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2016年からの世界 パンスペルミア 人類の未来

開き続けるパンドラの箱:アメリカ国立感染症研究所の感染症マップが示す、この30年間が「異常な病気の出現の時代」であったこと。そして、人類とウイルスの「歴史」が同一に見えること

投稿日:2016年2月15日 更新日:

現世人類(12万〜16万年前の間に登場と推定)の拡散の過程

human-journey
National Geographic




 

「今が病気の時代であること」は感覚的な問題ではなかった

以前の記事で「病気の時代」や、あるいはそれに準ずる言葉をタイトルに入れた記事をわりと多く書いた気がします。たとえば、下のような記事などです。

病気の時代 : 致死率が 20パーセント台となっている中国の H7N9 の真相の謎。そして…
 2014/01/30

「病気の時代」は継続している:患者100万人を越えたチクングニア熱、パンデミック状態のRSウイルス…
 2014/12/26

これらの記事は、その時にその時に報道などであげられる「新しく出現した病気や症状」などについて書いていたものでしたが、もう少し長いスパン、たとえば、この数十年間などでの「新たな感染症の増減」などについての具体的な状況を書いたことはありませんでした。

最近、ジカウイルスの拡大に伴い、アメリカなどでは感染症に関しての報道がとても多いのですが、それと関連して、ワシントンポストに、

「ジカウイルスだけではなく、感染症そのものが、この 30年間ほどで爆発的に増えている」

ことが指摘していて、そこにあったアメリカ国立衛生研究所の「全世界で新しく出現、あるいはかつて流行していた感染症が再び流行した」ことを示す「1984年」と「それ以降 2015年まで」を比較した感染症マップが掲載されていて、それを見て驚きました。

下がそのアメリカ国立衛生研究所の「感染症マップ」です。

1984年の感染症マップ

global-examples-1984Washington Post

1984年の時点では、世界の公衆衛生の最大の懸念は・・・というか、最大の懸念も何も、この時には「新たな感染症はエイズだけ」だったのです。

それが 2015年までに感染症マップは下のようになりました。

1984年以降の感染症マップ

global-examples-2015

 

もう「ワッ」とばかりに、新たな感染症が増えたことがわかります。

地図の色の内訳の詳しくは後で記しますが、地図のうち「」はこの三十数年で新しく出現した感染症(新型インフルエンザやSARS、O157などを含みます)、「青」は再度流行した感染症(コレラ、ペスト、黄熱病など)となります。

「なんとなく新しい病気が増えているのではないだろうか」という感覚は、誰の中にもあったと思いますが、病気は本当に増えていたのです。

しかも、上の地図の病気のほとんどが、

「予防法も治療法もなく、対症療法しかない」

ものばかりです。

このマップが掲載されていたワシントンポストの記事は、それほど長いものではないですので、先にご紹介したいと思います。

タイトルは「ジカウイルスを超えて」、あるいは「ジカウイルスの向こうに」というような意味のものでした。




 

Beyond Zika: The terrifying map of things that keep NIH’s infectious diseases director up at night
Washington Post 2016/02/12

ジカの向こうに:恐ろしい感染症マップがアメリカ国立衛生研究所(NIH)の代表者に努力を続けさせている

感染症の専門家たちにとって、その仕事の中で最も恐ろしい側面のひとつが、感染症の新しい出現を予測することができないということだ。

アンソニー・フォーチ( Anthony Fauci )氏が、1984年に初めてアメリカ国立衛生研究所の代表となり仕事を始めた時には、感染症に対しての人々のすべての懸念は、その頃出現した1つの疾病に集中していた。

それは、HIV / エイズだった。

その時には、エイズウイルスがどのように拡散し、どのように人から人へと感染していき、そして、最終的にどのように感染した人たちを死にいたらしめるのかを誰もまだ正確には知らなかった。

下は、その 1984年に、フォーチ氏がアメリカ議会と協議した際に、エイズがいかに人類への脅威となり得るかを示すために使用したスライドの地図のコピーだ。(訳者注:さきほど掲載したものですが、わかりやすさのため、サイズを小さくして再度載せます)

imrs-01

それから34年が経ち、その間に、地図は「進化」している。

フォーチ氏はインタビューで、氏が今でもその時と同じスライドを表示させていることを語ったが、同時に、

「その後は、年に1つ、ないしは2つの新しい感染症疾患が地図に追加されていくようになったのです」

と述べた。

この2年間( 2014年から 2015年)は特に忙しかったという。

「(アメリカの)ディズニーランドで流行した麻疹や、薬剤耐性結核、それに MERSや、カリブ海でのチクングニヤ熱などがありました。そして、今、私たちアメリカ国立衛生研究所はジカウイルスと対峙しています」と、フォーチ氏は言う。

「今では、常に新しく出現した感染症と、再び流行を始めた感染症ずあり、それらとの戦いがコンスタントに存在します」

彼らがエイズと対峙した 1984年から三十数年後の今、フォーチ氏がアメリカ議会に示した地図は以下のようになった。

imrs-02


 

ここまでです。

なんというか、これはもう・・・理屈の問題ではなさそうで、今の地球は何らかの大きな病気のサイクルに突入していると考えて間違いないと思われます。

この尋常とは言えない感じもある増え方は、もはや現代医学での公衆衛生的な観念の側面からだけでは説明がつかないかもしれません。

たとえば、上の地図で「最も多くマークがついている(新たな感染症が出現している)国のひとつが、アメリカ合衆国」(後述しますが、起源ではないとは思います。最初に患者が確認された場所という意味です)であることも、公衆衛生の側面と新しい病気の出現がリンクしていないことを示しているように思います。

それほど公衆衛生に大きな問題が満ちあふれているとは考えにくいアメリカ合衆国が、この約 30年間で、世界で最も感染症が新しく出現している(確認されている)というのは、説明が難しそうですが、その一方で、具体的な意味はともかく、「なんとなく納得できなくもない」という面もないではないです。

ちなみに、感染症マップの英文字は小さくて、読みづらいと思いますので、ひとつひとつ調べてみますと、下のようになっていました。

この約30年間で新たに出現した感染症

サイクロスポーラ( Cyclosporiasis / 原虫による感染症)
ハンタウイルス肺症候群( Hantavirus pulmonary syndrome )
腸管出血性大腸菌O104 ( E.coli O104 H4 )
腸管出血性大腸菌O157 ( E.coli O157 H4 )
C型肝炎ウイルス( Hepatits C )
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病( vC JD )
ライム病( Lyme disease )
ラッサ熱( Lassa fever )
重症急性呼吸器症候群( SARS )
中東呼吸器症候群( MERS )
重症熱性血小板減少症候群ウイルス( SFTSV bunya virus )
変異型インフルエンザA型 H3N2v
インフルエンザA 2009 H1N1
鳥インフルエンザA H7N9
鳥インフルエンザA H5N1亜型
ニパウイルス感染症( Nipah virus )
ヘンドラウイルス( Hendra virus )
エンテロウイルス( Entero virus 71 )

かつて流行していた再び流行が発生した感染症

ペスト
コレラ
エボラ出血熱
マールブルグ出血熱
黄熱病
サル痘( Human monkeypox )
デング熱
リフトバレー熱
耐性菌マラリア
など

というような感じになっていますが、見た限り、赤マークのほうの「この 30年間で新たに出現した感染症」のほうに関しては、「特化した治療法が存在しない」ものだと思います。

つまり、インフルエンザも SARS や MERS も O157 や、ライム病などにしても、 症状をおさめる対症療法しかないはずです。

そして、具体的な予防法もないです。

「再流行」のほうは、エボラ熱や、症状がエボラと似たマールブルグ熱なども対症療法しかないですが、一方で、ペストやコレラなどには抗生物質がよく効くため、現在では死亡率は低いです。

・・・ですが、逆にいうと、これらの病気は「抗生物質が最後の砦」ともいえます。

 

耐性菌がもたらすかもしれない「何らかの未来」

過去記事、

バクテリアが人類に勝利した日:「最終救済薬コリスチン」を含めた「すべての抗生物質が無効」のウルトラ耐性菌が猛スピードで全世界に拡大している
 2015/12/07

というものに書きました、増え続けている「耐性菌」に、最近、ついに、すべての抗生物質に打ち勝つスーパーバクテリアが登場したことなどを思い出します。

2015年12月7日の報道より

apocalypse-bug・NVS24

 

抗生物質に対しての耐性菌が次々と出現している中でも、コリスチンという抗生物質だけは、今まで「大丈夫」だったのですが、それにも耐性を持つ、「不死身の遺伝子」と科学者たちが呼ぶ MCR-1 という遺伝子を含むバクテリアがデンマークで見つかったのでした。

この遺伝子を含むバクテリアは、それより前の昨年 11月に中国で見つかっていたのですが、デンマークで見つかったことにより、全世界的に広がっている可能性が示唆されています。

こういうものが蔓延しだすと、まさに「すべての抗生物質が効かない」という世界が出現するのかもしれないのですね。

そういうところから考えてみましても、ペストやコレラといったような「抗生物質が最後の砦」の病気の再流行にしても、もはや「抗生物質がよく効くから大丈夫」という話ではなくなる可能性もあります。ちなみに、ペストはアメリカやマダガスカルなどで結構な数で患者が出ていて、おそらくですが、治療には大量の抗生物質が使われると思いますので、抗生物質に耐性を持つペストやコレラが出現するのも、そう先の話ではないのかもしれません。最近のペストの流行については、下の記事などをご参照下されば幸いです。

マダガスカルでペストの流行により63名が死亡
 地球の記録 2016/01/09

アメリカで今年、ペストに感染する人が異常に増加中
 地球の記録 2015/08/26

 

ちなみに、この「耐性菌」と関連した話ですと、少し古い話ですので、現在は数値が変わっていると思いますが、2010年に WHO は、

「中国での結核菌保菌者の数は 5億5千万人」

として、また、当時の記事には、以下のように記されていました。

中国では 2009年に肺結核が原因で死亡したと報告された人が 3783人、感染者の報告は 107万6938人だった。抗生物質が効かない耐性菌も多く、中国日報によると、流行が爆発すれば、恐るべき事態になるという。

中国工程院院士で、呼吸器感染症の権威とされる鐘南山氏によると、体内で結核菌の活動が活性化している人は中国全国で 450万人、保菌者は 5.5億人との結論が出された。人口の約半数が結核菌を持っており、一生のうちに発病する確率は 10%と考えられる。

一般的な治療法は、抗生物質 4種を同時に使うことで、連続して 6-8カ月使いつづければ、結核菌を完全に消滅させることができる。しかし最近では、抗生物質に耐性を持つ結核菌が増えている。

これからの病気に関しては、「未知の領域」というものも含めまして、いろいろな懸念の種のようなものはすでにありますが、しかし、何はともあれ、先ほどの地図でわかることと、医学的な事実として、

・この30年で新しい感染症が異常に増えている

・抗生物質が効かない細菌が増えている

・ウイルスについては治療薬はほとんどない

という現実があります。

現在流行しているジカウイルスは、場合によっては、「人類の健全な生殖と再生産の阻止」につながっていくものでもあり、北半球は今のところはまだ多くが冬ですので、今は心配はないでしょうが、しかし、北半球の多くの地域に、春が来て、そして夏が来て、蚊の活動が活発になる頃にジカウイルスが収まっているのかどうかは誰にもわからないです。

その中で、リオのカーニバルは大盛況で終わりまして、そのリオでのオリンピックがあったりもしていて、病気が広がる下地は十分にできあがっています。

こういう様々を見ますと、何となくですが、この 30年間の「病気の増大」のクライマックスが近づいているような気配も感じないではないです。

 

そして、最近、これらと関係しているというわけではないのかもしれないですが、思うことがあります。

それは「人類の進化とアフリカ」と関係することです。

 

私たちもウイルスも最初はアフリカの大地に降り立った

病気の起源についてはそれぞれの病気に諸説あるとはいえ、現在の主流の説としては、たとえば、エボラ(ザイールで最初に確認)やエイズ(アフリカ中部で最初に確認)も、あるいはジカウイルス(ウガンダで最初に分離)や、他にもいろいろとありますが、この 30年ほどの間の全世界に広まっていった致命的なウイルスが「アフリカ起源」と思われる例が非常に多く見受けられます。

それでは、現生人類の出現と拡大はどうでしたでしょうか

Wikipedia から(あくまでひとつの説ですが、有力です)抜粋しますと、

アフリカ単一起源説

アフリカ単一起源説とは、地球上のヒトの祖先はアフリカで誕生し、その後世界中に伝播していったとする、自然人類学の学説。

分子系統解析の進展(いわゆるミトコンドリア・イブやY染色体アダムなど)によって、人類は14 - 20万年前に共通の祖先を持つことがわかり、これはアフリカ単一起源説を強く支持するものである。

とあり、少なくとも現在の遺伝子論的な見地から、私たち現生人類は、アフリカに出現してから全世界に広がっていったということになり、現在世界を脅かしているウイルスやバクテリアと同じような道のりで現在に至っていることがわかります。

なぜアフリカであるか、とか、そもそも、なぜ現生人類や、あるいは、それまでなかったウイルスが唐突に登場したのかということはさておいても、私たちとウイルスに共通である「アフリカ起源」というキーワードは強いものだと思います。

まあ、登場について、「どのように地球に出現したか」ということについては、下の報道記事のタイトルそのものであると私は考えますが、そのことには今回はふれません。

2014年8月10日の英国インターナショナル・ビジネス・タイムズの記事

ibt-panspermiaIB Times

 

この道のりについては、「ウイルスは人類と共に移動している」、あるいは「ウイルスは人類と地球の歴史を共有している」という見方もできなくはないわけで、フレッド・ホイル博士なども述べていた説のひとつでもある、すべてのウイルスは人類の進化のために存在するという観点も、この「アフリカ起源という同一性」から見ると、納得できるような気もします。

そのアフリカでは、実は今、歴史的なものになっていくかもしれないような危機的ないろいろなと起きています。その多くが天候の異常による食糧の問題から派生しているものですが、それは一種、今後の地球全体の人類の行方の「予見」のようにも見えることでして、今後ご紹介できる時があればしたいと思います。

病気の時代ということも含めて、これら人類とウイルスに見られる歴史の同一性は、これから人類が向かう歴史を何となく想像させてくれます。

アフリカからいろいろと来るのは、おそらく現生人類の宿命です。

始まりも、そして多分終わりも。
 

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