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環太平洋火山帯の驚異的な地震の連続の中で「しかしこれが懸念すべき地震の時代ではない」という意味…… : ローマ帝国時代に40日間強震が続き人口の70%が死亡した終末の地震を考える

投稿日:2017年9月22日 更新日:

9月22日の米国Voxより

Vox

メキシコでM7.1の地震があった同じ日の世界でのM5以上の地震
USGS




 

地震がとても多くなっていまして、特にメキシコでマグニチュード 7.1の地震があった日には、日本、ニュージーランド、パプアニューギニアなどで、マグニチュード 6以上の地震が発生し、メキシコ以外の地震では被害はなかったとはいえ、急激に中規模から大規模クラスの地震が集中したことに驚いたものでした。

日本の 9月19日の地震は、震源が 2011年の東北の地震と近い場所だったこともあり、海外でもわりと報じられていました。

しかしですね。

私は常々、「文明を消滅させるほどの地震というものは、実は現代史では経験していないのではないか」ということは思っていました。

2011年の日本の地震も含め、過去数十年数百年などで非常に大きな地震がたびたび地球を襲い、そのたびに、とても大きな人的被害と経済的な被害を人類は受けてきましたが、世界で最も地震が多い国のひとつであることは間違いない日本にしても、「地震で国が滅びたこと」は「ない」です。

日本が有史(歴史時代)に入ったのが6世紀頃とすれば、それから「1度も日本は地震で滅びていない」ことは文献で明らかだと思われます。事実上、(国家のシステムが)滅んだことがあるとすれば、第二次世界大戦によってでしょうか。

その理由としては「大地震」というものが一般的には稀な事象だからということはあります。

地震発生と地震発生の間にはかなりの年月があるのが普通で、起きる際にも、一般的には1度の大きな揺れがあった後、余震が続きながらも地震は次第に収まっていき、収まった後は場合によっては何十年も何百年もそのような大きな地震がその場所には起きない。

だからこそ、地震の頻発する場所にも文明は存続できます。

しかし、次のような文献にある記述の「状態」が実際に訪れるとすれば、どう思われますか?

これは、エドワード・ギボンという 18世紀のイギリスの歴史家が記した『ローマ帝国衰亡史』という大著の中にある下りで、6世紀のローマ帝国の崩壊についての話の一部です。

エドワード・ギボン『ローマ帝国の衰退と滅亡』 第四十三章より

毎日地震が繰り返されたこの頃、コンスタンチノープルでは四〇日間も揺れが続いた。このことは地球全体に、少なくともローマ帝国全体に伝えられた。

振動が伝わり、大きなひび割れができ、放電が起き、海は前進と後退を繰り返し、山は裂け、アンチオクでは二五万人が死んだと言われる。

コンスタンチノープルとは、現在のイスタンブールのことですが、地震が起きること自体が珍しいイスタンブールで、

> 四〇日間も揺れが続いた。

そして、

> 二五万人が死んだと言われる。

というようなことになったそうなのです。

その地震の規模は、この、

> 大きなひび割れができ、放電が起き、海は前進と後退を繰り返し、山は裂け

という表現の状態から考えますと、マグニチュード 6以下くらいの地震で起きるとは思えず、何かこう「とんでもない地震」が、1500〜1600年前くらいのイスタンブールあたりでは起きていたらしいのです。

そして、その後どうなったかというと、

「ローマ帝国は崩壊した」

のでした。

ローマの帝国の崩壊に関しては、いろいろな議論があるようですが、ローマ帝国の研究の一人者でもあるエドワード・ギボンはこのように、その理由のひとつに「地震」を挙げたのでした。

この『ローマ帝国の衰退と滅亡』 という本は、私自身読んだことがなく、では、どうして知ったかといいますと、フレッド・ホイル博士の名著『生命はどこからきたか』 に引用があったのです。
これは「天体衝突の時代」の話の中にあったもので、過去記事、

良い時代と悪い時代(2): 天上の神々の地位
 2012/10/07

の後半にその部分を抜粋していますので、ご参考いただければ幸いです。

ホイル博士は、この地震の原因を、巨大な天体の衝突により地殻に圧力がかかったことによるものではないかと考えていたようですが、それを確証する手立てはありません。

たしかし、原因は何であれ、

「 40日間にもわたって強い揺れが続いた地震」

「 25万人が死亡した」

というような地震災害でこそ「文明は滅びる」と思いたった次第なんです。

逆にいうと、そういう「地震の時代」が来るまでは大丈夫だと。

つまり、今のような地震の時代は、個別の被害は甚大で、そこに悲劇も経済的な困難も伴うにしても、「国家が滅亡することはない」ということです。どこのどんな国でも。

逆にいえば、当時のコンスタンティノープルのような状態に陥れば、「どんな大国でも滅びる」のかもしれません。

ちなみに、イスタンブールの当時の人口がどのくらいかと調べてみますと、世界史における大都市人口の変遷というページに、

西暦622年 コンスタンティノープル 人口35万人

とありました。

エドワード・ギボンの書いたことと照らし合わせますと、「人口 35万人のうちの 25万人が 40日間揺れた地震で死亡した」と。

人口の約7割が亡くなったということになるのかもしれません。

東京でいえば、1300万人中の 950万人が亡くなるという比率でしょうか。

「確かに、こういう災害なら国も滅んじゃうよなあ」

としみじみ思いました。

そもそも、イスタンブールというのは、環太平洋火山帯でもない場所で、本来なら地震事態が滅多に起きない場所です。

地球というのは「地震が起きる場所はおおかた決まっている」のです。

下は、「環太平洋火山帯」と呼ばれる地帯と、最近の地震の発生状況です。

環太平洋火山帯と地震の最近の発生分布

Wikipedia, USGS

地震はそのほとんどが環太平洋火山帯で起きているということがおわかりかと思います。

メキシコの場所も環太平洋火山帯ですし、その日、M6の地震が起きた日本もニュージーランドもパプアニューギニアもそうです。火山がたち並ぶカムチャッカもインドネシアもそうです。巨大な地震が懸念されているアメリカ西海岸も環太平洋火山帯です。

このように、ほとんどの地震はこの地域で起きますが、しかし、ローマ帝国時代のイスタンブールのような「イレギュラーな事象」も、時代によって頻発していたのかもしれません。

今後の私たちの文明の存続というのは、こういう6世紀のローマ帝国のようなイレギュラーの時代を迎えることがあるのかどうかということもポイントだと思いますが、それはもう「後からしかわからない」ものかもしれません。

ただ、実は、今は、

「大きな地震が発生する間隔が次第に短くなっている時代」

だということはいえます。

これは今回は具体的な数字や表組みをする時間はないのですが、日本においてもそうです。

それは、地震の年表などをご覧になっても、歴史に残る大地震や被害の大きかった地震の発生する「間隔」が次第に早いサイクルになっていることにお気づきになられるかと思います。

そういう意味では、確かに今は「地震の時代」ではあるのですけれど、メディアなどでよくいわれる「脅威」の意味とは「少し違う」地震の脅威の時代に突入するかどうかというのが鍵なのかもしれません。

つまり、人口の70%を 40日間で消し去るような、そういう地震の時代。そこにいつか突入するのかしないのか。

そんな時代は直近で来ないとは思いますが、じゃあ絶対に来ないのかといわれると、それはわからないです。

冒頭に、アメリカのメディアの「次の大地震はどこに来るかは予想できるかもしれないが、いつ来るのかはわからない」というタイトルの記事を貼りました。

これは現時点での地震の科学の意味では事実ですが、しかし現実に今の時代が示しているのは、単発の大地震の発生の問題ではなく、

「今の私たちはどういう地震の時代に入ろうとしているのか」

ということであり、私たちはそこに思いを巡らすことが必要なのかもしれません。

数千年とか数十万年とかの時間のサイクルでの変化は気づきにくいものですが、そういう時代には「いつのまにか」入っているもののような気がします。

 

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