2016年7月21日のデンマークのメディアより
・dr.dk
クリズウェルを思い出させる最近のこの世の光景
本日 2016年7月22日、先日の「非リアルのリアルへの介入…」という記事で少しふれたスマートフォンゲーム「ポケモン GO 」の配信が開始されたことが報じられていました。
配信開始直後には、近畿大学でポケモン GO をプレイしていた大学生が階段から落ちて救急車で病院に搬送されるという、いわゆる海外で定着した表現ともいえる「病院へ GO 」事案もすぐに発生しています(報道)。
話は変わりますが、かつて、「史上最低の映画監督」と言われたエド・ウッドという男性の生涯を描いたティム・バートン監督の 1994年の映画に『エド・ウッド』という作品があります。
当時、ハリウッド史上最高の収益を得ると言われたティム・バートン監督が、ハリウッド史上で最低と呼ばれた映画監督を描いたということで話題になりましたが、ジョニー・デップ主演のこの映画は、むしろ情緒的でハートウォームな素敵な映画でした。
この映画の中に、クリズウェルという、エド・ウッドの知人の実在だった人物が役として登場します。このクリズウェルという人は、英語版 Wikipedia などによれば、大体下のような経歴の楽しい人です。
1950年代、アメリカのローカルテレビ曲のニュースキャスターをしていたクリズウェル。当時、テレビがすべて生放送だったため、頻繁にニュースが途切れることがあったが、ある時、ニュースが途切れた際に、「では・・・わたくしクリズウェルが、これから起こることを予言しましょう」と言い出し、「これから起こるであろうこと」を、おそらくは思いつきで語り始めた。
のですが・・・何とそのうちのいくつかの事件が当たっちゃったんですね。本当に起きてしまったのです。
適当に言ったことが。
テレビを見ていた視聴者たちは、「あれは誰だ。もう一回彼をテレビに出して、予言を聞かせてくれ」という騒ぎに。
これに関して、20年以上前に出版されたものですが、数々の B級や Z級映画の世界をふんだんに紹介した歴史に残る一冊といえる、映画秘宝の『エド・ウッドとサイテー映画の世界』によれば、その時、クリズウェルは周囲に、
「これは、俺はもしかすると、ものすごい金鉱を掘り当てたかもしれない」
というようなことを言っていたようです。
そして、その言葉通り、クリズウェルは人気予言者となり、クリズウェルの予言は、「クリズウェルは予言する」というタイトルの独立した人気テレビ番組となりました。
クリズウェル
・Ed Wood. The man, his films, and their meanings
もちろん、クリズウェルには予言能力などはありはしませんでしたが、彼は生涯を通じ、本やテレビを通じて数多くの予言を残しています。
その予言の中のひとつに、それが起きるとされる年代は不明ですが、下のようなものがあります。
「人類がみんな楽しく気が狂う」
最近、世界のいろいろなところから伝えられる「ポケモン GO クレージー」を見ている時に、ふと、このクリズウェルの言葉を思い出した次第です(長い前置きだったな)。
日本は、まだ配信されたばかりで、それほど話題があるというわけでもなく、話題といえば、下の写真のどこかの学校のものくらいですが、海外での騒動はいろいろな方向性のものとなってきています。
どこかの学校「授業時間中のポケモンGOは退学に処す!!」
ポケストップになった場所の行き着くところ
ちなみに、冒頭のピカチューとイエス・キリスト像の写真は、デンマークの報道にあったもので、コペンハーゲンのトーヴァルセン教会というところが、「ポケストップ」となっていて、人々がたくさん押し寄せているというような記事です。
この「ポケストップ」というのは、ポケモンを捕まえるためのツールなどを含めて、そこにいれば、さまざまものを入手することができる場所だそうで、いろいろな国の名所や、神社や公園など、世界中のモニュメント的な場所にあるものなのだそう。
コペンハーゲンでは、その有名な教会もまた、ポケストップになっているようで、普段より多くの人が教会に来ているという内容でした。
スマートフォンには下のように表示されるのだとか。
このポケストップが多く集まる場所は、世界中で大変なことになっています。
下は、ドイツの、川にかかる橋の「脚の4か所すべてがポケストップ」となっている場所の、その橋の上です。ご覧の通り、毎日毎日この調子でポケモン GO プレイヤーたちが1日中座り、宅配でピザとかを頼んで、ここから離れないのだそう。
ポケストップが集中しているドイツの橋の上
これなども、「あー、クリズウェルの言葉を思い出すねえ」と納得した次第です。
また、サウジアラビアでは、久しぶりに「ファトワー」と呼ばれる、イスラム教の教理の立場から行われる宗教的勧告が、ポケモン GO に対して、出されたとか出されないとかという話になっています。
さまざまな宗教と戦うポケモンたち
2016年7月21日の中東の報道より
この記事によりますと、サウジアラビアでは、まだ正式にはポケモン GO の配信はおこなわれていないのですが、多くの人たちが様々な方法でダウンロードをして、すでにプレイしていることに対して、サウジアラビアの宗教当局がどのように出るかが注目されていました。
それはぜか。
実は、サウジアラビアのイスラム教聖職者当局は、今から 15年前の 2001年に、
「ポケットモンスター・カードゲームに対しての宗教的禁止勧告」
を出していたのです。
その理由は、上の記事で知りましたが、何と、
「ポケットモンスターは、ダーウィンの進化論の思想に基づいているもので、イスラム教は進化論を認めていないので、ポケモンはダメ」
ということで、また、カードゲームというものが、イスラム教で禁じている賭け事に当たるというのも禁忌事項にあたるそうです。
そのようなこともあり、ポケモン GO についても、イスラム教的な観点から宗教的な禁止勧告が出されたとされていたのですが、その後、ロイターなどの報道では下のようになっていました。
サウジは宗教令復活を否定、「ポケモンは反イスラム」と表明せず
ロイター 2016/07/22
サウジアラビアは21日、同国の聖職者団体が15年前に発令したポケモンのカードゲームが反イスラムだとする宗教令(ファトワ)を復活させたとの報道を否定した。
サウジのメディアは20日、イスラム教聖職者団体である高位宗教学者協会事務総局が、教徒の質問に答えて、2001年に発令されたファトワを再び持ち出したと報じていた。これに対し、サウジ当局は20日の報道は事実無根であると否定。
文化情報省の国際通信・メディア担当次官は「高位宗教学者協会は、ポケモンのゲームに関する新たなファトワ発令について否定した。高位宗教学者協会も、新しいポケモンのゲームに関して、宗教令を一切出していないとツイートした。
ということで、サウジアラビアのイスラム聖職者協会は、ポケモンのカードゲームはダメでも、ポケモン GO は OK という判断をしたようです。
進化論のほうは?
いいの?
まあ、それにしても、ポケモンゲームごときに大変なことですが、しかし、サウジアラビアは、そのへんはやりますからね。
2015年の 1月に、サウジアラビアでは珍しい「雪」が降りまして、多くの人々が雪だるま作りを楽しんだのですが、そこに、「イスラム教徒は雪だるまを作ってはいけない」という宗教的禁止勧告のファトワーが出されたことがあります。
偶像崇拝を禁じているイスラム教の解釈では、「雪だるま作りも偶像崇拝にあたる」として、これを禁止する勧告を出したのです(後になって、「子どもは雪だるまを作ってもよい」ということになりました)。
これについては、
・サウジアラビアで宗教的な禁止勧告を出された「雪だるま作り」への反発とか…
2015/01/17
という記事に記したことがあります。
2015年1月13日の報道より
・BBC
イスラム教だけではなく、キリスト教関係のメディアでも、ポケモン GO に言及しているものは数多くありますが、ものすごいものになりますと、ラジオキャスターをつとめているリック・ワイルズという牧師さんの下のような発言もあります。
2016年7月14日のGIZMODOより
・ISIS Will Use Pokémon Go to Murder Innocent Christians and Spawn Demons
この牧師さんの発言を聞きましても、先ほどのクリズウェルの予言をしみじみと感じます。
そして、宗教とは関係のない、たとえば CIA などの絡む陰謀論は、アメリカ国内でも、外国からも非常に数多く発信されていますが、このあたりの話は現時点ではカオス化していて、ここにちょろっと書けるようなものでもないですので、興味深い進展があれば、ご紹介することもあるかと思います。
情報収集ツールであるようなことも含めての陰謀論ですが、しかし、今はまずパソコンやスマートフォンと、その OS 自体が完全に(誰によるものかはわからないにしても)情報収集ツールだということは、私も含めて、皆がわかって使っているという社会ですので、それ以上の何でもないような感じはしますが。
そういえば、1960年にアフリカのコンゴ湾上流で捕獲されたオリバー君が先日・・・ん? あ、オリバー君は珍しいチンパンジーでした。
そちらのほうではなく、プラ何とかという映画で有名なアメリカの映画監督であるオリバー・ストーンさんは、(彼の考える)ポケモン GO の危険性について以下の報道のように指摘していました。
オリバー・ストーン監督、ポケモンGO現象に「全体主義」を危惧
AFP 2016/07/22
映画監督のオリバー・ストーン氏(69)が21日、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の世界的なブームについて、全体主義に導かれ得る「新たな段階の侵略」と表現した。
ストーン監督は、米サンディエゴで開催中の「コミックコン2016」の初日、アメリカ国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者をモデルにした同監督の新作映画の討論会で、「ポケモンGO」は「監視資本主義」のより大きな文化の一環だと述べた。
「率直に言って、そこにあるのは新しい形態のロボット社会だ。そこでは、皆さんがどのように行動したがっているのかが把握され、その行動に合わせたモックアップが用意・提供される。いわゆる全体主義というものだ」と警鐘をならした。
確かにそういう側面はあるのかもしれません。
けれど、もう何かそういう理性を超越したクリズウェルの予言的な世界があちこちで出現しているようです。
もちろん、所詮はゲームですので、すぐに熱狂は冷めるでしょうけれど、その次にもまた新たな「人類がみんな楽しく気が狂う」システムが用意されているのなら、それは仕方ないのかなと。
そういえば、ポケモンGOといえば、今では恒例となっている感のある下の事案も、まだまだ世界的に広がっているようです。
2016年7月20日の報道より
・Danish Pokémon Go player finds dead body
というわけで、良いか悪いかの判断ではなく、妙に気になる、ポケモン GO そのものというより、「ポケモン GO が作り出す社会の光景」なのでありました。
しかし、スマートフォンを持たない私は、結局このゲームとふれることはなさそうで、プレイしている人たちの熱狂をうらやましく眺めているだけということになりそうです。
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