真実の感染拡大状況
新型コロナウイルスの各国の感染拡大状況は以下のようになっていまして、ロックダウンが続けられている西洋の国はどこも増加が止まりませんが、特にアメリカの急激な増加は大変なものです。
上は 4月18日までのもので、その時点でアメリカの感染確認者数は、69万4000人あまりとなっていますが、2日後の本日 4月20日は、75万4000人となっていて、相変わらず、激しく感染確認数が増え続けています。
世界全体の感染確認者数は、本日の時点で「 204万 8145人」となっています。
ところが、4月15日に医学誌ランセットに発表されたドイツのゲッチンゲン大学の研究によれば、計算からは、この数値は、
「世界の感染者全体の 6%ほどしか示していない」
ことがわかったとしています。
この研究の集計がとられたのは、3月30日のことで、この日の世界の感染確認者数は 90万人ほどとなっていましたが、計算では、その 3月30日の時点で「世界の実際の感染者数は、1500万を超えている」ということになったようです。
この「 6%」という数値を 4月20日の感染確認数 204万人から計算し直してみますと、「現在までに、実際には数千万人が新型コロナウイルスに感染していた」ということになりそうです。
国によっても、ばらつきがあり、米国、英国、スペインなどでは、実際の感染者数の 2%以下程度しか検出されていないことも示しています。
まず、このランセットの内容を取り上げていた医学報道をご紹介させていただきます。
ドイツの調査によると、世界で検出された実際の感染者数は平均して約 6%にすぎない
German Research Indicates That On An Average, Only About 6 Percent Of Actual Infections Detected Globally
thailandmedical.news 2020/04/20
ドイツのゲッチンゲン大学からの最近の研究報告によると、ドイツ国内、および国際的なメディアを通じて広く報告されている新型コロナウイルス疾患 COVID-19 の確定症例数は、実際の感染数から大幅に過小評価されている。
ドイツの科学者であるクリスチャン・ボマー博士(Dr Christian Bommer )と、ゲッチンゲン大学のセバスチャン・フォルマー教授(Professor Sebastian Vollmer)は、COVID-19 の死亡率と死亡までの時間の推定値を使用し、発表されている公式の確定症例記録の質をテストした。結果は、医学誌ランセットで発表された。
調査結果とデータは、各国で、新型コロナウイルス感染の約 6%しか発見されていないことが示されており、世界中の新型コロナウイルス感染者の実際の数は、すでに数千万人に達している可能性があることを示す。
特に、イタリアやスペインなどヨーロッパの国々では、検査が著しく不十分で遅延しているため、全体の中のわずかな感染者しか検出されていないことが示されている。イタリアでは、感染者の 3.5%しか検出されておらず、スペインでは、1.7%であることを示した。
また、アメリカ(1.6%)と英国(1.2%)の検出率は、パンデミックへの対応が遅れたために、さらに低くなった。
研究者たちは、2020年3月31日の時点で、ドイツで 46万人の感染者がいたと推定している。同じ方法に基づいて、彼らはアメリカで 1000万人以上、スペインで 500万人以上、イタリアで約 300万人、そしてイギリスでは約 200万人が感染していたと計算した。
この日のジョンズホプキンス大学の公式な数値は、全世界で 90万人未満の感染者が確認されたと報告しており、感染の大部分が検出されていなかったことを意味する。
ここまでです。
この数値は、あくまで計算に基づいているもので、完全に真実ということではないですが、しかし、「アメリカの検出率が 1.6%」だと示されたのはすごいですね。
今日のアメリカの感染確定総数は 76万4265人ですので、この数字からですと、
「現在までのアメリカの実際の総感染数は 4,730万人」
ということになり、現在までのアメリカの感染増加率が続く場合、アメリカでの実際の感染者の増加数が 1日 180万人程度だとしますと、あと 1ヵ月ほどで「アメリカの実際の感染者数は 1億人を突破」ということにもなりそうです。
以下は、先ほどのグラフの数値を、論文の計算から実際の感染者数に近づけたものです。
数値そのものはともかくとして、グラフの曲線を見ますと、アメリカの感染者数の増加ぶりはこの 1ヶ月間ほどは、ほとんど収まっていない上に、現在までのロックダウンなどでの対策効果もほとんどない状態ですので、現実として上のような数値になることもあり得る感じではあります。
ただ、数千万とか数億になりますと、現実として「もはや即日で検査を実施できる数ではない」わけで、今後さらに「実際の感染者数がわからなくなる」ことになりそうです。
こういう状態となっているひとつの理由は、
「発症しないか、症状の軽い人たちが本当に多い」
ことにもあるとは思います。
たとえば、先日、アメリカの原子力空母「セオドア・ルーズベルト」号で乗員の大量感染が発生し、「乗組員 4800人のうち、新型コロナウイルスの感染者数は 600人を超えた」とロイターなどが報じていますが、この報道のタイトル自体が、
「空母に乗っている感染者のほとんどが無症状なのはなぜだ?」
というもので、感染確認者のうちの「 60%が無症状」なのだそうです。アメリカ CDC は、新型コロナウイルスに感染して症状の出ない率を「 25%程度」と推定していましたが、実際には、感染して無症状の人たちの数は、それよりもかなり多いことも予測されます。
それにしても、このセオドア・ルーズベルト号での「乗組員 4800人のうち 600人が感染」というのは、これを国の人口などの大きな数値として考えますと、なかかな壮大な話で、つまり、たとえば、
「人口 4800万人のうち 600万人が感染」
という国があっても不思議ではないということにもなりそうです。
基本的には、誰も抗体を持たないウイルスですので、このようなことは、時間の経過と共に十分にあり得ることだとも思います。
先日、ブラジルの大統領が、「新型コロナウイルスには、国民の 70%が感染する。どうすることもできない」と述べたことが伝えられていますが、真理だと思います。基本的に誰も抗体を持たない上に感染力の強い病原体でのパンデミックでそのようなことになるのは普通のことであり、それを防ぐことはできないはずです。
そして、まだ抗体を持たない人たちも、「おそらくいつかは感染する」可能性のほうが高いわけですので、たとえば、アメリカの例でいいますと、実際の感染者が 2億人くらいに達した時に、はじめて感染拡大が鈍る可能性もあるということなのかもしれません。
アメリカの実際の感染者が 2億人に達する時には、さきほどの計算式(検出されている感染者が 1.6%)からは、
「アメリカの公式な感染者数が、おおむね 300万人くらいを超えたあたりで、新たな感染者数の増加が収まる可能性もある」
ということになるのでしょうか。
今の増加ペースですと、1ヵ月半くらい先になるかもしれないですが、その頃のアメリカはどうなっていますかね。
ただですね。
この新型コロナウイルスは、「抗体が作られにくいのかもしれない」という厄介な性質がありそうなのでして、感染しても免疫がつかない人たちが多数いる可能性があるのです。
どれだけ感染が拡大していっても、「多くの人が免疫を獲得できないために、何度も感染する人が出てくる」という可能性が指摘されています。
免疫を獲得できないウイルス
これは、上海の科学者たちによる臨床例の研究から明らかになったもので、入院した後に退院した新型コロナウイルスの元患者たちの抗体を検査したところ、
「その中の 30%程度が免疫保護として作用するような抗体を持っていなかった」
ことがわかったのです。
こうなると、病気が治った後も「複数回感染する」可能性もあり、なかなか厄介な面を持つウイルスではあります。
まあしかし、この新型コロナウイルスというウイルスは、いたるところに厄介な性質を持ちますので、驚くことではなくなっていますが。
今回は、それを取り上げていた記事をご紹介して締めさせていただこうと思います。
なかなか楽観的なニュースが出てきませんが、これらも現実ですので、気持ちだけでも楽観的であるしかないですね。
新型コロナウイルスから回復した患者の多くは抗体がないか抗体数が非常に少ないために、再感染するリスクがある
Many Recovered Patients Have No Or Very Low Antibody Counts, Risking Reinfections
thailandmedical.news 2020/04/16
上海の研究者たちは、新型コロナウイルスから回復した患者の多くが中和タンパク質または抗体を保有する兆候を示さなく、大多数は非常に低い数であったと警告している。
これらの発見は、ワクチン開発と集団免疫の獲得について大きな影響を与える可能性がある。
研究者たちは、回復した患者たちには再感染のリスクが高いことも警告している。
上海の復旦大学の研究チームは、上海公衆衛生クリニックセンターから退院した 175人の患者の血液サンプルを分析した結果、全体の 3分の 1以上が予想外に低レベルの抗体しか持たないことを見出した。患者によっては、抗体がまったく検出されないケースもあった。
この研究は予備的なものだが、SARS-Cov-2 コロナウイルスによって引き起こされる疾患から回復した患者における抗体レベルについて、世界で最初の体系的な検査となる。
検査したほぼすべての患者は、最近、疾患の軽度の症状から回復した人たちで、抗体レベルが低い患者のほとんどは若い人たちだった。研究者たちは、集中治療室に入院した患者の多くはすでに提供された血漿からの抗体を持っているため、除外している。
通常、抗体は免疫系によって生成され、それらは、特定の病原体を阻害するための独自の化学構造を持っている。コロナウイルスの抗体は、ウイルスエンベロープ(ウイルス粒子に見られる膜状の構造)の上のスパイクタンパク質を傍受して、ヒト細胞との結合を防ぐ。
この中国の研究者たちは、患者の約 3分の 1の抗体の「力価 (生物学における濃度の測定法)」の値が 500未満であり、この数値は免疫保護を提供するには低すぎる可能性があるレベルであることを発見して驚いたと述べた。
患者の30%以上が、Covid-19 感染後に高いレベルの抗体を作ることができていなかった。抗体が作られなかった患者たちの、他の患者との罹病期間は同様だった。
驚いたことに、抗体レベルは年齢とともに上昇し、60 - 85歳のグループの人々は 15 - 39歳のグループの人々の 3倍以上の量の抗体を示したことが見出された。
患者たちの中の 10人は、研究室で検出さえできないほど、まったく抗体がない状態だった。
研究を率いた研究者は次のように述べている。
「ワクチンの開発には、これらのように抗体が作られない患者たちがいるということに特に注意を払う必要があるかもしれません。実際のウイルスが抗体反応を誘発できない場合、ワクチンの弱体化バージョンもこれらの患者では機能しない可能性があります」
研究者たちはまた、新型コロナウイルスの抗体が、2003年に SARS の発生を引き起こしたコロナウイルス株や、特定の他のコロナウイルスと結合する可能性があることも発見した。
しかし、この結合は細胞内の SARS ウイルスの複製を抑制することができず、一度に 2つまたはそれ以上のコロナウイルス株に対するワクチン(新型コロナウイルスにも SARS にも有効なワクチン)を開発するという期待は打ち砕かれた。
中国政府の上級科学顧問の王陳博士は「中国でさえ、この病気に対する勝利を宣言するのは時期尚早です」と警告している。
「これが季節性インフルエンザのようなものになっていくのか、あるいは B型肝炎のような慢性疾患になっていくのか、それとも SARS のように消滅していくのか、それは誰にもわからないのです」
ここまでです。
この研究でわかった中の問題点は、以下の三点ですね。
・全体の3分の1ほどは感染しても抗体が作られず、免疫を持つことができない可能性がある
・若い人ほど感染しても抗体が作られにくい
・そのような人たちには、仮にワクチンが開発されても有効ではない可能性がある
うーん・・・。この「若い人ほど感染しやすくて抗体が作られにくい」というのは、ちょっとイヤな部分ですね。
先ほどのグラフを見てもわかります通り、強行な対策をしている国でも、感染拡大と死者の急増は収まってはいないわけでして、つまり、どんなに人為的な対策を施しても、感染拡大を止めることはできていないことは事実でもあります(昨日の記事に書きましたように、人為的な対策がむしろ状況を悪化させている面もあります)。
現段階としては、感染拡大の限界に達して増加のペースが収まる「自然の状態」を期待するしかないと思われます。
しかし、この中国の研究で明らかになったように、新型コロナウイルスは「集団の免疫」も獲得しにくい可能性が出てきているわけで、直近の世界は厳しい状況が続きそうです。
厄介な部分が山ほどあるこのウイルスですけれど、以下の記事で取りあげましたモンタニエ博士が言う「干渉によりウイルスは元に戻り、パンデミックは終わる」という時を待つしかないのですかね。
[特報]HIV発見の功績でノーベル賞を受賞したリュック・モンタニエ博士が「新型コロナは人工ウイルス」とする論文を発表。そして「人為的な改変は必ず消える」とパンデミックが干渉と共に終わる道筋を表明
いずれにしましても、当面のパンデミックの推移の目安としては、先ほど書きましたように、アメリカの公式感染数が 300万人(実際の想定感染者数 2億人)を超えた頃が、ひとつの節目かもしれません。
しかし、先ほどの抗体に関しての上海の研究結果が現実に反映していくとすれば、たとえばアメリカの実際の感染者 2億人のうちの 6000万人ほどは、感染した後も抗体が作られないので、再度感染する可能性が高い人たちが数多くいるということになるのかもしれませんので、今後も微妙な情勢が続いてしまうのかもしれません。
世界全体の公表される感染確認数が数百万を超えても状況が改善していかない場合は、世界はまったく新たな段階に入るのかも知れません。
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