コワイ内容を含む喜劇
私が世界経済フォーラムというようなものを知ったのは比較的最近のことですが、それを知って以来ニュースの見方も少し変わりました。
ときに、満面の笑顔をもたらしてくれるような報道も多くなり、ありがたいことだと思います。
今日も以下のような日本の報道がありました。
「なぜ飛行禁止空域を設定しない」 ウクライナ人女性ジャーナリストが英首相へ涙の訴え
中日新聞 2022/03/03
「なぜウクライナ上空に飛行禁止空域を設定しないのか」。
一日、ポーランドのワルシャワを訪問したジョンソン英首相の記者会見で、ウクライナ人女性ジャーナリストが涙ながらに詰め寄る場面があった。英メディアによると、女性はキエフからポーランドに避難してきた。「女性と子どもたちは空からの爆弾とミサイルにおびえている」と訴え、「北大西洋条約機構(NATO)はウクライナを守ってくれない。ロシアとの戦争が怖いからだ」と声を震わせた。
ジョンソン氏は「支援が不十分なのは認識している」と述べる一方、直接の戦闘行為につながる飛行禁止空域の設定は、ロシアとの全面戦争に発展しかねないと否定的な姿勢を示した。
ジョンソン氏は一日、ポーランドとエストニアを訪れ、両国首脳とNATOのストルテンベルグ事務総長と会談した。
この中に、
> ウクライナ人女性ジャーナリストが涙ながらに詰め寄る場面があった。英メディアによると、女性はキエフからポーランドに避難してきた。
と「ジャーナリスト」とありますが、この報道にはお名前がないのですが、イギリスの報道では、お名前と写真があげられていまして、ダリア・カレニウク (Daria Kaleniuk)さんという女性です。
くしくも、昨日の以下の記事の後半で、わたくしは世界経済フォーラムの「若き世界指導者たちプログラム」 (Global Young Leaders program)という大規模な組織をご紹介させていただきました。1200人ほどに及ぶメンバーのうちの数百人の方々も閲覧させていただいていました。
[記事] 「戦争」を仕掛けているのはプーチン氏かもしれない。そしてそれは世界経済フォーラムの崩壊まで続く最終戦争になるかも
In Deep 2022年3月2日
それでこの「ジャーナリスト」と報じられていましたダリア・カレニウクさんは、この若き世界指導者たちプログラムの中におられるのですね。
世界経済フォーラム「若き世界指導者たち」ページのダリア・カレニウクさん
younggloballeaders.org
昨日の今日でしたので、タイミングもよかったです。
この方は今は「若き世界指導者たち」から出世(?)しているようで、世界経済フォーラムに個別ページもありました。
以下のように書かれています。
世界経済フォーラム - ダリア・カレニウク
ダリアは、ウクライナの汚職防止法と取り組みを形作った強力な全国組織である「汚職防止アクションセンター」の共同創設者兼常務理事です。ダリアの組織は、ウクライナの新しく選出された議会が、ウクライナ国立汚職防止局、特別汚職防止検察庁、高等汚職防止裁判所、公開財産登録簿、電子資産宣言などの強力な汚職防止法を策定することを保証しました。ダリアはまた、国際的にマネーロンダリングと汚職を追跡するための重要なリソースを設立しました。現在、ダリアは国際的なゼロ汚職会議に取り組んでいます。
冒頭にご紹介しました報道ですと、
> ジョンソン英首相の記者会見で、ウクライナ人女性ジャーナリストが涙ながらに詰め寄る場面があった。
とありますが、そのジョンソン首相はこちらです。
世界経済フォーラムのボリス・ジョンソン氏の個別ページ
Boris Johnson
結局、冒頭の報道の文章は正確には以下のようになることになりそうです。
> 世界経済フォーラムのジョンソン英首相の記者会見で、ウクライナ人女性ジャーナリストを装った世界経済フォーラムの女性が涙ながらに詰め寄る場面があった。
下がその時の報道のスナップですが、顔見知り同士の渾身の演劇です。
3月1日 記者会見でのダリア・カレニウクさんとジョンソン首相
mirror.co.uk
実際には、これが報じられた「直後」に、米メディアに見破られていました。
以下は、ホワイトハウスの元首席戦略官のスティーブン・バノン氏のメディアの記事です。
ボリス・ジョンソンに英国を戦争に引きずり込むことを要求する「泣いているジャーナリスト」は、バイデン大統領と関係する世界経済フォーラムのグローバルリーダーだ
The ‘Crying Journalist’ Demanding Boris Drags Britain to War is a Biden-Linked World Economic Forum Global Leader
National Pulse 2022/03/01
3月1日の朝、「ジャーナリスト」のダリア・カレニウクは英国のボリス・ジョンソン首相と対峙し、西側諸国の国民の反対にもかかわらず、NATOがウクライナで戦争に参加することを要求した。
しかし、カレニウクは、西洋のメディアが描いているような「ジャーナリスト」ではない。彼女はジョー・バイデン 2020キャンペーンでも最近登場している長年の政治活動家だ。さらに、カレニウクは世界経済フォーラム(WEF)のグローバルヤングリーダーを務めている。
WEFは、ドイツの経済学者クラウス・シュワブが主導し、財産所有権を廃止するという考えを核とし、これに限定されない「グレートリセット」の概念が、世界中のグローバリストの介入で悪名高いものになっている。
カレニウクは国際的な報道機関から称賛された発言の中で以下のように述べた。
「首相、あなたは今、ポーランドに来ていますが、(ウクライナの)キエフには来てはいません。あなたはリヴィウに来てはいません」
「その理由は、あなたは恐れているからです。NATOは守る気がないからです。NATOが第三次世界大戦を恐れているからです。しかしすでに始まっています」
ジョンソンが彼女を見つめる中で、彼女はこう続けた。
「打撃を受けているウクライナの子供たちがここにいます」
「あなたはより多くの制裁について話していますが、ロマン・アブラモビッチ(ユダヤ系ロシア人実業家)は制裁されていません。彼はロンドンにいます。彼の子供たちは砲撃を受けておらず、彼の子供たちもロンドンにいます。プーチンの子供たちはオランダやドイツにいます。大邸宅にいるのです」
そして泣きながら、彼女は言った。
「私の家族、私のチームメンバーは、私たちは泣いていると言っています。どこに行けばいいのかわかりません。これが起こっていることなんです、首相」
このカレニウクは、2019年の ABCニュースのインタビューでジョー・バイデンの「サポーター」として取り上げられ(報道)、その後、 2020年1月21日に投稿されたジョー・バイデンのキャンペーンビデオで使用された。
彼女はまた、2019年に世界経済フォーラムのウェブサイトで、ジャスティン・トルドー(カナダ首相)、ダン・クレンショー (米国下院議員)、エマニュエル・マクロン(フランス大統領)などの戦争を支援するグローバリストたち (war-supporting globalists)を特集したグローバルヤングリーダープログラムに参加した。
今回のこのニュースは、ロシア政府によるウクライナ侵攻の開始以来、西側のメディアによって広められた誤った報道への多くの暴露に続いている。
ここまでです。
しかし、不思議で仕方ないのは、「こんなにすぐわかることをなぜする」ということではあります。
今は多くの人たちの世界経済フォーラムへの意識が高まっていて、結構な人たちが、そのウェブサイトを見ていると思いますので、あの女性が世界経済フォーラムの若き指導者たちの一員であることもすぐにわかるはずです。
私のようなアジアの田舎に住んでいるような者でもすぐわかることを?
「わざとか?」という気もしないでもないですが、それはともかく、このジャーナリストを装った女性の発言は、「世界大戦にでも引きずりこもうとしているのか?」というようにも思えなくもない部分もあります。
以下は米ロイターの報道で、ロシアの外相が「第三次世界大戦が起きた場合、核を含む破壊的なものになる」と述べたことをロシアの RIA 通信が報じていたことを伝えています。
ロシアのラブロフは、第三次世界大戦は核兵器を含む破壊的なものとなると述べた - RIA通信
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は水曜日に、もし第三次世界大戦が起こった場合、それは核兵器を含み破壊的であると述べたとRIA通信社は報じた。
ラブロフは、先週ウクライナに対して特別な軍事作戦を開始したロシアは、キエフが核兵器を取得した場合、「本当の危険」に直面するだろうと述べた。
Russia's Lavrov says a third World War would be nuclear and destructive -RIA
この発言は、ロシアの報道でも確認しましたが、中東カタールの通信社アルジャジーラとのインタビューで述べたようです。
先ほどのダリア・カレニウクさんは、ジョンソン首相に、「なぜウクライナ上空に飛行禁止空域を設定しないのか」というように問い詰めていましたが、ジョンソン首相も、「直接の戦闘行為につながる飛行禁止空域の設定は、ロシアとの全面戦争に発展しかねない」と述べていましたが、アメリカ国防総省のオースティン長官も、NBCテレビとのインタビューで以下のように述べていました。
> 米国国防長官:「ウクライナに飛行禁止区域を課すことは、ロシアとの戦争を引き起こす可能性がある」 (RIA通信)
そういう恐れがあることを、先ほどのダリア・カレニウクさんはジョンソン首相に要求している。
ロシアのラブロフ外相の発言(第三次世界大戦は核兵器を含む)とアメリカのオースティン長官の発言(飛行禁止区域を課すことは、ロシアとの戦争を引き起こす可能性)を合わせますと、
「世界経済フォーラムはどういう方向に人々の意識を誘導するつもりなんだ?」
と考え込んでしまう部分もあります。そんなに戦争を起こしたい……?
それにしても、上の報道などの確認のために、ロシアのいくつかのサイトを見たのですけれど、当たり前ではあるでしょうけれど、ロシアの報道(特にロシア語の報道)と、欧米や日本などの報道はまったく異なります。
確かに報道の見出しを見ても、西側とはやや異なりますね。
・「孤立の幻想」-多くの国がウクライナでのプーチンの行動を支持している (RT 2022/03/03)
・多くのラテンアメリカ諸国がウクライナでのプーチンの行動を支持している (RT 2022/03/02)
・世界中のスプートニクサイトがDDoS攻撃を受けている (RIA通信 2022/03/03)
ちなみに現在、ヨーロッパでは「すべてのロシアからの報道が EU 当局によってブロックされている」と報じられていました。ロシアトゥディとかスプートニクとかですね。
流れ的に、ロシアの報道というか意見記事をひとつご紹介して締めさせていただきます。
3月2日の RIA 通信「西側諸国は新しい野蛮主義の時代を開いた」という記事です。
アメリカのブラウンストーン研究所の代表者が米エポックタイムズに寄稿した記事に対してのものです。
ブラウンストーン研究所は、最近の以下の記事で取りあげています。
[記事] 「世界経済フォーラムの次のステップ」という記事で見たパートナー企業一覧を見て苦笑と絶望の合間に揺れる静かな春
In Deep 2022年2月21日
今回のタイトルの「新しい野蛮主義」は、ロシアの記事のからのものです。
とても冷静な分析です。
西側などの報道に見られる感情的な部分は見当たりません。
西側諸国は新しい野蛮主義の時代を開いた
Запад открыл век нового варварства
RIA 2022/03/02
不気味な獣が私たちの世界を攻撃している、と米ブラウンストーン研究所の創設者であり、作家であるアメリカ人のジェフリー・タッカー氏は述べている。そして、これらの獣はロシアではなく、そして、それはすべて以前から始まっていたと。
タッカー氏が述べていることをウクライナで起きていることだと考えてはいけない。彼は、「ウラジーミル・プーチンは、ロシアの伝統的な勢力圏での NATO の拡大を拒絶し、世界政治に新たな章を開いた」と述べているが、同時に「アメリカの時代が終わったことを世界に示した」と記している。しかし、アメリカ人であるタッカー氏がこのようになることを望んでいるわけではない。彼は、他の多くの保守派と同様に、アメリカの時代が永遠に続くことを望んでいる。
タッカー氏のコラムではさらに、 1つの単純で理解しやすい考えを表現している。
それは、
「私たち(西側)自身が野蛮の新時代を開いた - 私たちは今何を望んでいるのだろうか」
というものだった。
あるターニングポイントは、ロシア国内ではあまり知られていないが、コロナのワクチンパスポートに大規模に抗議して大陸の半分を麻痺させたカナダのトラック運転手の最近の話だった。抗議スタイルが正しかったか間違っていたかはともかく、カナダ政府はこれらの人々に対して何をしただろうか。
タッカー氏は次のように書いている。
抗議デモ参加者たちは中傷され、銀行口座が押収され、トラックや車から追い出され、重武装の警察が彼らに対して送られ、デモ隊は力づくで排除された。その後、顔認識システムを使用してこれらの人々を追跡した。
タッカー氏の結論は以下だった。
「かつて自由だったこの世界は、不自由な世界へ民主主義を教える道徳的権利を失った」
「不気味な獣」の侵入の話は非常に興味深く、世界中で激しい論争を引き起こした。しかし、ウイルスが存在するかどうか、ワクチンが有用かどうか、そしてビル・ゲイツが言ったことについての終わりのない退屈な議論に関わるのはやめておこう。
代わりに、昨年、この状況は、 EU諸国だけでなく、米国、その他のカナダ、オーストラリアでも非常に尊敬されているロシアのシンクタンクである社会調査専門家研究所である EISI によって慎重に分析されたことに注意してほしい。
EISI の分析による報告書の結論は以下となっていた。
西側諸国では、疫学の動向に関係なく、事実上無制限の期間にわたり行政機関に緊急権力を移すことにより、独裁政権への傾向が高まっている。政府による権利と自由の侵害は、政府と協力する専門家たちの必要な結論があれば簡単に正当化されている。COVID-19パンデミックの場合、緊急行政機関を備えた専門家権力が新しい独裁政権となった。 (報告書)
ここで重要なのは比較だ。つまり、ウイルスの脅威が本当に非常に高かったとしても、(西側諸国で繰り広げられた)あのような措置や、権力と社会の組織化の原則からの権利の放棄と、西洋社会の自由のあれほど大きな放棄が必要だっただろうか。法律の無視と、国民の伝統への完全な拒絶がパンデミックとの戦いに本当に貢献しただろうか。
しかし実際には、それが引き金となって、人々は変化したかもしれないという可能性をジェフリー・タッカー氏は述べている。
彼は、
「市民をあざけり、抗議を抑圧するのに、ほぼ 2年を費やしたこのアメリカの国民全体が、自由、民主主義、平和、人権について高い発言をし始めている」
と述べている。
つまり、この独裁は、西側の国民たちに行き詰まりから抜け出す方法を彼らに示し、人生に新しい意味を与えたともいえる。
現在のロシアに対する制裁の狂乱は理解できる。これはビジネスだからだ。しかし道徳的なトピックについての(西側の国民の)悲鳴は、「 Covidリセットから抜け出す」というタスクに本当に明確に適合する。
そして、ここでは、この悲鳴の強さにおける米国とヨーロッパの社会の違いを見ることができる。分裂したアメリカは、民主党員がこの秋に獲得した権力を失うかもしれないことを悲しんでいるか、逆に、これを激しく喜んでいる。
アメリカ人はさまざまな方法でウクライナについて考えている。国の右半分は、実際には無制限のウクライナの腐敗の新しい暴露にさらに興味を持っている。
しかし、イデオロギーにおいてヨーロッパとそれに近いアングロサクソン諸国は別だ。彼らの絶望は深刻だ。破壊された社会を見るために独裁政権で言及された 2年間の実験から抜け出すための、人々の混乱、石油とガス価格の高騰、そしてヨーロッパ人たちが間違った側を支持したウクライナでの急速に終結する内戦さえもその間はずっと大変な状況だ。
ここで最も興味深いのは、ロシア社会の過去30年間の気分の変化だ。実際、旅行も含めて、この 2年間でヨーロッパを訪れた人は少なくなく、ヨーロッパの生活と私たちの生活を比較することができた。
その結果は「同情」だった。
これは革命と呼ぶこともできるかもしれないが、彼らヨーロッパ人には「もはや存在しなくなったヨーロッパの自由な生活スタイル」への愛がある。ソ連時代のロシアは、ヨーロッパ人の自由な生活を羨ましく眺めていた。しかし、今、ロシアのヨーロッパへの見方は同情に変わった。
その分断の最初の始まりは 1999年で、ユーゴスラビアは、これらの自由な人々がヨーロッパの国全体を引き裂く準備ができていて、不思議なことに殺人者や悪役の側にいることが最初に発見されたときだった。それから、彼らは膨大な数の軍事紛争で常にそのような選択をし、彼らにさえ分断に気づかないことが判明した。
1945年以来、彼ら(西側)の小さな世界ではすべてが順調だと言い続けている。 ここでは、私たちの側(ロシア)では、嫉妬する代わりに、怒りが起こった。しかし同時に、何かを証明し、最終的には愛と賞賛、少なくとも(西側への)理解を達成しようとする試みとともに。
しかし今、私たちはこれをもう必要としない。
同情心は少し残っている。
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