2023年2月23日、モスクワで行われた「祖国防衛者の日」で無名戦士の墓に花を捧げるプーチン大統領。 The Hill
ウクライナ軍がロシア本土に大規模な空襲を
今回の「特別軍事作戦から全面戦争へ」というタイトルは、レバノンのベイルートに本部を置くアラブ系ニュースチャンネル局「アルマヤディーン」の最近の記事のタイトルです。
これは記事というより論文で、ものすごい長いものでして、全体をご紹介できるようなものではないのですが、この記事が書かれたのが、2月24日でした。
記事は、ロシア側の理念が、
「 2023年2月23日にすべてが変わった」
というようにありました。
そして、その後、日本時間でいえば昨日の 2月28日ですかね。
ウクライナが「ロシア本土に空襲をかけた」のです。しかも、攻撃対象は、複数のロシアの都市で、モスクワ近郊までターゲットにしてしまいました。
報道を見て、
「あー、やっちゃったかよ」
と思いましたが、今後急速に事態が進展する可能性もあります。
このウクライナ軍のロシア本土へのドローンでの攻撃については、以下のように伝えられています。
大規模なドローン攻撃がロシアにカオスを解き放ち、国内で空襲警報
Mass Drone Attack Unleashes Chaos, Air Raid Sirens Inside Russia
zerohedge.com 2023/02/28
ロシアは 2月28日、複数の無人機による攻撃を受け、無人機の 1 機が同国の南部にある石油貯蔵所で火災を引き起こし、別の無人機がモスクワ郊外に衝突したと報告されている。
石油施設への攻撃は、クリミア半島の南東約 150マイル (約 240km)に位置するトゥアプセで発生し、ロイター通信はロシア地元メディアを引用して次のように報じている。
「ドローンが頭上を飛んでいるのが発見された後、ロシア緊急局がロシア南部の石油貯蔵所で夜通し消火作業にあたった」
重要なことに、トゥアプセは最も近いウクライナ領から約 500 km離れており、このドローン機がウクライナによって発射されたと仮定すると、かなりの到達距離を示している。
同施設で午前 2時半頃に出火した火災は、約 200平方メートルに火災が拡がった後、消し止められた。 地元の役人であるセルゲイ・ボイコ氏は「石油タンクに影響はありませんでした。石油製品の流出もありませんでした。負傷者もいません」と説明した。
同日、別の無人機がモスクワ地方で墜落し、アンドレイ・ヴォロビョフ知事は、民間インフラを標的とした作戦である可能性が高いと述べた。
「これはグバストボの村の近くで起こった。標的はおそらく民間のインフラ施設であり、しかし損傷はなかった。地上での死傷者や破壊はなかった」とテレグラムで語った。
「ロシア連邦保安庁やその他の管轄当局は状況に対処しており、住民の安全を脅かすものは何もない」と彼は付け加えた。
ロシアのモスクワタイムズは、無人機は、UKRJET社によって製造されたウクライナの UJ-22 Airborne であるとの未確認の報告があると指摘した。
ロシア国防省は声明の中で、ロシア南部での別の無人機攻撃について言及した。クラスノダールとアディゲ地域への攻撃は「鎮圧」され、被害はなかったと述べた。
しかし、ロシアの国営通信社が、クリミア半島の南東約 240kmにあるクラスノダールの石油貯蔵所で火災が発生したと報じた後、ドローンが頭上を飛んでいるのが発見された。
ロシア国防省は、「ウクライナ政権は無人航空機を使用して、クラスノダール地域とアディゲ共和国の民間インフラを攻撃しようとした」と述べた。 さらに、「ドローンは電子戦部隊によって無力化された」と主張した。
さらに、ベルゴロド地域の国境地域でも、ドローン事件が発生した可能性がある。 メディア「デイリー・ビースト」は、ロシア人にとってカオスの夜だったと述べている。
この一連の攻撃は、ロシア地元メディアが「大量ドローン攻撃」と表現したものの一部であり、過去 24時間で激化したようだ。
2月27日の朝、ウクライナとの国境に近いベルゴロド地域のアパートの住民は、4台のドローンのうちの 1台が建物に衝突した後、真夜中に避難を余儀なくされた。別のドローンがスーパーマーケットの屋根に着陸して爆発し、店内を焦がした。
そして、サンクトペテルブルクで別の攻撃が試みられた可能性がある。数時間後、サンクトペテルブルクのプルコヴォ空港は、当局が周辺空域を封鎖したため停止した。伝えられるところによれば、この地域で発見された「未確認飛行物体」に対応したものだ。
ロシアから発信されたすべての地域報告の中で、2月28日に夜通しロシアのさまざまな都市に対して、合計でおそらく半ダースから 1ダースまたはそれ以上のドローンの侵入があった。
これは、ウクライナとその支持者がより大胆になるにつれて、軍事基地を含む機密性の高いロシアの施設に対する散発的な無人偵察機と疑わしい妨害攻撃の数を目撃した過去1年に続くものだ。
米国の特殊部隊の退役軍人によって書かれたある 12月の調査報告書は、CIA が、ロシアの地でますます頻繁に行われている多くの秘密の妨害工作の背後にいると述べた。
プーチン大統領は最近、ウクライナでの紛争と西側が支援する代理戦争を「ロシア国民の生存のための戦い」と見なしていると述べ、新たなコメントでそれを「実存的脅威」とほのめかした。
中国が 2月24日に交渉による停戦のための 12項目の計画を発表した後、最終的な仲介による和平に真剣に取り組む実際の国際的な機運がここ数日のうちにいくらかあったことを考えると、ロシアに対するこれらの新たな、厚かましい攻撃のタイミングは重要であるように思われる。
停戦プロセスが軌道に乗ることを期待できるようになる前に、平和への努力が妨害されるのだろうか。 ロシア本土が攻撃され続ければ、双方が真剣に交渉を検討する可能性は非常に低くなる。
ここまでです。
これまでもそうでしたけれど、ウクライナ(あるいは西側)に和平交渉の意志が現在まったくないことが、このウクライナからの攻撃により明らかとなったわけで、先ほどのベイルートの報道にある、
「特別軍事作戦から全面戦争へ」
に、さらに近づいている可能性があります。
また、この攻撃が首都モスクワと、ガスプロム社のエネルギー施設を標的にしたということは、もはや後戻りすることができない状況にウクライナは自らを追い込んでいます。
このベイルートの記事は、核使用を含めた今後の戦争のいくつかの予想を、かなり冷静におこなっていまして、そのうちご紹介できればとは思います。
ちなみに、ウクライナのゼレンスキー大統領が、「バフムトからの撤退」をほのめかしていることが、米ブルームバーグが伝えていましたが、2月の中旬に書かせていただきました記事「バフムトの陥落は1週間以内…」の時の状況を考えると、今なお完全に撤退していないのは驚くべきことです。
今回締めとしてご紹介させていただくのは、先ほどの記事で、
> プーチン大統領は最近、ウクライナでの紛争と西側が支援する代理戦争を「ロシア国民の生存のための戦い」と見なしていると述べ…
という部分がありましたけれど、それが掲載された記事です。
プーチン大統領の決意は、1年前より、むしろ「悲壮」となっており、「生きるか死ぬか (国家ごと消滅するか)」のところにロシア自身も置かれていることがわかり、あるいは、そのつもりで今後、戦争が展開されていくということになります。
ここからです。
プーチン大統領は、「ウクライナ戦争はロシア国民の存続に脅威をもたらす」と述べた
Ukraine War Poses Existential Threat To Survival Of The Russian People: Putin
zerohedge.com 2023/02/27
先週、ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアと米国との核軍縮条約である新START核軍備管理条約への参加を一時停止すると述べたとき (※ 2月28日にプーチン氏は法案に署名して発効しました)、プーチン氏は、それがロシアの「安全と戦略的安定を確保するため」であると説明した。
国営テレビチャンネル「ロシア1」で 2月26日に行われた発言の中で、彼は、ウクライナでロシア軍に反対することへの西側のより深い関与における西側の目標と見なしているものについて説明した。
プーチン氏は新たなコメントで、ロシア人は NATO 諸国で生き残れないかもしれないと警告し、NATO がロシアに「戦略的敗北」を強いていると述べた。
彼は、ウクライナでの代理戦争と、米国とドイツの戦車の認可が最近含まれている西側の武器が送り込まれていることを、ロシアとロシア人たちに対する実存的な脅威として提示した。
ロイター通信によると、プーチン大統領は次のように述べた。
「今日の状況では、すべての主要な NATO 諸国が、私たちに戦略的敗北をもたらすことを主な目標だと宣言している」
「彼らが言うようにロシアの人々が苦しんでいるのに、どうしてこのような状況でその核能力を無視できるだろうか?」
「ロシア人のような民族グループが今日存在する形で生き残ることができるかどうかさえわからない」
そして、西側諸国がロシアの豊富な資源に注目していることを示唆した。
プーチン氏がウクライナ戦争を世界的な紛争と対立の観点から唱えたのは、これが初めてではないが、彼がオプションとして敗北を見ていないことを示すような激しいレトリックが成長し、最近ますます頻繁になっている。
先週、彼は同様のテーマを反映して次のように述べた。
「西側のエリートたちは、ロシアに『戦略的敗北』を与えるために、彼らの目標を隠そうとしていない。彼らは、局地的な対立を世界的な対立に変えようとしている」
プーチン大統領は、「戦争を始めた」のは西側諸国 であると非難しながら、ウクライナ侵攻を命じてから、2月23日までの 1年に向けてこれらの言葉を語った。
プーチン大統領は演説で、以下のように述べた。
「私たちはウクライナ国民と戦っているわけではない。ウクライナの人々は事実上国を占領したキエフ政権とその西側の支配者の人質になっている」
一方、最近のわずかに明るい兆しは、戦争終結のための中国の 12項目の停戦計画に対して、ウクライナ政府がいくぶん前向きに対応したことだけだ。
ゼレンスキー氏は、少なくとも中国がウクライナについて話していること、そしてこれは歓迎すべきスタートであることを認めた。ゼレンスキー氏は、彼と習近平国家主席が会うべきだとさえ言ったと伝えられている。
ここまでです。
ロシア安保理副議長のドミトリー・メドベージェフ元ロシア大統領と共に、最近は、
「ロシアが勝つか、ロシアという国が完全に消滅するか、どちらかだ」
というような極端な論調をほのめかせることが多くなっています。
また、メドベージェフ元大統領は「黙示録」という言葉を実際に述べることが多くなりました。
いずれにしましても、最後の世界戦争のような状態に、どうしようもないほど近づく位置にまで来てしまっているのかもしれません。
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