いくら何でも急激に増えすぎている若い世代の認知症
少し前に、日経の記事で「進行が速い若年性認知症 早期の発見・治療で抑制 (NIKKEI STYLE 2020/11/14)」という記事を見まして、まあ、この記事そのものの内容は今回の話と関係ないのですが、この「若年性認知症」という言葉を見た時に、
「そういえば、アメリカでものすごい急激に増えているんだよなあ」
ということを思い出しました。
その記事を探しましたら、アメリカの医療とヘルスケアに関する業務をおこなっているブルークロス・ブルーシールド社(BCBS)の 2020年2月のレポートで、アメリカで早期発症型の認知症とアルツハイマー病が急激に増加していることが報告されていました。
その数値が過激でして、
「 2013年から 2017年の 4年間で 200%増加した」
のだそうです。
この「 4年間で 200%の増加」という数値は、通常で考えられるさまざまな原因を考慮しても、急激過ぎる感じです。
その報告の最初の部分は以下のようなものです。
表組みは日本語にしています。
早期発症型認知症とアルツハイマー病の発症率は、若いアメリカ人の成人で増加している
早期発症型アルツハイマー病が、ますます多くの若いアメリカ人たちに影響を及ぼしている。
2017年には、30歳から 64歳までの約 13万1,000人がいずれかの認知症と診断された。診断率は、30歳から 64歳で 2013年から 2017年にかけて 200%増加した。その平均発症年齢は 49歳であり、女性は男性より影響を受けていた。 (BCBS 2020/02/27)
そして、ここにあった別のグラフはさらに衝撃的で、
「年齢層が若いほど、増加率が高い」
のです。
若年性認知症は、65歳未満の人の認知症ですが、実数はともかく、増加率だけで言えば、30歳から 44歳の若い年齢層の発症率が激増しているのです。
以下がそのグラフです。
2013年と2017年の熟年製認知症の比率の年代別の推移
BCBS
ここでは、
・30歳から 44歳まで → 若年性認知症が 373パーセント増加した
・45歳から 54歳まで → 若年性認知症が 311パーセント増加した
ことが示されているのですが、これは、たった 4年間の変化なのです。
普通のことではありません。
どんな疾患でもそうですけれど、「数年間で 370パーセントも発症率が増加する」というのは、明らかに「強力で直接的な原因がある」はずです。曖昧な原因はあり得ません。
たとえば、増え続けているガンのような病気にしても「 4年間で 370パーセント患者が増える」というようなことはあり得ないわけで、これを見ていて、
「何が起きてんだろう」
とは記事を見た当時に思っていました。
アルツハイマー病の研究でわかっていることのひとつとして、「遺伝はほとんど関係ない」ということがあります。
米国メイヨークリニックの 2020年7月のレポートには以下のようにあります。
家族遺伝型で発症する若年発症のアルツハイマー病は、APP、PSEN 1、PSEN 2 という 3つの遺伝子と関連しており、一般的にアルツハイマー病のリスクを高める可能性があります。
これらの 3つの遺伝子は、アルツハイマー病の全患者の 1%未満に存在しますが、若年発症のアルツハイマー病の患者では、約11%に存在します。 (Mayo Clinic)
遺伝子での発症は、全体のアルツハイマー病で、たった 1%を占めるもので、若年性でも 11%のみ。
先ほどの 300%などという数字と関係があるものとは思えません。
2013年から 2017年の、たった 4年間に何が起きたのか?
ここで示しているのは「アメリカのデータ」ですが、今の社会は、主要国の場合ほとんど同じような文化形態での生活をしているわけで、アメリカの若年性認知症の発症に「原因」がはっきりとあるならば、日本でもあり得ることになるのかもしれません。
そして、この 2013年から 2017年というような時期から「最近見た科学論文」のことをふと思い出しました。
携帯で通話の際に当たる毛髪のDNAは常に損傷を受けている
論文自体はかなり以前のものですが、
「携帯電話の放射線にさらされた人間の毛根細胞における一本鎖 DNA の切断」
というタイトルの論文でした。
2012年に、医学誌「放射線生物学国際ジャーナル (International Journal of Radiation Biology)」に掲載されたものです。
そこには以下のようにあります。「結果」と「結論」の部分です。
結果: データは、携帯電話で 15分または 30分間通話すると、携帯電話に近い毛根の細胞で一本鎖 DNA 切断が大幅に増加したことを示した。 15分と 30分のデータを比較すると、15分の電話使用後よりも 30分の電話使用後に有意に多くの DNA 損傷が発生したことも示された。
結論: 携帯電話からの放射線(900 MHz)への短期暴露( 15分および 30分)により、通話の際に使用される耳の周囲にある人間の毛根細胞の DNA 一本鎖の切断が大幅に増加した。 (tandfonline.com)
携帯でもスマートフォンでも、通話する時は、大体、端末を「耳」にあてます。
他の部位にあてる人もいるのかもしれないですが、ほとんどの人たちは携帯で通話するときには、耳にあてます。
その際には、上の研究のように「通話のたびに、耳の周囲の毛根細胞の DNA が破壊されている」ということになりそうです。
しかしですね。
上の研究論文は、2011年9月に受理されて、2012年に発表されたものですので、研究で使われていた携帯電話は、「ほぼ 10年ほど前の規格のもの」のはずです。
ここで、3G 、4G、5G の携帯通信規格の細かい差を書いてもキリがないですけれど、現在の規格は、その 2011年の携帯通信規格より格段に「強力」となっています。
日本の総務省の資料を見ますと、2Gサービスが終了したのが 2012年7月、そして、その 2012年頃からは、3Gを超えた 4Gの通信規格も出回り始めています。
つまり「日常で使用している携帯やスマートフォンの放射線が格段に強くなり始めた」のが、先ほどのアメリカでの若年性認知症が急増した 2013年あたりからの時期とわりと一致しているとは言えそうなんです。
そして、時代は次の 5Gです。
これまでとは比較にならない強力な通信規格です。
ちなみに……今さらながらに「携帯の放射線と脳への影響の関係」を気にしている理由としては、今年の春以来、世界の多くの国や地域が、
「ステイホームの概念に包まれている」
ことが関係しています。
家族や知人などと暮らしている人たちならともかく、一人暮らしの人たちの場合は、「パンデミック以前よりも携帯での通話コミュニケーションが飛躍的に多くなっているのではないか」というような気がするのです。
親しい人や恋人同士などなら、メールよりも電話で声を聞きたいと思うことが多いはずで、そして、私はスマートフォンなどの料金事情には詳しくないですが、今は通話に関しては、「どれだけ通話しても無料」みたいなものもあるらしいですので、
「毎日、長時間、スマートフォンを耳に当てて通話している人たちが多いのではないか」
というような気がするのです。
あるいは、ベッドなどで、そのまま顔の横にスマートフォンを置いて眠ることが習慣となっていたり。
現在のスマートフォンの場合、多くは、使用していない時でもアプリなどがバックで作動し続けているので、常に何らかの放射線が出されているはずです。
以前、ドイツの報道メディア DW の「携帯電話は脳を損傷するか?」という記事に、冒頭の「若年性認知症とスマートフォン」の関係を示唆するようないくつかの部分があります。
この記事は大変に長いもので、記事の最初のほうには、科学者たちの回答として「携帯電話の放射線のレベルが人体に直接、悪影響を引き起こすことはない」という主旨が書かれていますが、後半には以下のような研究が示されます。
ドイツ DW「携帯電話は脳を損傷するか?」より
しかし、携帯電話の放射線が脳にまったく影響を与えないという意味ではない。
以前の研究は、携帯電話の放射線が私たちの脳波を変えている可能性があるという証拠を発見している。
そして今、スイスの研究者たちが共同執筆した新しい研究では、携帯電話の使用と「若者の記憶保持への悪影響」との間に関連性があることがわかった。
スイスの研究者たちは、12歳から 17歳までの 700人の青年を対象に研究をした。彼らの日常での電話の習慣を追跡し、彼らに記憶テストを行った。1年間に、参加者たちは携帯電話の習慣についての質問票に記入し、心理的および身体的健康についての質問に答える必要があった。
その後、彼らは一連のコンピュータ化された認知テストをおこなった。
研究者によると、この調査の特徴は、携帯電話事業者からの電話のユーザデータの使用だった。参加者たちが電話をかけるたびに、研究者は「どのネットワークで行われ、どのくらいの期間続いたか」というデータを入手していた。
この研究では、1年分の携帯電話の放射線への曝露が、青年期の特定の脳領域の記憶能力の発達に悪影響を与える可能性があることがわかった。ここでの「曝露」という言葉は、ほとんどの場合、通話を意味する。
研究者は以下のように述べる。
「吸収された放射線の 80%は、電話を頭にかざすことによるものです」
興味深いことに、電話を頭の右側に持ったときに、脳の記憶機能が放射線の悪影響に対してより脆弱であることを発見した。
この部位には、記憶に関連する脳の領域がある。
研究者たちは、携帯電話の使用と認知の両方に影響を与える可能性のある思春期を含む他の要因を除外するために、より多くの研究を行う必要があると強調する。
なお、テキストメッセージ(メール)の送信、写真の撮影、アプリの使用などの通話以外のスマートフォンの用途については、脳への放射線被曝はほとんどなかったという。(DW 2018/10/08)
ということなんですね。
これは 2018年の研究ですから、比較的最近に近いものですが、
「携帯やスマートフォンでの通話を長い期間続けると、若い人たちの《認知能力に悪影響が出る》」
ことがわりとはっきりと示されたようなのです。
このような「携帯通話による認知機能の低下」と、冒頭の「劇的に増え続ける若年性認知症」の関係は明らかではありませんが……いやしかし……多少は関係ありそうですね。
なお、これまでの研究では、携帯の放射線の曝露の影響は「累積的」であることが示されています。
時間と共にどんどん悪影響が「累積」していくということです。
どちらかというと、スマートフォンは、若い人たちのほうが長時間使っているイメージがあり、今後も同じような生活習慣が続きますと、ちょっと近い将来が心配な面もあります。
どこの国や地域でも、まだまだ「無言のステイホーム圧力」は続きそうでして、若い人たちは以前よりも多くの時間をスマートフォンと共に過ごすような気がします。
一般的に言われている対策としては、
・必要以外に使わない
・携帯と物理的距離を置く(放射線の影響は距離と比例することがわかっています)
・車や電車の中で使わない(金属の中では放射線が反射し続けるため)
などがありますが、なかなか難しいところかもしれません。
なお、「電磁波防止シール」というようなものも多岐に発売されていまして、効果があるものなのかどうかはわからないですが(おまじない程度の意味で私と家族も使っていますが)、商品レビューなどを見ますと、プラセボ的な意味も考慮した上で、効果のある人には効果があることもあるようです。
アマゾンで特に数多くのレビューが載せられているものをリンクしておきます。
・WAKARIGO 電磁波防止シール EMR遮断率99.9%
これから 5Gの時代に入っていくとして、若い人や子どもたちに対しては、ある程度のスマートフォンなどの使い方についての注意喚起は必要かもしれないですね。
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