・3月27日の USAトゥディより。USA Today
絶え間ない変異
新型コロナウイルスに「複数の株」が存在していることは知られていましたが、公式な報道では「 2種類の株」というようなことが報じられることが多かったのですけれど、数日前のアメリカの USA トゥディで、新型コロナウイルスの比較的正確な遺伝子解析を参照した記事があり、そこには、
「新型コロナウイルスは 8種の異なる株の系統に分岐している」
ことが示されていました。
これは、病原体の進化をリアルタイムで追跡している「ネクストストレイン(Nextstrain)」というプロジェクトによるもので、2019年12月から現在までの新型コロナウイルスの変異と分岐の状況は以下のようになっています。
全部で、2499の新型コロナウイルスのゲノム・サンプルが示されています。
2019年12月から2020年3月までの新型コロナウイルスの遺伝子の変異と分岐
・Genomic epidemiology of novel coronavirus
ドットの色分けは、それぞれの株の流行している国や地域を示します。
日本を含む東アジアは、紫色となります。
・Genomic epidemiology of novel coronavirus
2019年12月時点から見ますと、2020年3月には、系統が 8つにわかれ、それぞれの国や地域で流行している株が異なる場合があることがわかります。
また。これを見ますと、2019年12月03日という、まだ中国の武漢でも大きな感染拡大が起きていなかった頃に、「すでに 5種の株があった」ことがわかります。
これについては以下の記事で、カナダのグローバルリサーチの記事で「新型コロナウイルスには、発生源が 5カ所ある」ことにふれています。
バチカンで90万人が死亡したとハックされた日に知る新型コロナウイルスの「毒性の変化」。現在のフランスとオランダの臨床記録では「重篤化している半数が高齢者ではない」という現実。変異なのか?
参考までに、その記事から抜粋します。
China’s Coronavirus: Did The Virus Originate in the US?
Global Research 2020/03/04新型コロナウイルスには、発生源が 5カ所あることが知られるが、台湾の科学者は、その既知の 5つの株すべてをアメリカだけが持っていることを実証した。
武漢を含めた中国のほとんどと、台湾と韓国、タイとベトナム、シンガポールとイギリス、ベルギーとドイツなどでは、1つのタイプの感染しか起きていない。なので、他のハプロタイプはアメリカで生まれた可能性がある。
韓国と台湾のウイルスのハプロタイプは中国とは異なり、おそらく感染性は高いが致死性は、はるかに低く、死亡率は中国の 1/3にすぎない。
上記のテストにはイランもイタリアも含まれていないが、イランとイタリアは、現地で流行しているゲノムを解読し、中国のものとは異なるタイプであることを確認した。つまり、イランとイタリアのコロナウイルスのタイプは、中国からではなく、別の感染源から導入されたものといえる。
イタリアのタイプは中国とほぼ同じ致死率を持ち、他の国の 3倍の致死率を持っているが、イランのタイプは致死率が 10%から 25%の間であり、最も致命的であるように見えることは注目に値する。
さきほどの図を見ますと、アジアとヨーロッパ、アメリカで流行している株は、基本的に異なる部分が多いようで、「新型コロナウイルスのアウトブレイク」とはいっても、場合によっては、「違う病気のような症状と深刻度」が示されていることもありそうです。
・Genomic epidemiology of novel coronavirus
これを見ますと、先ほどのカナダ・グローバル・リサーチの記事に書かれてあることがある程度正しいことがわかります。
以下の部分です。
>台湾の科学者は、その既知の 5つの株すべてをアメリカだけが持っていることを実証
アメリカは「赤いドット」で示されていますが、上から下までの 8種類すべての株に赤いドットが表示されています。
その点、東アジアの色分けとなっている「紫」は、上のほうの株では、ほぼ示されていないようで、少なくとも現時点では、基本的には、
「ヨーロッパで流行している一部の株は、日本や韓国などでは流行していない」
ということが言えそうで、しかし、下のほうの、つまり中国で流行していた 2019年からある株(主に、日本や東アジアで流行している株)は、時間が経つにつれて、ヨーロッパにも拡大していることもわかります。
つまり、現在のヨーロッパは、
「中国の当初からの株と、分岐した後の株と、両方が流行している」
ようです。
イタリアの致死率が異常に高いのも、「株の種類」と関係あるのかもしれません。イタリアの致死率は、4月1日に「 11.7%」に達しています。同じヨーロッパでは、ドイツの致死率は 約 1%と、あまりにも差がありまして、これは高齢化の問題や医療の問題などで説明できる差ではなく、株が異なることが関係していそうです。
さらには、上の図を見ていますと、どんどんと新型コロナウイルスの遺伝子が変異している中では(小さな変異は 100以上見出されているそうです)、さらに分岐して、今後も「新しい系統」が生まれ、「新しい株」が数多く発生していくことになると思われます。
ここで、「うーん・・・」と考えてしまいます。
たとえば、前回の記事「中国の現実の数値や状態から見える「都市封鎖や移動制限政策は、たとえ短期間でもその国に恐ろしい未来を招く」という現実…」では、私は「移動制限」や「国家封鎖」は、あまりにも後のマイナスの反動が大きすぎて、国家を破壊してしまうのではないかという心配があるというようなことを書きました。
しかし、「新型コロナウイルスの新しい株が次々と出てくる」ことになった場合、あるいは、すでにイタリアやスペインなどで流行している「致死性のとても高い株」などが他の国や地域に拡大していくというのは厄介なことです。
以下は、先ほどのネクストストレインの、どのように新型コロナウイルスの系統樹が各国に広がっていったかを示します。
・Genomic epidemiology of novel coronavirus
感染が世界中に拡大するにつれて、変異と分岐も広がっていきます。
イタリアやスペインで流行している株が、もし、今後さらに強い病原性を持つようになる場合があるとすれば、そういうものの流入は確かに避けたいところでもあります。
それを防ぐには、国境封鎖を続けるしかないのでしょうか……。
いったい、このパンデミックの終着点がどのあたりにあるのか、まるでわからなくなってきている状況といえます。
USA トゥディは、科学者の言葉の引用として「まだ私たち科学者が見逃している株の系統がたくさんあるはずだ」としていましたが、今後も株は増加し続けていくということになりそうです。
治療薬やワクチンの開発の難しさも、この変異と分岐の多彩さにあるのかもしれません。基本的にはコロナウイルスでも、各国で流行しているタイプは、それぞれ、かなり異なったものとなっている可能性があり、世界全体で使用できるタイプの薬剤の開発は難しそうです。
これからも対応が困難な状況が続いてしまうのかもしれません。
どうすれば打開の道筋が見えるのか、まるで見当もつかない状況です。
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