NASAが発表した最新の太陽活動予測の予想以上の「弱さ」
太陽活動は、約 11年の周期で繰り返されていまして、現在は「サイクル24」という活動周期の最後の時期にあたります。
そして、2020年から新しい太陽活動周期であるサイクル25が始まります。
これについて、先日、アメリカの NASA はウェブサイトで、公式に、
「次の太陽活動は、過去 200年で最低のレベルとなる」
と発表しました。
そのページの内容自体は、太陽活動が極端に弱くなることに対して肯定的なものでして、つまり、太陽活動が弱いと強い太陽フレアなどがあまり起きないため、太陽から放出される放射線が現象することにより「有人宇宙飛行には最適な環境」だとしています。
まあ、それはそれとして、次の太陽活動が、NASA が発表したような「極端な弱さ」だとした場合、やはり気になるのは、地球への影響なんですね。
いちばん影響があるのは、気象と気温でしょうけれど、NASA の予測通りですと、次の約 11年間、私たちは、
「過去 200年間、誰も過ごしたことのないような弱い太陽活動の下で生きる」
ことになりそうなのです。
現在の太陽活動サイクル24も、とても弱い太陽活動だったことについては、数年前からたまに取り上げていまして、以下は 2016年の記事ですが、この頃には、サイクル24が、「過去数百年の中でも記録的に弱い太陽活動だった」ことが明確になってきていました。
しかし、次の太陽活動周期サイクル25は、「それより弱い」と予測されているのです。
いろいろと思うところはありますが、まずは、その NASA の公式ページの記事をご紹介いたします。
Solar Activity Forecast for Next Decade Favorable for Exploration
NASA 2019/06/12
次の10年間の太陽活動は、宇宙探査にとっては有利なものであると予測される
NASA のアポロ計画の最後の宇宙飛行士たちはラッキーだった。このように書いているのは、彼らが、この月に飛行するミッションに選ばれたというだけの理由ではない。
このアポロ最後の飛行では、その途中で発生した宇宙飛行にとっては非常に悪い宇宙天気の被害を免れたからだ。
1972年8月、アポロ16号とアポロ17号のミッションの途中、巨大な太陽嵐が発生した。それと共に、危険な放射線が爆発的に宇宙空間に放出されたのだ。
地球上にいる私たちは、磁場によって、この太陽の放射線から保護されているが、宇宙空間では、その保護が少ないために、宇宙飛行士たちにとっては危険な状態となる。
今後の NASA の有人宇宙ミッションを計画する中では、このような宇宙天気を的確に予想する能力が必要となる。たとえば、NASA が、2024年までに再び月面への有人着陸を目指すアルテミス計画においては、ますます重要だ。
アルテミス計画は、月面に初めて女性を送り、そして次に男性を送ることになっている。
現在進行中の NASA の太陽活動に関する研究は、太陽活動の予測に対して信頼できる新しい方法を見つけた可能性がある。
太陽活動は 11年周期で増減するが、NASA の研究所の科学者の最近の研究では、「次の太陽サイクルは、過去 200年間で最も弱くなる」と推測された。
太陽活動レベルは、黒点の数で測定されるが、次のサイクルの黒点数の最大値は、現在のサイクル 24より、さらに 30〜 50%低くなる可能性がある。
この次の太陽活動(サイクル25)は、2020年に始まり、2025年にその活動最大期に達することを示している。
太陽黒点は、地球の何千倍も強い磁場がある太陽表面の領域だ。太陽活動最大期においても、太陽活動が弱いことにより、その黒点の数が少ないということは、それだけ、太陽フレアなどの危険な放射線の爆発が少ないことを意味する。
この新しい研究は、カリフォルニア州シリコンバレーにある NASA エイムズ研究センター内の「ベイエリア環境リサーチ研究所」の科学者であるイリーナ・キチャシュビリ (Irina Kitiashvili)研究員によって主導された。
研究では、NASA の2つの太陽観測ミッションである太陽観測衛星 SOHO と太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリーのデータと、そして、アメリカ国立太陽観測所の 1976年からのデータをすべて照会した。
太陽の活動を予測するために研究をする科学者たちの前に立ちはだかる問題としては、私たちは、いまだに太陽の内部の働きを完全には理解していないということがある。さらには、太陽の奥深くに出現する現象のいくつかの要因は特定できない。
そのため、それらの現象は、太陽黒点のような太陽の表面上に出現する現象の測定から推定しなければならない。
今回のキチャシュビリ氏の研究方法は、これまでの太陽活動の予測の推定法とは異なるものだ。これまでは、太陽の磁場活動の強弱は、黒点の数からあらわされた。
しかし、新しいアプローチでは、太陽の表面に現れる磁場の「直接観測」のデータを使用した。これは、過去4回の太陽活動サイクルの間のデータだけが存在する。
この 3つの太陽の観測源からのデータを、その内部活動の推定値と数学的に組み合わせることで、黒点数か、磁場の観測かを、それぞれ単独で使用するよりも信頼性が高くなるように設計された予測が生成された。
研究者たちは、2008年にこの方法を用いて予測をおこなった。それ以降、 10年間にわたって現在の太陽サイクルが展開し、このサイクルが終わろうとしている今、この方法による予測を評価できる段階となった。そしてこの方法は、太陽の活動の最大値の予測と、その時期について、現実とよく合致していた。
太陽がどのように振る舞うかを知り予測することは、深宇宙に進出する私たちの次の宇宙探査のために、宇宙飛行士たちを保護するための重要な洞察を提供することができる。
NASA は現在、今後 5年間のあいだに、アメリカの宇宙飛行士たちを、月の南極に着陸させる準備を続けている。
そして、今後 10年間の太陽活動の予測は、宇宙天気は非常に静かになる見込みで、宇宙探査には絶好の機会だといえる。
ここまでです。
私は今は、宇宙探査というものへの興味をほぼ完全に失っていますので、「アルテミス計画」という、月に女性と男性を送る計画があることも知りませんでした。
それにしても、NASA の予測による太陽活動の弱さは、事前に予測していた以上のものでした。
文中に、次のサイクルの太陽活動は、今より「30〜 50%低くなる可能性がある」とありますが、今のサイクルの太陽活動もとても弱かったのです。
今回の NASA の研究者の方の方法は新たなものということで、精度も高いものとなっているようですが、冒頭に示しましたグラフを再度示しますと、過去 200年の太陽活動と比較して、次のサイクル25は「現在のサイクル24の半分くらい」の活動しかないことが予測されています。
これを最近の太陽活動のグラフで大きく示してみますと、以下のようになります。サイクル24が唐突な感じで弱い太陽活動となっているのですが、次のサイクル25は、「この半分くらいにまで下がる」というのです。
以前にも、太陽活動が「今後弱くなる」という予測は、さまざまになされてきました。
その中で際立っていたのが、ロシア人科学者たちによる複数の研究でした。
それらは、2015年から2016年にかけて、以下のような記事でご紹介しています。
・ミニ氷河期は「2015年にすでに始まって」おり、今後「200年から250年間続く」というロシア科学アカデミーの科学者たちの主張が公開された
In Deep 2016年11月5日
・精度97%の「2030年までのミニ氷河期突入」予測は、その発表の元となったロシア人女性物理学者の「太陽活動の解析予測の実績」から実現確実な状勢に
In Deep 2015年07月22日
下の「精度97%の「2030年までのミニ氷河期突入」予測…」の記事の内容は、当時の日本のメディアでも取り上げられていました。
以下は、2015年7月の日経ビジネスの記事からの抜粋です。
地球は2030年からミニ氷河期に入るのか?
日経ビジネス 2015.07.22
2030年頃から地球はミニ氷河期に突入する――。
英ウェールズで開かれた王立天文学会で英国の研究者が驚くべき発表をした。今後15年ほどで太陽の活動が60%も減衰するというのだ。
研究発表をしたのは英ノーザンブリアン大学のヴァレンティナ・ジャルコヴァ教授。太陽の内部にある磁場の変化によってミニ氷河期が訪れる可能性を示唆した。
同教授によれば、太陽内に2つの異なる磁気波があることを発見。2波は周波数が異なるが、両波ともに11年周期で変化するという。ジャルコヴァ教授は両波を基に太陽活動の動きを探る新しいモデルを確立した。精度は97%だという。
また、この研究で、「太陽磁気活動の進化の独特な物理数学的モデルを開発した」ことにより、正確な太陽活動予測の計算に貢献したロシア・モスクワ国立大学の女性物理学者であるヘレン・ポポワ博士は以下のように述べています。
「私たちの時代の将来の最大の気温の低下は、次の 3つの太陽サイクル(サイクル25から27)に訪れることを示し、それはこれからの約 30年間となります」
つまり、ポポワ博士は、この 2020年から始まるサイクル25の時点から、地球の気温の低下が始まることを計算しています。
太陽活動について語るモスクワ国立大学のヘレン・ポポワ博士
さらに、先ほどリンクさせていただきました上のほうの記事「ミニ氷河期は「2015年にすでに始まって」おり…」では、ロシア科学アカデミーの天体物理学者による『エビデンスに基づく気候科学』という著作を取り上げていた記事をご紹介しています。
この説によれば、次の大きな太陽活動の周期の転換点は、2015年であり、そこから、数十年におよぶ太陽活動の低下の時期が始まるとあり、具体的には、2050年から 2070年の頃が最も気温の低い、いわゆるミニ氷河期の頂点となると予測しています。
このロシア科学アカデミーの天体物理学者の方の主張を今、読み返してみますと、以下の部分が気になります。
メキシコ湾の海流の流れの段階的な弱体化は、西ヨーロッパにおいての領域において寒冷化が強くなり、それは米国とカナダの東部にもつながる。
この「ヨーロッパと北米の寒波」は、すでに進行しているものでして、それが太陽活動と関係しているかどうかの断言はできないですけれど、今回の NASA の発表や、これまでの数多くの太陽活動の低下についての研究や論文を合わせて考えてみますと、程度はどうであろうと、
「私たちは、すでにミニ氷河期的な時代のすぐ手前にいる」
ということになってきているようです。
しかし、極端に弱い太陽活動がもたらすものは、寒冷化などの気温の変化が中心ではなく、むしろ他の部分が大きくなると思われます。
まず、
「宇宙線の到達量が多くなるため、雲が増え、気候が荒れる」
という状況が強く出てくるはずです。
具体的には、雨が増えていく。
というか、もうその状態は出ている感じです。
雷も宇宙線が関与しているという説が主流になりつつあり、現在の世界での落雷の増加はものすごいものですが、今後さらに落雷現象が増えると思われます。
このような、「雨が増える上に、気温が低下傾向を示す」という状態は、やはり農作状況への懸念と関係します。
さらには、過去のデータを見る限り、農業だけではなく、「非農業部門」の生産性も著しく低下します。
1875年から1930年までの太陽黒点数とアメリカの非農業生産指数の推移
・Solar and Economic Relationships
この「生産性の低下」もまた、工業やハイテクを含めて、世界中ですでに顕著になりつつあるのではないでしょうか。
あるいは、「予期せぬ市場の暴落」もこの時期に頻繁に起きます。
世界恐慌の始まった1929年の株価と太陽放射の推移
・Solar and Economic Relationships
以前から書くことでもありますが、こういうことは、歴史の中で何度も何度も繰り返されていて、因果関係はわからなくとも、「偶然ではない」ということだけは確かです。
そして、その次の「非常に弱い太陽活動」であるサイクル25が始まるのは、来年 2020年となると予測されています。
その後、通常の状態ですと、2032年頃までサイクル25は続きます。
その 11年間がどのような環境になるのかは、過ぎてみて、初めてわかるものなのかもしれません。
何しろ、今の地球に生きているすべての人間にとっての初めての体験となるのですから。