ボストン大学の論文で示される「コロナウイルスの改変」の説明図のひとつ
biorxiv.org
最大の問題
先日、以下の記事で取りあげました、米ボストン大学の研究者たちによって作成された「致死率 80%の改変コロナウイルス (オミクロンS)」について、発表の直後から騒動が続いています。
[記事] 米ボストン大学の研究者たちが、ヒト化マウスで「80%の致死率を持つ組換えコロナウイルス株」を作成したと論文で発表 (勘弁しろよ)。その名は、オミクロンS
In Deep 2022年10月18日
報じられている中での大きな問題のひとつとして、研究に資金援助したことが論文に記されているアメリカ国立アレルギー感染症研究所 (NIH)のトップ職員が、「この研究が行われていることを知らなかった」と述べていたことでした。
所長のアンソニー・ファウチ氏が知らなかったかどうかはわからないですが、他の上級職員たちには通知されないまま、この研究が行われたようです。
発表後の混乱について報じていた米エポックタイムズの記事をご紹介させていだこうと思いますが、しかし……。
先日の記事を書いていて思った「最大の問題は何か」ということがあります。
それは何かというと、
「論文として発表されてしまった」
ことです。
この「SARS-CoV-2 BA.1 Omicron の病原性および抗原性挙動におけるスパイクの役割」というタイトルの論文には、私には理解できないとはいえ、
「どのように作成したか」
が書かれています。
わかる人には理解できるものだと思われます。
これは十分に、メソッド、あるいはマニュアルとなり得るものに見えます。
あるいは、この改変ウイルスは、「オミクロン株のスパイクタンパクを、元の武漢型に移植した」ということだけで、つまり、人為的な突然変異を作り出しただけで致死率が 80%に上昇したことも知られたわけです。
発表されたこの論文を読んで、
「ほお、これは…」
と目を細めた世界中の科学者や軍部の生物兵器開発担当者たちは結構いたのではないかと思いますし、何より大きなこととしては、
「多くの個人が知った」
ことです。
今の世界は、クリスパー (CRISPR/Cas9)という遺伝子編集技術により、編集が大変に容易にできる上に、それは価格も安価なものとして流通しているために、「ちょっと頭のいい中学生程度なら、十分に遺伝子の改変ができる」ということになっています(実際にやっている少年少女たちもいそうで)。
ボストン大学が作成した改変コロナウイルスは、オミクロン株のスパイクタンパクを、元の武漢型に取り付けたというような改変ですが、
「いろいろな異なる株のスパイクタンパクをつけたり外したりすれば、何かいろいろとできるかもしれないな」
とか思うかもしれない。
新型コロナではなくとも、冬になれば、通常の風邪ウイルスとしてのコロナウイルスが何種類も循環し始めますが、それがコロナウイルスであるならば、どんな株でも、スパイクタンパクを持ちます。
カレーを作る時に、「カルダモンを足して…あと、クミンが足りないかな」とかいうように、創意工夫して料理を作るような感じで、さまざまなコロナウイルスをいろいろと組み合わせることもできるのかもしれません。
かなり容易に、「意図的に突然変異を作り出す」ことができる可能性があると。
もちろん、そのほとんどは「ウイルスとして機能しないもの」である可能性が高いでしょうが、「偶然すごいのができてしまう」という可能性もないではないかもしれない。
そういうネタが世界中に広がってしまったことが、一番の問題なのではないのかなとか思います。
1990年代くらいだったか、書類のタイトルは忘れましたけれど、インターネット上で、日本語の「原爆の作り方」が書かれたものが出回っていたことがありました。
しかし、そんな知識が仮にあったとしても、プルトニウムなどの元素を素人が入手できるはずもなく、それができた日本人は、映画の中の沢田研二さんだけです (『太陽を盗んだ男』 1979年)。
まあ、ともかく、どこまで行っても個人には架空の話でしかない核兵器に比べると、ウイルスの遺伝子改変は非常に身近となってしまっています。
アメリカでもこの論文の発表に対して混乱しているようで、それを報じた米エポックタイムズの記事をご紹介します。
この記事の中で、医師でもあるアメリカの上院議員のロジャー・マーシャル氏という方は、「これは、単一の核兵器よりも多くの人を殺す可能性がある」と述べています。
アメリカ国立衛生研究所のトップ職員は、マウスで「80%」の致死率を持つボストン研究所の新しい COVID 研究を知らなかった
Top NIH Official Was Unaware of Boston Lab’s New COVID Research With ’80 Percent’ Kill Rate in Mice
Epoch Times 2022/10/19
国立アレルギー感染症研究所 (NIAID)の関係者は、現在物議を醸しているボストン大学の委託による「実験用マウスを 80%死滅」させた COVID-19 ハイブリッドを開発したプレプリント研究をさらに連邦機関と共に評価すると述べ、関与したチームはその研究がルールをクリアしていないと述べた。
国立アレルギー感染症研究所の微生物学および感染症部門の責任者であるエミリー・アーベルディング (Emily Erbelding)氏は、STAT ニュースとのインタビューで、ボストン大学の研究者たちが研究に必要な内容を適切に開示しておらず、その特定の作業を実行するとは述べていなかったことを示唆した。
アーベルディング氏によると、助成金の提案は、アンソニー・ファウチ博士が所長である国立アレルギー感染症研究所に渡されたレポートで、研究者が COVID-19 株を強化する可能性があることを明らかにしていなかったことがわかった。
今週、ボストン大学の国立新興感染症研究所は、研究者たちが COVID-19 オミクロン株のスパイクタンパク質を取得し、それを元の武漢型 COVID-19 株に移植したことを示す査読されていない論文( pdf ) を公開し、非難と論争を巻き起こした。
実験用マウスでテストしたところ、新しく作成されたこの系統は元のオミクロン亜種よりも致死率が高く、実験用マウスの 80%を殺したことが示されている。アーベルディング氏は、元の武漢系統が、実験用マウスの 100% を殺したことにも注目した。
アーベルディング氏は、ボストン大学の研究チームが、国立アレルギー感染症研究所に何を計画しているのかを通知しなかったと述べ、 10月18日に STAT ニュースに次のように語った。
「私たちは今後数日間でボストン大学の研究者たちと話をするつもりです。彼らがそれに応じてくれることを願っています」
反論
10月18日のエポックタイムズからのコメントの要請に応えて、ボストン大学の報道官は、大学が発行した最新の声明を指摘した。エポックタイムズは 、現在、国立アレルギー感染症研究所にもコメントを求めている。
ボストン大学は、この研究を擁護し、研究中に誤解を招くような虚偽の報告はなかったとした。それと共に、病原体の致死性または伝染性を高める可能性のある機能獲得研究は研究中に実施されなかったと主張している。
また、アーベルディング氏と国立アレルギー感染症研究所が STAT ニュースの記事で行った主張に対して、ボストン大学は反論し、「この研究は必要なすべての規制上の義務とプロトコルを満たしています」と述べ、「国立アレルギー感染症研究所のガイドラインとプロトコルに従っており、2つの理由から、この研究を開示する義務はありませんでした 」と述べた。
ボストン大学の声明は以下のように続く。
「この論文で報告されている実験は、ボストン大学の資金で実施されました。 国立アレルギー感染症研究所の資金は、この研究で使用されたツールとプラットフォームの開発を支援するために使用されました。 国立アレルギー感染症研究所はこの研究に直接資金を提供していません」
「国立衛生研究所の資金は、病理学研究を支援するのに役立つ共有機器の助成金に対して認められました。 従って、この資金源に対しての報告義務は必要とされないと私たちは考えています」
「第二に、この研究では(ウイルスの)機能獲得はありませんでした。この研究が機能を獲得しているという証拠があれば、国立アレルギー感染症研究所と私たち自身のプロトコルの両方の下で、私たちはすぐに研究を停止して報告したはずです。NIAID から資金提供を受けているかどうかにかかわらず、ボストン大学でのすべての研究は、この同じプロトコルに従います。私たちは、国立アレルギー感染症研究所の幹部やプログラム担当者と引き続き話し合いを続けています」
批判
しかし、このボストン大学の調査に関する報告を受けて、一部のグループや保守派の議員たちは警戒を表明した。
医師のロジャー・マーシャル上院議員は、「これは、単一の核兵器よりも多くの人を殺す可能性」を生み出すため、このような研究は「人口密集地域」で実施されるべきではないという声明を発表した。
マーシャル上院議員は、以下のように述べた。
「歴史は、ウイルスが最もセキュリティの高い安全な研究所からさえも逃れることができたことを教えてくれている。このような研究は、アメリカ国民の同意なしに科学者だけが取ることができるリスクではない。リスクとベネフィットを調査できる間、この研究は直ちに中止されなければならない」
マーシャル上院議員は、連邦政府が第三者グループに資金を提供して、中国の武漢にある最高のセキュリティ研究所で機能獲得研究を実施するための資金を提供したことに言及した。これは、 2019年に記録された。
2021年に、米国の諜報機関の一部は、ウイルスがこの研究所から流出した可能性があるというレポートを発行した。
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