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史上初めての場所に誕生し、史上初めてのコースを取る記録づくめのハリケーン「オフィーリア」。それは地球の海と大気の大規模な変化の象徴そのものであり、自分が死にゆくことを知らない者の象徴でもあり

   

2017年10月14日の報道より

livescience.com

通常と真逆に進むハリケーン・オフィーリアの予想進路

hurricane ophelia path

10月12日に、大西洋で発生した熱帯暴風雨「オフィーリア」がハリケーンに発達しました。これで今年、大西洋で発生した熱帯暴風雨は何と 27になり、そして、このオフィーリアまで 10連続ですべてハリケーンに成長しているという異常な記録が打ち出されました。

しかも、このオフィーリアは、「ハリケーンとしては史上初めてのコース」を取っているという異様なことになっているのです。

何が起きているのか。

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10連続して発生したハリケーンの名は「オフィーリア」

今年 2017年は、本当にハリケーンがよく発生した年で、人的被害と共に経済的な被害が非常に大きなものとなっていますが、改めて今年、大西洋で発生した熱帯暴風雨の一覧を見ると、下のようになり、27もあったのです。

2017年に大西洋で発生した熱帯暴風雨の一覧

2017 atlantic hurricane season names

この中で右側の下から2番目のフランクリン(Franklin)から、右側の一番上のオフィーリアまでが連続してすべてハリケーンに発達しました。

なんだかもうスゴイですが、10月12日に発生してハリケーンに発達した「オフィーリア」は、そういうものとはちがうすごさを持ったハリケーンといえます。

何がすごいというのは、

・歴史上1度もハリケーンが発生していない海域で発生した

・ハリケーンでは、ほぼ見られたことのない進路をとっている

ということです。

これは後半に図でもご説明したいと思います。

そもそも、冒頭に示しましたこのオフィーリアの進路を見れば、それがいかに奇妙なコースかとお感じになる方もいらっしゃるのではないかと思います。

まずは、冒頭のライブサイエンスの報道記事を先にご紹介します。この記事でも、このオフィーリアの異様さが描かれています。なお、この記事が書かれた時点では、オフィーリアは最も弱い勢力の「カテゴリー1」でしたが、 15日現在、勢力として上から3番目の「カテゴリー3」に発達しています。

ここから記事です。


Hurricane Ophelia on Rare Course Toward Ireland, U.K.
Livescience 2017/10/14

希なコースを取るハリケーン・オフィーリアがアイルランドとイギリスに向かっている

すでに 2017年のハリケーン・シーズンは終わったかのように思われている現在、ハリケーン・オフィーリア(Ophelia)がアイルランドとイギリスに向かうという珍しいコースを取っている。

アイルランドに到達する頃には勢力が落ち、ハリケーンから熱帯低気圧になると予測されているが、それでも、アイルランドや英国で暴風雨が吹き荒れる可能性があり、風速は最大で時速 130km にまでなると見られている。

オフィーリアは、非常にハリケーンの多かった今年のシーズンの 10番目に発生したハリケーンとなる。

今年 2017年は、カテゴリー5のハリケーンが記録された日数が過去最大となったことが、アメリカ大気研究大学連合(UCAR)のマイケル・ローリー(Michael Lowry)氏により発表されており、また、米国コロラド州立大学のハリケーン研究者であるフィル・クロツバッハ(Phil Klotzbach)氏によれば、熱帯低気圧が、10回連続してハリケーンに発達していることが記録されている、まさにハリケーンの当たり年となっている。

ハリケーン・オフィーリアはイルマやマリアのように注目されてはいないが、しかし、このオフィーリアが記録している風速時速 160km は、これはこれまで大西洋東部で発生したハリケーンの中で最も強い暴風だ。

また、この大西洋東部で低気圧がカテゴリー2のハリケーンに発達したのは 1992年以来のことだとアメリカ国立ハリケーン・データセンターの予報官は述べている。

オフィーリアは、通常より高い海水温度のためだけではなく、より冷たい気温のおかげでハリケーンに発達したと考えられる。クロツバッハ氏によれば、大気の状態が非常に不安定であったために予想以上にハリケーンの勢力が増したと伝えている。

オフィーリアのコースは、これまでにまったくないほどではないのかもしれないが、しかし、かなり異例といえる。

アイルランドを襲った暴風雨としては、1961年のデビー(Debbie)があるが、この時のデビーがアイルランドに到達した際にハリケーンの勢力だったのか熱帯低気圧だったのかどうかは当時の記録からは不明だ。

近年でアイルランドとイギリスに影響を与えた熱帯低気圧の中で顕著だったのは、1986年の暴風雨チャーリー(Charley)と、2011年の暴風雨エックス・カティア(Ex-Katia)のふたつがある。そういう意味では今回のオフィーリアのコースもまったく前例がないというわけではないのかもしれない。ただ、ハリケーンの勢力を維持して接近しているというのは極めて前例が少ない。

2013年に、科学誌ジオフィジカル・リサーチ・レターズに掲載された調査結果によれば、大西洋東部で発生したハリケーンによる風が西ヨーロッパに影響を与えることが増えている。気温が上昇し、ハリケーンの発生するエリアが拡大すると共に、ヨーロッパでも暴風雨が発生しやすくなっているという。

以前はなかったことだが、それらの暴風雨はヨーロッパに到着するまで勢力と熱帯暴風雨の特性を維持することが多くなったのだ。

そのため、ヨーロッパでの暴風雨による被害と経済的損失も拡大している。

ハリケーン・オフィーリアは、今後、アイルランドに向かい、より涼しい海域に移動しする中で低気圧に移行すると予想されている。

オフィーリアの正確なコースはいまだに確定していないが、月曜(10月16日)から、北アイルランド、スコットランド、ウェールズ、イングランドの西海岸などでは広く強風、大雨、高波による影響があると見られている。


 

ここまでです。

このオフィーリアの「コースの異常さ」については、過去の記録と照らし合わせるとわかりやすいかと思います。

下は、10月14日にアメリカ海洋大気庁(NOAA)が出したオフィーリアの進路予想図です。予想円は多少は変化するだろうとはいえ、アイルランドとイギリスを直撃するコースとなっていることがわかります。

オフィーリアの進路予想(色は風速で、赤いほど強い風速です)

NOAA

そして、下の図は、進路の記録が残る中での「過去の大西洋で発生したすべてのハリケーンの進路」です。色は赤になればなるほど勢力が強いことを示します。

そこにオフィーリアの発生場所を加えたものです。

過去に大西洋で発生したハリケーンの進路

vk.com

このオフィーリアは、発生した場所も「史上初めて」で、そのコースも「史上初めて」のハリケーンなのです。

世界地図で説明しますと、下のようなことになっているのです。

ハリケーン「オフィーリア」というもの

Google Map

先ほどのライブサイエンスの記事では、希ながら過去にもあったとされていますが、その後、オフィーリアは勢力をカテゴリー3にまであげていまして、これほどの勢力のハリケーンがこのような奇妙な場所で発生し、奇妙な方向に進んだことはおそらく観測史上では「1度もない」と言っていいはずだと思われます。

もはや本当に、海の状態(海水温度)も大気の状態もムチャクチャなことになっているからこそ、だとは言えそうな気がします。

こんなことがこれからも続くということはないだろうとはいえ、たまにでも起きるようになりますと、これまでハリケーンの被害を受けていた場所とはまったく違う場所でハリケーン被害が増える可能性があるということになります。

今回のオフィーリアは、さすがにイギリスを直撃する頃には、ハリケーンから低気圧に変わっているでしょうけれど、今後、大西洋の海と大気の状態がさらにおかしなことになっていけば、将来はわかりません。ハリケーンのままヨーロッパを暴風雨が直撃する時、という時代が来るかもしれません。

それは、具体的には、

・今よりさらに大西洋の海水温度が上がり

・しかし、大気の気温は下がってくる

というふたつの状態が現れた時に、そういう状態が発生しやすくなると思われます。

そんなことがあるかないかというと、すでに科学者たちの間では「あり得る」と予想されていることを、過去記事、

瞬間最大風速200メートルの台風やハリケーンが現実化する?:モンスター・ストームと、海底火山、小惑星の衝突の関係が MIT の研究により明らかに
 2015/10/26

でご紹介したことがあります。

その中でご紹介した記事で、マサチューセッツ工科大学の大気科学の専門家であるケリー・エマニュエル博士は下のように述べていたと書かれています。

風速 200メートル以上のモンスター・ストームを作り出すには、海水温度が、少なくとも 37.8℃にまで上昇する必要があり、このような条件を作り出すには、巨大な小惑星が熱帯の海に衝突するか、あるいは、巨大な海底火山が噴火する他はない。このようなことは、海に強烈な加熱を生成する。

エマニュエル教授と同僚たちは、小惑星の海への衝突が引き金となって発生したハイパー・ハリケーンが数百万年前の地球規模での大量絶滅を引き起こした可能性について理論化している。

ということで、

「海底火山の噴火の増加が、巨大ハリケーンの増加を促す可能性」

を示唆しています。

そして、いわゆる地球温暖化というものより「寒冷化」のほうが荒れた天候を作りやすいことも、過去記事、

「過去3000年間加速し続ける地球の寒冷化を止めることはできない」 : 南極とグリーンランドの氷床コアが語る地球過去45万年のサイクルから見る「今はまさに氷河期突入直前」だという強力な示唆
 2017/05/27

で記したことがあります。

これは私個人の想像ですが、今、地球は、下のふたつの状況に突き進んでいるように見えます、

・海底火山を含む火山活動の劇的な活溌化

・ミニ氷河期

です。つまり、海が暖かく、大気が冷たい状態になりやすくなっている。

そして、「海が暖かく、大気が冷たい状態」が最も荒い天候を生み出すのです。

完全なミニ氷河期に入るまでにどのくらいかかるかは、科学者により意見はわかれていますが、真っ当な科学者の多くが、この先の寒冷化を唱えています。このことは過去にも数多く書きましたので、下のリンクなどからご参照いただけると幸いです。

[参考リンク]寒冷化とミニ氷河期に関しての過去記事一覧

今回のオフィーリアは、そういう「気候の大転換」を予測させるもののような気がいたします。

あと、蛇足的な話ですが、ちょっとだけの「オフィーリア」の名前の由来を書いておきます。

 

 

歌をうたいながら夢見るように溺れて死んだ少女「オフィーリア」

この「オフィーリア」という名前は、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の登場人物の女性です。最後は小川に落ちて溺死してしまうのですが、「自分が溺死しているのがわからないまま楽しげに死んでいく」というようなシーンなのです。

脚本の台詞は、それを目撃したの言葉として書かれていて、以下のようなものです。

すてきな花輪を垂れた枝にかけようと、柳によじ登ったとたん、意地の悪い枝が折れ、花輪もろとも、オフィーリアはまっさかさまに涙の川に落ちたのです。裾が大きく広がって、人魚のようにしばらく体を浮かせて。

―――そのあいだ、あの子は古い小唄を口ずさみ、自分の不幸が分からぬ様子。

まるで水の中で暮らす妖精のように。でも、それも長くは続かず、服が水を吸って重くなり、哀れ、あの子を美しい歌から、泥まみれの死の底へ引きずり下ろしたのです。

つまり、オフィーリアという女性は「自分で死にいくことがわからず、川の中で歌をくちずさみながら死んでいった」のでした。

その状況を描いた美しい絵があり、それは何だかリアルで圧巻されるものです。

ミレー画 『オフィーリア』 1852年

オフィーリア

いろいろな死のシーンはありますけれど、これは創作物の中で最も感銘を与える死の描写だと思う人は多いとされています。私もまあそう思います。

自分が死にゆくことを知らないまま死んでいくというこのオフィーリアを考えながら、

「ハリケーンに、よくぞこんな名前をつけたもので」

と感心するやら呆れるやら。

なお、ハリケーンが英国などに影響を与えるのは、日本時間の 10月16日からだと思われます。



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