米国「アメリカ海洋大気庁」(以下、NOAA)は、毎月、その前月の地球の気温や気象に関する多くのデータを提供してくれています。
それは地球の気象の状況を知る上でとても役に立ち、利用できることに感謝させていただいていますが、たまに「?」と思うこともあります。
たとえば、以下は、数日前に発表された「 2018年2月の地球の陸地部分の気温の平年差」です。「平均気温と比べてその月の気温はどうだったか」ということを示すもので、赤くなればなるほど平年より高く、青いほど平年より低いことを示します。
NOAAが発表した2018年2月の平年との気温の差異(グレーの部分はデータ欠損)
・NOAA
これを見て一目瞭然なのが、このデータに最も多い部分は「赤」でも「青」でもない「灰色(グレー)」となっていることがわかります。このグレーの部分は、図の説明によれば、「データが欠損しているエリア」とあります。
この説明、何だかどうも変なのです。そのことに気づいて、少し作業をしました。
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先ほどご紹介しました NOAA の気温平年差のデータの何が奇妙かといいますと、そもそも、長いこと全地球観測システムを持っている NOAA の最新のデータが、こんなにデータ欠損のエリアばかりということ自体が変なのですけれど、それはともかく、
「実際には欠損部分のデータは存在している」
のです。
これは秘密的な話ではなく、NOAA の毎月の気象データには何種類もの項目があり、上の図はその中の「陸地だけの気温平年差のデータ」です。
そして、同時に発表されている同じ NOAA のデータに、「海洋と陸地の気温差のデータ」があるのですが、ここには先ほどの欠落部分のデータがすべてあるのです。
下の図です。
2018年2月の陸地と海洋の平年との気温の差異
・NOAA
北極や南極の一部にデータの欠損がある他は、ほぼすべての気温の差異のデータがここには揃っていることがわかります。
では、なぜ、陸地のデータでは、その部分を「データ欠損」というように表記するのか。
・・・という理由は、まあわかりません。
わかりませんけれど、「データは欠損しているわけではなく、調べれば存在している」ということから、陸地のデータを復元できることに気づきました。
そこで、NOAA の「陸地と海洋のデータ」の陸地部分をピックアップして、図の陸地部分を置き換えて修正しますと、以下のようになりました。上下にも並んでいるうちの下のほうが修正したものです。
データ欠落部分を補正した図と並べたもの
これを見ますと、特に、北半球の気温差が、「平年より低いエリアが多い」ことを示していることに気づきます。
北半球の2018年2月の平年との気温差
また、北米と東アジアなどで「平年以上の低い気温が広がっている」ことも、何となくわかります。
北米の2018年2月の平年との気温差
東アジアと日本周辺の2018年2月の平年との気温差
これを見ますと、日本の今年2月は全域が平年より気温が低かったようです。
なお、NOAA の過去データを見ますと、2012年までは陸地のデータも欠損していないのですけれど、それ以降は、このような「欠損エリアのほうが多い」状態で公表されることになっています。
なぜ、陸地のデータを「データの欠損エリアだらけ」という形で発表しているのかは正直よくわかりません。
おそらくは、地上での気温測定の統一した方法か何かがあって、それが全世界的に揃っていない・・・ということなのでしょうかね。しかし、衛星での観測なら、そういう理由は当てはまらないですし、謎は謎です。
あるいは、陰謀論的にいえば、NOAA は地球温暖化説を支持しているために、逆行するデータが出てくるとまずいというようなことかとも思いましたが・・・まあ、そんなことはないでしょうけれど。
ただ、それはともかくとして、今回のデータを見て改めて思うことは、そこからは別の側面も見てとれるということです。
それは、
「地球の海の温度がますます高くなっている」
ということなんです。
先ほどの今年の 2月の「陸地と海洋の気温平年差」のデータを見ても、おわかりになると思いますけれど、非常に広いエリアの海域が平年よりかなり高い気温となっているのです。
この状態は 2014年に海水温度の世界平均が過去最高を記録して以来ずっと進行しています。
2014年7月までの世界の海水温度の推移
そして現在は、今年 2月のように「陸地の気温は下がっても、海は下がらない」ということになっているようです。
これに関しては、以下のような記事で何度か取りあげたことがありました。
陸地の気温がどうであろうと、海水の温度が高いうちは、まずは「気象が荒れることは避けられない」ということがあります。
これは、たとえば、台風やハリケーンの発生の「第一の条件」が高い海水温度であることなどでもおわかりかと思います。
また、エルニーニョ(南方振動)などを含む「振動」という名のつく気象に影響する状態は、ほぼすべてが「海水温度の異常な差異からくる」もので、つまり、海水温度の変動の激しさは、気象そのものが「安定しない」ことと直結する可能性が高いのです。
あるいは、海水温度が高くなるような変化が著しい場合、生態系そのものへの影響がありますから、現在続いているサンゴ礁の消滅などの壊滅的な現象や、漁業への深刻な影響もさらに続く可能性が高いです。
なお、これは科学的な一般認識ではないですが、海水温度が高くなり続ける理由を「海底火山の活動が活溌化しているため」と主張する説が存在します。それは以下の記事でふれたことがあります。
気候はどこまで荒れるのか…… : 「超モンスター級」エルニーニョの出現の現実化。そして、ペルーの科学者は、「エルニーニョは海底火山の活動が原因で、それは惑星と太陽からの影響に起因している」と語った
気象や気温に関しては、全世界的に懸念するようなことが多いですが、まあしかし、直近の日本に限っていえば、4月の前半くらいまでは、しばらくは穏やかな日々(というか、場合によっては夏のようになるかもしれませんが)が続きそうですので、そういう時は穏やかに過ごしたいものだと思います。
初夏を過ぎれば、また世界各地で大荒れに荒れる気象の日々がやってくるであろうことは、今の気温と海水温の状況からは、そう考えざるを得ない感じでもありますし。
それにしても、NOAA の妙な「データ欠損の気温図」がなければ、こんなことを考えることもなかったでしょうし、考えさせてくれたということでは、あらためて NOAA に感謝したいと思います。