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2019年からの世界 アメリカの憂鬱 拡大する自然災害 資本主義の終焉

アメリカ中西部の大洪水は「真の黙示録への扉」を開けるものとなるのか? : 重大な食糧危機の発生の懸念と、それを発端とした経済・金融・社会の混乱の勃発の可能性が台頭

投稿日:2019年3月30日 更新日:

2019年5月27日の米メディアの記事より


The World’s Greatest Agricultural Disaster




 

アメリカと世界に忍び寄る食糧問題

少し前に、アメリカ中西部の洪水について以下の記事を書かせていただきました。

アメリカで始まった新たな大洪水伝説 : 米国立気象局が「今年5月までに国土の3分の2が洪水に見舞われ、2億人が危機にさらされる可能性がある」と発表

この記事を書いていた時から思っていたのですが、アメリカのこの洪水は、場合によっては「食糧危機」というような問題と結びつく可能性があるのではないかなというようなことは思っていました。

というのも、ここ最近、「世界有数の食糧生産地帯」が、自然災害でメチャクチャにやられているのです。カナダやオーストラリアも「少なくとも過去数十年間で経験したことのない農業損失」を出していまして、そして、今回のアメリカの洪水では、それを上回る被害を出しています。

そして、アメリカのこの洪水は「あと2ヵ月は続く」と、アメリカ海洋大気庁などが述べているわけで、さすがに、

「食糧供給的にかなり厳しいことになっていくのでは」

というようには思っていたりしたのですけれど、そのあたりの現況が、冒頭のアメリカのメディアの記事で、ある程度詳しくふれられていました。

わりと長い記事ですので、まずはこの記事をご紹介させていただこうと思います。

予想以上に、今回のアメリカの洪水が「深刻な事態」の引き金となる可能性を持つものだということがわかります。

余裕がありましたら、なぜ、「洪水と社会的パニック」を結びつけて考えているのかにも簡単にふれさせていただこうと思います。

ここからです。


The World’s Greatest Agricultural Disaster
Cold Climate Change 2019/03/27

世界最大の農業災害

この航空写真は、2019年3月19日に、アイオワ州のミズーリ川に沿って発生している洪水が示されている。アメリカ陸軍の工兵隊は、ネブラスカ州、アイオワ州、ミズーリ州で、少なくとも 12個以上の河川の堤防が決壊したと述べていいる。

激しい気候変動の中、今、アメリカで信じられない洪水が発生している。このような壊滅的な洪水を私たちは見たことがない。

アイオワ州、ネブラスカ州、サウスダコタ州および他のいくつかの州では、広範囲で農地を広く帯状に破壊している。

特に、ネブラスカ州では、この歴史的な災害の範囲は州のあらゆる範囲に及んでおり、ネブラスカ州は現在、混乱の中にある。

この洪水により失われた農作物と酪農動物の被害額は、現在の初期段階の見積もりで、すでに 30億ドル(3300億円)に近づいている。

しかし、洪水はこれで終わるわけではないのだ。

アメリカの気象機関は、この洪水が 5月まで断続的に続くと警告しており、洪水の被害がさらに増加すると予測されている。

これ以上の洪水は、これらの州の農地をすべて使用することができなくなる状態にまで追い込む可能性がある。

豆やトウモロコシ、穀物の栽培に通常使用されている畑の多くが現在、大量の雪、あるいは数メートルの水の下にある。水没している畑では、今年の作物生産は事実上難しいだろう。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、全米の 25の州で 2億人以上の人々が危険にさらされていると警告した。NOAA の予測では、この春は、過去最高の降水量が予測されており、アメリカの大部分の地域では、5月まで「前例のない洪水の季節」になると考えられる。

今後も多くの地域で、農作物や農作地が一掃される可能性があるだろう。

当局は、雪解け水の増加、そして河川の堤防が現在の洪水により水への防御が弱まっているため、今後数週間でさらに大きな洪水が引き起こされるだろうと述べている。

壊滅的な洪水の原因は、気候の激しい変化に起因することは確かだが、降水量の劇的な増加に関しては、天体物理学にも注目したほうがいいかもしれない。宇宙放射線(宇宙線)の増加は、地球の雲の増加を引き起こし、降水量の増加と関係する。

現在、私たちは、太陽活動の極小期の中にいるが、太陽活動極小期の特徴のひとつが、より多くの雨雲と降水量の増加を生み出す宇宙線の増加にある。

私たち(アメリカ人)はアメリカの洪水だけに注目しているが、実際には、現在、世界中で激しい洪水が数多く発生し続けている。

これはどういうことかというと、「世界中の農作物と農作地が荒廃していく可能性がある」ということでもある。

現在のアメリカ中西部がそうであるように、世界のいくつかの国や地域でも、洪水のために、多大な農業損失が発生しているだけではなく、今年の農作が不可能となっているところも出ている。

あるいは、アメリカ中西部の洪水が春の後半にまで続いた場合、農村部の道路や橋、あるいは鉄道等のインフラへの被害も出始める。

これらのインフラはアメリカにとっては非常に重要なものだ。農場から加工工場や出荷拠点に作物を移動するためのものであり、これらが洪水により一掃された場合、農作物を市場に出すことができなくなるのだ。

また、道路が損傷することから、植栽シーズンのためにトラックが農家に種子を届けることがさらに困難になることもあるだろう。

私たちが今見ている光景は、間違いなくアメリカの歴史の中で史上最悪の、私たちが見たことのない農業災害なのだ。

広大な農地が水没しており、しかも今後数カ月はそのままだ。

 

膨大な食糧備蓄も失われた

この洪水では、農家の人々が貯蔵していた小麦、トウモロコシ、大豆の大量備蓄が失われたこともわかっている。

アメリカ農務省によると、サウスダコタ州、ネブラスカ州、カンザス州、ミネソタ州、アイオワ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州、イリノイ州の各農場には、67億5000万ブッシェル(約 1億8000万トン)のトウモロコシ、大豆、小麦が貯蔵されていた。

これだけの驚異的な量の食糧備蓄が洪水で失われたことは驚きだが、なぜ、このように大量な備蓄をしていたかというと、米中の貿易戦争のために、農家は以前よりも多くの小麦、トウモロコシ、大豆を貯蔵していたのだ。

そのような中、洪水は貯蔵されていた食糧の多くを破壊した。

つまり、洪水は、農作地の作物を一掃しただけではなく、倉庫に備蓄されていた食糧、つまり過去の生産物も一掃した。そして、農地を使用不可にしたことで、未来の生産物も消し去ろうとしている。

 

経済への波及

洪水以外も含めて頻繁になっている他の農業災害を前に、次のことに注意することが重要だ。それは、インフラの損傷、農業損失、および干ばつ、洪水、ハリケーンによる商品価格の急上昇によって引き起こされるマクロ経済的なショックについてだ。

サンフランシスコ連銀上級執行役のグレン・ルデブッシュ(Glenn Rudebusch)氏は、「気候変動は金融危機を引き起こす可能性がある」と述べている。

巨大なインフラの被害、莫大な農業損失、食料品の急激な価格上昇の脅威、そして多くのアメリカの州間での経済活動の急激な低下が金融市場の混乱を引き起こす可能性を示唆している。

 

オリーブオイルのカタストロフ

CNNの報告によると、ここ数カ月の間に悪天候と霜により、世界のオリーブオイル生産とその業界が問題を起こしており、57%の損失が発生しているという。

2018年までに生産量が減少し、同部門に約10億ユーロ(11.33億ドル / 1200億円)の損失が出た。

特に状況がひどいのがイタリアで、生産量の劇的な減少を防ぐために、イタリアはオリーブオイルの輸入を余儀なくされる可能性がある。

極端な気象現象がオリーブの収穫を激減させ、イタリアの最も重要な料理の材料のひとつであるオリーブオイルの不足という懸念が現実化しようとしている。

イタリアの大部分のオリーブオイルを生産している南部地域は、最も気候の影響を受けており、「 2500万本のオリーブの木が消失した」という。

 

気候変動とジャガイモの黙示録

ジャガイモの生産も世界的に壊滅的となっている。カナダでは、5億ポンド(2.4億キロ)のジャガイモが駄目になった。

これは、春の終わりに 3週間に渡ってカナダを襲った悪天候によるものだ。

昨年のカナダはあまりにも暑い夏、そしてあまりにも寒い秋の中で、推定で 6000ヘクタールのジャガイモ畑で収穫することができなかった。関係者たちは、「このようなことは、過去 25年間で一度も見たことがない」と話している。状況が好転する兆しもない。

 

メキシコ

メキシコでは、この冬の異例ともいえる寒波と大雪により、多くの農作地が破壊された。ソノラ州では、霜と雪で大量の作物が収穫できない状態となった。

ソノラ州だけでも、推定で 1万2000ヘクタールの農作物が被害を受けたと考えられている。

他にも、カボチャ、チリビーンズ、ジャガイモなどが何千ヘクタールにわたり、霜の被害を受けている。

 

劇的な気候変動は世界全体で起きている

オーストラリアは、昨年までの 7年間、史上最悪の干ばつを経験していた。ところが、一転して、オーストラリア・クイーンズランド州は、壊滅的な洪水に襲われ、飼育されていた牛たちが一掃される光景と対峙しなければならなかった。

オーストラリア最大の牛の企業は、「極度の損失」について警告しており、オーストラリア北東部では、この洪水により 30万頭以上の牛が溺死あるいは流失したと見られる。

現在までに、オーストラリアの洪水での牛の死亡数は 50万頭に上っている。

アメリカでも、真冬のアイダホ州とワシントン州で、大雪、強風、極寒が複数の酪農地域を襲い、約 2000頭の乳牛が死亡した。

ワシントン州の酪農家たちによると、自分たちの人生でこのようなことを経験したのは、これが初めてだと述べている。

そして、現在のアメリカ中西部の洪水では、どれほどの数の牛が死亡しているかまだわからないとはいえ、天文学的な数字になることは確実だろう。

洪水の初期段階で、溺死あるいは流失した仔牛は数百万頭にのぼるとされている。

 

結論

気候学者のジュディス・カレー(Judith Curry)氏は、最新の論文の中で、現在の海面上昇は異常ではないことを説明し、そして過去 150年間、海洋は「ゆっくりとした変化」を続けてきたと主張しながら、1950年以降の二酸化炭素排出量の増加から、気候変動が人為的な理由だけでは説明できないことを発見した。

NASA の研究によると、グリーンランド最大の氷河であるヤコブスハブン氷河は、2016年から急速に拡大を始めた。これは科学誌ネイチャー・ジオサイエンスに発表された。

北半球最大の氷河が成長に転じた中で、温暖化の傾向を考えるのは難しい。

しかし、地球が温暖化に向かおうが寒冷化に向かおうが、とにかく気候は変化している。

より寒くなり、あるいは、より暑くなり、より多くの雪、より多くの雨、より多くの洪水、より多くの干ばつ、より大きな嵐が地球の各地で猛威を奮う。

劇的な気候変動の中にある現在は、火山の噴火も地震も増えている。これは過去の気候変動の時期のデータと太陽活動極小期の関連でも予測できることだ。

気候変動に関しては、人それぞれの信念や確信があるだろうが、その信念はともかくとして、現在の激しい気候変動の結果として現れているこれらの事象は無視できない事実だ。

太陽活動は減少し、太陽の日射も少なくなっている。そして、その原因はCO2とは関係ないことを私たちは知り始めている。

 


 

 

ここまでです。

記事にもありますけれど、一般的な洪水被害と比較して、今回のアメリカの洪水は、「食糧供給への影響が大きすぎる」ように思うのです。

もちろん、これほどの農業被害の経験はアメリカ自身にもかつてないわけで、どうなるのかはよくわからないですけれど、次々と出てくる数字が大きすぎるのです。

他にも、カナダやオーストラリアでも、異常気象の中で農作や酪農が非常に大きな打撃を受けている他、イタリアでは「オリーブオイル不足」という事態も現実化してくる可能性があるほどのこととなっています。

上の記事で、イタリアにおいて「 2500万本のオリーブの木が消失した」というのは、おそらく以下の過去記事で取りあげた「暴風雨」によるものではないかと思います。

イタリア北部の暴風雨被害は歴史的な規模に。1400万本以上の森林の木々が倒され、「回復には1世紀かかる」

 

この記事のタイトルに「回復には1世紀かかる」とありますように、今起きている自然災害の影響は、そう簡単に元に戻るというようなものではないのです。

この「洪水」に反応しましたのは、最新メルマガ「同じ世界に生きている異なったふたつの人類」というものでもふれたのですけれど、アメリカの未来予測プロジェクト「ウェブボット」のちょうど 10年前の 2009年の記述に「洪水」に関するものがありまして、そして、その中にある、

「 2009年前に起きると予測されていたことが今 2019年と似ている」

ことに気づいたのです。

ですから、「洪水 → 社会変化」という流れは、今年 2019年に起きる可能性もあるのかなあと。

その 2009年に起きる(と予測して起きなかったこと)の代表的なことが、

 

・人類の変容の始まり

・世界中での物資の不足と飢餓

・金融危機と通貨危機

 

などですけれど、人類の変容なんていう雲を掴む系の話はともかくとして、「物資の不足と飢餓」は、現在すでに多くの国や地域で発生していまして、英国 BBC は、3月20日に、「食糧がなくなった時に何が起きる?」という大特集を掲載しています。


BBC

 

国連世界食糧計画によれば、現在、1億2400万人が食糧危機に直面しており、約 8億人が栄養不良となっているそうですが、この数字は「世界全体としての食糧の供給に問題がない状態」でのものです。

ここに「問題が起きたとしたら」どうなるのか。

 

カナダ、オーストラリア、そしてアメリカと立て続けに農作地が破壊され続けている現状で、仮に、

「世界全体の食糧供給のバランスに問題が起きた場合」

はどうなってしまうのかと。

上の記事にもありましたけれど、アメリカでは大量の「食糧備蓄」も失われてしまっているわけで、いかに食糧生産が豊富なアメリカでも、この洪水、そして今後もこのような状態が続くとなると、なかなか展望は厳しいものになるのではないでしょうか。

まして、食糧自給率が極端に低い東アジアの国々は、本当の意味での「世界的な食糧の危機」が発生した時には、対処できないかもしれません。

過剰に心配する必要はないかもしれないですが、今後のアメリカなどの自然災害の状況次第では、多少は、「食糧供給に問題が生じた場合」の対策なども考えておくのも悪くないかもしれないですね。

何でもなければ、食べちゃえばいいだけですし。

それにしても、ここまでピンポイントで農産地を連続して攻撃する自然災害というのは過去に例がない気がします。

本格的な「その時代」というような気配を感じざるを得ません。





  • この記事を書いた人

Oka In Deep

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