干上がった北部タイ最大の貯水地に座り込む農村の男性
・NBC
極めて広範囲で進行し続ける巨大な干ばつ
3月の始め頃、
・歴史的な大干ばつの時代に突入していることを「進行する7つの干ばつ」で知った3月3日…
2016/03/05
という記事を書いたことがありました。
その記事では、以下のような国と地域の干ばつをご紹介しました。
[エチオピアの干ばつ]
- 過去数十年で最悪の干ばつで1020万人が影響を受けている
- その中で 40万人以上の子どもたちが限界の飢餓に直面している
[パプアニューギニアの干ばつ]
- 過去数十年で最悪の干ばつ
- パプアニューギニア全域で飢餓などによる死者が出ているという報告(真偽不明)
[インド・マハーラーシュトラ州の干ばつ]
- 過去最悪級の干ばつ
- 約 15,000の村(州にある村の 35%)が干ばつの影響を受けている
- 主要ダムの水位は 6.5%にまで低下
[モロッコの干ばつ]
- 全土の半分以上の小麦畑が全滅。そして、さらに畑の破壊が進んでいる
- 国王が、国民に対して「雨が降るように祈りなさい」と呼びかける事態に
[ハワイの干ばつ]
- 今年1月の降水量は通常の 50%以下で、地域によっては、平年の 10%しか降っていない
- 予測では今後も雨は望めず、次の雨期シーズンは 10月
[スワジランドの干ばつ]
- 2014年から始まった干ばつがエルニーニョでさらに激化
- 農業での作物収穫量は通常の 10%以下と推測され、牛などの動物も次々死んでいる
それから2か月弱経ちましたが、上の地域で劇的に干ばつ状況が改善したところは、おそらく「ない」と思います。
インドなどを始めとして、むしろ悪化している地域が多いはずです。
そして、それから現在の4月の終わりとなり、世界の干ばつの国と地域はさらに拡大して、何よりも、どの国や地域も、普通ではない「極端な干ばつ」になってしまっているのです。
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史上最悪級の干ばつが相次ぐ世界
最近ひどい干ばつや水不足が伝えられている国や地域は、
・タイ
・ベトナム
・フィリピン
・ミャンマー
・インド(州が拡大)
・ベネズエラ
・ニカラグア
・パラオ
・北朝鮮
などで、先ほどの国や地域に、これらが加わることで、世界の非常に多くの地域が干ばつに苦しめられていることが明確になってきています。
ブラジルなど、それ以前から干ばつが継続している地域もたくさんあり、また、干ばつによるものだけではないですが、アメリカなどでも農業地区が広範囲にダメージを受け続けていまして、そして、さらにここまで干ばつの状況が拡大しますと、さすがに世界の食糧供給にも影響が出てくるものとなるかもしれません。
上のそれぞれの地域の状況をご紹介しようと思いますが、最も厄介なことは、上のほとんどの国が「これから夏を迎える」ということです。
夏の前には、たとえば、日本の梅雨とか、インドのモンスーンなど、雨が多く降る季節がやって来る場合があるわけですが、今は、「最強エルニーニョ」と、そして、おそらく発生する「最強ラニーニャ」によって、それらの雨の季節が正常に来るのかどうなのかわからない面もあります。
ところで、先日の、
・自然災害は予想以上の驚異的な勢いで地球の文明を崩壊させ続けている…
2016/04/20
という記事に、西暦 1900年から 2015年までの自然災害による世界の経済的損失のグラフを載せたのですが、それをよく見ますと、
「干ばつというのは、1950年代頃に突然現れた災害」
であることがわかるのです。
下のグラフは、ドイツ・カールスルーエ工科大学の「世界の自然災害に起因する社会経済的損失」に関してのデータベースをグラフにしたもので、「黒」が干ばつによる経済的損失です。
1900年から 2015年までの自然災害での経済的損失の推移
ちなみに、グラフの「青」は洪水ですが、それも増えていまして、
・この 30年間くらいの世界は、「洪水も増えていて、干ばつも増えている」
ということもわかったりいたします。
干ばつも洪水もどちらも、「農地」を徹底的に荒廃させるものですが、人間の文明がどれだけ進んだとしても、「人はものを食べて生きている」ということが変わっていくことはないはずで、そして、食べ物は、これもどれだけ文明が進んでも、基本的には「自然環境」でしか作ることができません。
工場内の野菜生産とか、人為的に作る食肉とか、そういうものがなくはなくても、多くの人の食の粮にはなり得ません。
そして、その「食べ物」の出現にストップをかける災害が、干ばつであり、洪水でもあります。そういう意味では、非常に大きな災害だとも思います。
そして、本当に今のペースで世界中に干ばつが拡大していったとしたら、少なくとも食べ物に関しては、いつまでも格安だ、デフレだと言い続けていられないことになるのかもしれません。
たとえば、手頃なものとしてある「砂糖」ですが、干ばつの影響で、砂糖生産量が、2014年から 2015年にかけて、ついに需要に供給が追いつかないレベルに低下したことが、GIZMODOに記されていました。つまり、現状ですでに砂糖は世界で「足りていない」のです。
そのため、砂糖の卸売価格は 2016年になってから 9.6%上昇し、2014年以降最も高い価格で推移しているのだとか。
サトウキビの生産上位5位は、ブラジル、インド、中国、タイ、パキスタンとなっていますが、このほとんどが干ばつの影響を受けていますので、今後さらに砂糖の価格はどうにかなっていくかもしれません。
では、先ほどの各地の干ばつの状況などを簡潔にご紹介します。
いろいろな意味で、最も悲惨な状態になっているのは、おそらくインドの農家の人々で、今年になってから、干ばつで農業が立ち行かなくなり、200人以上の人々が自殺しています。
そのインドの干ばつからご紹介します。
世界の広範囲で猛威を振るう壮絶な干ばつ
インド - 同国史上でも最悪級の干ばつが全土に広がりつつある
インドは、今年に入って以来、いくつかの州だけで干ばつとなっていたのですが、ここに来て、すさまじい猛暑に見舞われています。インドの熱波に関しては、
・インドの熱波は未知の領域「48.5℃」へ突入
地球ブログ 2016/04/27
などに記していますが、多くの州で 45℃などを越えていて、もちろん雨などまったく降らない状態のようでして、これでは干ばつが改善する理由がなく、悪化していく一方のようです。
最新の報道によれば、以下のような状態になっているようです。
- インドで干ばつの影響を受けているのは3億3千万人
- 900万人の農家の人々が、水が尽きたか、もうすぐ尽きる
- 今年になって、少なくとも 216人の農業主が自殺している
- 水不足は病院にも及んでいて、医師が治療や手術で水を使えなくなっている病院も
- 飲料水がないために閉鎖した学校も出てきている
そして、インドに雨季(モンスーン)がやって来るのは、通常だと6月くらいですから、この状況は、まだしばらく続くと考えられるのです。
タイ、ベトナム、ミャンマー、フィリピン - 大河を中心に過去数十年で最悪の干ばつ
タイをはじめとした東南アジアも、もともと干ばつが続いていた国や地域を含めて、さらに激しくなっています。
報道(Thaivisa、Business Insider)によれば、以下のような状態です。
- タイは数十年来で最悪の干ばつで、27州で災害地区宣言
- ベトナムやミャンマーも同様に過去数十年で最悪級の干ばつ
- 共通しているのは、前例がないほど雨が少ないことと、前例のないほど気温が高いこと
- 本格的な雨は今後もしばらく見込めない
- フィリピン、マレーシア、インドネシアも干ばつ状態
- フィリピンでは政府の干ばつ対策に抗議する農家の人々のデモに、武装警官が発砲し負傷者が出る事態なども発生(報道)
ベネズエラ - 深刻な水不足で1日4時間の計画停電。そして食糧不足も
深刻な水不足と、そして経済危機が共に襲っているベネズエラは、水力発電をおこなっているのですが、あまりにも水が少なくなったために、電力供給がおぼつかなくなり、毎日、計画停電を強いられています。
CNN の報道から抜粋します。
ベネズエラ、不況と停電の二重苦 国民「生きていけない」
CNN 2016/04/27
冷蔵庫の中の食品は傷み、電子レンジもテレビもステレオも使えない――。南米ベネズエラ政府が慢性的な電力不足に対応するため全土で始めた計画停電の影響で、国民がそんな生活を強いられている。首都カラカス郊外に住むグスタボ・ディアスさんは「こんな生活は続けられない」と憤りをあらわにした。ベネズエラ政府は21日、全土で1日4時間の計画停電を次週から少なくとも40日間実施すると発表した。「計画停電は先月から始まっていて、これまでは午前中と午後に2時間ずつの停電だったが、今度は4時間連続の停電になった」とディアスさんは言う。
政府は停電の理由として、エルニーニョ現象や干ばつの影響で、ベネズエラの電力の75%を賄うダムの水位が過去最低を記録したと説明する。原油安による景気の悪化で砂糖や小麦粉、卵といった生活必需品は輸入しにくくなり、市民はスーパーマーケットで買い物をするために何時間も行列に並ぶ。それでも買えるかどうかは分からない。
国際通貨基金(IMF)によると、ベネズエラの昨年の景気は5.7%縮小し、今年はさらに8%の後退が見込まれる。インフレ率は急騰し、今年はさらに500%高騰する見通しだ。
ベネズエラは今年「 500パーセント」のインフレに見舞われる予測だとのことで、しかも、水も電気も少ない状況というで、国民の皆さんは本当に大変な状況になっているわけですけれど、しかし、日本がいつか同じような状況にならないか、というと何とも言えない面もあります。
南米では、他にブラジルやニカラグアの干ばつも報道されていますが、この状況ですと、南米の比較的広い範囲で、程度の大小はあっても、干ばつが起きていることが予測されます。
最後に北朝鮮です。
北朝鮮の食料状況もかなり悪くなっているようなのですが、やはり不穏なお隣さんということで、食糧事情が荒廃し人心が荒れてきますと、いろいろと周辺国にとっては気がかりではあります。
北朝鮮 - 2年連続の干ばつにより国民の半分近くが栄養失調状態
・朝鮮日報
北朝鮮は、昨年、「過去 100年で最悪」とされた干ばつに見舞われましたが、今年もまた干ばつが発生しているようです。
昨年の北朝鮮の干ばつは、
・北朝鮮で「過去100年で最悪の干ばつ」が進行・拡大していることが判明
2015/06/18
などに記したことがあります。
今年の北朝鮮の食料状況については、国連食糧農業機関(FAO)の 4月28日の発表に関係した報道などによれば、下のようになっています。
- 北朝鮮の今年の食糧不足は69万4000トンで、2012年以来の深刻な状況
- 北朝鮮当局が30万トンを輸入したとしても、39万4000トン足りない
- 住民の41パーセントが栄養失調の状態
そんな中でも、北朝鮮当局は、「北朝鮮 韓国大統領府の攻撃を想定した演習準備 」という状態だったり、あるいは、先日の、
・北朝鮮の超巨大火山「白頭山」が目覚める公算が大きくなる中、マグマ溜まりが極限かもしれないアメリカのイエローストーンにも新たな異変
2016/04/19
に書きました白頭山に何かあった場合は、もういろいろと本当に大変なことにはなりそうですが、しかし、この白頭山の活動が活発化していることは事実です。
今年2月に、
・すべてが波乱と変動の要素に : エルニーニョからラニーニャへのバトンタッチ…
2016/02/13
という記事に、このタイトルにあります通り、「気候の異変があらゆる波乱と変動の要素になる可能性」などを書いたのですが、今起きている大規模かつ極端な干ばつは、社会変動にまでつながりかねないほどのものではあります。
いろいろと「近い未来」は大変になりそうな感じもないではないですが、すべては変化のための激動というように捉えて乗り切っていきたいところです。