アメリカ地質調査所の調査結果に関する報道
英国に続いて、アメリカでも淡水域の多くでシアノバクテリアの毒素(英国研究でアルツハイマーとの強い関係を示唆)の増加が始まっていた
少し前に、
・アルツハイマー病とALSの外部的原因の特定? : 青藻が作り出す毒素 BMAA が神経変性疾患発症の直接的外部要因として関与している可能性が濃厚に
2016/01/24
という記事を書いたことがあります
これは、英国デイリーメールの「アルツハイマーの「原因」を発見 : イギリスの淡水湖や貯水池で見つかった有毒藻類は英国の100万人を苦しめている認知症の流行をさらに加速させてしまうかもしれない」というタイトルの記事(こちらの記事)をご紹介したものでしたが、専門家たちの最近の研究では、
> 藻類が作り出す毒素(BMAA)がヒトに脳疾患を引き起こす可能性の証拠
を発見したというものでした。
BMAA などというとわかりづらいですが、これも含めて、水中で繁茂する「藻類」(シアノバクテリア)が作り出す毒素のことです。デイリーメールの図説では、下のようになっていました。
水中のバクテリアが認知症を発症させる仕組み
1. 水の中に藻が発生
2. 毒素”BMAA”が作られる
3. 毒素が食物連鎖に混入
4. それらが脳の”もつれ”の引き金に
「食物連鎖に混入」ということは、人間の場合は、流通を通して広くそれらの食品が拡散するということも含みます。
そして、その記事は「その毒素を出す青藻がイギリスで増加していて、これが、英国内での認知症の劇的な増加と関係している可能性がある」ということについて書かれていたものでした。
そして先日、今度は「アメリカ」でも淡水環境中の「藻類の毒素の水準」が非常に高いことが初めて示されました。
この藻類の「強い毒素」は、ミクロシスチンというものです。
ミクロシスチン - Wikipedia
ミクロシスチンは、ミクロキスティス属を中心としたシアノバクテリアによって生産される毒素である。
ミクロキスティス属は湖沼等においてアオコを発生させることで知られ、アオコに含まれるミクロシスチンは強い肝臓毒活性を示す。ミクロシスチンを含む水を継続して摂取した場合、肝臓に対する発がん性があることも指摘されている。
日本では霞ヶ浦や印旛沼など、富栄養化の進行した水域でしばしばアオコが発生し、それに伴って水からミクロキスチンが検出される。ただし原水にミクロシスチンが含まれる場合でも、浄水から定量下限(0.0001mg/L)を超えて検出された例はない
ここでは、日本での定量の下限が 0.0001mg/L( 1リットル中 0.0001ミリグラム)となっていますが、今回のアメリカでの調査で検出された値は、後でご紹介しますレポートから抜粋しますと、
> (調査水域の) 39%の河川からミクロシスチンが検出された。濃度は、中央値が 1リットルあたり 0.29マイクログラム (µg/L) で、最大値は 1リットルあたり 3.2マイクログラムを検出した。
とありまして、これらの「単位」というのは実にややこしいのですが、「1マイクログラム=0.001ミリグラム」だそうですので、アメリカの調査では、
・平均値が 0.00029ミリグラム
・最大値が 0.0032ミリグラム
ということになるようで(本当にこれで合ってるのかどうかは自信ないですが)、もしこの数値が正しければ、アメリカの淡水河川は、平均値レベルで、日本のミクロキスチンの下限を上回っているといえます。しかし、日本の調査も平成 10年ということで、ずいぶんと以前ですので、今調査すれば、違ったものになっているような気もします。
いずれにしても、アメリカで最大の値が検出された川では、基準の何十倍という濃度だということになりそうですが、この状況は、先ほどリンクしましたアルツハイマー病とALSの外部的原因とシアノバクテリアの関連の可能性の記事で書きましたイギリスでも同じようなことになっている。
他の国はわからないですが、少なくとも、アメリカとイギリスでは、淡水の藻類毒素が増えているということになります。
しかしまあ、このふたつの国で増えているというのなら、ヨーロッパの他の国々や、あるいは、日本はどうかわからないですが、それも含めて、これは「おそらく」としか言いようがないですが、「世界的に水の中の藻類の毒素が増えている」と言えるような気がします。
これの何が問題かというと、先日の記事の英国の研究が正しければ、
・藻類の毒素はアルツハイマー病を含む神経性疾患の原因となる
ということです。
そして、それと共に、今回の記事でふと思ったことは、過去記事で限りなく取り上げたことがありますが、かつてなかった規模の川や湖での魚類などの生物の大量死が増えていることに関して、その理由は曖昧な部分以外ではわからなかったのですが、もしかすると、
・水中の藻類の毒素の増加が大量死の原因となっているのでは
とも思ったのです。
生活しているだけでガンとアルツハイマー病のリスクを持つ現代の世の中(そして根本の原因は不明)
過去記事には、大量死の記事がとても多いです(こちらのリンクに一覧があります)。
海の大量死が目立ちますが、実は内陸部の淡水でも、魚、鳥などの大量死がとても多いこの2〜3年でした。
これらの、
・アルツハイマー病の増加
・水中の大量死
が、どちらも環境の藻類毒素の増加によるものかもしれない・・・と思ったわけですが、まあ、もちろんこれは推測にすぎません。
しかし、現在「藻類毒素が増えている」こと自体は事実で、藻類毒素が非常に強い毒素であることも事実です。
藻類の毒素がある一定以上増えていくと、おそらく確実に、その水を飲料水としてしている人や動物に影響が出るでしょうし、あるいは、食物連鎖の中で取り込まれた毒素は、魚を食べたり、あるいはその魚を食べる動物を食べたりすることで、食物連鎖の中を循環しているような気がします(なので、ものを食べている限りはこの循環からは逃れられないということでもあります)。
藻類の毒素は、先ほどの Wikipedia にもありましたが、「ガンの要因とも関係がある可能性」が言われています。
今、どこの国でもガンがものすごく増えていますが、これも推測にしか過ぎないですが、
・ガンの発生が増えているのも、藻類毒素が循環することによって、人の体内に多く入っているため
という推測は、これは考えすぎでしょうかね。
それにしても、どんな病気にしても、「最近はその増え方が異常」なんですよ。
しかも、主要国などでは、今の世の中は多くの人が「昔より健康に気をつかっているのに」です。
日本のガン死亡者の推移
・厚生労働省
日本のALS患者数の推移
・病気VS人類2015 難病ALS
みんなタバコはやめる、酒はやめる、ウォーキング人口は過去最高、野菜をよく食べ、健康食品をたくさん飲んで・・・というような人が以前とは比べものにならないほど増えているような「健康大国・日本」が、実際には、以前と比べて全然健康じゃないという事実。
原因はいろいろとありますでしょうが、今回の藻類毒素のことも関係しているような気はします。
そして、「もしそうなら」、そして、仮に現在の食物連鎖と食物の循環の中に藻類毒素が行き渡っているとすると、これら毒素の体内への侵入を防ぐことは難しいと思います。
私たち日本は食べているものの多くが海外からやってきていて、あるいは、国内のものであっても、彼ら魚や貝や鳥やほ乳類がどのような環境で育ち、何を食べてきてのかはよくわかりません。
まあ、完全に菜食主義とか、そういう人以外は「全世界の藻類毒素の食物連鎖への侵入増加傾向」から逃れるのは難しいのかもしれないですね。
いや・・・植物も水で育ちますので、菜食だけでどうこうなるということでもなさそうです。
それにしても、「こんなに健康ブームが渦巻いている中で、どうしてガン患者が飛躍的に増えて、認知症が飛躍的に増え続けているのか」という原因の一端がここにあるのかもしれないという「疑問の解決」にはなるのかもしれません。嬉しいことではないですけれど。
問題を解決するには、この「藻類の毒素を水中から減らすにはどうしたらいいのか」ということなんでしょうが、アメリカ地質調査所が、
> ミクロシスチンの発生分布の大きさや、それを制御するための環境衛生の重要性の因果要因は今のところよくわかっていない
と書いているように、「いろいろとよくわかっていない」のですから、問題解決は「基本的には現状ではできない」ということで、ガンや認知症に今回書いたような要因が関係していれば、
・アルツハイマー病は今後も世界中で増え続ける
・ガン患者は世界中で増え続ける
・水と関係した動物の大量死はこれからも増え続ける
ということになりそうです。
この3つのことは、曖昧な予測として、ある程度は覚悟していたことですが、「その理由がわからない」というところからは少し脱せそうです。まあ、問題は何も解決しないまま進みそうではありますが。
そして、今回書いたことが多少でも正しい面があれば、ほぼ全員が同じような食物連鎖の中で生きているということですので、つまりは、「すべての人がガンやアルツハイマー病のリスクファクターの中に生きている」ということが言えそうです。
嬉しくはないことですけれど、ある意味で「平等」ではあります。
あとは、これからの世の中で、ガンと認知症がどのくらいの勢いで(おそらく今の何倍ものペースで)増加していくのを見ながらの生活ということになってしまうのでしょうか。もちろん私自分自身も常にリスク要因の中に生きていることを自覚しながらということになるのですけれど。
ここからアメリカ地質調査所の報告をご紹介します。
U.S. Geological Survey Scientists Complete First Systematic Regional Survey of Algal Toxins in Streams of the Southeastern United States
USGS 2016/02/17
アメリカ地質調査所の科学者は、アメリカ南東部の小規模河川での藻類毒素の最初の地域的調査を完了した
アメリカ質調査所(USGS)の科学者たちは、アメリカ南東部の小規模河川の 39%にあたる 75の河川から藻類毒素のミクロシスチンを検出したと発表した。これらの結果はすべて通知され、アメリカの河川での藻類毒素の状況に関しての最初の体系的な全国調査の一部となる。
シアノバクテリアは光合成微生物で、世界中の川、湖、湿地、海洋の中に存在している。
シアノバクテリアは、ヒトを含む、細菌、藻類、昆虫、植物、貝類、魚類など生物の広い範囲に影響を有することができる毒素(シアノトキシン)を産生することで知られている。
しかし、毒素産生が誘発される要因は今もよく理解されていない。
シアノ毒素で最も一般的に報告され、広く研究されているもののひとつにミクロシスチンがある。これは、ヒトや生態系の健康への、深刻で広く増加している影響への大きな懸念が持たれている。
アメリカの河川でのミクロシスチン発生の理解を進めるための調査の最初のステップとして、アメリカ地質調査所では、1993年から 2011年までの河川で採取された生物とシアノバクテリアの過去のデータを同定した。
この期間中、調査の対象となったのは、アラバマ州、ジョージア州、サウスカロライナ州、およびノースカロライナ州の河川源流の 74%にあたる水域だ。
ミクロシスチンは、研究の初期には測定されなかったが、現在、シアノバクテリアによって、ミクロシスチンが産出される重要な証拠を提供している。
その証拠を得て、アメリカ地質調査所はその後、ミクロシスチンの分析のため、アメリカ南東部で、都市部と、農業利用されている 75の河川から環境サンプルを収集した。
研究領域内の永続性とミクロシスチン発生の時間的な変動の洞察を提供するために、サンプルは、2014年 8月、9月、10月にそれぞれ採取された。
その結果、そのうちの 39%の河川からミクロシスチンが検出された。濃度は、中央値が 1リットルあたり 0.29マイクログラム (µg/L) で、最大値は 1リットルあたり 3.2マイクログラムを検出した。
採取されたミクロシスチン濃度は、いずれの河川でも、世界保健機関(WHO)の定めたリスク基準である 10マイクログラムの閾値を超えてはいなかった。
この研究は、アメリカのいくつかの地域での藻類毒素の評価としては最初のものであり、アメリカ全土での同様の調査を文書化する際の基礎データを提供するものだ。
ミクロシスチンの発生分布の大きさや、それを制御するための環境衛生の重要性の因果要因は今のところ、よくわかっていないままだ。
今回の調査からの理解が、シアノバクテリアの関連毒素の曝露が、環境に対してどのような新たな影響を作り出す可能性があるのかという要因を研究するデータとなるだろう。
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