私を悩ませ続けた「あの彗星」が偉大な成果のデータと共に帰ってきた
昨年、口惜しかったことの代表といえば、欧州宇宙機関(以下、 ESA )の彗星探査機ロゼッタが探査に向かった彗星の名前が覚えられなかったこと、覚えられなかったこと。
この彗星を取りあげていたのは1年くらい前のことでしたが、それから1年、さらに私の物忘れは進み、最近など、テレビで「電話してちょ〜だい♪」という CM を見まして、その人の名前を思い出すのに数日かかるという有り様で、この彗星の名前を覚えることはほぼ困難な状況となって現在にいたります。CM の人の名前は・・・あ、また忘れた。
まあ、人のほうはいとして、彗星の名前は、チュ・・・チュラ・・・チュリ・・・(酔っ払いかよ)・・・チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。
皆さんはソラでこの名を口にできるでしょうか。
まあしかし、最近の報道を見ていますと、「メディアも、この彗星の名称については投げている」という感じもありまして、この彗星のことを取りあげる時には、正式名称である「P67 / チュリュモフ・ゲラシメンコ 」の「 P67 」だけで書かれることも多いです。
しかし、私はなるべく略さずにこれからも生きていきたいとも思っております。
さて、その P67 彗星(いきなり略してるじゃないか)・・・まあまあ、ともかく、その P67 彗星に関しては、かつて、本当に驚くべき発見の数々を ESA は成し得続けていまして、正直、NASA より、ESA や日本の JAXA の方が、はるかにワクワクさせてくれる結果をもたらしてくれている最近の宇宙探査のようには思います。
ちなみに、このアメリカ、ヨーロッパ、日本の3つの宇宙機関の年間予算は、2011年のものですが、
・NASA 1兆6910億円
・ESA 4793億円
・JAXA 1726億円
と、なっています。
欧州の ESA は NASA の3分の1以下、日本の JAXA に至っては、NASA の10分の1の予算で運営されているのでありました。
そして、NASA が宇宙から「生命をまったく見つけ出していない」間に、ESA は昨年、 P67 彗星から「地球の生命の素になる有機分子」を見つけ出したことを、過去記事の、
・「地球上の生命の素になる有機分子」がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から検出されていた!
2014/11/20
に記したことがあります。
その時は、ロイターの記事を翻訳したものをご紹介したのですが、冒頭は以下のような記事でした。
彗星チームが地球上の生命の基盤となる有機分子を検出
ヨーロッパの彗星着陸機フィラエは、自身バッテリーが切れるまでの駆動時間に、彗星から炭素元素を含む有機分子を嗅ぎ取ったとドイツの科学者たちは述べた。
この炭素元素を含む有機分子は地球の生命の基盤となっているものだ。
科学者たちは、そこにタンパク質を構成する複雑な化合物が含まれていたかどうかについては明らかにしていない。今回のミッションの大きな目的のひとつが、炭素系化合物を発見することだ。
そして、それらの発見を通して、究極的には、地球の生命は彗星たちによってもたらされたことを突き止めることにある。
欧州宇宙機関は着々とやってくれておりますですよ。
一方、日本の国立天文台も 2010年に、
「地球上の生命の素材が宇宙から飛来した証拠を発見」
という快挙を遂げています。
下は、2010年の読売新聞の記事の冒頭部分です。
生命の起源、宇宙から飛来か…国立天文台など
読売新聞 2010年04月06日
国立天文台などの国際研究チームは6日、地球上の生命の素材となるアミノ酸が宇宙から飛来したとする説を裏付ける有力な証拠を発見したと発表した。
アミノ酸には「右型」と「左型」があるが、人類を含む地球の生物は左型のアミノ酸でできている。しかし、通常の化学反応では左右ほぼ等量ずつできるため、なぜ地球の生物にアミノ酸の偏りがあるのかは大きな謎となっていた。
研究チームは、南アフリカにある近赤外線望遠鏡を使って、地球から1500光年離れたオリオン大星雲の中心部を観測。アミノ酸をどちらか一方に偏らせてしまう「円偏光(えんへんこう)」という特殊な光が、太陽系の400倍という広大な範囲を照らしていることを初めて突き止めた。
アミノ酸の「右型」とか「左型」とかは難しい概念ですが、意味はわからなくても、地球のすべての生物は、
「左型のアミノ酸だけでできている」
ということで(下の図をご参照下さい)、これは永遠の謎といってもいい謎でしたが、国立天文台は、ここに答えのひとつを提出したといえるのだと思います。
すなわち、「地球の生命は宇宙に源があるから、すべてが左型になっている」という考え方でいいはずです。
この国立天文台の発表ひとつとっても、地球の生命が宇宙由来であることは動かしがたいと思いますが、今回ご紹介しますのは、ESA が、チュ・・・(調べろよ)、もとい、ESA が、
「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の周囲は酸素で覆われている」
という驚くべきデータを提示したのです。
表面が酸素で覆われていた彗星
チュ彗星は、比較的大きなものですが、それでも、最大直径 3〜4キロメートル程度。
下は、ロサンゼルスの街とチュ彗星を合成したものですが、かなり大きくは見えるとはいえ、
「酸素が発生する条件が揃っている」
というようなほどの天体ではないはずです。
酸素を発する微生物がいない限りは。
P67彗星の写真を同比率で「ロサンゼルスに置いた」合成写真
そのような彗星の周辺が酸素で覆われていた・・・というのは、どう考えればいいのか。
今回ご紹介するデイリーメールの記事では、この酸素について、
・生命があるということを示しているわけではない
・酸素は数十億前から残っていたもの
という科学者たちの見解を引用しています。
正直、生命がいる以外の考え方はむしろ驚きですが、しかし、そうだとしたら、酸素が存在しているわけのない状況の天体に、なぜ酸素があるのか、ということが書かれてある記事です。
それにしましても、このチュンドラ・ムリナメカシ彗星(適当かよ)からは、昨年以来、たくさんの魅力が放出されているだけにとどまらず、今の宇宙論の見直しにまで繋がる可能性を秘めた強力な存在となりつつあります。
英国デイリーメールの記事をご紹介します。
なお、この彗星に絡んで昨年ご紹介した関係記事としては、この彗星から信号( ESA は「歌」と表現)が発せられているということをご紹介しました、
・探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から受信した「謎の信号」をめぐり展開する様々な説
2014/11/12
という記事や、この彗星が、「強烈な悪臭」を花っていたことが判明したことを取りあげた、
・「彗星は強烈な悪臭を放っている」ことが観測されたことから改めて思う「宇宙塵も彗星の母体も生き物」で、さらに言えば宇宙はすべてが生き物かもしれないという感動
2014/10/27
などがあります。
Rosetta's 'Most surprising discovery so far': Researchers stunned to find comet surrounded by OXYGEN
Daily Mail 2015.10.28
探査機ロゼッタのこれまでで最も驚くべき発見:チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が酸素に囲まれていたことを発見し、唖然とする研究者たち
昨年、着陸した欧州宇宙機関( ESA )の彗星探査機は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に豊富な酸素があることを発見した。
この驚きの発見は、太陽系の起源についての理論を考え直さざるを得ない状況をもたらす可能性がある — しかし、これは、そこに生命の存在があることを意味するものではない。
ESA のロゼッタ探査機をコントロールする専門家たちは、P67 / チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の周囲にある大気の中で最も一般的なものが、遊離酸素( O2 )であることを発見した。
その他の成分は、水蒸気、一酸化炭素、そして二酸化炭素だ。
酸素は反応性のものであり、現在の宇宙理論から見ると、このような量が、このように独自に存在する理屈は存在しない。
ロゼッタの質量分析器「ロジーナ( Rosina )」のプロジェクト・リーダーであるカトリン・アルトウエッグ教授( Professor Kathrin Altwegg )は、
「他の物質と結合することなく、酸素が数十億年生き残っていたというようなことを、私たちは想像もしていませんでした」
と述べる。
地球の場合は、微生物や植物が酸素発生の大きな役割を果たしているが、今回の新たな発見は、この P67 彗星に生命が生息していることを意味するものではない。
そうではなく、科学者たちは、これらの酸素が非常に早い起源を持っていると確信している。それは、太陽系が形成されるより以前の段階でさえあると考える。
高エネルギーの粒子が「暗黒星雲」として知られている太陽系の寒さと濃縮した場で、氷の粒に与えた打撃が酸素を解放したと科学者たちは考える。
科学誌ネイチャーに掲載された研究者の記述によれば、これは、46億年前に彗星の核に組み込まれ、それ以来ずっと酸素が残っていると考えられるという。
アルトウィッグ教授は、
「この酸素が古代から残る物質だとする証拠は、太陽系の形成についてのいくつかの理論モデルで説明できます」
と言う。
P67 彗星に着陸したフィラエ着陸船は、着陸時にバウンドし、一時接触が途切れたが、その後、断続的にデータ交信が維持されている。
それらのデータは、地球の科学者たちに豊富な情報をもたらしている。
ここまでです。
記事はこの後に酸素と関係のない話となっていきますので、そこは割愛します。
いずれにしても、科学者たちは、
「この彗星に酸素が豊富にあるのは、生命がいるからではない」
としていて、
「46億年前に彗星の核に閉じ込められた酸素が今でも残っている」
と言いたいようなんですが・・・。
たった3キロメートルほどの天体に「まったく生命がない状態」で、46億年も酸素が残ると考えるほうが難しいのでは・・・。
しかも、その酸素量は「微量ではなく、豊富」なのです。
私は、先ほどもリンクしました「彗星は強烈な悪臭を放っている」という記事でご紹介しました報道を見て以来、
「彗星は微生物の塊」
だと考えるようになっています。
今回、「酸素」というものが豊富に発見されたということは、彗星の存在に対して、DNA とかアミノ酸とかタンパク質とか、そういう「生命の素材」を超えた「微生物そのもの」の存在を強く感じます。
これは、彗星に生物がいるとかいないとかということではなく、
「彗星そのものが生命の塊であるという一種の巨大生物」
というような認識とも近いかもしれませんし、ここまでいろいろと出そろうと、そんなにオカルトには響きません。
そして、フレッド・ホイル博士なども書いていたのですが、「生きた生命」が存在するとすれば、宇宙空間の様々な熱や衝撃から守られる「彗星の内部」のはずです。
着陸船フィラエは優秀な探査機かもしれないですが、「彗星の1〜2キロ奥にある医生の核にまで進む能力」はないと思われます。
表面の素材を探査している限りは何も見つからないでしょうけれど、今回の「豊富酸素が見つかった」ということが、私がずっとそうだといいな、と考えていた「彗星は生命の塊」だということを強く示唆すると感じたのでした。