・地球の記録、他
収まりそうもない環太平洋火山帯の活動の中で
いわゆる「人的被害」が比較的少ない事象が多いせいか、最近は、地震にしても火山噴火にしても、地質的なニュースはそれほど話題とはなりませんが、現実には、「地質活動は着実に活動のペースを上げている」といえる状態が続いています。
昨日、インドネシアのシナブン山がまたしても非常に大きな噴火を起こしたのですけれど、このシナブン山は 2月から活動の徴候を見せていなかったのです。
「もしかして今回の活動は終息した?」と思っていたところに、巨大な噴火が発生したわけで、日本の新燃岳などの例もそうですけれど、やはり今のこの時期、そして、これからの火山活動と地震については、「終息する方向ではない」というように思います。インドネシアのシナブン山の昨日の噴火については下の記事で取り上げました。
活動が終息したと思われていたインドネシア・シナブン山で、それまでの規模を上回るレベルの大噴火が発生。山は火砕流と噴煙に包まれる
投稿日:2018年4月7日
今回は、その環太平洋火山帯のことについて詳細に取りあげていました最近の英字紙「ニッケイ・アジアン・レビュー」の記事をご紹介しようと思います。ニッケイ・アジアン・レビューは日本経済新聞の英字雑誌ですが、日本語では同様の記事が見当たらなく、また内容的にも環太平洋火山帯の歴史と現状がよくまとめらてれいましたので、ご紹介したいと思いました。
そこにある地図を見ますと、やはりアジアの中でも、日本は地質学者たちから危険だと想定されているエリアが大変に多く(全域が世界最高レベル級の危険性)、そういう場所に暮らしているのだなあと実感します。
下の図は、「赤が濃いほど大きな地震の災害のリスクが想定される」という意味です。
また、その記事の中で特に注目したのは、「地震や火山の自然災害が穏やかだった 20世紀が終わり、21世紀になって以来、その数は飛躍的に増えている」ことが示されていることです。
感覚的な話ではなく、「実際に、21世紀になってから飛躍的に火山の噴火と地震は増えている」のです。
噴火だけでも、
・20世紀全体 → 65の火山の噴火
・21世紀 → まだ18年間で 25の火山が噴火
ということになっていて、この数字の通りに行くと「 21世紀は 20世紀の倍の数の火山の噴火があり得る」ということにもなるのかもしれません。
ご紹介する記事は大変長いものですので、そろそろ本題に入りたいと思いますが、この「 21世紀」という区分、合理的な意味では特に意味はないですが、シュタイナー学派などは、かつて「 21世紀前半から悪魔的存在が活動を開始する」と見ていたことなどを下の記事で書いたことがありました。
ルドルフ・シュタイナーの『天地の未来 ─ 地震・火山・戦争』の序文にある、訳者の西川隆範さんの記述から以下の部分を抜粋して、その後に今回ご紹介する本文に続けます。
シュタイナー『天地の未来』 訳者序文より
1998年(666×3)に悪魔的存在が地上に誕生し、21世紀前半中にも活動を開始する、とシュタイナー学派は見ている。他方、本書でシュタイナーも語っているが、紀元前 3101年に始まった暗黒時代(カリユガ)の第一期が 1899年に終了し、精神世界への見通しが明るくなってきている。
幾多の困難が今後もやってくるだろうが、全体的には世界は精神化へ向かっている。物欲の時代は終わり、心魂浄化の時代が始まっている。時代の流れを促進するか、物質に固執して混迷を深めるか、個人個人の生活が岐路に立っている。
私たちはいま、比類なき美しい自然に鎮座なさっている神々にふさわしい国土をあらためて築いていく時期を迎えたのではないだろうか。
科学的な観点からも、上のような精神科学(あるいはオカルト)の観点からも、私たちは、もはや困難を伴う自然災害は避けられないところにいるようです。
それを単に「危機」と考え怯えるだけか、「変化の機会」として前向きにとらえるかは人それぞれだと思いますが、私個人はできる限りは変化の機会だと受け取りたいですし、できるだけそう考えたいとは思っています。難しいことですが。
では、ニッケイ・アジアン・レビューの本文です。こちらは、科学的あるいは社会的な意味での環太平洋火山帯の現状です。
Is the Ring of Fire becoming more active?
Nikkei Asian Review 2018/04/04
環太平洋火山帯の活動はさらに活溌になっているのか?
インドネシアのリゾート地バリ島にあるアグン山が昨年 9月に振動を記録し始めた時、当局は、この火山が 1963年に起こした壊滅的な噴火を思い起こし、バリ島の住民たちに避難を命じ始た。その後、アグン山の火山性地震は 11月21日まで続いた後、最終的には噴火が始まり、14万人もの人々が避難した。それから 4ヵ月以上が経過したが、いまだ活動は収まっていない。
日本では、今年 1月23日、東京から北西約 150キロメートルに位置する草津白根山が、直前まで目立った予兆もなく突然噴火したことは、専門家たちを驚かせた。この噴火では、噴石により自衛隊員 1名が死亡した。
同じ頃、フィリピンにあるマヨン山が、灰と溶岩を噴出し始め、56,000人以上の周辺住民たちが避難している。
その後、2月中旬に、インドネシアのスマトラ島にあるシナブン山が高さ 7キロメートルに及ぶ噴煙を上げる大噴火を起こした。住民たちは避難し、子どもたちが泣き叫ぶ様子が報道された。
シナブン山の噴火の後、2月下旬にはパプアニューギニアでマグニチュード 7.5の大地震が発生した。これは、この地域では過去1世紀で最悪の地震となった。そして、この月の初めには、台湾の花蓮県でマグニチュード 6.4の地震が発生し(2018年花蓮地震)、17人が犠牲となった。
このような落ち着かない出来事が連続して起きている日本、フィリピン、インドネシア等は「環太平洋火山帯(Ring of Fire)」と呼ばれている太平洋を囲む馬蹄型の形をしたベルト状のエリアの上にある。この環太平洋火山帯には、世界で最も活発な火山の約 4分の 3が存在する。
一部の専門家たちが「比較的落ち着いた地震活動の時代」だったと呼ぶ 20世紀が終わり、現在の 21世紀は、劇的な地震と火山の噴火の増加を見せている。
たとえば、この 21世紀の最初の 18年間(2001年1月〜 2018年3月)まで、世界では約 25の火山の噴火が観測された。比較すれば、20世紀は全体を通して観測された火山噴火は 65だったので、ペースとしては相当増えていることになる。
インドネシアには 127の火山がある。その半数以上は、その火山活動のために継続的に監視される必要がある。オーストラリア国立大学のアンソニー・レイド(Anthony Reid)氏は、「実際に起きていることを書けば、インドネシアのスマトラ島からジャワ島、バリ島、そして、ティモールまでのインドネシアの火山の連鎖構造が、世界の構造的境界面の中で最も危険なものとなっています」と述べている。
インドネシアは 20世紀に穏やかな地震活動の時代を過ごしたが、事態は変化していく可能性があるとレイド氏は警告している。そして、「そもそも、インドネシアでの(地震と火山噴火による)死者数は、すでに 20世紀を上回っているのです」と述べる。
インドネシアでのこの大規模な死者数は主に 2004年のインド洋の大津波によるものだ。これはスマトラ島北部のマグニチュード 9.2の地震に伴うもので、記録に残っている上での地球で起きた地震の中で3番目に大きなものであった。この津波により、インドネシアのアチェ州では津波により約 24万人が死亡した。
フィリピンには約 300の火山がある。そのうち 24の火山が「活発」であるか、過去 1万年間に少なくとも 1回の噴火を記録しているとフィリピン火山・地震学研究所(Phivolcs)の責任者レナト・ソリドゥム(Renato Solidum)氏は言う。
フィリピン火山・地震学研究所は現在、カンラオン山とマヨン山の他、そこから 70キロメートル離れたブルサン山も同時に監視している。この中でも、マヨン山は、17世紀から 60回も噴火している活溌な火山だ。
地震は地上で発生した場合には、建物やインフラを崩壊させ、海底で発生した場合には、津波を発生させる可能性がある。 2011年3月の日本でのマグニチュード 9.0の地震では、その直後に起きた津波により、約 16,000人が死亡した。
インドネシアは、4つの主要なプレート(ユーラシア、インドオーストラリア、太平洋、フィリピン)の構造の中にあり、世界で最も地震の多い地域だ。メガトラスト・セグメントと呼ばれる 2つのプレートの会合地点は、ジャカルタ近くのスンダ海峡とジャワ南部の海の間に広がっている。ここ数年、インドネシアでは、大きな地震を経験していないが、首都ジャカルタに影響を与える可能性のある大きな変化があるとという懸念がある。
インドネシア科学院の地震地質学者ダニー・ヒルマン・ナタウィジャジャ(Danny Hilman Natawidjaja)氏は、「私たちはそれを地震空白域(Seismic gap)と呼んでいます」と言う。「非常に大量のエネルギーが蓄積している可能性があるため、発生した場合に大地震となる可能性を秘めていることを意味します」と述べる。
ナタウィジャジャ氏は、「マグニチュード 8.5以上の地震が発生する可能性は高いと思われますが、それがどのように起きるかどうかを知る術はないのです。しかし、この数年のうちに、あるいは今後数十年の中でそのような地震が起きる可能性があるのです」と言う。
火山の噴火も地震も自然の確かな現象だが、その発生を予測することは非常に困難だ。
世界的に連鎖する大災害
20世紀の相対的に穏やかだった火山活動が、21世紀に入ってからは信じられないほど恐ろしい活動を見せている。
世界で初めて火山の噴火が報道されたのは 1883年 8月27日のことで、インドネシアのクラカタウ火山の噴火の際だった。潜水艦による電信やニュース配信網の出現で、世界の主要な都市で、クラカタウ火山の噴火はリアルタイムで報じられた。
クラカタウ山の噴火は、世界で初めてのグローバル・ニュース報道であっただけでなく、大自然が遂行した真の世界的な環境災害でもあった。クラカタウ山の噴火によって地球の上層大気の汚染が 5年間続き、世界的に気候に影響を与えたために、世界のすべての地域で気候と食糧生産が影響を受けた。
クラカタウの噴火はその被害の様相も壊滅的だった。その際の噴火で犠牲となった 35,000人のうちの多くは、その噴火により発生した津波の被害者だった。当時の東インド諸島の人口は約 3,400万人で、現在の 2億6,600万人の約 13%だったことを考えると、将来同じような事象が起きた際の被害の可能性が示唆される。
それ以来、この地球では同じような規模の噴火は起きていない。つまり、今、地球に生きている私たちの中で、このクラカタウの噴火の経験者はいないのだ。
1980年には、アメリカのセントヘレンズ山が噴火し、1991年には、フィリピンのピナツボ山が噴火して 800人以上が犠牲となったが、どちらも、クラカタウの噴火と比べると規模の小さなものだった。
しかし、1883年以前には、たとえば 1815年にインドネシアのタンボラ山の噴火により 9万人が死亡した。この時のタンボラ山の噴火は、クラカタウ山の 10倍のエネルギーがあったと考えられており、記録に残る中では、地球上で最も強力な噴火だったと考えられている。
1815年のインドネシアのタンボラ山の噴火の際にも、その噴火による雲が世界中の空を覆い、世界は寒冷化した。そして、各地で飢饉、疫病の流行、社会不安を引き起こした。スイスでは食糧暴動が起き、中国の雲南省では異常な冬となった。
そして、翌年 1816年は各地が「夏のない年」として記憶された。
警報体制は整っているが
インドネシアの火山群は、火山地質災害緩和センター(PVMBG)によって監視されている。
1963年にアグン山が噴火したとき、その噴火は 1年間続き、約 1,500人が死亡したが、当時のスカルノ大統領は、政治的理由でアグン山の噴火に関するニュースを報道管制により押さえ込んだ。
火山地質災害緩和センターによれば、1815年のタンボラ山の噴火のような壊滅的な大噴火が起きる可能性は非常に低いという。また、仮にあったとしても、そのような大規模噴火では一般的に事前の徴候があるために、警告や避難の時間的余裕はあると述べている。
日本においても新たな発見があった。神戸大学海底探査センターの巽好幸(たつみ よしゆき)教授たちのチームが、今年 2月に発表した論文で九州の南約 50キロメートルの場所にある海底火山「鬼界カルデラ」に巨大な溶岩ドームの存在を報告している。この「鬼界カルデラ」は、先ほどのインドネシアのタンボラ火山より 10倍強力な火山爆発指数(VEI 8)に属している。
(※ 訳者注) このことに関しては、以下の過去記事に比較的詳細に書いてありますのでご参照いただければと思います。
・「噴火すれば最悪1億人が死亡と想定」 : 九州南方にある鬼界カルデラの活動の徴候の報道から再び「破局噴火の時代」をおもう」
・カルデラ噴火、巨大地震、あるいはあらゆる破局災害の根源にあるものと「日本の自然の中の神々」……を本日の富士山を見てちょっと考えました
巽教授によると、約7300年前に最後に噴火したこの鬼界カルデラの溶岩ドームの中に圧力が高まっているという。
同時に巽教授は、世界中の火山学者たちにしても、実際に世界最大級のような火山の噴火が起きた時に具体的にどうなるのかということについては、ほとんどわかっていないと述べている。「たとえば地震のような前兆はあるだろうとは思いますが、まだ人類の文明は、超巨大火山の噴火発生のメカニズムを解き明かしてはいないのです」と巽教授は述べる。
巽教授は、日本の鬼界カルデラが噴火した場合、最悪では 9000万人が死亡する可能性があるとしている。その場合、大阪では 50センチの降灰があり、東京でも 20センチの降灰を予測している。
他にも、火山爆発指数が 8(VEI 8 =火山の爆発指数で最大)の噴火をしたと考えられている超巨大火山が世界には十数ある。アメリカのイエローストーン、ニュージーランドの北島、そして先述したインドネシアの火山、日本の九州南部にある姶良(あいら)カルデラなどだ。
超巨大火山の噴火は極めて稀にしか起こらない。しかし、その数字と「現実」を冷静に比較すると、その「稀」という概念はあまり気休めにならないかもしれない。
たとえば、先ほどの日本の鬼界カルデラが今後 100年の間に噴火する可能性は、巽教授によれば「 1%」だ。しかし、1995年に神戸で発生した阪神・淡路大震災は、それが起きるまで「そのような地震が起きる確率は 30年で 1%」だった。
つまり、「 100年間で 1%」という概念は同時に、「いつでも起きる」という捉え方ができる概念でもあるのだ。
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