2019年6月26-28日 パプアニューギニアで連続して2つの火山が大噴火
激化する環太平洋火山帯の活動
この数日、世界の火山の噴火がとても活発で、冒頭の報道はパプアニューギニアのマナム山という火山が噴煙 15キロメートルを上げる大噴火を起こしたことについての報道ですが、バブアニューギニアでは、その 2日前にも、ウラウン山という火山が、噴煙 19キロメートルにおよぶ噴煙を伴う巨大噴火を起こしたばかりでした。
それにしては、以下の記事で取りあげています。
冒頭のマナム山が噴火した同じ日には、メキシコのポポカテペトル山も大噴火を起こしています。
2019年6月28日 メキシコ・ポポカテペトル山
その数日前には、千島列島にあるライコーク火山という火山島で巨大噴火が発生しています。 国際宇宙ステーションから撮影されたその噴火の様子は壮絶なものでもありました。
このライコーク山の噴火も噴煙の高さが 15キロにおよぶ巨大なものです。
2019年6月22日 噴火した千島列島のライコーク火山
・NASA
ライコーク山の噴火に関しては、以下のふたつの記事で取りあげています。
・千島列島のライコーク火山が95年ぶりに大噴火。噴煙の高さは1万3000メートルに達する。そして、これは「まったく前兆のない」噴火だった
地球の記録 2019年6月22日
・千島列島ライコーク火山の噴火のすさまじい様相がNASAの人工衛星の撮影などで明らかに
地球の記録 2019年6月26日
これらの火山すべては、環太平洋火山帯に位置しているもので、特にライコーク山は、日本から、なかなか近い場所にある火山島です。
巨大噴火を起こした千島列島のライコーク山の位置
・Google Map
ライコーク山の北部のカムチャッカ半島では、わりと頻繁に火山が噴火することもあるのですが、それよりも日本に近い場所での噴火は、珍しいことなのではないでしょうか。
このように、環太平洋火山帯での地質活動が活溌化しているような感じの中で、数日前、「河口湖の水位が極端に低下し続けている」ということが報じられていました。
以下は、産経新聞からの抜粋です。
河口湖、島が地続きに ネットでは「富士山噴火と関係」の憶測も
産経新聞 2019/06/26
富士山の麓にある河口湖で、いつもは湖面に浮かんでいる島が、湖岸と地続きになっている。島には日蓮にちなむ史跡「六角堂」があり、観光客らは「海が割れるようだ」と歩いて渡っている。
近年、水位の低下で夏場に地続きになることがあり、ネット上では富士山の火山活動と関係しているのではという憶測もあるが、専門家は否定的だ。
県治水課によると、河口湖の6~10月の水位の目安は基準水位のマイナス1・5メートルだが、昨年10月に台風24号が県内を通過した際にマイナス0・75メートルに上昇したため、水位の調整で湖水を放出した。
しかし、その後も水位は徐々に低下し続け、今年4月に島が地続きになった。現在の水位はマイナス2・9メートル前後になっている。
河口湖の研究を続けている県富士山科学研究所の内山高専門員は「水位の低下は雪や雨が少なかったことと、晴れの日が多く湖水が蒸発したため。富士山の火山活動が関係している可能性は低い」と説明する。
こういうことですが、河口湖のあたりの降水量が今年は平年を大きく下回っているということで、それが水位が低下した原因なのでしょうけれど、こう各地で巨大な噴火が続いてますと、火山の話題には何となく敏感になります。
実際には、富士山が噴火する時には、少なくとも前回の宝永噴火の時の記録を例にとれば、「突如」ということはあり得ないと思われます。
前回の富士山の噴火は、噴火までに以下のような経過を辿りました。
1707年11月23日の富士山の噴火(宝永大噴火)までの経緯
10月04日 富士山の噴火の始まる 49日前にマグニチュード 8.6 - 9クラスと推定される宝永地震(南海トラフ地震)が発生( 2万人が死亡)
10月05日 富士宮付近を震源とする強い地震が発生
11月10日 富士山の山麓で地響きが始まる
11月22日 この日から M4- 5の強い地震が数十回発生
11月23日 噴火
このようになっていたようでして、富士山の噴火というのは、いつもそうではないのかもしれないですが、「事前の徴候が派手」なもののようです。
前回の噴火の際は、まず南海トラフ地震が発生して、その後も大きな地震が繰り返される中で、地響きが始まり、噴火に至ったようです。
仮に、この宝永噴火と同じような経緯を辿るとすれば、「もうこれは噴火するしかないだろうな」と、多くの人が感じている中で噴火することになりそうです。
なお、意外な感じもするかもしれないですが、この富士山の宝永噴火では、
「噴火による直接の死者はゼロ」
でした。
それでも、火山灰の被害は非常に大きく、また長く続いたようです。
Wikipedia には以下のような下りがあります。
噴火から20年以上を経ても復興できない地域が多くあり、小田原藩の米の収量が元に戻るまで90年程を要した。
酒匂川流域では流入した大量の火山灰によって河川の川床が上昇し、あちこちに一時的な天然ダムができ水害の起こりやすい状況になった。足柄平野での土砂氾濫は約100年繰り返された。
このように、地域によって、
> 農作状況が元通りになるのに 90年かかった
とか、
> 火山灰による河川の地形の変化による土砂災害が 100年も続いた
という、非常に長い影響を残したもののようです。
それにしても、先ほどの「富士山が噴火するまで」を見てみますと、この宝永噴火の頃の日本は本当に騒然としていた状況だったのかもしれません。
何しろ、南海トラフ大地震が起きて、その後も大地震が連続し、その中で富士山が噴火するという状況ですから、地域によっては混沌としていたと思われます。
なお、この宝永噴火の際の火山灰の影響を現代に当てはめますと、以下のようになるようです。
横浜や東京都の一部でも最大 1メートルなどの火山灰が降り積もる可能性があるようで、影響は大きそうです。
富士山の噴火と南海トラフ地震はマウンダー極小期に起きた
ところで、富士山の噴火に関しまして、前回の宝永噴火が、
「どんな時に起きたか」
ということについて、ある観点から注目しますと、今の時代とわりとリンクするのです。
下のグラフは、西暦 1600年代からの太陽活動の推移に、富士山噴火の年を示したものです。
富士山が噴火した時を太陽活動の推移から見てみると
おわかりでしょうか。
前回の富士山の噴火は、「観測史上最も太陽活動が弱い時に起きた」のでした。
1645年から 1715年までは、太陽にほぼ黒点が出ない日が続いたマウンダー極小期と呼ばれる時期ですが、その渦中の 1707年に富士山が噴火しています。
同時に、その時に、南海トラフ地震も起きていたことになります。
先日、以下の記事で、NASA が「これからの太陽活動は、過去 200年間で最も弱いものとなる」ことを発表したことを取り上げました。
米NASAが次の太陽活動周期サイクル25は「過去200年間で最も弱くなる」という予測を公式に発表。2032年頃まで続くその環境の中の地球はどうなる?
これからのその期間が、マウンダー極小期のように数十年続くといったような状態になるかどうかはともかくとして、太陽活動の強弱の問題だけでしたら、「マウンダー極小期と匹敵するような弱い太陽活動になっていく」可能性は高いです。
実際には、マウンダー極小期のような状態に至るのは、あと数年、十数年かかるのかもしれないですけれど、
「最近はいろいろなことの進行が早い」
ということを実感しますので、どうなりますかは、よくわかりません。
いずれにしましても、富士山の噴火とか南海トラフ地震などのような懸念されている自然の事象もまた、「太陽活動が著しく弱い時に発生しやすい」という部分がありそうです。
「宇宙線が噴火や地震のトリガーになる得る」という原理を考えますと、理解できますが、だからといって、それがいつ起きるのかがわかるというものでもありません。
ところで、タイトルに「北緯33度線を地震が駆け抜けている」というようなことを書きました。大したことではないのですが、個人的に気になったものですので、簡単にふれておきます。
以下は、今日 6月30日の午前の時点の「過去 24時間に発生したマグニチュード 3以上の地震」です。
2019年6月30日に発生したM3以上の地震
・Earthquake report world-wide for Sunday, 30 Jun 2019
最近は、「ふだんはほとんど地震が起きないような場所で、地震が起きる」というようなことが増えていますが、この 6月30日の状況は、「環太平洋火山帯ではない場所で地震がたくさん発生している」というようなことになっています。
特に、中国、中東、ヨーロッパ、アメリカを結ぶ「北緯 33度線」に沿って地震が走っていく様相が印象に残ります。中国、中東、ヨーロッパなどのこれらの場所は、通常は地震がほぼない場所です。
そして、これらの位置が、まさに北緯 33度線なのですね。
だからどうしたということではないですが、活溌化する地質状況の中で、こういう様相も見られるのだなあと感銘を受けた次第です。
千島列島まで迫ってきた火山活動が、日本列島にまで波及するかどうかはわからないですが、最初のほうに取り上げました世界のここ数日の激しい火山活動を見ていますと、環太平洋火山帯の地質活動はさらに活溌化しているかもしれないとも思います。
そして、マウンダー極小期の再来が近づいているかもしれないといわれる中で、かつてと同じような自然災害が起きるのかどうか。