8月17日の米メディアの記事より
スマートフォンを含む「携帯」の体への影響については、これまでにもいろいろと言われてきてはいたように思いますが、このたび、携帯の電波の人体への影響に関して、これまでで最大の研究がおこなわれ、その結果が報告されました。
イタリアの環境毒性や発ガン性についての毒性研究において著名な研究所と、アメリカ保健福祉省の公衆衛生プログラムによる研究(27億円の予算規模)の2つの研究報告により、
「携帯の基地局からの放射には、完全な発ガン性がある」
ことが発表されたのでした。しかも、脳や心臓の「特殊な腫瘍」と関係している可能性が強く示されています。
今回は、そのことをまとめていたアメリカのメディアの記事をご紹介します。
これまでも、携帯やスマートフォンなどの端末からの放射が人体に悪いのではないか、というようなことは言われていたように思いますが、端末本体からの放射はかなり弱いものであるのに比べると、確かに基地局からの放射は強いものであり、研究によると、その影響は予想以上に深刻なようです。
今回ご紹介する記事は比較的長いですので、あまり前振りを書かず本題に入りたいと思いますが、非常に簡単に書けば、現時点ですでに、
「携帯の基地局、あるいはアンテナのある場所の近くにいることにはかなりの懸念がある」
と断言できそうです。
なお、「ガンの外部的要因」に関しましては、昨年 2015年に WHO 世界保健機構が発表した
「ガンの原因となる 116の要因」
について、以下の記事ですべて翻訳してご紹介したことがあります。
・WHOが公式発表した「ガンの原因となる116の要因」を全掲載 ( In Deep 2015/10/31)
私自身は、ガンの発生の「トリガー」そのものは人の内面的なものが強いと感じている人ですけれど、しかし、「要因」という意味では、発ガン性物質は、確かに要因とはなり得るものです。
つまり、「内面的な、あるいは精神的に病気の方向に進みやすい状態」と「外部的な要因(発ガン性物質など)」が結びついた時には、ガンになりやすくなるということは言えるのかもしれません。
とはいっても、ガンになる最大の要因は「加齢」ですから、本来なら、お若い方はこのようなことを気にしなくてもいいのかもしれないですが、しかし、今の時代、「若い人たちのガンが妙に多い」ということもある程度の事実ではあります。ですので、「ガンの最大の要因は加齢」とだけ言っていていい時代なのかどうかはよくわかりません。
もちろん、若い人のガンが増えている要因は決してひとつやふたつの理由などによる単純なものではないでしょうが、それでも、今の社会はも、どこでも携帯や Wi-Fi 等の放射が存在しているわけで、これが「病気の増加とまったく関係ない」とは、少なくとも今回の研究からは「言えない」と考えられます。
というわけで、記事をご紹介したいと思います。
なお、今回、ふたつの別の研究機関から出た報告が同じ内容となったということも話題ですが、その研究機関は、ひとつはイタリアのラマツィーニ研究所という環境毒性の研究では非常に権威のある機関で、もうひとつは、アメリカ政府による「米国国家毒性プログラム」という物々しい名前の研究プログラムです。
下は、ラマツィーニ研究所のウェブサイトを翻訳したものと、米国国家毒性プログラムについての Wikipedia の説明です。
ラマツィーニ研究所
ラマツィーニ研究所の科学的研究は、実験的に環境毒性および発ガンリスクを特定および定量化すること、ならびに腫瘍の発症および進行を予防するために使用するできる薬物および有効成分の有効性および忍容性を評価することを目的とする。
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米国国家毒性プログラム(NTP)とは、アメリカ保健福祉省が中心となり、化学物質の毒物学、分子生物学の研究を行い、毒性物質、特に発がん性物質の、最新の検査・研究手段の開発、試験、分類を行うプログラムである。
アメリカにおいては、発ガン性評価に関して権威の高い調査報告であり、過去に何度もこの報告書に載った物質が法律で規制されている。
そのようなふたつの「発ガン性物質研究の権威」が出した研究報告です。
ここからです。
World’s Largest Study On Cell Tower Radiation Confirms Cancer Link
collective-evolution.com 2018/08/17
携帯基地局の放射に関する世界最大の研究が発ガンとの関係性を確認
イタリアのラマツィーニ研究所(環境毒性と発癌リスクを特定する研究を行う非営利団体)による研究と、アメリカ政府の研究が、それぞれにおいてスマートフォンを含む携帯電話の放射による発ガン性に関しての研究を報告し、それを受けて、科学者たちは、世界保健機構(WHO)国際がん研究機関(IARC)に、携帯電話の放射に関しての発ガン性を再評価することを呼びかけた。
環境毒性の研究で著名なラマッツィーニの研究者たちは、携帯基地局の環境レベルにさらされた実験動物による大規模な生涯研究(実験動物が自然死するまでのすべての経過を観察すること)の結果、携帯基地局レベルの放射はガンの発生を助長させると発表した。
米国国家毒性プログラム(NTP)も 2500万ドル( 27億円)の予算を投じて、同様の研究を行っており、その結果、携帯電話の無線周波数の高いレベルの放射を受けた雄ラットにおいて、心臓のシュワン細胞(末梢神経の構成細胞)由来の稀なガンが発見されたと報告した。
また、ラマツィーニ研究所による携帯基地局の放射においては、雌ラットでの悪性脳腫瘍(グリア細胞由来の腫瘍)の増加、および雄ラットおよび雌ラットの両方でのシュワン細胞肥厚を含む前ガン状態の増加が見出された。
調査結果を報じたイタリアのメディアによる「基地局の放射は非常に稀な腫瘍を引き起こす」という見出しの記事で、ラマツィーニ研究所の代表者であフィオレッラ・ベルポッギ(Fiorella Belpoggi)博士は、以下のように述べている。
「環境レベル(私たちの通常の生活の中での携帯の電波の放射と同じ程度という意味)の携帯の周波数に曝露されたラットのガン性腫瘍の所見は、携帯電話の放射に関する米国国家毒性プログラムの研究結果と一致しており、ラットの脳と心臓の同じタイプの腫瘍が、共に増加したことが報告されました」
「これらの研究は、ともに、WHO 国際がん研究機関(IARC)に、ヒトにおける携帯電波放射の発ガン性に関する結論を再評価、再分類するよう求める十分な証拠を提供しています」
ラマツィーニでの研究は、2448匹のラットたちに、出生前から自然死するまで、1日 19時間の「環境レベル」の放射を携帯基地局から暴露させ続けた。
ラマツィーニは、模擬基地局のアンテナから放射を曝露させたが、その曝露レベルは、米国国家毒性プログラムの携帯電話放射に使用されたレベルよりはるかに低いレベルの放射だった。
毒物学者であり、アメリカ国立衛生研究所の元上科学メンバーだったロナルド・メルニック博士(Ronald Melnick Ph.D)は、このラマツィーニの研究発表を受け、以下のように述べている。
「ラマツィーニの研究で使用された携帯電波の放射への曝露レベルはアメリカ連邦通信委員会(FCC)の規制値以下のレベルでした。つまり、ラマツィーニでの実験で使われた携帯の放射は、連邦通信委員から許容されるレベルなのです」
「言い換えれば、(アメリカでは)人々は、このレベルの携帯基地局の放射は合法だということです。しかし、この法的に許容されるレベルの放射でラマツィーニの実験では、動物たちにガンの増加が見られたのです」
「この研究は、米国国家毒性プログラムの報告の結果とも一致しています。これらの有害な被ばくからアメリカ国民を守るために、政府は規制を強化する必要があると考えます」
また、このふたつの研究報告の後、世界中の著名な医学者たちから、携帯基地局に対しての懸念の声が上がっている。それは以下のようなものだ。
「環境毒性の研究において、世界で最も評価の高い機関の一つであるラマツィーニ研究所によるこの重要な論文は、基地局からの放射が強い懸念となる理由が明らかに示されています」(スペイン・レウス大学の医学部毒性学部教授ホセ・ドミンゴ博士 / Jose Domingo PhD)
「米国国家毒性プログラムの研究結果と、ラマツィーニの研究の内容は、携帯の周波数放射が前庭神経鞘腫および神経膠腫を引き起こし、これがヒトに対しての発ガン性物質に分類されるべきであるという明確な証拠を提供していると思われます」(スウェーデン・エリアブロ大学病院の腫瘍学科の教授であり医師であるレナート・ハルデル / Lennart Hardell MD, PhD)
「携帯電話の無線に発ガン性があることを示す証拠は増え続けており、もはや無視することはできなくなっています」(王立カナダ内科外科大学のエメリトゥス・アンソニー・B・ミラー博士 / Emeritus Anthony B. Miller MD)
「この研究は、基地局の近くに暮らしているというだけで、健康に脅威が与えられるという懸念を提起しています。各国の政府は、基地局の出力レベルを削減するための措置を講じる必要があると思われます。また、基地局を、学校や病院の近くには設置しない、あるいは住宅の近くへの設置もよろしくないと考えられます」(米国オールバニー大学の公衆衛生学校の教授デヴィッド・O・カーペンター博士 / David O. Carpenter MD)
また、カーペンター博士は以下のようにも述べた。
「公衆衛生当局は、携帯電話やスマートフォン、学校の Wi-Fi など、無線ラジオ波のあらゆる放射源からの被ばくを減らす方法を一般市民に教える必要があるのではないでしょうか」
「現在、(アメリカでは)全国のあらゆる通りの 300メートルごとに小さな 5Gの携帯基地局を配置するという計画があり、そのためにこれは特に緊急な案件です。これらの 5Gの「小型の携帯基地局」アンテナでも、近くに住む人たちは全員、そして、通りを歩いている人々も継続的に暴露されることになります。基地局からの電波による被ばくの増加は、ガンや電気過敏症などの他の疾患のリスクを増加させることになるでしょう」
ラマツィーニ研究所の科学者たちは、これまで、200種類以上の化合物について約 500件の発ガン性についてのバイオアッセイ(生物学的試験)を完了しており、その研究の方法は、遅発性腫瘍の検出を可能にするために、動物が自然死するまで生きさせるという点で独特といえる。
すべてのヒトのガンの 80%が 60歳以降に発生する後発性だが、自然死するまでの長い観察期間をとることにより、ラマツィーニ研究所は、多数の化学物質について後発性腫瘍を検出することが可能となった。これまで公開された研究には、ベンゼン、キシレン、マンゼブ、ホルムアルデヒドおよび塩化ビニールの研究が含まれている。
なお、現在のアメリカ連邦通信委員会の携帯基地局に対しての規制は、20年前に設定されたものだ。
当時は、携帯電話での平均通信時間が 6分間だった。携帯での通信料金がとても高額であり、携帯での通信そのものが現在よりはるかにわずかしか使われていない時代だった。
その基準が現在も使われているわけで、この携帯基地局の基準は、子どもたちや妊娠中の女性や胎児を保護するものになっていないと指摘する医学者たちは多い。
今回のふたつの結果を受けて、環境保健信託は、アメリカのカリフォルニア州、コネチカット州、メリーランド州、そして、フランス、イスラエル、ベルギーの公衆衛生専門家と連携して、政府および民間部門に公衆衛生教育を実施するよう求めた。
安全な携帯電話機や端末の技術を促進するためのキャンペーン、屋内外の環境で携帯電波の放射 /マイクロ波放射への曝露を減らすためのハードウェアとソフトウェアの基本的な変更を要求し、また、それを迅速化し、解決策や将来の問題を特定するための主要なモニタリングを行うことにより関連する危険性とリスクの防止に乗り出そうとしている。
なお、中国、イタリア、インド、ロシアなどの国では、アメリカ連邦通信委員会と比較して、はるかに厳格な携帯基地局の放射規制が実施されている。しかし、この研究は、それらの国においても、政府がさらなる行動を取るべきであるという科学的証拠を提供している。