販売されている食塩から分離されたマイクロプラスチック
・朝日新聞デジタル
私たち現代人の身体は、ほぼ完全にプラスチックに蝕まれている
今日(2月19日)、以下のような日本の報道を見ました。一部だけ抜粋させていだきますので、ご興味のある方は、リンクからお読み下さい。
微小プラ、すでに人体に 貝からも検出 健康への影響は
朝日新聞デジタル 2019/02/19
英ブルネル大は2018年、英国のスーパー8店で売られている貝を調べたところ、すべての貝からマイクロプラスチックが検出されたと発表した。
推計でムール貝100グラムあたり70個が含まれているとみられる。日本でも東京農工大の高田秀重教授らが、東京湾でイワシやムール貝の一種、ムラサキイガイなどから検出しているという。
水道水を調査したのは米ミネソタ大の研究チーム。米国や英国、イタリア、キューバ、インドなど14カ国159カ所の水道水を調べたところ、イタリア以外の13カ国の水道水からマイクロプラスチックが検出された。
研究チームは「米国など先進国でも多く検出されており、一概に浄水設備の問題とは言えない。様々な要因が関係していそうだ」とみている。
マイクロプラスチックはすでに人間の体内に取り込まれている。
オーストリアの研究チームが日本、英国、イタリア、オランダ、オーストリア、ポーランド、フィンランド、ロシアの計8人の大便を調べたところ、すべてからマイクロプラスチックを検出した。便10グラムあたり平均20個が見つかった。
ここまでです。
プラスチックが海で「食物連鎖の中を循環し始めている」ことは、以前ご紹介したことがありまして、上の記事の、
> スーパー8店で売られている貝を調べたところ、すべての貝からマイクロプラスチックが検出された
ということは、それほど驚きではないにしても、続くヒトに対しての調査で、
> 日本、英国、イタリア、オランダ、オーストリア、ポーランド、フィンランド、ロシアの計8人の大便を調べたところ、すべてからマイクロプラスチックを検出した。
というところにまでなっていたのだなあと、改めて思いました。
ここでのポイントは、
「すべて」
ということです。
つまり、「 100%」だということになります。
これだけの数のサンプルでは、どうこう言えないにしても、ひとつのある程度の規模の調査が「 100%」だったということは、現実の社会でも、特に主要国では、
すでに人々は 100%に近い割合で体内にプラスチックを取り込んでいる
ということが言えるのではないでしょうか。
冒頭の写真は、マレーシアで販売されている食塩から採取されたマイクロプラスチックで、売られていたのはマレーシアですが、記事には、
> 豪州や日本、フランスなど8カ国で製造されたものからマイクロプラスチックが検出された。
とありまして、「どこの生産であろうと、海水塩にはプラスチックがほぼ確実に含まれている」と考えたほうが良さそうです。
あるいは、今や日常品ともいえるミネラルウォーターにも、こちらの記事で取りあげましたように、非常に高い割合でマイクロプラスチックが含まれていることが WHO により発表されています。
マイクロプラスチックが「海でどのような作用と関係しているか」ということについては、こちらの記事において、
「プラスチックが稚魚や微生物によって食物連鎖に取り込まれている」
ことをご紹介しています。
英BBCが報じたプラスチックが微生物を通して食物連鎖に入り込む瞬間
・BBC
魚の稚魚もマイクロプラスチックが大好きで、おそらくはマイクロファイバーなどは、形態が微生物的であるためなのか、稚魚はマイクロファイバーを非常によく食べていることが判明しています。
下は、そのことを報じた英デイリーメールの記事です。
稚魚がマイクロプラスチックを食べていることを報じる記事
・dailymail.co.uk
もちろん、プラスチックは栄養にならないですので、稚魚たちは次々と死んでいくことになるのですけれど、それをエサにしている大型の海洋生物を通じて、こちらもまた、「食物連鎖」に入り込んでいる可能性があります。
そんなわけで、今の私たちの生活は、「プラスチックが体内に入ることを防ぐのは事実上不可能」となっています。
おそらく、「プラスチックの摂取」から逃れることは、どうやっても無理としか思えないのです。
何をどう体内に取り入れても、プラスチックは体に入ってくる。
まあしかし、その事実はあるとして、それでは、
プラスチックが体内に入った場合、人間の体にどんなことが起きるのか?
ということについては、さまざまな研究や議論がなされていまして、結論的な部分には至っていないにしても、「プラスチックが、海洋環境や様々な生体に大きな悪影響を与えている」ことは間違いないというようになっています。
しかし、現実面の対策はほぼ進展していません。
その理由のひとつは、プラスチックは「現代文明の基幹的な存在だから」だと私は思っています。
プラスチックを排除した現代文明というものは成り立たないという事実があり、それだけに、「プラスチックの排除」ということを「本気」で行うというようなことは不可能なことを誰もが知っています。
最近は、環境に対してというより「人間そのものに対して」プラスチックが与えている影響は、実は大きいかもしれないということが、かなり明らかになりつつあります。
たとえば、2016年8月米エポックタイムズは、その時点で、以下のようなことがわかっていると記しています。プラスチック成分のうちの「ビスフェノール A 」というものに関しての部分を翻訳します。
2016年8月2日のエポック・タイムズより
プラスチック成分のビスフェノール A が、人間の腎臓、肺、および脳の損傷と関係していることが研究でわかっており、また、フタル酸エステル類というものが、脳の損傷と子供の問題行動と関係していることなどがわかってきている他、それらが、男子の生殖機能を低下させることにも関係している。
というように、プラスチックというのは、
「生殖能力に影響を与える」
ということが考えられているのですが、ちょうど 10日ほど前に、アメリカのイリノイ大学の研究者が、プラスチックをしなやかにさせる「可塑剤」と呼ばれるもののひとつである「フタル酸エステル類」についての研究を発表していました。
これは、簡単に書けば、
フタル酸エステル類を投与されたメスのマウスは《妊娠しなくなる》
のです。
さらには、その影響は、その後何か月も続いたことがわかったのでした。
ヒトへの影響が同じかどうかはわかっていません。
それにしても、皮肉な話だなと思いましたのは、先ほど書きましたプラスチック成分のうちの、
「ビスフェノール A は、オスの生殖機能を低下させる」
のに対して、やはりプラスチック製品使われる、
「フタル酸エステル類は、メスの妊娠機能を著しく低下させる」
のです。
プラスチック製品ひとつで、オスの生殖能力も、メスの受胎能力もどちらも低下させるというのは、すごい話です。
というわけで、そのイリノイ大学の研究についてのメディアの記事をご紹介させていただこうと思います。
この研究は、イリノイ大学の比較生物科学科のジョディ・フローズ教授と、助手の二人によりおこなわれましたが、お二人とも女性です。
下の方々です。
研究をおこなったフローズ教授(左)と助手のカティー・チェンさん
・medicalxpress.com
仮にですが、ここでの研究でのマウスたちと同じような影響が、軽微であったとしても「ヒトにも起こり得るのなら」、現在続いている人類の妊娠率の大幅な低下の理由のひとつにもなっているかもしれません。
ここからです。
Phthalates may impair fertility in female mice
medicalxpress.com 2019/02/07
フタル酸エステルが、雌マウスの受精機能を低下させることが判明
多くのプラスチック類やパーソナルケア製品に含まれるフタル酸エステルは、メスのマウスの受胎機能を低下させる可能性がある、という新たな研究結果が明らかにされた。
米イリノイ大学の研究者たちは、メスのマウスに 10日間、フタル酸ジイソノニル(フタル酸のエステル化により製造される有機化合物)を経口投与し、経過を観察した。その結果、メスたちの生殖周期は乱れ、その後最大で 9ヶ月の間、妊娠する能力が低下したことを発見した。
科学誌「トクシコロジカル・サイエンセズ(Toxicological Sciences / 毒性学)」に最近報告されたこの調査結果は、可塑剤(かそざい / 材料に柔軟性を与えたり、加工しやすくするために添加する物質)と呼ばれるフタル酸エステル類と、げっ歯類の様々な生殖異常や、その他の健康問題とを結びつける多くの研究結果が加えられている。
フタル酸エステルは、プラスチックやビニールを柔らかく、そしてより丈夫にするために加えられる。食品や飲料の包装、ビニールフローリング、医療機器、そして化粧品を含む多くの種類の消費財に使われている。
今回の研究によると、研究中のマウスが消費したフタル酸エステル、フタル酸ジイソノニルおよび、フタル酸ビス(可塑剤)に関連するさまざまな健康上のリスクが報告された。
これらの研究には、フタル酸ビスがホルモンのシグナル伝達、ならびに卵巣の成長および機能を破壊することも発見されている。
今回の研究論文には、論文の主筆者であるジョディ・フローズ(Jodi Flaws)博士の 2015年の研究の内容も含まれる。
フローズ博士によれば、フタル酸エステルに関するこれまでの研究の多くは、女性の生殖への潜在的な影響を反映しないような、現実の世界での曝露レベルから考えると、非常に高い投与量を使用していたという。
そこで、フローズ博士たちの研究チームは、これらのフタル酸エステル類が、女性の生殖能力に及ぼす現実的な影響を調べるために、メスのマウスに、環境関連濃度のフタル酸ビスまたはフタル酸ジイソノニルを体重 1kgあたり 20マイクログラムから 200ミリグラムの範囲を含むコーン油溶液を与えた。
このような濃度は、私たちが日常生活や仕事などの間に暴露を経験するレベルだ。
10日間の投与期間が終了した後、フタル酸エステル類を与えられたメスのマウス、および、処方されていない対照群のメスのマウスたちを、繁殖のためにオスのパートナーと対にした。オスたちは、何の処方もされていない健康なオスたちだ。
研究者は以下のように述べる。
「フタル酸エステル類の投与後 3ヶ月の間に、最低用量のフタル酸ビスとフタル酸ジイソノニルを処方されたメスの 3分の 1は交配後妊娠できませんでした。処方されていないメスは 95%が妊娠しました」
イリノイ大学の比較生物科学教授でもあるフローズ博士は、次のように述べる。
「この研究の中で、本当に懸念されることは、メスたちの化学物質への曝露が停止されてから、ずっと後になってからも、なおメスの生殖能力が損なわれ続けていたことです」
今回の調査結果は、フタル酸エステル類が、ステロイドホルモンの産生とシグナル伝達に混乱を与えることを示唆している。フタル酸エステル類の投与後 3ヶ月と 9ヶ月の時点で、フタル酸ジイソノニルの投与を受けたメスの発情周期は、投与を受けていないメスたちとは異なっていた。
投与を受けたメスたちの卵巣の卵胞は急速に成長し、受胎能力が増加する発情前期は、より短くなった。しかしながら、周期の後半の段階である、卵巣がプロゲステロンおよび子宮内膜を形成する間の発情期および発情終期はより長かった。
10日間の投与期間の直後のマウスを調べることで、研究者たちはまた、投与されたメスの子宮の重量が、投与されていないメスたちのそれより有意に少ないことを発見した。
最低用量のフタル酸エステル類を投与されたメスでは、投与されていないメスと比較すると、妊娠して産まれた仔の数が有意に減少していた。
研究者たちは、マウスのステロイドホルモンの調節不全が、フタル酸エステル類を投与されたメスの子宮内膜の胚着床に対する受容性を低下させると仮定している。
研究によると、子宮内膜の内膜が着床を受容し、それが起こるためには女性の性ステロイドホルモンが十分に調節されている必要がある。
あるいは、フタル酸エステル類への曝露は、メスのマウスの生殖寿命の終わりを早め、妊娠する可能性を減らしていると研究者たちは述べる。
他の研究では、化粧品やパーソナルケア製品を介したヒトへのフタル酸エステル類への暴露がヒトの生殖老化を引き起こし、女性が数年早く閉経期に入ることが報告されている。
この米イリノイ大学の調査結果は、まだヒトで再現されていないが、フタル酸エステル類が、卵巣と性ステロイドホルモンの生産に影響を与えている可能性についてさらに調査する必要があるとし、フローズ博士は以下のように述べる。
「フタル酸エステル類の体内での半減期は比較的短いのです。それらは速く分解される傾向があり、その代謝産物は数日以内に尿中に排泄されます。しかし、今回のマウスの研究で見られたように、フタル酸エステル類の影響が数カ月後にまで続いていたということは懸念されるべきことだと感じます」
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