態宣言の渦中

   

現在少なくとも子ども12人が死亡。トナカイ1200頭の死亡も確認

2016年7月30日のシベリアン・タイムズより

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「炭疽菌」という細菌をご存じでしょうか。無治療の状態では致死率 90%以上という毒性の高い細菌で、元来は天然のものですが、現代社会においては、どちらかというと、「生物兵器」のイメージとして知られています。

現在、ロシアのシベリア・ヤマル地方で、この炭疽菌の感染者と感染した動物たちが突如として発生し、8月1日の時点で、数十人が入院し、数多くのトナカイたちが死亡しています。

トナカイも1200頭以上が死亡

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炭疽菌に感染した子どもたちが入院している病院

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冒頭の報道を見て、おわかりかと思いますが、「病気の流行の現場」に向かっている多くの人々が、医者というよりは「軍人」であることが、この病気の性質と、そして、今回起きていることの「意味」が、現場に数多くの軍人たちが派遣されていることから想像できるものなのかもしれません。

なお、この炭疽菌の生物兵器としての有用性は、たとえば、生物兵器としての炭疽菌 – Wikipedia の説明から抜粋しますと、下のようになります。

生物兵器への利用が可能な病原体には、

1. 短期間で致命的な感染症を起こす
2. ヒトからヒトに感染(伝染)しない
3. 有効な治療薬・ワクチンがある
4. 使った後での環境修復が容易

という性質が特に重要視される。

炭疽菌は 1. – 3. の条件を満たしており、さらにその培養も比較的容易なので、第二次世界大戦の頃から各国の軍事機関によって生物兵器としての応用が考えられ

(略)

しかし、炭疽菌の特性が明らかになるにつれて、

・芽胞形成によって土壌汚染が半永久的に持続するため、使用した後の土地への移入などができなくなる(上記 4. の理由を満たせない)
・ワクチンの効力が十分とは言えない

などの欠点も明らかになったため、いわゆる「戦争」では、少なくとも「公式には」実戦への投入は行われなかった。

ということで、炭疽菌の生物兵器としての最も致命的な問題は「4. 使った後での環境修復が容易」を満たさないということで、つまり「1度、炭疽菌で汚染された場所は、処置をしない限り半永久的に汚染が続く」ということになるということになります。

いくら敵を倒せても、その土地に自分たちが入ることができないのでは、それは単に廃墟を増やしていくだけの行為となってしまって、それでは、土地や資源を争うような目的での「戦争」とは呼べないです(そういう意味では、相手の地が廃墟になろうが構わないテロなどには向いているのかもしれません)

たとえば、炭疽菌で汚染された場所は、その後どのようになるかといいますと、Wikipedia に下の例が載せられています。

1946年、イギリススコットランドの グリュナード島で、連合軍が炭疽菌爆弾の投下実験を行う。この後43年間、グリュナード島は炭疽菌芽胞で高度に汚染された状態となり、その後消毒処理によって回復された。

このように、何十年もその地は汚染された状態となり、上のスコットランドの グリュナード島の場合、「消毒処理」が施されて始めて回復しましたが、それがなされない場合、半永久的にその地は汚染されたままになることになります。

こういう炭疽菌の「消えない」性質から、今回のシベリアでの炭疽菌の突然の流行を見てみますと、1979年にやはりロシアのエカテリンブルクという場所で起きた出来事が連想されます。

エカテリンブルク – Wikipedia より

冷戦期におけるエカテリンブルクでは、1979年の4-5月にかけ、人為的ミスによる炭疽菌の漏出事件が発生した。

この事件で周辺住民96名が感染、うち66名が死亡している。

事件当時のソ連政府衛生局の発表によると原因は「腐った食肉の販売」だったが、西側の情報機関は当初から生物兵器を扱う軍事施設から漏れ出した菌によるものではないかと推測していた。

このことがロシアから発表されたのは、ソ連崩壊後の 1992年でした。現在のロシア軍が炭疽菌の研究をしているのかどうかはわからないですが、以上のように、「ロシアのいろいろな場所に、かつて炭疽菌の研究施設があった」という推測はされているわけです。

冒頭のシベリアン・タイムズは、連日、今回の炭疽菌のアウトブレイクについて報道し続けていますが、そこに、次のような記述があることが気になったのでした。

シベリアン・タイムズより

北極シベリアで、気温が 35℃にまで上昇するという非常に暑い天候が続いている中で、ヤマロ-ネネツ地域、他の永久凍土の融解が進んでいる。

ロシアで炭疽菌が発生したのは 1941年以来のことだ。

当局は、最近だけで 1200頭のトナカイが死亡していると発表しており、これは、明らかに熱波と炭疽菌の組み合わせによるもので、このようなことは過去に記録がない。

このように、現在のシベリア地方は場所によって、極限にまで暑くなっているようなのです。

しかも、このシベリアの熱波は、もう1カ月以上続いているとも考えられます。というのも、6月の終わりのロシアの報道で、すでにシベリア地方で「 35℃」を記録していたことを、以下の記事でご紹介したことがあるからです。

ロシア中部に広がる異常気象 : 6月のシベリアで35℃を記録
 地球の記録 2016/07/01

下は、今年 6月29日の北半球の「平年との気温の差」を示したもので、平年より高ければ高いほど「赤く」表示されます。

北半球の気温の平年との差(2016年6月29日)

russia-temperature-0629bClimate Reanalyzer

北半球は全体的に茶色(平年より 5℃から 10℃程度気温が高い)の場所が多く、今年の北半球の気温の高さをうかがわせますが、シベリアは特別に平年より気温が高いことがわかります。

このシベリアの中の「最高の気温の地域」では、平年より 15℃くらい高いような色分けに見えます。

平年より 15℃高いというのは、変な例えになりますが、関東なら夏の最高気温が 45℃くらいになってしまうという話であって、さすがに尋常な気温差ではないです。

そういう中にあって、シベリアのトナカイたちが死亡している理由のひとつに、この「信じられない熱波」というものがあるのではないかということと、そして、それと炭疽菌による死亡が重なり、数日間で 1200頭という、これまでのシベリアではなかったような大量死に繋がっているようです。

そして、1番の問題は、上のシベリアン・タイムズの記述の中の、

> 永久凍土の融解が進んでいる

ということで、そりゃまあ、連日 35℃などの気温となれば、永久凍土も何もあったものではなく、おそらくは非常に広範囲でシベリアの永久凍土は溶けていっているのでしょうけれど、そこから出てくる主張として、

「永久凍土に閉じ込められ休眠していた、かつて拡散した炭疽菌が、凍土が溶けたことによって地表に出てきている」

というものがあるのです。

今回は、現在のシベリアの炭疽菌の状況と、永久凍土の融解について記していたアメリカのブログ記事をご紹介します。


siberian-melting-permafrost

Melting Siberian Permafrost Awakens Dormant Deadly Bacteria
mysteriousuniverse.org 2016/07/31

溶け続けるシベリアの永久凍土が休眠していた致命的な細菌を目覚めさせる

ロシアの英字紙シベリアン・タイムズによると、7月30日現在、1200頭以上のトナカイが死亡し、遊牧民 13名が重体となっている(8月1日の時点では 72名が入院、12人が死亡)。

その原因は、シベリア地方の永久凍土の下に数十年眠り続けていた細菌による。

その細菌の名は炭疽菌だ。

地方政府は非常事態を宣言しており、該当地域に救急隊員を動員した。

シベリアン・タイムズによると、北極シベリアのヤマロ・ネネツ自治区の知事は、この致命的な炭疽菌の発生は、永久凍土の中で長期に休眠、培養されていた細菌だと考えられるとの声明を発表した。

トナカイの死もそれによるものと考えられるとしたが、現地の面積と炭疽菌の感染状況と生存率を考慮すると、動物を埋葬する場所はないという。

現在のシベリアで続く異常に気温の高い天候は、永久凍土の記録的な量の融解をもたらしたと考えられ、融解した量は、過去数十年にわたって継続的に凍結し続けた永久凍土を上回っている。

そして、永久凍土が溶け出すと同時に、遠い昔にこの地で死亡し、その凍土の中で凍ったままだった動物たちの死体の中で眠っていた微生物たちを外部に解き放つことになった。

現在、多くの地元住民が避難、または隔離され、地域の子どもたちは、さらなる流行の観察、および予防のために近くの寄宿学校で過ごすことを余儀なくされている。

軍用機で避難する住民たち
evacuated-a1Siberian Times

残念なことに、炭疽菌感染エリア内のトナカイの多くは、広範囲の感染を予防するために殺処分されている。

細菌は、低温の中で生き残り、死んだ動物の組織を餌にすることができるために、何十年もの間このようなシベリアの永久凍土の寒冷地の中で休眠することができるのだ。

炭疽菌は、空気中に浮遊、または感染した生物との直接の物理的接触かの、いずれかによって細菌の胞子によって拡大する。その炭疽菌は、肺、消化管、または感染した生物や人の皮膚組織に感染する可能性がある。

ロシアはこれまで、炭疽菌発生のいくつかの歴史を持つ。そのうちのいくつかは、生物兵器のテストの際の事故だったかもしれないとアメリカ政府は疑っている。

そこには、1979年の旧ソ連の軍事施設での事故を含んでいる。ロシア政府は、1992年までは、この謎の炭疽菌の流行の詳細を明らかにしなかった。


 

ここまでです。

ちなみに、炭疽菌は、無治療では致死率が非常に高いですが、厚生労働省ホームページの生物兵器テロの可能性が高い感染症についてというページでには、

感染後、抗生物質により治療が可能な疾患である。ペニシリンG、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アモキシシリン等の抗生物質が有効であるが、早期に対応することが重要である。

さらに暴露された後、無症状の時点から予防的に治療することも可能である。

しかしながら、むやみに服用してしまうと、抗生物質が効かない耐性菌が蔓延してしまうという大きな弊害をもたらす危険があることや、副作用もあることから、不必要な段階からの予防的投与は控えるべきである。

とあり、抗生物質の投与が効果がありますが、上の中にも、

> 抗生物質が効かない耐性菌が蔓延してしまうという大きな弊害

とありますように、最近はこの「耐性菌」という問題は日に日に大きくなっています。

今年は何度か「ウルトラ耐性菌」のことを記事にしましたが、炭疽菌のような致死性の高いバクテリアが「抗生物質への耐性を獲得」する日というのが来て、そういうものが、テロであれなんであれ、使われるような局面があれば、そういうのは本当に大変なことなのだろうなとは思います。

先日、記事にしました、ブラジルの致死率 20%のインフルエンザも今は収まっているのかどうかよくわからないですが、強力なウイルスやバクテリアのニュースが多くなっている感じがする最近ではあります。



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