2019年10月17日のアメリカの科学メディアの報道より
・sciencealert.com
遠い国の話だと思っていたエボラウイルスが、今、オカ某氏のお隣に
かつて「オーケストラがやってきた」という、音楽家の山本直純さんが司会をされていた番組がありました。子どもの頃、あのテーマ曲を聴く度に「狂気に陥った巨大な白ウサギに追いかけられる悪夢」に襲われ、うなされたものでしたが、久しぶりに、あの歌詞とメロディが頭の中に流れました。
しかし、今回やってきたのはオーケストラではなく、エボラ出血熱でした。
私は全然知らなかったのですが、日本は、エボラ出血熱などの非常に危険な病原体5種類を研究の目的で輸入していたのですね。
それらは、病原体の危険度をあらわす「バイオセーフティーレベル (BSL)」での最高ランクの「 4」の病原体たちであり、日本にこのタイプの致死的な病原体が持ち込まれるのは、これが初めてのこととなります。
まずは、冒頭の報道を翻訳してご紹介します。記事の中に、日本人の方々の言葉が出て来るのですが、英語の記事を訳したものですので、実際に、日本語で話された言葉とは違う言い回しである可能性がありますので、そこはご了承下さい。
ここからです。
Japan Imports Ebola And Other Deadly Pathogens in The Lead-Up to Tokyo Olympics
sciencealert.com 2019/10/17
日本はエボラ出血熱やその他の致死的な各種の病原体を東京オリンピックに向けて輸入していた
2020年7月に、日本で東京オリンピックが開催される。それに伴い、海外から大量の観光客が日本に到着する見込みだが、やって来る多くの人たちは、外国人の訪問の準備のために、日本が、ある特別なものを輸入したことを知らないはずだ。
それはエボラ出血熱ウイルスだ。
2020年の東京オリンピックに際しての海外からの観光客の流入によってアウトブレイク(感染症の発生)が引き起こされる可能性のある病原体について、日本の科学者たちがその場合に事前に対策できるように、複数の致死的な病原体の感染性ウイルスが先月、日本に持ち込まれた。
輸入したのは、日本の厚生労働省下にある国立感染症研究所(NIID)で、輸入された病原体ウイルスは、エボラ出血熱、そして、クリミアコンゴ出血熱、南米出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱などと、全部で 5種類のウイルス性出血熱の原因となる病原体を輸入した。
これらのウイルスはどれも非常に致死率が高く、バイオセーフティレベル(生物学的病原体の危険度レベル)で最高ランクの「 4」に相当する極めて危険な病原体だが、日本がこれらの病原体ウイルスを国内に入れるのは、初めてであり、過去に経験がない。
国立感染症研究所でも、これらの危険な病原体を受け入れたのはこれが初めてだ。
ウイルスを研究する日本の研究者たちにとっては、非常に困難な病原体を調査し、日本の科学・医学部門の能力を実証する前例のない機会ともいえる。
国立感染症研究所のウイルス第1部門の部長である西條政幸氏は、科学ネイチャーに以下のように語っている。
「これは歴史的な瞬間であり、私たちにとって歴史的な出来事なのです」
輸入された病原体は、東京の西部にある武蔵村山地区の国立感染症研究所の施設に搬入されたが、この地区の地元の人たちの反応は、当然ながら複雑だ。
日本が、これらの危険なウイルスの輸入を正式に決定したのは、今年 7月のことだった。その際、当時の日本の厚生労働大臣である根本匠氏は、武蔵村山当局の承認を得たと発表している。
根本大臣は、当時、以下のように述べた。
「我々はこの問題について十分なレベルの地元の理解を得ました。今回の輸入措置は、オリンピックに向けた疾病の保護と安全対策に関しての大きな前進です」
しかし、武蔵村山市の市長である藤野勝氏は、国立感染症研究所の新しいウイルス研究プログラムそのものは承認したかもしれないが、武蔵村山のすべての住民たちが、エボラ・ウイルスが地元に持ち込まれることに満足しているわけではないと述べている。
また、住民たちは、病原体を封じ込める手順等が、何らかの形で失敗した場合に、感染症のアウトブレイクが発生することに懸念を持っている。
武蔵村山市の住民代表は、昨年 11月、日本の朝日新聞に対して、「東京オリンピックのために、そのような危険なウイルスの持ち込みを受け入れろと言われても、それが理に適っているとは思いません」と述べている。
「私たち住民は心配しており、この話を受け入れることはできません」
これらの懸念にもかかわらず、計画は進行し、病原体ウイルスは、輸入された。
国立感染症研究所は、東京オリンピックがすぐそこに近づいているために、これらの病原体を研究しないリスクのほうが、病原体をコントロールできなくなるリスクを上回っていると説明する。
国立感染症研究所の西條氏は、以下のようにメディアに語った。
「これらの感染症は、日本での発生はこれまでありませんでしたが、東京で 2020年にオリンピックが開催され、海外から、これらのウイルスのどれかが日本国内に持ち込まれるリスクが高くなっているのです」
ここまでです。
いやまあ、研究のために輸入するのはいいとしてですね、私は、一応こう、何というか時事といいますか、そういうようなニュース的なことを、わりと日々ご紹介しているのですけれど、
「全然知らなかった」
のです。このアメリカの報道を見るまで知らなかったのです。
バイオセーフティーレベル4の病原体ですし、もう少し話題になってもいいもののような気はするのですけれど。
日本の報道を見てみますと、9月に、日経新聞が「エボラウイルスを輸入 感染研、検査体制強化」という短い記事で報じていたことを今日知りました。
それと、東京都の武蔵村山市の市政に関するウェブサイトに、以下のような情報が、9月27日に投稿されていました。
特定一種病原体等の受入れについて
令和元年9月26日夜、加藤厚生労働大臣から藤野市長に対し、国立感染症研究所村山庁舎が一種病原体を所持するに至ったとの電話連絡がありました。
また、本日、国立感染症研究所から以下のとおり情報提供がありましたので、お知らせします。
情報提供内容
令和元年7月5日付で、特定一種病原体等所持者である国立感染症研究所が、特定一種病原体等であって外国から調達する必要があるものとして輸入するウィルスを厚生労働大臣より指定されたところですが、今般、国立感染症研究所は、次に掲げるウィルスを外国より受入れ、所持したことを報告します。
・南米出血熱ウィルス
・ラッサウィルス
・エボラウィルス
・クリミア・コンゴ出血熱ウィルス
・マールブルグウィルス
あと、やはり武蔵村山市のこちらのページでは、これらのウイルスの持ち込みに対しての質疑応答などが記されていますが、まだ協議中であった段階のようで、「輸入を強行した」ような感じもしないでもないです。
そして、それと共にですね。
このニュースに私が反応したことには理由があります。
近いんですよ。私の住んでいる場所とエボラ・ウイルスが運び込まれた国立感染症研究所の武蔵村山の施設が。
地図で測ってみましたら、直線距離で、ほんの 10キロほどでした(苦笑)。
エボラ出血熱などというものは遠く離れたアフリカの地で活動している者たちであり、極東のこの日本の関東の、
「まさかすぐお隣にいらっしゃるとは」
という驚きはありますね。
かつてエボラ出血熱の記事は何度も書きましたが、「そんなに好きなら、そちらに」ということで、エボラがやってきたということなのかもしれません。
それはともかく、「そんなことが起きていたんだ」と知りました。
しかし、通常の状態でしたら、国立感染症研究所のバイオセーフティー施設の封じ込め能力は完ぺきだと思います。
・・・けれど、ほんの数日前に、台風19号の甚大な水害を見たばかりでありまして、そして、日本は「地震大国」であるということもあります。
現在の自然災害の規模は「想定できないレベル」のものが増加しているわけで、仮にそういうものに襲われた場合は「大丈夫なのなのだろうか」という思いは、少しだけあります。
たとえば、少し前に、ロシアでは以下のような出来事がありました。
エボラや天然痘も ウイルス保管施設で爆発
AFP 2019/09/18
ロシアのシベリア地方にある、旧ソ連時代に生物兵器施設として使用されていた建物で爆発が発生し、火災が起きた。この施設には、エボラ出血熱と天然痘ウイルスの試料が保管されているが、当局は汚染の恐れはないとしている。
ロシア消費者権利保護・福祉監督庁によると、ガスボンベが爆発して出火し、施設の職員1人が負傷。
ガラスが割れる被害はあったものの、建物の構造自体に影響はなく、爆発があった室内にはバイオハザード(生物災害)をもたらすものはなかったとしている。
この報道の、
> ガスボンベが爆発して
を読みまして、「杜撰かよ」と思わざるを得ない面もありますが、日本ではこういうことはないはずだと思っております。
いずれにしても、すでにウイルスは輸入され、日本はエボラ出血熱ウイルスの所持国となりました。