2016年9月28日のロシアの報道より
規模が拡大し続ける自然災害
昨日 9月28日、オーストラリアのサウスオーストラリア州で「全域」が停電になるという出来事が報じられていました。
「ひとつの州」といっても、日本の県と違って、国土面積の大きなオーストラリアはひとつひとつが広いですしね。
今回、「州全部」が停電に陥ったというサウスオーストラリア州を日本列島と比較すると、下のような広さです。
日本の本州全域が停電に陥るというのと、あまり変わらないほどの広範囲でのものだったようです。
写真を見ると、軒並み送電タワーが強風でなぎ倒されていたようで、電気インフラのかなり根本的な部分が相当破壊されているため復旧には時間がかかりそうです。
オーストラリアの環境大臣が「半世紀に一度の悪天候だ」と語っていたほど「超」のつく悪天候が吹き荒れた中での停電だったようです。
強風で倒された送電塔
それでも、オーストラリアは人口密集度が低いですので、これだけ広範囲の被害ではあっても、停電になったのは 85万世帯で、影響を受けた人数は 170万人ほどだとのことです。
これが日本で同じ面積の規模で被害を受けたとしたら、影響を受ける数は一桁違うかもしれません。
3年前に、インドで大規模な停電があり、その際には「6億人が影響を受けた」ことも思い出します。この時の停電については、
・インドで地球の歴史上最大の停電が発生: 6億人に影響
2012/08/01
という記事でふれたことがあります。
このインドの停電の原因は、自然災害ではなく、「インフラの故障」でしたが、今の地球の自然の状態を考えますと、自然災害でのこのクラスの停電というものも、いつ起きても不思議ではないのかもしれません。
自然災害の規模と頻度の拡大は、多くの国や地域で実感されていると思いますが、何より自然災害の拡大を最近最も実感している国のひとつが日本です。
2016年夏の自然災害での日本の経済的損失は4兆円
冒頭に貼りました、日本について記されたロシアの記事は、熊本での地震から夏の一連の台風までの日本の経済的な被害が、予備的なものを含めて 400億ドル( 4兆円)となったことを報じています。
このロシアの記事の被害額は、熊本での地震と北海道の台風での水害被害を中心として算出されているもので、今年の台風は西日本や東日本にも大きな被害を出していますので、全体としては、さらに大きな被害額となっていると思われます。
九州での地震の被害に関しては、昨日 9月28日、熊本県が地震による被害額を算出し、 9月14日時点で、その額は 3兆7000億円を超えることを発表しました。
熊本地震の被害額、県全体で3兆7850億円
日本経済新聞 2016/09/2728
熊本県は28日、熊本地震による被害額を試算し、9月14日時点で3兆7850億円に上ると発表した。県全体の被害額を公表するのは初めて。
被害の内訳は住宅関連が最も多く、2兆377億円と半分以上を占めた。全壊約8千棟、一部損壊を含めた被害は計約17万棟に及び、宅地の崩壊なども深刻なことから総額が膨らんだ。
ということで、熊本県では、住宅の他に、商工関連の被害(8200億円)、道路や橋など公共土木施設の被害(2685億円)、農地や農業用施設の被害(1487億円)、廃棄物処理関連の被害(900億円)、そして、文化財関連の被害(936億円)がまとめられています。
そして、台風による北海道での被害も過去最大のものとなっています。
北海道の台風被害2786億円 水害で過去最大
日本経済新聞 2016/09/28
北海道に今夏相次いだ台風によるインフラや農業などの被害総額が計2786億円に上ることが北海道と国土交通省の集計で分かった。水害による被害額では1981年8月の「56水害」(2704億円)を上回り、過去最大となった。
台風7、11、9、10号などによる一連の大雨で、国管理の道路や河川の被害額は14日時点で824億円。道の27日時点の集計では、河川や農業などに計1962億円の被害が出た。
北海道の場合は、今回の台風の被害だけの算出では「すべての被害」を描ききれないものがあり、特に、たとえば十勝などのように「輪作」といって、じゃがいも、小麦、豆類などを季節ごとに植えていく農業方式をとっている場所では、このサイクルが崩壊してしまったために、今後何年も影響が続くと考えられています。
「台風が3回直撃した北海道・十勝 農業王国の苦境」という NEWSポストセブンの 9月23日の記事には、地元の人の話として、
「そもそも今年は、7月まででさえ『十勝史上最悪』と言われるほどの天候不順だった。そこに来て、例年なら来ない台風がいくつも……。今年の分の減収は共済で何割か戻ってくるだろうけど、本当にきついのは来年以降だよ」
と述べています。
北海道は今年は特に、自然の変動の影響を非常に大きく受けたと考えられます。「北海道は」と書きましたけれど、上の記事には、
> 自給率1%の東京の食を支える、自給率1249%の十勝という一大農業王国が、今後数年に渡り苦境に追い込まれる可能性がある。
という一文があり、結局、こういう異常が続く限りは、日本全体にさまざまな影響を与えることにはなると思います。
ところで、ジャパンタイムズの記事に、今年の太平洋で発生した(9月24日まで)台風のすべての「軌跡」が載せられている図画掲載されていましたが、それを見ると、「日本の周囲を《蛇》のように台風が周回し続けていた2016年」と言えそうな雰囲気があります。下がその図です。
2016年の台風の軌跡(ドットは6時間ごとの進路)
空の「蛇」というと、思い出すのは「虹」という漢字(「虫」はヘビのこと)ですが、今年の日本は虹も多い年でした。
[参考過去記事]
・台風10号の上陸直前、日本中に出現し続けた「二重の虹」の向こうに (2016/09/02)
・史上最強の台風と桜島の「虹のシンクロ」の日に思う雑記 (2016/09/15)
私たちは無事に2020年を迎えられるか
ここまで書きましたように、今年の日本は、4月から9月までの約半間に「自然災害での経済的損失が4兆円以上」となっているわけですが、2020年に東京で開催される(予定の)オリンピック費用は3兆円を超える可能性があるのだそうです(朝日新聞)。
それにしても、仮に今年のような感じで今後も気候が荒れていくようなことがあった場合、2020年という頃は、五輪どころではないような日常になっていたりする可能性もないとは言い切れない感じはあります。
では、そのように(今後も自然災害が増えていく)可能性があるのかというと、統計を見る限りでは、そうなっていく可能性も高そうなことを、
・自然災害は予想以上の驚異的な勢いで地球の文明を崩壊させ続けている : ドイツの大学が発表した西暦1900年以降の災害損失データベースが示すこと
2016/04/20
という記事で記したことがあります。
その記事では、ドイツ・カールスルーエ工科大学の「世界の自然災害に起因する社会経済的損失」に関してのデータベースをご紹介しまして、それが示すところは、過去 115年間の世界での自然災害での経済的損失は、日本円で 770兆円に上っていることがわかります。
そして、そのグラフ(下のグラフ)は「 21世紀になってからの急上昇」を示しています。
1900年から 2015年までの自然災害での経済的損失の推移(米ドル)
グラフは、2015年の途中までですが、2016年の今年は、今の時点までの世界での洪水、地震、竜巻、嵐、山火事などの多発を考えますと、このグラフがさらに伸びる可能性があります。
なお、今は、大気や海水の温度が高いサイクルにあるために、台風などの悪天候が増加していますが、今後数十年、早ければ十数年のうちに、太陽活動の縮小などが原因のミニ氷河期が訪れれば、今のように台風や豪雨が荒れ狂うような大気の荒れ方は収まるはずです。
[参考記事]精度97%の「2030年までのミニ氷河期突入」予測は、その発表の元となったロシア人女性物理学者の「太陽活動の解析予測の実績」から実現確実な状勢に (2015/07/22)
しかし、ミニ氷河期になったとしたら、それはそれで、今とは比較にならない大きな社会変動が訪れる可能性もあります。
これに関しては、
・2016年2月に激増を見せている世界の火山噴火から、6世紀の地球を巻き込んだ「過去2000年で最大の気候変動」が招いた小氷河期による社会変動…
2016/02/10
という記事に、6世紀の環境の異常(ミニ氷河期を含む)は 100年以上続いていたことが明らかになったことを書きましたけれど、ミニ氷河期は過去においては、本当に激しい社会的変動をもたらしています。
東京オリンピックがおこなわれる(かもしれない)2020年頃は、まだ現在とさほど変わらない状況かもしれませんが、その後、もしかすると、私たちの地球が、私たちが何百年も経験したことのないような状況に突入していくという可能性は、いくつかの科学的推測では、そこそこにあります。
日本の場合は、その環境の異変と共に、社会の極限の高齢化に伴う、医療費、介護費、年金等のサービス提供の行き詰まりなども予想されますし、(あるいは軍事的ないろいろも含めて) 2020年頃の日本は、オリンピックはオリンピックとして、おめでたいかもしれませんが、スポーツマン以外の人たちにとっては、サバイバル的要素のほうが強い世の中になっているような気配は意外と大きなものかもしれません。
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