皆既月食とたわむれるギリシャ神話のアポロン神(7月27日 アテネ)
世界の山火事の現状を伝える7月28日のアメリカの報道より
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「赤い月」と「赤い太陽」
前回の記事では、7月27日の皆既月食は「 21世紀で最も長い時間」となる月食だということなどにふれました。これは、今世紀に入ってからこれまで、ということではなく、次の 22世紀までは、このように長い時間の月食は観測されることはないということになります。
そんな 2018年の皆既月食は、観測できる国や地域が非常に多かったため、世界各地で観測、撮影されていました。
冒頭の写真は、ギリシャの首都アテネで撮影されたもので、ギリシャ神話の神アポロンが「血のような月を手にしている」シーンです。
この場所では以下のような写真も撮影されていました。
左がアポロン神で、右にいらっしゃるのは、やはりギリシャ神話に登場する最高位の女神へーラー神です。
赤い月で遊ぶアポロン神とへーラー神
わりと、ふたりともつまらなそうな表情で「血のような月」を投げ合っているわけですが、この場所がアテネというのが何とも切ない部分もあります。
アテネ近郊で発生したヨーロッパ史上最悪の山火事は、現在までに 80名以上の方が亡くなっていて、その渦中に「洪水も発生した」というようなことが起きたのは2日ほど前のことですから、「神様たちが血の月で遊んでいる」という構図もあまり微笑ましく見られない部分もあるかもしれません。
アテネの洪水については、以下の記事で取りあげています。
先日の記事でも、この月食が、「世界で北アメリカでだけ観測できない」と書きましたけれど、これは厳密ではないとはいえ、観測できた地域とできない地域は下のようになっていました。
「黒いエリア」が、まったく月食を観測できなかったエリアです。
7月27日の皆既月食を観測できた地域とできなかった地域
北米のアメリカとカナダは、全土で今回の皆既月食を観測できなかったことがわかります。
そんなアメリカでは、赤い月は見られなかったのですが、皆既月食の翌日、
「赤い太陽」
が多くの人たちに見られていました。
下の写真がその様相です。
7月28日に米国カリフォルニア州各地で目撃された「赤い太陽」
「どうしてこんなに赤いのか」ということについては、以下の報道で取りあげられている事象によるものです。
カリフォルニア州各地で山火事 500棟焼け3万人避難
朝日新聞デジタル 2018/07/28
米西部カリフォルニア州で大規模な山火事が相次ぎ、これまでに消防士計3人が死亡した。州政府などによると、約2万ヘクタールが焼け、建物約500棟が焼失し、住民約3万人が避難した。27日現在でも、州内約20カ所で火災が起きているという。
カリフォルニア州の 20カ所以上で森林火災が発生していて、そのうちの三つの大きな森林火災については拡大が激しく、カリフォルニア州全土に非常事態が宣言されています。
現在はその対応が州からアメリカ連邦緊急事態管理庁(FEMA)にも及んでいるようです。
この火災によって、「カリフォルニアの太陽が真っ赤になった」のでした。
これほど地球規模の森林火災の発生は人類文明史上で初めての出来事
この「山火事」については、先日の以下の記事でも、「水の災害」と「火の災害」が世界中で交互にあらわれていることをとりあげたことがあります。
まるで聖書の世界のように災害だらけの世界…… : 日本の豪雨災害の後から世界で発生し続ける史上最悪級の「火」と「水」の厄災の様相
この記事では、スウェーデンの国家の歴史で前例のない大規模災害となっている山火事などを取りあげましたが、その後、北欧のすほべての国、ドイツ、スペイン等でも大規模な森林火災が発生しています。
今回は、今の山火事について、簡潔に説明している冒頭のアメリカの記事をご紹介して締めさせていただこうと思いますが、記事そのものの内容は目新しいものではないのですが、
> これほど世界の多くの場所で同時に大きな山火事が発生することは珍しい。
という表現があったことによります。
珍しいというか、おそらくですが、文明が生まれてからの時代において、
「これほど地球規模で山火事が発生したのは、これが初めてのことではないか」
と考えられます。
なお、今年……というより、今月だけで、以下の地域で、大規模な山火事が発生しています。
2018年7月に大規模な森林火災が発生した国や地域
・ギリシャ
・ロシア
・スウェーデン
・フィンランド
・ノルウェー
・ラトヴィア
・イタリア
・スペイン
・ドイツ
・米国アリゾナ州
・米国コロラド州
・米国アイダホ州
・米国オレゴン州
・米国カリフォルニア州
共通するのは、「北半球の《主要国》」だということです。
そして、今の気温の状況を見ていると、フランスやイギリス、デンマークなども同じような高温と乾燥に覆われていますので、いつ大規模な山火事が発生しても不思議ではありません。
それなのに、上に挙げた国では「洪水などの水の災害も以前よりはるかに増えている」というのが、今の時代の特徴です。
こうなった理由は単純ではないでしょうけれど、しかし、今後も継続していくであろうことも疑いの余地がありません。
数年前に思っていた以上に「早いペース」で世界は変わってきています。
その「変化」も、かなり合理的な考え方に基づいたとしても、今後も継続あるいは拡大していくと思われます。
ということで、世界的な山火事の増加に関してのハフィントンポストの記事です。
Fire, Fire Everywhere: The 2018 Global Wildfire Season Is Already Disastrous
huffingtonpost.com 2018/07/28
世界中がどこもかしこも炎に包まれている : 2018年の世界的な山火事シーズンはすでに悲惨な状態に
猛暑と干ばつは森林地帯を延焼のための燃料に変えており、そして強風が炎を扇動し続ける。
今週、ギリシャのアテネ近くにあるマティ島のリゾート地を大規模な山火事が襲った。リゾート地の家もホテルも焼き尽くされ、現在までに 80人以上が亡くなっている。
ギリシャの山火事は、2018年の現在までで最悪の人的被害となった森林火災被害であったが、北半球の山火事のシーズンが 6月から 10月だということと、現在のシベリアから地中海、そして東アジアから北アメリカまでを覆い尽くしている熱波の状況を合わせて考えてみると、今後も、より多くの山火事による災害発生は避けられないと思われる。
アメリカでは、すでに、アリゾナ州、コロラド州、アイダホ州、オレゴン州で 4百万エーカー近くの面積が今年、山火事により燃えており、米国国立防災センターによると、これは年間平均を約 10%上回っている。
カリフォルニア州の森林火災では非常事態宣言が出されており、人々はヨセミテ国立公園から避難しなければならなかった。
スウェーデンは、推定 3万ヘクタールの森林を山火事で失い、他にもラトヴィア、イタリア、フィンランド、ノルウェーのすべてが煙に包まれている。
2018年のこのシーズンの山火事の発生状況は劇的なものであり、これほど世界の多くの場所で同時に大きな山火事が発生することは珍しい。
2015年にはインドネシアで大規模な山火事が起きた。2016年にはカナダとスペイン、2017年にはチリとポルトガルで壊滅的な森林火災が起きた。2010年と 2016年には、ロシアで 1,100平方マイル以上の森林が破壊される森林火災が起きている。
欧州環境機関(EEA)の 2016年の報告書によると、地中海諸国では猛暑が増え、降水量が減少したことにより、森林火災が増えているという。ヨーロッパの森林火災情報システムによると、今年のヨーロッパでの火災の発生件数は平均で40%も増加した。
オーストラリア・タスマニア大学の環境変化生物学の教授デヴィッド・ボウマン(David Bowman)氏は、深刻な山火事は人間の行動の変化と、地球の変化の両方に起因するとして、以下のように述べる。
「成長する都市、不十分な都市計画、定期的な熱波、そして、より多くの人々が森林に近づき、可燃性のある風景と自然が近づくことで、火災の多い世界が創り出されたと考えられます」
これらの要因の上に、気候変動の壊滅的な影響がある。
これまで森林火災は地域的な事象として見られていたが、今後は、地球規模の現象として見られていくようになるはずだ。
米コロラド大学の火災学者、タニア・ショーナゲル(Tania Schoennagel)氏は、以下のように言う。
「より大きな森林火災の危機が近づいています。アメリカは、今よりさらに大きな被害、そして退避が必要となる事態と直面しているのです」