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12月06日にメルマガ免疫と戦争とパンデミックと5Gを発行させていただきました。

2018年からの世界 アメリカの憂鬱 資本主義の終焉

トランプ氏の大統領就任1周年記念の日から始まったアメリカ「政府閉鎖」。その実質的影響は?

投稿日:

bloomberg.com

「政府は閉鎖されました」と書かれたポスターが貼られ自由の女神像も閉鎖

NY Daily News

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政府閉鎖で実際に起きること

「アメリカの政府機関が閉鎖される」という言葉は毎年何度も聞かれる言葉ですが、多くの場合は「ギリギリで回避されて閉鎖されない」ということできていたのですが、1月20日、ついに議会の折り合いがつかず、期限切れによる予算の失効で、アメリカの政府機関の閉鎖という事態となりました。

政府の閉鎖などという響きは何だかおおごとですが、2013年にもアメリカ政府の閉鎖という事態は起きていまして、このブログを書き始めてから2回目の政府閉鎖ということになります。

アメリカ政府機関の閉鎖というのは、下のグラフのように、1976年以降、18回起きていまして、今回で 19回目ということになります。

1976年からのアメリカ政府閉鎖の歴史

Global Macro Monitor

ただ、21世紀に入ってからは 2013年が初めてでしたし、アメリカの政府閉鎖のほとんどが 1990年より前に起きていたことを考えますと、今は予算の規模などを含めて、いろいろと以前とは違うのだろうなあとは思います。

それで、今回は、「アメリカの政府機関の閉鎖とは実際にはどのようなことになるのか」ということについて、アメリカのブルームバーグに非常に詳細な記述がありましたので、その中から抜粋してをご紹介しようと思います。

簡単に書けば、重要なものは継続し、そうではないものは停止されるというようなことになりますが、ただ、政府閉鎖が長引けば、資金の枯渇の問題などが出てきて、また違う局面もあるのかもしれません。

なお、今回このことをご紹介する意味は、現在のアメリカの政府機関の閉鎖そのものがどうだということよりも、今後、アメリカを含めた世の中でいろいろなことが起きたり、予想できないさまざまな状況になった場合に、「政府機関はこういうところから機能を停止していく」という、大事な順番というものが何となくわかるからです。

そのブルームバーグの記事は大変長いものですが、最初に序文のようなものがあり、それを先に記しますと、次のように書かれています。

From Tax Refunds to Restrooms, What the Shutdown Has Shut Down
Bloomberg 2018/01/20

税金の還付からトイレまで、政府閉鎖により停止されるもの

アメリカ政府が閉鎖に至った。これにより、アメリカの国立公園の訪問者はフルサービスのトイレを使用することができなくなる。 また、21日以降、観光客は国立航空宇宙博物館に入ることができない。 アメリカ内国歳入庁(IRS)は、税金還付の発行を停止し、監査の実施も停止される。

このようにして一見する限り、アメリカの政府閉鎖の具体的な影響は、圧倒的に小さなものに見えるかもしれない。 郵便業務は引き続きおこなわれるし、空港の管理塔にはそのままスタッフが配置され、アメリカの国境警備隊は引き続き国境の警備を続ける。

しかし、大小さまざまな形で、1月20日の深夜に始まった政府閉鎖は、アメリカ人の生活のあらゆる側面に影響を与えてくる可能性がある。

商品先物取引委員会(CTFC)は、取引で被害を受けた可能性のある人たちからの新たな苦情についての調査を停止する。アメリカ労働関係委員会は、労働者の権利が侵害されていることについての調査を中止する。

土地管理局は、石油・ガス掘削の許可の発行を停止し、連邦航空局は無人機の承認を停止する。 アメリカ司法省は民事訴訟を停止する。

アメリカ政府自体からも、社会保障カードの発行は停止され、海外の米軍墓地を訪れようとしている人は、その出迎えを拒否される。

政府機関は、議会からの年間予算に依存しない政府の機能、例えば利用料金や複数年の資金で調達されている活動は引き続き行われる。 議会が特別に免除した活動も行われることになる。 おそらく、免除の最大のものは「人命の安全または財産の保護に必要なもの」とみなされる機能だ。

どの党が多くの責任を取ることになるかを考えると、どのくらいのあいだ政府閉鎖が続くかを推測することは不可能だ。 しかし、この状態が続く限り、政府閉鎖は、経済、金融セクター、職場、環境に無限に影響を与える可能性が示されている。

 

ここまでです。記事ではこの後、各項目について詳しく説明されますが、それについては、この記事の最後に重要だと思われる部分を抜粋したいと思います。

ちなみに、日本などのアメリカ国外では基本的にほとんど影響は受けないと思われるのですが、ただ、2013年の政府機関の閉鎖の場合は、

「政府機関のウェブサイトがすべて閉鎖された」

ということがありました。

つまり、よくデータなどを参照させていただいている NASA にしても NOAA (アメリカ海洋大気庁)にしても、アメリカ地質調査所(USGS)にしても、すべては政府機関ですから、政府が閉鎖された時にはそれらのウェブサイトが閉鎖されるということをその時初めて知りました。

2013年10月1日からの16日間、アメリカの政府機関のウェブサイトに表示されたページ(下のはNASA)

 

この頃の In Deep の記事には、この「アメリカの政府閉鎖」のことがタイトルに書かれているものもありますが、宇宙関係、世界の気象、世界の地震関係のデータなどがすべて参照できなくなったのでした。下のような過去記事を書いていた頃です。

数百年来の弱い太陽活動の中で突然起きた「太陽の大爆発」の余韻と共に NASA のサイトも NOAA のサイトもシャットダウンした朝
 In Deep 2013/10/02

世界各地で警告される大地震情報の前に立ちはだかる米国の政府閉鎖
 In Deep 2013/10/13

アメリカの政府機関の閉鎖解除後に知り得たフードスタンプやイルカの大量死のデータ…
 In Deep 2013/10/20

 

今回は、今のところ NASA や NOAA 、アメリカ地質調査所などのウェブサイトは運用されていますが、明日、月曜を迎える時にどうなっているのかはわかりません。また、投資家などが参考にするアメリカ国内の経済指標の発表も、政府機関の閉鎖の間はおこなわれないようです。

前回 2013年の政府機関の閉鎖の期間は「 16日間」だったのですけれど、これ以上となると、いろいろと影響は大きくなっていく可能性もあります。たとえば、アメリカの最高裁判所は「 2月9日までの資金はある」として、問題ないとしていますが、それを超えた場合は? というように、いろいろな部局での予備の予算が利用できなくなった場合に問題がでで来る可能性はありそうです。

では、その場合どうなるのかということは誰にもわかりません(誰にも経験がないため)。

そして、この先どうなのかは私にわかるわけがないですが、今日の報道では「アメリカ議会の対立の構図は基本的に変わっていないので、今後の予測ができない」というようなことが書かれている記事が多くありました。

普通なら、ある程度の短期間で終わるものですが、「何らかの事情で、徹底的に異常な状態になれば」どうなっていくのかわからない面もあります。

ちなみに、政府機関が閉鎖した 1月20日は、トランプ大統領の「就任1周年の記念すべき日」でした。

というわけで、ブルームバーグの先ほどの記事の続きの「アメリカ政府機関閉鎖の具体的な影響」からピックアップさせていただきます。

 


アメリカ政府機関閉鎖の実際の影響(長期化した場合は変化します)

アメリカ財務省

・財務省では、88,268人の職員のうちの 83%以上を自宅待機に

・債務の管理、金融市場や政策調整の監視のために 1000人が業務を継続。他に、会計や社会保障支出などの混乱を避けるために、2800人が閉鎖を免除された。

・政府機関の閉鎖の期間によっては、税金の還付の払い戻しに時間がかかる可能性がある。

 

ホワイトハウス

・大統領の執行室の人員が劇的に減少し、ホワイトハウスの職員 1715人は 659人に総数が減る見込み、大統領の意思決定に最も近い機能を多く含む執行局の一部であるホワイトハウス事務局は、371人のスタッフが 152人に削減される。

・国家安全保障理事会(NSC)は、全 45人のスタッフのうち 1人だけが残り、それ以外は職務停止。

・ホワイトハウスの経済顧問会議メンバーは24人から 8人になる。

 

アメリカ証券取引委員会

・ウォールストリートの主要監督当局は、職員の数を約 4600人から 300人に縮小するとしている。

・政府閉鎖の期間中、証券取引委員会は、投資顧問の登録を承認したり、指針を出したり、新しい金融商品の申請や登録を審査したりすることはない。

・アメリカの主要な規制当局である商品先物取引委員会の大部分の活動が停止される。デリバティブ市場の監視などに関しても「膨大な」仕事が中断されると見られる。多くの市場監視活動も閉鎖の間は停止される。

 

ビジネスと経済

・政府閉鎖が継続する期間に応じて、市場動向の経済データの発表が延長される可能性が高い

・農業省によると、全国の農村部の農場局が閉鎖され、連邦農場の支払いは処理されない。

 

公園と公共の土地

・過去の政府閉鎖の際に閉鎖された国立公園への影響を緩和するための措置を政府は講じるとしている。アメリカの国立公園やその他の公共の土地は可能な限りアクセス可能なままにする意向だという。

・公園などはそのままだが、 キャンプ場やフルサービスのトイレがあるなど人員とメンテナンスが必要なサービスは政府閉鎖中は停止される。民間だけで操業を続けることは許可されるかもしれない。

・アメリカ全国の森林にアクセス可能だが、公式には開いていない。ビジターセンターは閉鎖されており、レンジャー隊は仕事に参加しない。

交通

・輸送システムは、少なくとも閉鎖当初は通常レベルに近く機能する。

・アメリカ連邦航空局や交通安全管理局は、政府機関の計画に従って、空港の運用やセキュリティチェックを通常通りおこなう。

・閉鎖期間中、アメリカ連邦航空局は、無人機運転の承認、新しい航空交通技術の開発、新しい航空交通管制官の訓練を中止する。

・アメリカ国家道路交通安全局の執行機関、欠陥調査、規則作成などを担当する 560人の職員の大部分は、それらの職務が停止されるため自宅待機となる。

・国家交通安全委員会の事故調査は中止される。 ただし、「重大な死傷者」の事故を調査したり、緊急のリスクを特定したりすることはできるという。

 

健康

・アメリカ保健福祉省のスタッフの半数が自宅待機となり、それに伴う影響が出ると見られる。

・アメリカ食品医薬品局(FDA)は、食品安全、栄養、化粧品に関する大半の職務が停止されるとの見通しを示した。 また、定期的な施設検査、コンプライアンスと執行活動、輸入監視などのプログラムの実施は中止となる。

・アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「季節性インフルエンザを含む緊急の疾病発生への即時対応は継続する」と述べた。 しかし、非伝染性疾患予防プログラムのほとんどは実行できないと付け加えた。

・標準的な治療法が効かない人々のみを扱うアメリカ国立衛生研究所は、新規の患者の入院を中止する。

・補足的栄養補助プログラム(フードスタンプ)や学校給食活動など、連邦義務のある栄養プログラムは引き続き行われるが、女性、幼児および児童のプログラムや、その他の援助は、資金が足りなくなるおそれがある。

 

法執行&裁判所

・アメリカ司法省は、職員 115,000人のうちの約 83%が、政府閉鎖の後も引き続き職場に残る。刑事訴訟は中断することなく継続される。 主要ではない民事訴訟は、縮小または延期される。

・連邦裁判所によれば、最高裁判所は 、2月9日までのほとんどの事業を継続するための十分な資金を得ているという。

・国土安全保障省はほとんど影響を受けず、232,860人の従業員の 87%がそのまま職務を継続する。 この部門には、連邦緊急事態管理局、沿岸警備隊およびシークレットサービスが含まれる。

 

国家安全保障外交

・政府閉鎖は、武器やその他の軍に関わる防衛システムの保守が停止されることを意味する。 また、軍に関係するさまざまな支払いが停止される。

・全米の軍事基地では、いわゆるコミッサリー(軍隊内の食堂・購買部)が閉鎖される。

・国務省は、パスポートとビザに関するサービス等の機能は、資金がなくなるまで開いたままにするとの指針を発表した。 その部門の多くの支局は、数年ごとに資金が提供されるため、累積した資金がある。





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