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2019年からの世界 人類の未来 健康の真実

子ども時代に虐待や育児放棄を受けた人の成人後の自殺リスクが「最大で5倍」となることが英国での研究で判明。しかし世界中で児童虐待は激増中

投稿日:2019年1月10日 更新日:

2019年1月9日の英マンチェスター大学のニュースリリース


manchester.ac.uk




 

今回ご紹介させていただこうと思うのは、英国マンチェスター大学などによる研究で、その内容は、

「子どもの頃に虐待を受けていた人たちは、大人になってからの自殺企図のリスクが非常に高くなる」

ということがはっきりとわかったというものです。

子どもの頃に虐待、あるいは育児放棄を受けた人たちが、精神的な傷を負い続けるというのは当然のことではあるのでしょうけれど、今回のこの研究は、「それが、成人後の自殺率の増加と関係している」ということが初めて明確に突き止められたという部分で注目されています。

数値は本文に示されていますけれど、肉体的虐待、精神的虐待、性的虐待を受けていた場合で、それぞれ大人になってから 2倍から 3倍のリスクの増加となっていることがわかりました。

さらに、それらを複合的に受けていた場合は、「 5倍」という非常に高いリスク度になっていることも発表されています。

これは、世界中の児童虐待に関する研究論文を精査したものであり、「主要国全体に当てはまる数値」と言えるかと思われます。

まあ、このような論文をご紹介しようと思ったのも、たとえば、日本の児童虐待に関してのグラフなどを見ると、かなりすさまじいことになっているというようなことなどもあります。

下のグラフは、1990年以降の児童虐待の相談件数の推移です。


todo-ran.com

これは相談件数の推移であり、必ずしも児童虐待の数そのものと同じではないかもしれないですが、しかし、おおむね児童虐待の数自体もこのようなグラフを描いていると考えられる部分はあります。

このことに関して、過去に書いた記事などもありますが、まずは、マンチェスター大学のニュースリリースをご紹介します。


Child abuse linked to risk of suicide in later life
manchester.ac.uk 2019/01/09

児童虐待は後の人生の自殺リスクと関連する

児童虐待と大人になってからの自殺企図との関連について過去最大となる研究が行われ、その研究報告がなされた。調査は、英国のマンチェスター大学とサウスウェールズ大学の心理学者たちによって行われた。

この報告によると、身体的虐待(暴力)、性的虐待、そして、精神的な虐待や育児放棄(ネグレクト)を経験した子どもたちは、その後の人生で自殺を試みる可能性が少なくとも 2倍から 3倍高くなっていたことがわかった。

心理学者たちによる過去の 68の研究論文の分析は、子どもの頃の虐待と、その後の自殺企図の関係が以下の通りであることを明らかにした。

・子どもの時に性的虐待を経験した人は自殺企図のリスクが 3倍に

・子どもの時に身体的虐待を経験したことのある人は 2.5倍に

・精神的虐待または育児放棄を経験した人々は 2.5倍に

また、医学専門誌「サイコロジカル・メディスン(Psychological Medicine / 心理医学)」で発表された研究では、複数の虐待を経験した子どもたちは、自殺を試みる率が通常よりも 5倍も高いことがわかった。

そして、子どもの頃に虐待を受けた人々は、年をとるにつれて、自殺企図の危険性が高まっていることも判明した。その場合、メンタルヘルスの臨床医とコンタクトをとっていない人々が最もリスク度が高いと判断された。

研究者のひとりであるマンチェスター大学のマリア・パナギオティ博士(Dr Maria Panagioti)は、以下のように述べる。

「この研究は、子どもの頃に虐待や育児放棄を受けた人々は、成人になってから自殺企図のリスクに苛まれる可能性が高まるということについての確固たる証拠を示しています」

精査された 68件の世界中の研究論文では、18歳以上の成人約 26万2000人が、子ども時代の虐待や育児放棄にさらされていた。

このパナギオッティ博士は、以下のように述べている。

「ほぼ 3人に 1人の成人が子ども時代に虐待を受けていました」

さらに、博士はこのように続けた。

「そして、これは医療にも重要な意味を持つことでもあります。たとえば、アメリカでは、児童虐待に関わる経済的負担が約 1,240億ドル(13兆円)と推定されることが他の研究で示されているのです」

自殺行動を持つ人々のための現在の治療法は、通常は、認知行動療法を中心としている。しかし、これは、その人々が自ら助けを求めることを前提としている。

つまり、自殺行動を持つ人々で医師の管理下にない人々は、非常に大きなリスクにさらされていることが明らかとなっている。

研究者たちは、子どもの頃の虐待や育児放棄と成長して大人になった後の自殺行動との関連を明らかにしたが、この研究が、そのような人たちを助けるためのアプローチを考えていくきっかけになればいいと語る。


 

ここまでです。

日本の児童虐待の推移は、先ほど示させていただきましたが、世界的にはどのようになっているかといいますと、主要国では、やはり急激に増加している可能性が高いと思われます。

下は、児童虐待とは違いますが、英国の 2004年から 2016年までの18歳未満の子どもたちの性的被害の件数の推移です。


nspcc.org.uk

日本の児童虐待数もですけれど、この英国のグラフも 2013年頃から急激に増加しているのが気になります。この 2013年という年は何なのでしょうかね……。

なお、昨年、アメリカで発表された研究で「虐待を受けた子どもの細胞は、DNA レベルで変化する」ことが判明したことが発表されたことがありました。

こちらの記事でご紹介しています。

子どもに対しての虐待は、その子どもに「DNAレベルの変化」を引き起こすことが国際的研究で示される。…それがもし「人類全体の遺伝子」として受け継がれていくのなら…人類は結局滅亡するかも…

そこでご紹介した AFP の記事には、

> 精神的、身体的、性的な虐待を受けたことのある男性の DNA の 12の領域に、トラウマによる影響の痕跡が残されていることが分かった。

とありまして、「虐待の経験は、人を遺伝子レベルで根本的に変えてしまう」らしいのです。

それはおそらくは良い変化でないはずです。

しかも、この研究の被験者の方々は、みなさん成人でした。ということは、

「子どもの頃の遺伝子の変化が、おそらく一生そのまま残る」

という可能性が高いのです。

今回ご紹介している内容である「虐待の経験のある子どもは、成人になってから突出した自殺リスクを持つ」ということも、この DNA の変化と関係がないとも言えないかもしれません。

この「 DNA の変化」に関しては、「良い変化」について記事にしたこともありました。以下の記事です。

赤ちゃんは「抱っこ」など肉体的接触を数多くされるほど「DNAが良い方向に変貌する」ことをカナダの研究者たちが突き止める。その影響は「その人の健康を一生左右する」可能性も

これは、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学が発表した研究で、簡単に書きますと、

親にたくさん抱っこされた赤ちゃんは、DNA が生物学的に優位になっていることがわかった

というものでした。

抱っこというか、「親との接触の時間の差が、DNA の生物学的な優劣と比例している」ことがわかったのです。

つまりは、赤ちゃんは、親と接触している時間が長ければ長いほど「生物学的に優秀な DNA に変化していく」ということです。

そして、この研究では、「そのような DNA の変化は、その人の一生の健康と関係するだろう」という可能性にもふれていました。

 

そういうことから考えますと、今の世の中の傾向として、

子どもへのさまざまな虐待が増加している

という現状があるとした場合、社会的な将来の問題として、それは、

自殺を考える大人が増える

健康ではない(DNAが悪い変化を起こしたという意味)大人たちが多くなる

ということにつながっていくのだと思われます。

子どもたちへの虐待が減少するだけで、このようなことに起因する社会の問題も少しは減るはずだというあたりが問題の根幹なのかもしれません。

 

とはいえ……良いほうに変化していく可能性については、どうなんでしょうかね。

今の社会の状況では、それは難しいと考えざるを得ません。

わりと以前の記事ですけれど、以下のようなタイトルのものを書いたことがありました。

革命的行動の最上位は「子どもたちへの無条件の愛」を獲得した社会に戻すこと
 In Deep 2015年07月12日

この記事では、明治期に日本に滞在した外国人たちが見た「日本の風景」をいろいろと書いているのですけれど、たとえば、1877年(明治10年)に、日本にやってきて、東大の教授などをつとめたエドワード・S・モースという人の以下の言葉が、大体 100年以上前の日本を物語っていると思います。

世界中で日本ほど、子どもが親切に取り扱われ、そして子どものために深い注意が払われる国はない。

ほんの 100年前までは、そういう国だったんですけどねえ。

120年くらい前の江戸のおとっつぁん

・逝きし世の面影

この、明治期の外国人たちから見た日本の風景は、渡辺京二さんの『逝きし世の面影』に詳細に書かれています。今となっては羨ましいばかりの日本の光景が、外国人たちの著作からの資料の引用と共に描かれている名著です。

何はともあれ、100年かかって今のように変化してきた日本ですけれど、じゃあ、また 100年あれば、その時のように戻れるのかというと、それはまた険しいことだとも感じます。

社会が変化するのは仕方ないこととしても、今の社会は、肉親も他人も含めた人間関係というもの自体が変わってしまいました。

その中でも、本来なら「親子関係」という関係のあり方は不変なもののはずだったのに、その関係さえ変化してしまって、虐待やそれに類した状態は増え続けるばかり。

そして、この状態は先ほど書きましたように、結局、社会全体の不安定さにつながっていくことになりそうです。
 

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