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2020年からの世界 人類の未来

武漢新型コロナウイルス対策全権を委任された中国人民解放軍チェン・ウェイ少将のインタビュー全文

投稿日:2020年2月13日 更新日:


・チェン・ウェイ少将(中央)と研究スタッフ。eastmoney.com




感染症戦争の最前線で戦う女性科学者はウイルスに勝てるか

先日、以下の記事を書きました。3人の女性についての記事です。

人民解放軍の生物化学兵器部門最高責任者の少将が武漢ウイルス研究所の新しい責任者に。そのことを調べるうちに浮かび上がる「優秀すぎた3人の中国人女性たち」
In Deep 2020/02/11

この記事では、武漢ウイルス研究所への派遣を命じられ、新型コロナウイルス対策の最前線で研究を続ける中国のウイルス学の最高権威のひとりで、人民解放軍の少将でもある陳薇(チェン・ウェイ)博士。

そして、武漢ウイルス研究所の(退任している可能性もありますが)所長の王延軼(ワン・ヤンイ)さん。さらには、2015年に、「 SARS ウイルスとコウモリウイルスを組み合わせてヒトの気道に感染させる可能性を見出した研究の論文」を科学誌ネイチャーに発表した武漢ウイルス研究所の研究員、石正麗(シー・ツェンリ)さんの3人をご紹介しました。

その後、現在、新型コロナウイルス戦争の最前線にいる陳薇(チェン・ウェイ)少将の経歴を調べていまして、その優秀さなどを見ているうちに、

「武漢ウイルスと戦える人はこの人しかいないのではないだろうか」

と思うようになっていました。そうしましたら、1月30日に、中国科学ニュースというメディアが、チェン・ウェイ少将に独占インタビューをおこなっている記事を見つけました。チェン・ウェイ少将が武漢入りして 5日目のことだと思います。

読んでみますと、このチェン・ウェイ少将は、「少将」という軍人の階級を持っていますが、誠実な科学者だとも感じまして、そのインタビューを全文掲載したいと思います。

なお、チェン・ウェイ少将の大まかな経歴は以下のようになります。

陳薇(チェン・ウェイ)氏の経歴と業績

[経歴]
・1988年 中国浙江大学の化学科へ入学。
・1991年 清華大学生物化学科で修士学位を取得。
・同年より 中国軍事医学科学アカデミーの微生物・疫学研究所で働く
・1995年 人民解放軍陸軍医学研究所で微生物エンジニアリングの研究
・2012年 アメリカ陸軍医科学アカデミーの微生物・疫学研究所の副所長に就任
・同年   アメリカ生物工学研究所の所長に就任
・2015年 中国人民解放軍の少将に
・2019年 中国工程院の研究員に選出

[業績]
・2003年 SARS コロナウイルスを抑制するための組換ヒトインターフェロン鼻スプレーを開発。1万4000人の医療スタッフを無感染に導く。

・2012年 炭疽菌の予防と制御の研究で画期的な進歩を遂げ、国家戦略準備剤に含まれる最初の遺伝子組み換えワクチンを開発する。

・2014年 西アフリカでエボラ熱が発生した後、世界初の遺伝子型エボラワクチンを開発。2017年に、新薬の承認を取得した世界初のエボラワクチンとなる。

陈薇 - Wikipedia

SARS の予防薬と、炭疽菌とエボラのワクチンをこの人だけで開発しているのですね……。炭疽菌はバイオセーフティレベル 3の病原体で、エボラはバイオセーフティレベル 4の病原体です。

この人ならできるのじゃないかとも思いましたけれど、ただ、インタビューで、チェン・ウェイ少将は、「新型コロナウイルスのワクチンが早期に開発されるというのは現実的な話ではありません」と述べています。

それにしても、1988年にチェン・ウェイさんが浙江省の浙江大学へ入学した時の写真を見ていまして、将来、パンデミックの中で、

「自分が何億人を助けるために戦う最前線の人物になる」

なんてことは考えてもいなかっただろうなと、ふと思いました。

あるいは、自分が人民解放軍の士官になるなんてことも。

「いろいろな人の人生っておもしろいな」と、こういう時にはよく思います。

1988年 浙江大学へ入学した時のチェン・ウェイ少将

cnxiaomi.com

いずれにしても、世界中の研究者が新型コロナウイルスの予防法とワクチンの研究を続けているとはいえ、武漢の最前線で研究している最高ランクの微生物学の研究者はこの人だけなのです。

ここからチェン・ウェイ少将のインタビューです。

このインタビューはさまざまな中国メディアに掲載されていましたので、おそらくは、チェン・ウェイ少将の唯一の最近のインタビューだと思われます。


 


twoeggz.com

疫情拐点将到?陈薇院士:最坏打算,最充分方案,最长期奋战
李晨阳/科学网 2020/02/01

転換点は来るのだろうか? 学者チェン・ウェイ氏が語る最悪の計画と最高の計画、そして最長の闘争

1月31日、中国工科大学の学者で、中国軍事科学アカデミー軍事医学研究所の研究者であるチェン・ウェイ(陳薇 / Chen Wei)氏が武漢入りして 6日目になる。その前日、チェン・ウェイ氏らによって緊急に立ち上げられた移動型の実験室が稼働を始め、新型コロナウイルスに対しての診断速度は大幅に上昇した。

チェン・ウェイ氏は、SARS とエボラ出血熱との戦いに重要な貢献をした女性科学者であり、新型コロナウイルスワクチンの開発競争においても中心となる人物と見なされている。1月30日と31日の 2日間、多忙の中をチェン・ウェイ氏は、「中国科学ニュース」の独占インタビューを受け入れてくれた。

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インタビュアー:ワクチンが最も関心を集めている問題だと思われます。現在、世間にはふたつの声があります。1つはワクチンの開発にとても近づいているという声。その一方で、短期間でのワクチン開発は難しいという声があります。どちらがより現実的だと思われますか? 

また、コロナウイルスは急速に変異することが知られていますが、ワクチンの開発は、その変異の速度に間に合うのでしょうか。どんどんワクチンが通用しないウイルスへと変異する可能性はないのでしょうか?

チェン・ウェイ氏:現在、世界中の科学者たちが、それぞれの政府の支援で新型コロナウイルスワクチンの開発を進めています。ただし、ワクチンの研究開発には固有のサイクルと規則性があり、この新型ウイルスの生物学的特性、病原性メカニズム、伝染メカニズム、そして感受性集団については、現在のところ非常に浅くしか理解されていません。そのことからも、非常に早くワクチンが使用できるようになるという考えは現実的ではないと思います。

もちろん、非常に優秀な科学研究チームにより、予想よりも速く、そしてより良いワクチンが開発される可能性を否定するものではありません。

1月28日には、アメリカのトランプ大統領が、アメリカの科学者たちが 12週間以内に新型コロナワクチンを開発すると発表しています。 中国の科学者たちの開発速度も、アメリカの速度に劣らないものになることを期待しています。

しかし、ワクチンだけが「すべて」ではありません。2003年の SARS の流行後、中国はコロナウイルス対する長期的な研究を続けています。より多くのチームがコロナウイルスの研究を続けている中では、ワクチンや薬剤よりも良い対策が見出させる可能性があります。

変異に関しては、新型コロナウイルスがどれほど速く変異したとしても、コロナウイルスのカテゴリーに属し続けます。 現在、コロナウイルスに対してのビッグデータの研究が急速に進展しています。新しい変異が現れたら、バイオインフォマティクス(生物学のデータを情報科学の手法によって解析する技術)またはビッグデータマイニング(大量のデータを統計学や人工知能などの分析手法を駆使して見出すための技術)により、一般的な標的抗原、病因、または受容体を迅速に見つけることができます。 それによりワクチンの改善を迅速に導くことができるのです。

インタビュアー:一部の専門家たちは、私たちが転換点を迎えようとしている(流行が収まる)と言っています。

チェン・ウェイ氏:確かに、そのような転換点がもうすぐ訪れるかもしれませんが、しかし、最初の転換点に到達した後、感染症の流行にはその後、 2回目や 3回目のピークが来る可能性を否定できません。この点で、私たちは、最悪の事態も想定し、最も適切な計画を立てて、最長の闘争に備える必要があるのです。

インタビュアー:17年前、あなたが開発したコロナウイルスを抑制するための抗ウイルス鼻スプレーは、SARS との戦いで重要な役割を果たしました。これにより 14,000人の医療スタッフが誰も感染することなく、防疫活動を拡大できました。この功績で、2016年の国家技術発明賞の 2位を受賞されましたね。

今回の新型コロナウイルスには、この抗ウイルス鼻スプレーが役立ちますか? また、医療関係者を除いて、一般の人が毎日の予防のためにこの抗ウイルス鼻スプレーを服用することは可能ですか?

チェン・ウェイ氏:広域スペクトルの抗ウイルス薬として、この点鼻薬は RNA ウイルスに対して比較的良い抑制効果があり、免疫の改善に一定の効果があります。

特定の医薬品がない場合、一部の最前線の医療従事者はこれを使用しています。しかし、この鼻スプレーの生産の技術的な難しさにより、まだ大規模に製造することはできていません。ただし、国がこれを予防用の緊急剤として使用できると考えている場合は、緊急の生産拡大能力は持っています。

インタビュアー: SARS と比較して、新型コロナウイルスは、より「狡猾」な感じを受けます。特に、潜伏期間中の隠れたキャリアによっても感染が起きるようですが、このように潜伏期間中に引き起こされる感染を防ぐことはほとんど不可能ではないでしょうか。

チェン・ウェイ氏:それぞれの疾患には新しい特徴がありますが、対策としては、最終的に、病原体、伝染経路、影響を受けやすい集団という 3つのリンクを制御することに他なりません。

隠れたキャリアによる感染を防ぐ方法としては、最も原始的な方法である「分離」(人と触れ合わない)が最良の方法です。人と接触する必要がある場合は、1〜 5メートル以上離れてコミュニケーションをし、できるだけ早く手を洗って消毒し、手で目をこすったり、鼻や口に触れたりしないでください。

もちろん、中国はとても大きな国で、人口も非常に多いので、これを誰もがうまく行い続けるのは難しいことだとは思います。これには、グリッドベースの社会的管理が役割を果たす必要があり、すべての管理者は、まず自分たちの足場を維持する必要があります。今、すべての中国人が一緒に動く必要があるのです。

インタビュアー:新型コロナウイルスが生体から離れた後で、どれくらいの期間生き残ることができるかについて、インターネット上で多くの意見がありますが、実際はどのくらいなのでしょうか。

チェン・ウェイ氏:現在分離されている新型コロナウイルスのほとんどは薬物スクリーニング検査に使用されているため、現時点では、それに関しての実際のデータはありません。

とはいっても、たとえそれが新しいウイルスであっても、これはコロナウイルスのファミリーであるため、コロナウイルスの基本的な特徴はあまり逸脱しないはずです。
たとえば、SARSウイルスは、土壌、ガラス、金属、プラスチック、その他の表面で 2〜3日間生存できます。

(※ 訳者注 / これに関しては、この後に、新型コロナウイルスは外部環境でも最大 5日間生存していることが中国当局から発表されています。こちらの記事にあります)

インタビュアー:誰もが、この流行を打ち負かせる必要があると言いますが、本当の勝利は何でしょうか?

チェン・ウェイ氏:感染症との戦いにおける、いわゆる勝利にはいくつかの種類があります。最も大きなものは「根絶」です。これが最も理想的な状態であり、私たちの努力の目標でもあります。しかし、人類の歴史で根絶された感染症は、迅速に根絶された天然痘とポリオなど限られたものしかなく、病原体が完全に根絶された例はほとんどないのです。

新しい病気に遭遇したとき、私たちはそれを完全に排除したいと思い行動します。しかし、時には、過剰な介入が病原体を刺激して急速に変異させてしまうことがあるのです。したがって、新型コロナウイルスに対しての「勝利」がどのような形になるかはまだ予測できませんが、すべては進展していっています。

インタビュアー:新型コロナウイルスに関する最近のいくつかの研究論文は、大きな社会的論争を引き起こしましたが、これについてどう思われていますか?

チェン・ウェイ氏:論文自体の公開には何の問題もありません。しかし、ウイルスの流行はすでに頭角を現しており、主要データのタイムリーな開示と共有は、すべての関係者が協力して流行を予防および制御する努力を助長するものであり、これは注意と立法保護が必要な問題です。

インタビュアー:この新型コロナウイルスの流行とその予防について、どんなことをおっしゃりたいですか?

チェン・ウェイ氏:流行の予防と制御は、流行が来るまで待ってはいけません。

国は、流行予防に関する科学研究のホワイトリストを確立し、真に強力な「最高科学者システム」を形成する必要があります。私たちは、特定のウイルスやバクテリアに対して、生涯にわたる綿密な体系的研究を実施するチームのグループを長い間サポートしてきました。

単一のチームが危険にさらされていると思われる場合は、Aチームと Bチームを交互に設定することもできます。このようなことで、国の投資は現在よりもはるかに少なく、研究実行に費やすことができると思います。

最も重要なことは、一度流行が起きたなら、たとえ事故があったとしても、それに対して対処すべき方法を知っている人たちがいる、最も権威のあるチームを素早く見つけることができるというシステムを作ることです。速度が大事です。

多くの人たちは、新型コロナウイルスへの戦いを中国の科学者たちにできると信じていますが、しかし、実際には、いまだにその役割と権限は限られています。この新型コロナウイルスの流行によって得られた問題と得られた経験は、慎重に分類する必要があると思います。

今後、わが国は、感染症の流行のフィードバックプロセスを立法レベルから管理し、各部門の主な機能を明確に定義し、情報の開示とデータ共有が早すぎて不透明であることに起因する悪影響を排除していくべきです。

さらに、ワクチンや特定の薬物がない場合は、病気のリハビリテーションをしている患者の血漿は、臨床的に特異的な治療のための最もアクセスしやすい資源となるのです。伝統的な中国文化は、深刻な病気の後の回復を提唱しているため、これまで多くの回復待ちの患者たちは、自分の血漿を提供することに消極的なのです。

本日(1月31日)の朝、中国科学技術省は「新型コロナウイルス肺炎患者から血液サンプルを採取する際の支援を要請するための手紙」を発行しました。その後、22人の回復待ちをしている患者の方々が、血液サンプルが血漿提供基準を満たすかどうかをテストすることに意欲を表明してくれました。彼らの何人かはとても衰弱しており、採血が困難であるにも関わらずです。私は感動しました。

インタビュアー:流行地の最前線である武漢に赴いて、印象に残る光景は何ですか?

チェン・ウェイ氏:医療従事者たちは非常に疲れています。

昨日(1月30日)の朝、私は武漢の金銀澤病院で院長と面会しました。院長は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を煩っており、妻は新型コロナウイルスに感染しています。しかし、院長は最前線で治療を続けていました。私は院長に「私はあなたの行動にとても感動しています」と声をかけました。

インタビュアー:院長はどうおっしゃいましたか?

チェン・ウェイ氏:「私もあなたの行動に感動している」とおっしゃってくれました。

 

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