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熱を下げてはいけない : 感染症の治癒メカニズムが人体で発動するのは「体温が《38.5℃以上》に上がったときのみ」であることが中国科学院の研究で判明

投稿日:

2019年1月15日のアメリカ医学メディアの記事


medicalxpress.com




高熱の真実

私は小さな頃は免疫力が弱く、十代の終わりくらいまでは非常に感染症にかかりやすい人でした。

熱を出すなど日常茶飯のことで、しかも扁桃腺が大きかったことなどもあり、一度発熱いたしますと、39℃、40℃は当たり前で、それが何日も続く。

当時は、今のようにインフルエンザだどうだと騒ぐようなこともなかったですので、若い時代の自分がかかっていたものがどんな疾患なのかはひとつひとつはわからないですけれど、高校生くらいになっても、1、2ヶ月に一度くらいは 40℃近くの熱を出していたように記憶しています。

まあ、そのおかげで学校は非常によく休んでいまして、「熱のおかげで楽させてもらっているなあ」というようには思っていましたけれど、しかし、つらいのはつらい。

それでも、子どもの頃も若い頃も、単なる発熱で病院に行くということはありませんでした。

北海道の田舎でしたので、病院に行くのが大変だったということもあります。40℃の発熱の中、30分も 1時間もかけて病院に行くなど無理な話です。

そんなわけで、若い時から「発熱を解熱剤で抑える」ということをしたことがなく、「熱を薬で下げるという考え方もあるのだな」と知ったのは、自分に子どもができて、その子どもが赤ちゃんの頃に発熱して病院に行った時でした。

小さな子どもが 39℃や 40℃などの熱にうなされているのを見ているのはつらいですし、それに不安で、抱っこして病院に駆けつけたりしていました。

 

そして、その頃から知ったのは、多くの内科や小児科では、風邪やインフルエンザでの発熱に関しての、「共通ワード」があるということでした。

その共通語は、

「体温が 38.5℃以上になったら、この解熱剤を飲ませて下さい」

というものなのでした。

私自身は、当時から、小さな子どもに解熱剤を飲ませることのほうが不安で、飲ませたことはありませんでしたが、他の方法(冷やすなど)で一生懸命、熱を下げようとはしてはいました。

しかし、このブログを書きはじめて以来、

「熱の効用」

ということを、たとえば、日本最初の整体師であった野口晴哉さんや、ルドルフ・シュタイナーなどの言葉から知るようになり、「熱をむりやり下げることは良くないことなのでは」と思うようになっていきました。

しかし、「その理論的な支柱がわからない」という部分があったのです。

理論的なことなどわからなくてもいいという話もあるかもしれないですが、私自身は、どうも「理論が存在しないと確信しきれない」という部分が大きい人で、発熱と感染症の治癒の関係を知りたいと思っていました。

 

そんな中、つい先日、中国の自然科学の最高研究機関である中国科学院の「上海生化学細胞生物学研究所」という機関が「発熱と感染症の治癒に関してのメカニズムを判明させた」のでした。

この研究からは、先ほど書きましたような、現在、多くの医療現場で言われている「 38.5℃以上になったら熱を下げる」というのは、「論外」であることがわかります。

なぜかといいますと、

「感染症を治癒するための体内のメカニズムは体温が 38.5 ℃以上でないと発動しない」

からです。

まずは、その論文について記事にしていたアメリカの医学メディアの記事をご紹介いたします。いろいろと専門用語が出ていますが、それらは、翻訳記事の後で注釈させていただたきます。

ここからです。


Fever alters immune cells so they can better reach infections
medicalxpress.com 2019/01/15

高熱は免疫細胞を変化させ、それは感染症の治癒により良いアプローチを提供する

発熱が私たちの免疫細胞を活性化させるために役立つことは知られているが、そのメカニズムは明らかではなかった。今回、上海の科学者たちが、発熱と感染症のメカニズムを説明できる新しいエビデンスを医学誌に発表した。

研究者たちは、発熱はリンパ球のような免疫細胞上の表面タンパク質を変化させることを見出し、そして、それらは血管を介して感染部位に到達する能力を高めることをマウスで確認した。

この研究は 1月15日に発行された医学誌イミュニティ(Immunity)に掲載された。

中国科学院の上海生化学細胞生物学研究所(SIBCB)の教授でもある科学者ジアンフェン・チェン(JianFeng Chen)氏は、以下のように述べる。

「発熱の良いところの 1つは、それにより、感染部位へのリンパ球の輸送を促進することができるため、病原体を取り除く免疫細胞がより多く感染部位にもたらされることです」

病原菌に感染する際には、白血球が血管に付着した後に感染した組織やリンパ節に移動する。この過程で、インテグリンとして知られる分子がリンパ球の表面に発現する。このインテグリンは、感染している際にリンパ球の輸送をコントロールする働きを持つ細胞接着分子だ。

チェン教授らは、発熱が Tリンパ球における熱ショックタンパク質 90(Hsp 90)の発現を増加させることを発見した。

このタンパク質 Hsp 90 は、リンパ球上のインテグリンの一種(α4インテグリン)に結合し、これにより、リンパ球の血管への接着を促進し、最終的に感染部位へのリンパ球の遊走を促進する。

研究者たちは、熱によって誘発された Hsp90 がインテグリンに結合し、インテグリン活性化を誘発することを見出した。

さらに、1つの Hsp90 が 2つのインテグリンに結合し、リンパ球表面上のインテグリンのクラスター化(小さな塊にする)をもたらし得ることもわかった。結果として、クラスター化したインテグリンはリンパ球の遊走を促進するシグナル伝達経路を活性化する。

チェン教授はこう述べる。

「私たちの今回の調査結果は、このメカニズムが、リンパ球だけでなく単球のような自然免疫細胞にも適用されることを示しています」

「これは、α4インテグリンを発現する多くの異なる免疫細胞に適用できる一般的なメカニズムです」

研究チームはまた彼らの調査結果を確認するために、細菌感染症と他の発熱状態の動物実験を用いた。

その際、Hsp90 とインテグリンとの間の経路が遮断されたときに、発熱したマウスたちは急速に死亡していった。

また、研究では、このメカニズムは非常に温度依存的であることがわかった。「 Hsp90 は 38.5℃ を超える温度でしか誘導されないことがわかったのです」と、チェン教授は言う。

研究者たちは、熱だけでなく他のストレスも Hsp90 の発現を誘発することがあると確信している。

「自己免疫疾患や癌などのさまざまな状況において、この Hsp90 と α4インテグリンの経路が関与している可能性があると考えています」とチェン教授は述べた。


 

ここまでです。

このメカニズムをとても簡単に書きますと、以下のようになると思われます。

体温が 38.5℃以上に上がると、感染症によって起きている炎症部位へ炎症を治癒する白血球等がたくさん送られる機能が発動する。

というもので、そして、そのキーとなるのが「熱ショックタンパク質」というもののようです。

80年代のパンクバンドみたいな名称ですが、私は、この「熱ショックタンパク質」という単語を今回初めて知りました。

Wikipedia の説明では、

熱ショックタンパク質(HSP)とは、細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現が上昇して細胞を保護するタンパク質の一群。

となっていまして、いくつか種類があるのですが、今回出てきます Hsp90 という熱ショックタンパク質の機能は、とても温度依存的であり、

「 38.5℃以上でないと誘導されない」

と。

つまり、体温が 38.5℃以上になった時、初めて体内の有効な治癒メカニズムが発動するということのようなんですね。

そして、その状態になると、今度は体は速やかに「治癒していく方向」に進む。

 

風邪などを長引かせてしまうようなことをよく見聞しますけれど、その要因のひとつには、このことが関係しているのではないのかなと思います。

たとえば、風邪などで熱などが出たときに、市販のかぜ薬や、あるいは、病院で処方された対症療法のかぜ薬などを服用してしまう。

そうすると、「熱が上がらない」という状態になってしまいます。

そうなりますと、白血球を炎症部位に誘導する役割を持つ Hsp90 という熱ショックタンパク質の機能が働かない。

結果として、白血球などによる体内の自己治癒システムが機能しないまま、風邪の状態が経過してしまうため、治りきらないで長引いてしまう……ということはあるのではないかなと思います。

 

結局、今回の研究ではっきりしたのは、

「熱は人を苦しめているのではなく、助けている」

ということです。

 

ルドルフ・シュタイナーは、1908年にドイツでおこなわれた講演で以下のように述べており、「熱を下げてはいけない」と強く主張しています。

1908年のシュタイナーの講演より

生体はその損傷に反抗し、防御力を用います。この反抗が通常、熱なのです。

熱は、人間のなかの治癒力の呼び声なのです。熱は病気ではありません。

損傷を直すために、人間が自分の生体全体から力を呼び集めているのです。

病気において、熱は最も慈善的で、最も治療的です。

損傷を受けた個々の部分は、みずから治癒できず、他の側から力を得なくてはなりません。それが熱として表現されるのです。

この講演のすべての内容は、シュタイナーの「人間の四つの気質」に掲載されています。

このシュタイナーの言っている

> 損傷を直すために、人間が自分の生体全体から力を呼び集めている

というところは、今回の研究で導かれた結果をとてもよくあらわしている表現だと思います。白血球を炎症部位に多く導くために、全身の熱ショックタンパク質とインテグリンというものが働いている。

 

あるいは、紀元前 400年頃の古代ギリシャの医師であるヒポクラテスも同じようなことを述べていました。ヒポクラテスは、いくつもの格言を残していますが、その中に、

「患者に発熱するチャンスを与えよ。そうすればどんな病気でも治してみせる」

というものがあります。

発熱する「チャンス」とまで表現しているあたりは、熱の偉大さをヒポクラテスはよく知っていたということになりそうです。

そういえば、最近知ったのですが、このヒポクラテスは、

「すべての病気は腸から始まる」

という、何だかちょっと韻を踏んでいる言葉も残していたということで、これなどは、最近の私のブログの傾向から見ても、「やるじゃん」と言いたい感じではあります。

まさに医学の父というにふさわしい先見の明・・・というか、本当に普通の地球人だったのですかね。

 

しかしまあ、他にも同じようなことを述べていた賢人たちは数多くいまして、ナイチンゲールは、熱も症状も「回復の経過」であるとして、以下のように述べていました。

ナイチンゲール『看護覚え書』(1860年)より

およそ病気というものは、その経過のいずれの期間においても、多かれ少なかれ回復過程であり、それは必ずしも苦しみを伴わない。

看護としてなすべきことは、自然によってすすめられる回復過程を邪魔している要素を取り除くことである。

 

あるいは、日本最初の整体師である野口晴哉さんは、『風邪の効用』という著作の中で、

 

「病気が治るのも自然良能であり、病気になるのも自然良能です。」

 

と述べられていまして、病気になって熱や症状が出ることは、「体に良いことが起きている」としていました。

 

ところが西洋医学は、熱に対して、それを力尽くで押さえ込むという介入をしてしまった。

薬で熱をむりやり押さえ込むという行動は、今回の研究でわかる通り、「速やかな感染症からの回復を妨げるもの」です。

さきほどのナイチンゲールの『看護覚え書』には、看護とは、

> 回復過程を邪魔している要素を取り除くこと

だとありますが、現代社会で「 回復過程を邪魔している要素」は、かぜ薬そのものであるということなのかもしれません。

もっとも、病気の際の発熱への対応は、人それぞれの状態や状況に応じての適切な方法が必要だとは思います。緊急に熱を下げなければいけない状態もあるはずです。

しかし、少なくとも、体内の治癒メカニズムが発動するには 38.5℃以上の熱が必要だということが今回わかったということで、38℃から 39℃くらいの熱ならば、穏やかな感染症からの回復のためには、熱は無理に下げないほうがいいと結論付けられると思われます。





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