2019年1月4日 氷の国のような風景となったイタリア中部リヴィゾンドリ
・Vicenzo Rosato via Maycol Checchinato
今年の世界の大雪と寒波はすでに歴史的な規模に
2019年に入ってから世界の雪と寒波がものすごいです。
今年の日本は、北海道以外はそれほど雪や寒さを実感していない部分もありますので、想像しにくいかと思われるのですが、北半球でこれだけ広い範囲で同時に大雪と寒波が報じられているのは珍しいと思います。
わかっているだけでも、災害レベルの寒波と大雪に見舞われているのは、
・ドイツ
・オーストリア
・ポーランド
・ルーマニア
・イタリア
・スペイン
・ギリシャ
・トルコ
・インド
・パキスタン
・イラン
・メキシコ
・カナダ
・アメリカ
などとなっています。
中でも、「ふだんは冬でもそこまで雪や寒波に見舞われない地域」では人々は苦労しているようです。
インドでは 1月初旬から北部を中心に記録的な寒波と大雪に襲われていまして、交通の混乱と地域の孤立が起きています。
1月初旬 インド北部スリナガル。車から雪を払う女性
インドのニュースを見ていますと、気温も非常に下がっているようで、氷点下 10℃近くまで下がっているところもあるようです。
1月6日のインドの天気予報より
トルコでも場所によって、信じがたい量の雪に見舞われています。
下の写真は、トルコ東部のビトリスという町の様子です。車に積もった雪で、その集中的な積雪量が推測できます。
1月7日 トルコ・ビトリスにて なぜか楽しそうな男性たち
ミニ氷河期を体現しているオーストリアの光景
今回の「雪のカオス」で最も信じがたい積雪を記録しているのはオーストリアで、新年から連日のように SNS や報道に出てくるその光景は、なかなか信じがたいレベルのものでもあります。
その一部は、以下の記事でも取りあげています。
私は、18歳まで北海道で暮らしていまして、その地方は北海道の中でも特に雪の多い場所でもありました。そういうところで育ったために、「ある程度の豪雪の風景」というのは、小さな時から繰り返し見ていますが、それでも、今のオーストリアのような光景はほとんど見たことがないと思います。
今のオーストリアですごいのは、冬を通しての積雪量の多さではなく、
「瞬間的に降る雪の量が尋常ではない」
ということです。つまり一日とか一晩で降る雪の量がすごいのです。
たとえば、SNS などに投稿された写真では「車を掘り起こしている」人たちの姿があるのですが、これが意味するところは、「昨日は車は埋もれていなかった」と。
写真を見る限り、一晩で 2メートルくらい積もっているところもありそうです。
2019年1月3日-7日のオーストリアの各地
下のほうの写真は、「雪はね(手作業での除雪)」の光景なんですが、何だか作業に対しての絶望的な展望が垣間見えます。
いつ終わるのだろう……というか、「手作業では無理では?」と雪国育ちの私は正直に思います。
ところで、ちょっと話は逸れますけれど、この寒波はオーストリアでちょっと奇跡的な光景を生み出してもいました。
寒い中で氷粒が空中を舞いながら光る「ダイアモンド・ダスト」と呼ばれる現象があるのですが、その特別に美しいものがオーストリアのスキー場で撮影されていました。
下は GIF 画像というものにしていていますので動きが遅いですが、実物の動画はもっと早い動きで激しく光が舞っています。
1月3日にオーストリアのスキー場で撮影されたダイアモンド・ダスト
それにしても、これって「中心部が光りすぎている」感じがするのですけれど、太陽の光と氷だけでこんなに光るものなのですかね。
昨年 12月22日にも、アメリカのコロラド州で似たような光とダイアモンドダストの組み合わせだと思われる現象が撮影されていたのですけれど、それは以下のようなものでした。
https://www.youtube.com/watch?v=6f-klPoDyLw
これは、
・米コロラド州に出現した「地上から天空へ立ち昇るかのような光」の現象
という記事でご紹介しています。
まあしかし、太陽の光と氷の結晶の組み合わせで起きている以外は考えづらいですので、何らかの条件で、これらのように激しく光りながら、その周囲を「氷粒たちによる光の舞い」が発生するということがあるということなのでしょうね。
ところで、これらのような現在の北半球の多くの地域の寒波と大雪は、北極からの冷たい大気が北半球に移動する「極渦」といわれる現象によって起きているものと考えられます。
北極からの大気の変化次第では
現在の地球の上空の大気の気温の状態は以下のようになっています。極渦によって、上空の気温が極めて低いエリアが広がっています。
2019年1月8日の上空の気温
・climatereanalyzer.org
青い部分、つまり -10℃を下回る寒気が、カナダ、アメリカ、そして、ヨーロッパの中部などの上空にまで広がっている他、トルコやインド北部などの上空にも冷たい寒気があることがわかります。
そして、北極からのこのような寒気の流れが「さらに南下する」というようなことがあった場合や、方向が変わってくるというようなことがあった場合は、日本なども影響を受けることもあるかもしれません。
実は、2年前の 2016年に、北極からの極渦が日本を直撃したことがあり、そのときにはかなり南方にまで極渦が移動したために、「奄美諸島で 115年ぶりに雪が降った」というようなこともありました。
この時は、温暖な台湾でも「 50名以上が凍死した」と報じられたり、中国の広州で過去 65年で初めての雪が観測されていました。
現在は、この北極からの旋風が東アジアに向かっていないため、 2016年のようなことにはなっていませんが、今後、この極渦の動きによっては、現在ヨーロッパで起きているような異常な雪と寒波に他の地域も襲われることもあるかもしれません。
そもそも、北極からの大気がこんなに頻繁に北半球にやってくるようになったのは最近のことなのです。
これは以前はほとんどない現象だったのが、三年くらい前からは毎年のように、しかも繰り返し起きるようになっています。
結局「大きな地球の大気の循環が変化してきている」ということなのだと思いますが、さらにいえば、今の地球は、以下の記事などで取りあげさせていただいたこともありますように、ある意味「大気の流れが壊れている」状態となっている可能性があるのです。
《特報》地球の気流が壊れた : ジェット気流が赤道を通過して北極から南極に進むという異常すぎる事態。このことにより、この先の気象と気温はこれまでに考えていた以上のカオスとなる可能性が極めて濃厚に
気流の崩壊は続く : 規則正しく続いてきた成層圏の気流のサイクル「準2年周期振動」の規則性が2015年に崩壊したことがアメリカ地球物理学連合の研究で明らかに
最近の地球の気候は、夏も冬もどちらも極端な状態になりやすいですが、太陽活動やその他を考えますと、今後は、「ミニ氷河期的な側面のほうが強く出てくる」可能性があるようにも思います。
そして、それは年々激しくなっていくかもしれません。