2017年4月13日の宇宙科学メディアCOSMOSの報道
・Asteroid near-miss a once in 900 year event
小惑星2014 JO25の地球最接近時の軌道
・NASA / JPL
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4月19日に、近年では非常に珍しい「小惑星イベント」が発生します。
それは、その日、最大で直径 800メートルほどある「 2014 JO25 」という名前の小惑星が地球に最接近するのですが、その接近距離が、そま規模の小惑星の接近距離として近年ないほど近いと計算されたのです。
その希少性は、上のコスモスの記事に「 900年に 1度の事象」とありますが、この意味は、今より以前に、これほどの大きさの小惑星が同じくらいの距離に接近したのは今から 400年前と考えられ、また(現在の天体観測からの推測として)この小惑星 2014 JO25 が通過した後は、次はこのような事象は 500年間はないということから来ていまするようです(実際には、さすがにもう少しあると思いますが)。
これについては、日本でも報じられていましたので、AFP の記事から一部抜粋してご紹介します。全文お読みになりたい場合はリンクからどうぞ。
なお、この記事には小惑星の大きさは 650 メートルとありますが、NASA ジェット推進研究所のデータには 825 メートルとあります。
巨大小惑星「2014-JO25」、今月19日に地球に最接近
AFP 2017/04/15
今月19日、猛スピードで太陽の周りを回っている巨大な小惑星が不安を感じさせるほどの至近距離まで地球に接近する。
小惑星「2014-JO25」は直径約650メートル。米航空宇宙局(NASA)は、「地球に衝突する可能性はないものの、この大きさの小惑星としてはかなり地球に接近する」としている。
2014-JO25は、地球から180万キロの距離を通過する見通し。これは地球から月までの距離の5倍近くに相当する。
このように報道されていました。
巨大小惑星衝突の際に起きる真実
この小惑星 2014 JO25 の地球への接近距離は、近いといっても、軌道が計算通りならば、地球から 180万キロメートルもあり、「絶対に」地球に衝突するような可能性はありません。
まあ、何らかの理由で軌道がおかしくなったりするようなことがあれば、その限りではないのかもしれないですが、基本的には「この小惑星は絶対に衝突はしない」ということを前提として、今回の記事を書きたいと思います。
その今回の記事というのは、昨年読んで以来、いつかご紹介したいと思っていたものでもありまして、
「巨大な小惑星が地球の海に衝突した時に実際に起きること」
がスーパーコンピュータでのシミュレーションで明らかとなったという記事で、それをご紹介したいと思います。
これは少し前の報道ですが、実際に巨大小惑星が近づくというような時にご紹介したほうが臨場感もあっていいのかなと思い続けていて、ついに巨大な小惑星が地球に近づいてくれる運びとなりまして、めでたくご紹介できることになりました。
これは、巨大な小惑星が「海に落ちた時」の状況をスーパーコンピュータでシミュレーシュンした結果についてのものですが、地球は 70%が海ですので、小惑星も海に衝突する可能性のほうが高いわけで、その際に「おそらく起きるだろう」と思われることです。
これは、私たちが曖昧に考えていた「津波」などとは別の状況が示されていて(もちろん津波は起こるでしょうが)、それ以外の様々な影響があることが示されているのです。簡単にいえば、「大気圏に大量の海の水蒸気が立ち昇り、気象状況が大変なことになる」ことを示しているのです。
津波などの懸念に加えて、「経験したことのないような気象状態になる可能性」があるのでした。
シミュレーションをおこなったのは、アメリカのロスアラモス国立研究所で、ここは、もともとの設立目的は、Wikipedia から抜粋しますと、
第二次世界大戦中の1943年に、マンハッタン計画の中で原子爆弾の開発を目的として創設されたアメリカの国立研究機関
というもので、要するに世界で最初に原爆を作った研究所でもあり、まあ、今現在のご時世にもやや関係しているかもしれません。
ちなみに、今回の話とはまったく関係ないことですが、このロスアラモス国立研究所が原爆実験を行った「ロスアラモス核実験場」は、原爆を落とされた長崎と同じ緯度の北緯 33度線上にあります。
というわけで、ここから記事です。
Here's What Would Happen If a Giant Asteroid Struck the Ocean
Gizmodo 2017/12/14
巨大な小惑星が海に衝突した場合、実際には何が起きるのか
地球の表面の 70%は水で覆われている。つまり、もし、不幸にも、私たちの時代に巨大な小惑星の地球への衝突があった場合、それは海を直撃する可能性が非常に高い。
アメリカのロスアラモス国立研究所のデータ科学者によるチームは最近、小惑星が地球の海洋に衝突した場合に起こることをモデル化することを決定した。
それは、黙示録的なテーマの研究であるにもかかわらず、その結果はかなり美しいイメージを描いた。
ロスアラモス研究所のガレン・ギスラー(Galen Gisler)博士と同僚たちは、スーパーコンピュータを使って、極めて高速に移動しながら宇宙からやってくる小惑星の運動エネルギーが、地球に衝突した際に、どのように海に伝わるかを視覚化していった。
2016年12月のアメリカ地球物理連合(GMA)の会合で発表したこの結果は、ハリウッド映画『ディープ・インパクト』のような災害映画を見ていた人たちには驚くべきものだった。
小惑星の衝突はポイントソース(その発生源が明確なこと)であり、そのポイントソースによって生成された海洋の波が「急速に消滅する」ことがわかった。
そして、ほとんどの巨大小惑星の海への衝突において、最も懸念されるものは「水蒸気」であることがわかったのだ。
研究を率いたギスラー博士は、以下のように言う。
「小惑星の洋への衝突で最も大きな影響を及ぼすのは、衝突によって、海から立ち昇った水蒸気が、高層の成層圏の大気中に注入され、気候に影響を与える可能性があることがわかったのです
ギスラー博士のチームは、直径 250メートルの小惑星が衝突するシミュレーションをおこなったが、それによれば、小惑星は非常に高温となり、その高温により最大で 2億 5000万トンの海水が蒸発する可能性がある。
蒸発した海からの水蒸気は、大気に壁のように立ち昇り、それは高層の対流圏に突き当たり、その水蒸気らより、かなり速くに雨が降る。水蒸気は、成層圏に至るまで、しばらく対流圏にとどまる可能性がある。
これは有力な温室効果ガスとなるため、気候に大きな影響を与える可能性がある。
もちろん、すべての小惑星がそのようになるわけではなく、私たちの太陽系の近辺では、小さなサイズの天体(隕石、小さな小惑星など)が一般的で、それらは仮に地球に衝突しても、大気中で爆発する傾向があり、海や地上にまで達しない。
しかし、空中で爆発しないサイズのものが海に衝突した際には、以上のような影響があらわれる。
それでも、全体的にいえば、海への小惑星の衝突は、陸地に衝突するよりは、人間にとっては危険が少ないとギスラー博士は言う。
しかし、ひとつの大きな例外としては、海岸線の近くの海洋に小惑星が衝突した場合だ。人口の多い海岸に近い海域での衝撃や空中での空爆は非常に危険だ。
その場合、世に氾濫するB級の災害パニック映画のような津波が沿岸の都市を襲う可能性がある。
ここまでです。
なお、「巨大小惑星の海洋への衝突」の場合の「津波」のシミュレーションについては、日本惑星学会の 2013年の資料に詳しいシミュレーション結果が掲載されていますので、下のリンクからご参照下さい。
・海洋への隕石落下に伴う津波リスク評価
日本惑星学会 2013年9月14日
この資料を見ますと、たとえば、日本周辺を例にしたシミュレーションですと、「直径 500メートルの天体が水深 5000メートルの海域に衝突した場合」は、下のような感じで津波が発生すると予測されるようです。
この位置に巨大な天体が衝突した場合は、日本の本州沿岸は、おおむね 30メートル前後までの津波の可能性があるということのようです。
そして、それにプラスして、さきほどの「膨大な量の水蒸気の大気への混入」により気象が大変な状態になる可能性があるようで(この気象の異常が、局地的なものか、地球的なものになるかはよくわかりません)、どちらにしても、巨大な小惑星の衝突は、そこが海であっても地上であっても、初代の林家三平さん風にいえば、
「もう大変なんすから」
という事態にはなるようです。
というわけで、まあ、こういう事態は今後何百年も何千年も何万年も来ないのかもしれないですし、近いうちにすぐに来るのかもしれないですし、そのあたりはわかりようがないですが、ただ最近は、地球にかなり近い場所を通過する小惑星がとても多く発見されていて、最近では、
・小惑星2017GMが、地球近傍天体として今年最も地球から近い地点を通過したことが判明。これで2017年に月より内側を通過した小惑星は15個目
地球の記録 2017/04/05
という記事などでご紹介したことがありますが、地球のかなり近くを通っていく小惑星がとても多く観測されている年だという感じはあります。
それらは今は小さな小惑星ばかりですが、そういうのにまじって大きいのも少しは来るのかもしれないですね。