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地球最期のニュースと資料

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2月に続き、またもヨーロッパ各地で「発生源のわからない放射能が検出」される。今度は半減期376日のルテニウム106。どこで何が起きているのか

   

10月4日のフランスの報道より

caducee.net

今年2月に、「ヨーロッパの広範囲で、発生源のわからない放射性物質ヨウ素 131が大気中から検出された」という事案が発生しました。このことについては、

その原因は製薬会社の汚染漏れかロシアの核実験か、それとも… : 「発生源がわからない」放射性物質ヨウ素131がヨーロッパ全土の大気を覆い尽くした
 2017/02/22

という記事でご紹介したことがありますが、またもヨーロッパの広範囲で「発生源のわからない放射性物質が検出された」という出来事がヨーロッパで一斉に報じられています。

欧州で連綿と続く「どこから来ているのかわからない放射能」は何なのか?

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検出された場所は前回と大体同じだけれど、物質は違う

ヨーロッパで大気中の放射線の測定と分析などを行う機関のひとつに、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)がありますが、今年2月に、ヨーロッパの各地で放射性物質「ヨウ素 131」が検出された際には、フランス放射線防護原子力安全研究所が地図と共にそれを発表しました。下の地図がそれです。

フランス放射線防護原子力安全研究所が2月13日に発表した放射線の分布図

IRSN

今回は、10月3日にフィンランドの機関が放射線を大気中から検出したことがフィンランドのメディアで報じられ、その後、ヨーロッパの他の国でも検出されていることがフランス放射線防護原子力安全研究所のプレスリリースでわかりました。

下がプレスリリースの概要です。

Detection of ruthenium 106 in the air in the east and south-east parts of Europe
IRSN 2017/10/04

ヨーロッパ東南東部で大気中からルテニウム106が検出される

放射性ルテニウム 106が、いくつかのヨーロッパの地域で、大気中の放射能汚染モニタリングにより検出されている。

ルテニウム 106は、人工起源の放射性核種で、原子力産業由来の核分裂生成物だ。また、この放射性核種は、小線源治療(患部に微量の放射線をあてる治療)のための医療分野でも使用される。

10月3日、オーストリア環境省は、環境および健康には影響を与えない程度の少量のルテニウムを検出したことを示す声明を発表した。続いて、ノルウェー原子力安全機関(NRPA)も、大気中から低レベルのルテニウムが検出されたことを報告するプレスリリースを発表した。

そして、スイス連邦公衆衛生局(FOPH)も「空気中の放射能レベルは低い」として、ルテニウムの測定結果の最初の結果を発表した。

これらの測定により、9月25日から10月2日の間、これらの地域のエアロゾル中の放射性元素ルテニウム106の痕跡を明らかにした。

ルテニウム106の半減期は 373.6日となる。

10月2日までの最後の 48時間の気象条件は、東ヨーロッパから西ヨーロッパへの大気の移動はなかったことに留意すべきだ。この気象条件に基づいて、ヨーロッパのこの大気汚染の原因を明らかにするために軌道の計算が行われている。

今回、ヨーロッパのモニタリングネットワークによって観察されたルテニウム 106の大気汚染のレベルは非常に低く、環境や健康に影響はもたらさないが、しかし、それでも、IRSNは、大気中のこのルテニウムの存在を注意深く監視している。

というようなものです。

ちなみに、この「ルテニウム」といいうものは、たとえば、日本の厚生労働省が、東北の震災の後に発表した「規制の対象とする核種」に入っているものです。

厚生労働省が規制の対象としている核種は下の通りです。

厚生労働省 資料

これを見ますと、ルテニウムってのは微妙な宿命を負った物質だと思ったのは、ここには、原発事故で放出される放射性核種のうちの「半減期 1年以上の放射性核種」がリストされているのですが、ルテニウム 106の半減期は何と「 367日」。 1年を 2日だけ飛び出てしまったのでした。これが「半減期 364日」だと、この表には載っていなかったのですね。

ともあれ、ルテニウム 106は、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどと同じ規制の対象となっているものではあります。

つまり、ルテニウム 106というものもまた、他の放射性物質と同様に、

「そうそう簡単に大気中に漂うものではない」

ということで、2月の放射性ヨウ素1 31に続いて、またも「出所不明の放射線」がヨーロッパに漂っているということになりそうです。

前回の2月の時もいろいろと意見は出ましたが、その際の記事で翻訳しました報道記事の中には以下のような記述がありました。途中からの抜粋です。

2月21日のアメリカの報道「ヨーロッパ全域で不可解な放射線レベルの急上昇が起きた原因は今なお不明」より

噂も広まっている。

たとえば、ロシアが、歴史的に核実験に使用していた北極のノヴァヤ・ゼムヤ地域で、低収量の核兵器を秘密裏にテストしているという話が広がっている。

ヨウ素131は、1938年に、カリフォルニア大学のふたりの研究者によって発見されたもので、1950年代にかけて、米国とロシアが行った原子爆弾テストと同義の放射性同位体であり、チェルノブイリ原子力発電所の災害や、最近では、 2011年の福島原子力発電所事故の際の漏洩による脅威があった。

しかし、ヨウ素131は、甲状腺関連の病気やガンの治療に医療で一般的に使われるものでもある。

ノルウェー放射線防護庁の緊急事態準備局の担当者は、ヨウ素131のみが測定され、他の放射性物質は測定されなかったので、これは放射性医薬品を生産する製薬会社から発生したものだと考えていると我々に語った。

ということで、前回は、

・ロシアの核実験
・ヨーロッパのどこかの製薬会社が発生源

という話が出ていました。

その後、これに関しての続報を聞かないですので、おそらく「発生源は不明のまま」ということになっているようです。

今回のルテニウム 106が、前回のヨウ素131と似ているのは、

・原子量発電所の事故
・原子爆弾のテスト

で検出されるものであると同時に、

・医療法にも使われる

というところが似ているのだと思われます。

医療では主に「小線源治療」というものに使われ、これは通常の放射線治療とは違うもので、詳しくは知らないですけれけど、前立腺ガンの治療では、現在の西洋医学の標準的治療となっているそうで、かなり広く行われているようです。

順天堂大学医学部泌尿器科の小線源療法のページによれば、2004年から 2012年までの前立腺ガンへの小線源療法を適用した治療例 295例のうちでは、

・ガン特異生存率 100%(前立腺ガンでの死亡数は 0 ということ)
・全生存率 98.3%

という相当な成績を収めているようです。この数値を見ますと、「放射能、やるじゃん」という気もしますが、まあ今回はそういう話ではないですので、このルテニウム 106というものが医療用に適用される場合の例を説明させていただいた次第です。

 

ヨーロッパの放射線は、今回も発生源はわからないままとなりそうですが、今、世界では、「いろいろなところで発生源不明の放射線が検出」されていまして、それらの意図はよくわかりません。

ただ、これら放射性物質について、現在の私たちはそれほど知っているわけではないということも言えるのかも知れません。

「危険だ」

というイメージが強い反面、日本人などは、まごうことなき放射性物質であるラジウムの温泉などを楽しみますし、先ほどの小線源治療なども、ものによっては大変な効果があるようですし、放射性物質に対しては、何かどこかでその真実を見誤っている可能性もあるのかもしれません。

参考までに、5年以上前の記事ですが、アメリカのマサチューセッツ工科大学の研究が「自然放射線の 400倍の水準の放射線でも遺伝子は損傷を受けなかった」ということに関しての論文を、

放射線の長期被爆によっての遺伝子への損傷は「ない」ことがマサチューセッツ工科大学の実験で判明
 012/06/27

ご紹介したことがありますので、時間も経っていますし、一部を掲載したいと思います。

全体を読まれたい方は上のリンクからお読みいただければ幸いです。

ヨーロッパや、それに全世界に最近漂う放射線の発生源も不気味かもしれないですが、その放射性自体の本質は、今だにわかっていないところが多そうです。


A new look at prolonged radiation exposure
MIT News (米国) 2012.05.15

長期間の放射線被曝に関しての新しい見解

 

米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者たちによる新しい研究が、学術専門誌「エンビロンメンタル・ヘルス・パースペクティブ誌に発表されたが、その研究発表によると、複数のネズミに5週間にわたっておこなわれた「自然放射線の 400倍の放射線」の照射実験で、ネズミたちの DNA の損傷は観察されなかった。

現在のアメリカの規制では、自然放射線の8倍のレベルの放射線が検知された場合は、そこに住む人は避難しなければならないことになっているが、今回の研究では、それらの移動にかかる経済的、精神的なコストはほとんど無意味なものになる可能性があるという。

マサチューセッツ工科大学の工学部で原子力科学を専門とするジャクリーン・ヤンチ博士は、「アメリカ政府の決めた自然放射線の 8倍という数値が危険な水準であることを示すデータは存在しません」と言う。

そして、「今回の論文がは、平均的な自然放射線との比較で 400倍もの放射線であっても、遺伝子は損傷を検出できなかったことを示しました。この研究は原発の事故などの際の避難についての考え方に大きな影響を与える可能性があります」と述べた。

長期にわたる低線量の被曝の影響を測定した研究は現在に至るまで非常に少ない。今回の研究は自然放射線の 400倍の水準の放射線量での遺伝子の損傷を測定した最初の研究になる。

研究者のひとりは、「この実験で学んだのは、 400倍のレベルの放射線でもそれほど細胞は損傷しないということです。それは生物がすぐれた DNA の修復システムを持っているということによるのでしょう。私の推測では、5週間以上の長期間ずっと 400倍の放射線を浴びせ続けても DNA はさほど重大な損傷を受けないのではないかと思います」と述べる。

米国マクマスター大学の医療物理学と応用放射線学が専門のダグ・ボレア教授は、以下のように言う。

「現況では、すべての放射線が人体に悪いものと信じられています。放射線はわずかの量でも体内に蓄積され、ガンなどのリスクが増えるかのように人々に信じられていますが、しかし、それは真実ではないという証拠が現在築き上げられていると考えていいと思っています」



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