叫ぶ顔のイメージとなった2019年6月20日のフランス全土の気温分布図
現在、ヨーロッパが歴史上最も気温の高い熱波に見舞われていますが、その中でも、フランスとスペインの気温は際立っていまして、昨日今日あたりは、フランスでは 45℃を超える地域が出てきているということになっています。
そんな中、この熱波が訪れる少し前に、フランスの気象予報士の方が SNS に投稿した「まるでフランスが叫んでいるような」冒頭の画像が今になって話題となっています。
これは気温分布を示しているものですが、その範囲は以下のようになります。
そのフランスですが、昨日 6月28日、南部のカルパントラという場所において、フランスの過去すべての観測史上で最高気温記録となる「 45.9 ℃」に達したことが報じられています。
6月28日のフランスの報道より
こういう 45℃とかの気温となりますと、ヨーロッパにおいては、「まるで冗談のような気温」といえるのですけれど、しかし、今後まださらに気温は上がっていくとみられているのです。
下は、6月28日のヨーロッパ各地の気温です。今後、ドイツやポーランドでも 40℃に達する可能性があるとされています。
6月28日のヨーロッパ各地の気温
どうしてこんなことになっちゃったのか、ということについては、どの報道も比較的曖昧なのですけれど、サハラ砂漠のほうからの熱波が流れ込んでいるということのようです。
しかし、仮にサハラ砂漠など、アフリカ北部からものすごい熱波がやって来ているとしても、「アフリカ北部に熱波がある」のは普通のことですし、気流の流れの方向を考えれば、それがヨーロッパ方向に流れて、多少の猛暑をもたらすことは、よくあることではないかと思うのです。
しかし、フランスが 45℃などという気温になったことは過去にないわけで、どうしてなのかな・・・と考えていて、ふと思い出したのが、以下の 2017年の記事でご紹介した「ジェット気流の異常」のことでした。
地球の気流の崩壊がまたしても… : ヨーロッパ上空のジェット気流の速度がカテゴリー5のハリケーン以上の時速300キロにまで加速していたことが判明
タイトルにもありますが、ヨーロッパ上空のジェット気流の速度が、大変な速度になっていたという報道をご紹介したものでした。
現在、地球の上空の大きな大気の流れそのものが、以前とは大きく変わってきているようで、「大気の状態が壊れている」とも言えるようなことになっているのです。
もしかすると、この熱波も、こういう「気流の変化と崩壊」も多少は関係しているのかもしれません。
なお、今のヨーロッパでは熱波が話題となっていますが、世界全体としては「寒波」の地域のほうが相変わらず多く、アメリカのシカゴなどでは、6月の今も最高気温が 15℃程度という、とても寒い夏となっていることが報じられています。
また、南米やオーストラリアは、各地で記録的な寒波となっていまして、暑いにしても寒いにしても、どこの地域も「通常とは違う」ことになっています。
それでも、このヨーロッパの熱波の異常性は、特筆されるものとはいえます。
やはり 40℃以上の最高記音が各地で観測されているスペインでは、南西部カタルーニャのタラゴナという場所で、壊滅的な山林火災が発生していて、通常の消火活動だけでは収集がつかなくなっていまして、空軍による「水爆弾」が投入されています。
6月28日 スペイン・タラゴナで水爆弾で消火を行う戦闘機
これについては、
・40℃超の熱波の中のスペイン・カタルーニャで「コントロール不能」の歴史上最も激しい山火事が拡大中。気温は今後「45℃」の領域へと
地球の記録 2019年6月29日
という記事で取りあげています。
それにしても・・・。
最近、「とんでもない食糧危機が近づいているのではないのか」というようなことについてふれることがあります。以下の記事あたりからのことでしょうか。
世界的な食糧危機がやってくる : フランス、アメリカ、オーストラリアなど農業輸出大国で記録にないような甚大な被害が進行していることが明らかに
上の記事の時点でも、フランス、オーストラリア、イタリア、アメリカ、アルゼンチンなどでは、かなり壊滅的な農作物被害となっていたのですけれど、上の記事から、おおむね1ヵ月ほど経った今振り返りますと、「その間に起きた異常気象」ときましたら、それはかなりのものでした。
ヨーロッパにおいては、そこにとどめを刺すような今回の熱波です。
たとえば、ヨーロッパは各地で、ブドウ畑やオリーブ畑、トウモロコシ畑などが、この春には寒波、その次には「雹(ひょう)」などで大きな被害を受けましたが、そのような状態のところに、「その土地で1度も経験したこともないような熱波」が来たということになり、相当厳しいことになるのはないでしょうか。
そもそも、上に挙げました国々は、フランス(熱波)、オーストラリア(寒波と干ばつ)、イタリア(熱波)、アメリカ(寒波と洪水)、アルゼンチン(寒波)というように、それ以来現在まで、どこも異常気象の渦中のままです。
なお、実際には、「昨年の時点でヨーロッパの多くの土地はかなりダメージを受けていた」可能性もあります。
ヨーロッパは昨年の夏も厳しい暑さが続き、また山火事も非常に多かったのです。
それは以下の記事に書かせていただいています。
前例のない熱波と山火事により緑豊かなヨーロッパの大地から「緑が消えた」。その焼け焦げた砂漠のような光景は世界的な食糧危機サイクルの到来を示唆する?
上の記事にも、
> 世界的な食糧危機サイクルの到来を示唆する?
というように書いていますが、昨年は、そのような食糧危機は起きませんでした。
しかし、仮に、今年もまだ起きないとしても、
「そのようなサイクルの時期がどんどん近づいている」
ことは確かだと思います。
昨年の夏でも、ヨーロッパ各地で以下のような「山火事発生のリスク」が示されていました。濃い茶色になるほどリスクが高いことを示します。
スペイン、ポルトガル、フランス、ドイツ、オランダなどの中央ヨーロッパはほぼ全域が極端な山火事リスクがあると分類されていたことがわかります。
上の図は昨年 8月のものですが、今はまだ 6月でこれまでないような厳しい熱波に襲われているということは、上の図に示されている山火事リスクが、今現在ですでに同じような状態となっている可能性があると思われます。
もし、この異様な熱波の期間が長くなれば、ヨーロッパで多くの山火事がさらに発生することは避けられないと思われます。
そして、上の記事でもふれましたけれど、実はヨーロッパの「農作危機」は、もうずっと続いているのです。
以下は、2018年7月のヨーロッパの干ばつによるリスク状況を示したものです。黄色と赤色の部分が干ばつを起こした場所で、赤くなるほどリスクが高いことを示します。
2018年7月のヨーロッパの農業リスクのレベル
・European vegetable sector in most serious crisis since 1978
昨年の夏の時点では、フランスとスペインには、干ばつによる農業リスクはありませんでした。しかし、今回の熱波で最も大きな被害を受けそうなのが、そのフランスとスペインということになり、昨年と今年で「ヨーロッパは全滅」という形になっています。
そして、ヨーロッパだけではなく、今年は、異常気象が多くの農業大国に及んでいまして、今後いろいろと厳しい局面も考えられるかもしれません。
今の主要国なら、一時的な流通の問題ならカバーできるでしょうけれど、「根本的な食糧供給不足」というような事態が世界に蔓延し始めたとすれば、いつかはこの近代的な流通システムも機能しなくなる時もないではないかもしれません。
まだ夏を前にしてこれですから、今後、世界的にどうなるのかはよくわからないですけれど、夏が終わるまでにはいろいろと明白になってきそうです。
なお、ヨーロッパの今の熱波がどのくらい続くかということについては、
「いつ終わるかはわからない」
というのが公式の見解です。
もしかすると、ここ数年、何度か出ていたフレーズ「地獄の夏」というようなイメージを伴う夏になる可能性もあるのかもしれません。