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ウイルス受容体の解析から、すべての人種の中で「新型コロナウイルスに感染するリスクが最も高いのは日本人である」という結果が示された科学論文が発表される

投稿日:2020年2月24日 更新日:


biorxiv.org




 

科学者が発表した論文を巡る騒動

発表されてから、それなりの日数が経過しているのですが、BioRxiv という科学論文の公開サイトにおいて、研究の結果として、

「新型コロナウイルスに感染するリスクが最も高いのは、日本人と中国人」

とする内容の論文が投稿されました。この BioRxiv というのは「プレプリント」と呼ばれる公開の場で、学術雑誌に論文として掲載されることを目的に書かれた原稿を、査読前に科学者たちと共有する場であり、まだ正式な論文と認められたものではないです。

この BioRxiv に投稿された論文としては、インド工科大学の科学者たちが「新型コロナウイルスに、エイズウイルスと同じタンパク質が挿入している」という内容の論文を投稿したことを以下の記事で取りあげたことがあります。

新型コロナウイルスに「HIV (エイズウイルス)」のタンパク質が挿入されていることをインド工科大学の科学者たちが発見。さらに「感染しても免疫を獲得できない示唆」を中国当局が示し、事態は新たな局面に

その後、この科学者たちは、論文を撤回しました。ですので、上の記事でご紹介した論文は正式には医学論文として発表されなかったことになります。

今回ご紹介するものも、あくまで予備調査というのものとしてお考えいただきたいですが、中国人科学者たちが、新型コロナウイルスの「人種別の感染リスク」に関しての調査発表をおこなったというものです。以下が論文です。

Single-cell RNA expression profiling of ACE2, the putative receptor of Wuhan 2019-nCov
 (武漢 2019-nCov の推定受容体である ACE2 の単一細胞 RNA 発現プロファイリング)

このことを知ったのは、国際的な旅行サイトにおいてでした。


eturbonews.com

どうして、旅行サイトが学術論文のことなどに言及しているのかというと、「旅行業界と観光業界は今、大変な時期にある」からのようで、新型コロナウイルスについての状況を詳細に報じ続けているようです。

そうでしょうね。本当に旅行業界や観光業界は大変だと思います。これほど死活問題となったことがあったただろうかというレベルかもしれないです。

この旅行サイトの記事をご紹介しようと思うのですが、少し予備知識がないと、よくわからない可能性がありますので、少し先にご説明させていただきます。

私も最初は、記事と論文を読んで、「どうやったら、人種によって感染リスクが違うなんてことを導くことができるの?」と、訳がわからなかったのですが、これは「ウイルスの感染メカニズムと関係する」話でした。

私は、ウイルスはどんなものでも同じように細胞が受容して感染するものだと思っていたのですが、ウイルスの種類により「受容する受容体が異なる」らしいのです。

たとえば、一般論として、「どのようにウイルスが感染するか」ということについては、欧州在住の伝染病研究者である董宇紅氏という女性科学者が、エポックタイムズの取材の中で語った以下のフレーズがわかりやすいと思います。

人がウイルスに感染するメカニズム

ウイルスと言うのは寄生体で、宿主の細胞に寄生してはじめて生きられます。新型コロナウイルスの場合、どのようにして宿主の細胞に入ったのでしょうか。これは、受容体と呼ばれるヒトの細胞のタンパク質がこのウイルスの表面にあるタンパク質と結合しなければならないということになるのです。

新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質が「鍵」であるなら、ヒトの細胞の表面にある受容体は「錠」です。受容体がウイルスのタンパク質と結合した後、受容体を持つ細胞には食作用が起きます。つまり、細胞が細胞外にある物質を取り込むエンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を取り込む過程の 1つ)が発生するのです。

これによって、ウイルスが宿主の細胞に侵入するのに成功したと言えます。ここから、ウイルスは宿主の細胞の構造とタンパク質や酵素を利用して、自身の生命活動と増殖を始めるのです。

ここでは、

・コロナウイルスの表面にあるタンパク質が「鍵(カギ)」

・ヒトの細胞の表面にある受容体は「錠(カギ穴)」

というように例えられています。たとえば、どなたでも家や部屋の鍵を持っていると思いますが、「その鍵は、自分の部屋のドアにだけ使える」のが普通です。

他の家のどんなものでもそのカギで開けられるわけではなく、「ひとつのカギ穴」に「ひとつのカギ」が対応しているということになります。

ウイルスの場合も、それぞれの種類のウイルスに、細胞の表面に突起しているタンパク質の受容体と「合う」「合わない」があり、「合った場合」に、

「細胞はウイルスを自らに取り込む」

ということのようなのです。

この過程の興味深いのは、正確には、ウイルスは「細胞に侵入しているわけではない」ということで、細胞のほうが「ウイルスを自らの中に招き入れている」のです。このあたりは、フレッド・ホイル博士の主張を思い出して感慨深いものがありますが、こでは話が外れたものになりますので、関連した過去記事過去記事1過去記事2をリンクさせていただくに留めて、話を進めます。

新型コロナウイルスの場合、多くの研究が進められる中で、以下のようなことがわかっています。製薬企業のコスモ・バイオさんのページからの抜粋です。

コロナウイルスのスパイク (S) 糖タンパク質には、宿主細胞の特定の受容体にのみ結合する突起があります。

2019-nCoV は、ヒトACE2受容体を介してヒト呼吸上皮細胞に感染すると報告されています。cosmobio.co.jp

ここに、

> ヒト ACE2 受容体を介してヒト呼吸上皮細胞に感染する

とありますが、この「 ACE 2」という酵素と、新型コロナウイルスが「合う」のです。

新型コロナウイルスが細胞の受容体ACE2と出会う時

cosmobio.co.jp

こうして「合うカギとカギ穴」が出会うことにより、ウイルスは細胞に入りこみ…というより、「細胞が自らウイルスを招き入れる」のです。

このメカニズムから考えますと、

「ウイルスのカギと合うカギ穴をたくさん持つほど感染しやすい」

ということが言えるのだと理解します。

新型コロナウイルスの場合は、その受容体が ACE2 というものですので、この ACE2 というものが「多く発現すればするほど感染しやすい」ということになると思われます。

おそらく現在開発されている予防薬なり治療薬には、この「コロナウイルスの ACE2 への受容をブロックする」ものが含まれていると思われます。以下は、米ジョンズ・ホプキンス病院・病理学科の研究者たちによる「 ACE2への受容をブロックする生物学的製剤」を説明したイラストです。


・Johns Hopkins

しかし、普通の状況では、このように阻害はされず、コロナウイルスは ACE2 と出会い、細胞はウイルスを招き入れることになります。

今回ご紹介する中国人科学者たちの研究は、

「この ACE2 の発現が、人種によって違う」

ことをサンプルから見出し、そこから「人種による感染リスクの違い」を導き出したものです。

なお、その中では、ACE2 の発現が最も顕著なのは、「日本人」だと示されています。というか、東アジア人が総じて高いのです。

ですので、この研究が正しければ、「新型コロナウイルスに感染するリスクが最も高いのは日本人男性」ということになるようです。

もちろん、この論文は精査前のものであり、さまざまな異論や反論が出ていますが、それについては、記事をご紹介したあとに少しふれます。

では、ここから、その旅行サイトの記事です。

 


アジア人、アフリカ人、白人に対する新型コロナウイルスのリスクの高低が明らかに。感染するリスクが最も高いのは日本人と中国人

Coronavirus risk for Asians, Africans, Caucasians revealed
eturbonews.com 2020/02/10

あなたがコロナウイルスに感染するリスクはどの程度か

研究により、コロナウイルスに感染する可能性が最も高いのは東アジア人で、特に、日本人、および中国人は、ウイルスに曝露した場合、90%以上の感染の可能性がある。

ヨーロッパ人は 50%、アフリカ人は 60%の範囲でランク付けされ、低から中程度と見なされている。ただ、これは喫煙者か非喫煙者かによって違いが生じる。

新型コロナウイルスの流行の影響で、旅行と観光産業は混乱している。観光関係者は、このパニックの継続を望んでいないが、影響はまだ終わりそうにない。同時に、世界中の研究者たちは 24時間体制で、新型ウイルスについてさらに解析を続けているが、最近発表された研究では、新型コロナウイルスが、なぜ、ヨーロッパとアメリカでは致命的な感染拡大にならず、また、アフリカでも感染が拡大していないかが説明されている。

 

なぜそう説明できるのか

新型コロナウイルス(COVID-19)は、2019年12月に中国の湖北省武漢で特定された。そして、中国で数万人に致命的な発症を引き起こした。

この新型コロナウイルスは、受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との関係なおいて、SARS と共有すると報告された。

これは、公開されたデータベースと最新の細胞 RNA の解析技術、正常なヒトの肺における ACE2 RNA の発現プロファイルに基づいている。その結果は、ACE2 ウイルス受容体の発現が、II型肺胞細胞(AT2)の小さな集団に集中していることを示している。

研究により、この ACE2 を発現する AT2 集団は、驚くべきことに、ウイルスの繁殖と伝播を積極的に調節する他の多くの遺伝子も高度に発現させていることが見出された。

8つの個々のサンプルの比較により、東アジア人男性のサンプルでは、肺に非常に多くの ACE2 発現細胞が存在することが示された。これは、中国人科学者が、Bio Rxiv に発表した。これは査読されていない予備調査であることに留意されてほしい。

新型コロナウイルスは、ACE2 受容体と呼ばれるものとのの何らかの接続を介して人体に入るようだ。その ACE2 は、東アジア人男性が最も多く持っており、そして白人のヨーロッパ人と女性はそれより発現が少ない。

つまり、東アジア人男性が最も高い感染リスクを持ち、白人やアフリカ人では感染リスクが低いということになる。

この調査によると、ウイルスに感染するリスクは出身地ごとに次のとおりとなる。

高リスク 90%-99%
・日本人 92%
・中国人(中国南部) 92%
・ベトナム人 91%

やや高いリスク 80%-89%

(該当人種なし)

中程度のリスク 70%-79%
・ペルー人 78%
・インド人 75%
・一般的な南アジア人 72%

中程度のリスク 60%-69%
・米国の先住民 68%
・一般的なアフリカ人 62%
・英国の白人 61%

やや低いリスク 50%-59%
・フィンランド人 57%
・スペイン人 56%
・米国の一般的な白人 53%
・イタリア人 51%


 

ここまでです。

これが発表された科学メデイアは、多くの研究者たちなどが、評価したり意見を述べたりする場でして、この論文にもたくさんの意見や議論が起きています。

意見を投稿している多くが専門家ですので、内容は難しいですが、まず「反論」としての要点としては、以下のようなものがあります。

サンプル数が少ないため、このデータだけで人種間に ACE2 の発現の差があるということはできない。人種間よりも、個人間の発現の違いを考慮すべきではないか。他の解析では、 ACE2 の発現に人種間の差もなければ、男女の差もない。

 

ACE2 の発現は、血圧の高低と関係しているので、血圧の考察がなされていない点でこのデータは間違っている。また、 ACE2 関連遺伝子が人種間で差異がないのだから、人種間で ACE2 の発現に差異があるというのはおかしい。

その一方で、以下のような意見もあります。

サンプル数が少ない場合でも、少なくとも性別と感染リスクの相関関係は有用な情報になる。たとえば、 SARS や MERS では、どちらも女性よりも男性に大きな影響を与えた。

私自身は、ACE2 の発現に関しては「人種の違いよりも、個人差が大きいのではないか」と考えますが、もっと大規模な調査をして、人種によって ACE 2の発現が異なるということがはっきりしたならば、「新型コロナウイルスに感染しやすい人種と、感染しにくい人種がある」ということもあり得るのかもしれません。

ただ、皮肉なのは、この研究において、全人種の中で「最も感染リスクが低い」とされているイタリアで爆発的な感染拡大が起きているということもあり、いろいろと一概には言えないのかも知れません。

それでも現実として、中国と韓国と日本という東アジアの人種において特に爆発的な感染拡大が起きていることは事実でもあります。韓国などは、宗教施設から拡大という特殊な要因はあったにしても、「感染確認者数が 1週間で 25倍」という無制御気味な増加を示しています。


zerohedge.com

こんな指数関数的な感染拡大を目の当たりにすると、「やっぱり東アジア人は感染しやすいのかな」と思わざるを得ない部分もないではないですが、それでも、やはり「 ACE2の発現の差異は個人の違いの問題」と考えたいところではあります。

 

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