あまりにも意外だった武漢ウイルス研究所を巡る状況
ちょっと今日少し驚きましてですね・・・。
えーと、新型コロナウイルスについては、まあ「陰謀論的」といわれればそれまでですが、武漢にあるウイルス研究所のことを含めて、以下のようないくつかの記事を書きました。
・新型ウイルスが発生した中国武漢は「世界で最も危険な病原体(バイオセーフティーレベル4)」を研究する施設がある場所だった。そこで沸き起こる「兵器化された病原体が流出したのではないか」という懸念
In Deep 2020年1月24日・新型コロナウイルスに「HIV (エイズウイルス)」のタンパク質が挿入されていることをインド工科大学の科学者たちが発見。さらに「感染しても免疫を獲得できない示唆」を中国当局が示し、事態は新たな局面に
In Deep 2020年2月1日・周博士の異常な愛情 または私はいかにして心配するのを止めてSTINGを愛するようになったか
In Deep 2020年2月3日
これらの記事に共通するのは、舞台となっている場所が、新型コロナウイルスの発生源とされている中国武漢にある「武漢ウイルス研究所」であることです。
この武漢ウイルス研究所は、バイオセーフティーレベル4(中国では「P4」と表記)の最高危険レベルの病原体を取り扱うことができる実験施設で、正式名称は、武漢国家生物安全研究所であるそうです。
これらの上の記事を書いていた時は、コウモリを使ってコロナウイルスについての研究を担当していた研究所の科学者のひとりである周鵬さんという男性などのことについてふれたりしていました。
現在、台湾やアメリカから発信されている中国語のメディアで、この「武漢ウイルス研究所」に関しての様々な報道が展開されています。それらの報道のほとんどが中国語であるということもありまして、あまり中国語は得意ではないですので敬遠していたのですが、最近この研究所に関係して、非常に注目を集める報道がありました。
それは、この武漢ウイルス研究所の新しい責任者に、
「中国人民解放軍の少将が着任した」
という報道でした。
この少将は、生物化学兵器部門の最高責任者だと記されています。
中国人民解放軍の階級も、他の各国の軍隊の階級とほぼ同じで、階級の最も高いのが、上将(他の国では大将)で、そして、中将、少将となります。つまり、少将は上から三番目の人民解放軍の非常に高い階級にある士官ということになります。
そういう士官が、武漢ウイルス研究所で直接指揮を執ることになったということらしいのですが、人民解放軍の機関紙「解放軍報」には、 1月31日に、この少将が武漢に入り、新型コロナウイルスによる肺炎の防疫対策に当たっていると報道していました。
ですので、武漢ウイルス研究所にも出向いていたとは思うのですが、そのまま責任者になったということのなのでしょうかね。
さて、この生物化学兵器部門の最高責任者の方は、陳薇(チェン・ウェイ)という名の少将なのですが、54歳の「女性士官」なのです。
人民解放軍・生物化学兵器部門の最高責任者 陳薇少将
・ltn.com.tw
まずは、その陳薇少将が、武漢ウイルス研究所の最高責任者になったことを報じる台湾の自由時報の報道をご紹介します。本日 2月11日の報道です。
漢字が読みにくいですので、チェン・ウェイ少将とカタカナで表記させていただきます。
武漢肺炎》解放軍女少將進駐 武漢P4實驗室形同軍管
自由時報 2020/02/11
武漢ウイルス:武漢の P4 実験室に進駐する人民解放軍の女性少将
中国武漢での新型コロナウイルスによる肺炎の流行は深刻だ。最近、湖北省の常任委員会として中国国家保健委員会の副局長である王和生氏が任命されたほか、中国政府は武漢 P4 研究所(武漢ウイルス研究所)の研究員たちを率いる責任者に、特別なウイルス研究と生物学的保護の専門知識を持つ中国軍のチェン・ウェイ少将を割り当てた。武漢ウイルス研究所は軍の管理下状態にある。
チェン・ウェイ少将は生物学的保護の分野で国際的な評価を得ており、 SARS の流行期間中に SARS を予防するための鼻スプレーを開発したほか、 SARS のコントロールのために 14,000人以上の医療スタッフを予防措置に際して大胆に展開させた。
そして、結果として、その 14,000人の感染予防医療スタッフたちは、ひとりも SARS に感染しなかったため、チェン少将は、この SARS での最初の戦いで世界で最も著名な人物のひとりとなり、また、軍事科学アカデミーの医学研究メンバーから高い敬意を受けている。
武漢 P4 研究室の正式名称は、「中国科学院 武漢国家生物安全研究所」であり、これは、中国科学院と武漢市政府との共同建設であり、中国初のセーフティレベル 4 (最高レベル)の病原体を扱うことのできる研究所であり、セーフティレベル 4の施設はアジアでは、日本と台湾に次ぐものとなる。
中国新華社の公式レポートによると、チェン少将は、旧正月の 2日目(1月26日)に武漢の研究チームを率いるように命じられた。チェン少将が責任者となって以来、ウイルスの核酸検査の効率化により、検査時間が大幅に短縮され、診断件数は加速した。
現在流行している肺炎が、武漢 P4 研究所で研究されたウイルス流出に関連しているのではないかと疑う専門家たちが国際的に数多くいるが、中国当局はまだ反論するための強力な証拠を発行していない。
そのような中で、ウイルス研究のスペシャリストであるチェン・ウェイ少将の存在と、その着任は、両者の関係についての国際社会の疑念と、さまざまな推測を深めているようだ。
ここまでです。
SARS の予防活動の際に、1万4000人の防疫スタッフをひとりも感染させなかったというあたりにしても、すごい人だというのはわかります。
現状としては、このくらいのウイルスのスペシャリストが「何か」を進めないといけない状況にもなっているのですかね。
さて……。
このように、ウイルス研究に関して凄腕のチェン・ウェイ少将が武漢ウイルス研究所の研究員たちを率いることになったようなのですけれど、では、もともとの武漢ウイルス研究所の「所長」はどんな方なのか。
これがまた何と、女性なのです。
王延軼(ワン・ヤンイ)さんという 39歳の若き女性科学者なのでした。
武漢ウイルス研究所のワン・ヤンイ所長
・世界日報
ワン・ヤンイさんについての中国語 Wikipedia の冒頭は以下のようなものです。
ワン・ヤンイ(1981 - )は、中国人民共和国の生物学者。武漢大学のウイルス学者であり、中国科学院の研究者でありディレクター 、そして、武漢政協委員のメンバーであり、武漢市委員会の副所長を努める。
という華麗な肩書きを持ちます。学歴としては、北京大学で学士号を取得した後、アメリカのコロラド大学で修士号を取得したという中国でのエリート中のエリート中のようです。
その後、武漢大学生命科学部の准教授にまで昇進した後、ワン・ヤンイさんは、2012年3月、武漢ウイルス研究所に異動となり、2018年10月に所長に就任したと書かれてあります。
この年齢で、バイオセーフティレベル 4の研究室の所長になるというあたり、本当に優秀なウイルス学者なのだと思います。
しかし、こちらの報道では、国際的に存在する疑惑(武漢研究所からウイルスが流出したのではないかという疑惑)と関係しているのかどうかわからないですが、中国科学アカデミーの判断としては、ワン・ヤンイ所長を辞任させるのではないかとあります。
人民解放軍のチェン・ウェイ少将が研究所を率いることが報じられている時期とリンクしていますので、そういうこともあるのかもしれません。
ところで、2月8日の世界日報には、この武漢ウイルス研究所が設立される経緯が記事となっています。
真偽はわからないですが、おおむね以下のような経緯だと述べられています。
武漢ウイルス研究所について世界日報の報道より
・武漢ウイルス研究所 BBC2月7日に放送されたメディア「燕銘時評」の報道によると、中国科学アカデミーの中の「上海生命科学アカデミー」についての知識を持つ某氏の話が伝えられた。
某氏によると、1989年6月に江沢民が中国の政権を握った後、彼の息子の江綿恒は中国科学院に入学した(後に、中国科学院副院長に就任)。
江綿恒は、ハイテクノロジー研究所の研究開発を担当し、再編成を主導し、上海生命科学院(上海生物科学院)を設立した。これにより、中国科学院、上海生物科学院、上海大学、上海病院、軍事病院研究所で構成される上海のヘルパーシステムの輪を確立した。
その後、操作生物学の分野での主要な研究プロジェクトの設立と莫大な資金の配分により、医療バイオテクノロジーの分野で上海政府と企業の利益団体が形成された。それは、江綿恒により武漢大学に組入れられ、軍事、産業、および化学兵器を含む重要な施設である中国科学アカデミー武漢ウイルス研究所を間接的にコントロールした。
よくはわからないですが、ずいぶん以前から、この武漢の研究所は、医療においても軍事においても、重要な施設だったということなのかもしれません。
そして、さらにですね。
この武漢ウイルス研究所には、
「 SARS ウイルスとコウモリウイルスを組み合わせることによって、最初に、ヒトの気道に感染する新しいタイプのコロナウイルスを作成した科学者」
の存在があるということをアメリカのニューヨークに拠点を持つ中国語専門の報道メディアの「新唐人テレビ(NTD)」が報じていたのです。
それがまた・・・その方も女性で。
その方は、武漢ウイルス研究所の研究員である石正麗(シー・ツェンリ)という名の方なのでした。
2018年11月 上海でコロナウイルスについて講演を行うシー・ツェンリ研究員
・ntdtv.com
この「 SARS とコウモリウイルスを組み合わせる研究」は、アメリカ人研究者と共に行ったもので、2015年の科学誌ネイチャーに論文が掲載されています。
タイトルは、
・A SARS-like cluster of circulating bat coronavirises shows potential for human emergence
(コウモリに流通している SARS 様コロナウイルスのクラスターが、ヒトにも出現する可能性を示した)
要するに、「コウモリにだけ蔓延しているコロナウイルスをヒトの気道に感染させられるメカニズムを見出した」という研究のようです。
先日の以下の記事では、「過去のウイルス研究には、やや危険なものもある」というようなことについて少しふれました。
国家総動員法にあたる「人民戦争」を中国が宣言する中、「私たちはウイルス黙示録にとても近い時代に生きている」ことを初めて知る
In Deep 2020/02/09
そして、このシー・ツェンリ研究員たちによる研究も、かなりの懸念を巻き起こしたようです。
新唐人テレビの報道には以下のような下りがあります。
新唐人テレビの報道記事より
このコロナウイルスに対しての研究は、当時、学問的な懸念を引き起こした。科学誌ネイチャーは、他のウイルス学者たちが、この研究の必要性に疑問を呈していることを報告しており、そのような実験は、大きなリスクを伴うと主張した。
パリのパスツール研究所のウイルス学者は、「ウイルスが流出した場合、誰もその行き先を予測することはできないのです」と指摘した。
このようなタイプの研究は、バイオセキュリティ上のリスクを考慮して、長く非難されたため、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は 2013年10月以降、こうしたすべての研究への資金提供を停止した。しかし、上記の論文の研究は、アメリカが資金提供を停止するずっと以前に始まったため、国立衛生研究所はこの研究を発表したという経緯がある。
今流行している新型コロナウイルスが、今回ご紹介しましたようなことと関連しているかどうかはわかりようがないですし、そもそも、これらの報道の真偽もわかりようがないです。
ただ、以下のことは事実だと思われます。
・人民解放軍の生物兵器担当の最高専門家が今後の武漢ウイルス研究所の指揮を執る。
・武漢ウイルス研究所は、優秀な女性所長の下で、研究員たちと共に SARS とコウモリのウイルスを組み合わせたウイルスの研究を続けていた。
今回ここに出てきた主要な人物のすべてが女性だったということに、特に具体的な理由はないとはいえ、正直驚きました。
皆さん、優秀すぎる方々ですけれど、その優秀さが「善」に向かえば、きっと良い方向は見つかると思います。
願わくば、極めて優秀なウイルス専門家でもある中国軍のチェン・ウェイ少将などに突破口を見出していただけることを祈っております。
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