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「複合パンデミック」の予兆:ジカウイルスに続き、WHOが黄熱病の世界的流行に対しての緊急事態宣言を検討中

   

next-pandemicThe Week

写真のザ・ウィークの報道タイトルは「次のパンデミック」の意味。この記事によれば、「近現代人類史の中の最悪の大量死事象」は、すべて感染症によるものだったとあり、それは、スペイン風邪、ペスト、そしてエイズだそう。

 

現世人類も多くのウイルスもアフリカから世界へと

現在、アフリカのアンゴラという国で「黄熱病」という「蚊」が媒介する病気が大流行の兆しを見せていて、すでに 300人近くが亡くなっていますが、この黄熱病の流行を「全世界の公衆衛生上の危機」として捉える人たちが多くなっています。

たとえば、下は 5月9日の英国インディペンデントの報道記事ですが、「世界は重大な局面に瀕している」というような表現が出るほどの懸念事項となり始めているようなのです。

2016年5月9日の英国インディペンデントの報道より

yellow-fever-world-on-brink-of-global-emergencyIndependent

 

なお、黄熱病は、現在は「黄熱」という呼び方が一般的なようですが、野口英世師の時代の「黄熱病」という言葉の方が親しみがあるので、そちらを使いたいと思います。

今回はこのインディペンデントの記事を含めて、いくつかご紹介したいと思いますが、このアンゴラ発の黄熱病が気になったのは、例えば、過去記事の、

開き続けるパンドラの箱:アメリカ国立感染症研究所の感染症マップが示す、この30年間が「異常な病気の出現の時代」であったこと…
 2016/02/15

などでも書きましたように、今はかつてないほどの「病気(感染症)の時代」であることが事実として示されていて、そういう中で、かつてはアフリカと南米の風土病でしかなかった黄熱病が「全世界」(正確には、蚊の生息する圏内の全世界)に拡散する可能性が真剣に考えられているからです。

同じように「蚊」が媒介するジカウイルスは、現在の大きな公衆衛生上の危機ではあるのですが、しかし、ジカウイルスは、赤ちゃんを小頭症に至らしめるという深刻な事態を引き起こしますけれど、ジカ熱そのもので人が死亡する率はとても低いものです。

しかし、黄熱病は違います。

致死率が最大で 50パーセントに達する致命的な病気です。

あと、やはり「アフリカから拡大している」ということにも思うところはあります。

私たち現世人類は、それが東アフリカか南アフリカかという論争はあるにしても、正確な場所はともかく。「私たちの直接的祖先がアフリカに登場した」ことはほぼ確実で、そして、そこから全世界に拡散していきました。

そして「感染症」もそれと似たような面がよく見受けられるのです。

たとえば、エイズは今でも年間 100万人から 200万人くらいという膨大な人々の命を奪っていて、過去記事の「2015年の世界全体の死者数は「5760万人」…」に書きましたが、2013年の時点で、「この世にエイズが登場してから、エイズで亡くなった人の数は 3900万人」という途方もない数字となっています。

おそらく、現在までの累積死者数は 4000万人を越えてきていると思います。ちなみに、これまでのエイズの総患者数は、推定で 8000万人以上です。

このエイズもアフリカからやってきました。

他にも、そういうウイルスは数多くあります。

人類もウイルスも、まずアフリカの地に登場して、それから世界中に拡大する。
現在、大流行している黄熱病が発生したアンゴラ、そして、病気は周辺国にも広がっているのですが、それは、現世人類がこの地球に初めてあらわれた(どうやって現れたのかは不明ですが)場所とリンクする場所でもあります。

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そんな黄熱病のことが気になった次第であります。

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世界の専門家と WHO が、どのくらい、この黄熱病に懸念を示しているかということについて、先ほどの英国インディペンデントの記事を先にご紹介しておこうと思います。

黄熱病の歴史や症状なども記されていて、やや長いですが、大体、現状などがわかる記事でもあります。

 


Yellow fever: World on brink of global emergency over deadly outbreak, academics warn
Independent 2016/05/09

黄熱病:致命的な流行に対して、全世界は重大な局面に至る可能性があると研究者たちが警告

アフリカと南米のほぼ1億人が黄熱病のリスクにさらされており、その次にアジアで流行する可能性がある。さらに、ヨーロッパとアメリカでも、過去に致命的な黄熱病の発生の歴史がある

アフリカでの黄熱病の大流行が、全世界的な衛生上の緊急事態となる可能性を持つ徴候について、現在、緊急の行動が求められており、また、深刻な黄熱病ワクチンの不足という現実があり、早急に対処するべきだと専門家たちは警告している。

アフリカと南米では、ほぼ1億人近くが黄熱病の感染の危険にさらされており、そして、その次にはアジアでの流行の可能性があることについて、免疫学教授のダニエル・ルセイ(Daniel Lucey)氏と、ローレンス・ゴスティン(Lawrence Gostin)氏のふたりは、世界保健機構(WHO)に対して、公衆衛生上の緊急事態を宣言するように呼びかけた。

また、ふたりの教授は、気候変動に起因すると思われる近年の新しい感染症の急増について語り、世界は今、新たに出現する感染症の脅威に対して応答する方法を決定するための恒常的な委員会を設置する必要性に迫られていることを述べた。

アンゴラでは、黄熱病の死者が 250名以上に上っており、1986年の流行以来最悪の流行となっている上に、感染は急速に周辺国に拡大している。

周辺国のケニア、ウガンダ、コンゴ民主共和国では、すべて、黄熱病の発生が確認されている。

また、南米ペルーでも、少なくとも 20例の黄熱病の発生があり、アンゴラで発症した中国人が本国へ送還された後、中国でも多少の報告があった。

米国ジョージタウン大学の科学者たちは、医学誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)』に以下のように警告した。

「深刻な黄熱病ワクチン不足に現在直面しつつあり、アフリカの危機が迫っている。そして、南米とアジアでの流行の可能性を排除できない」

黄熱病は蚊(ネッタイシマカ)によって媒介される病気だが、予防する方法としてワクチンが有効だ。しかし、その黄熱病のワクチン不足が「深刻な公衆衛生上の危機を爆発」させている。

そして、世界の公衆衛生上に不可欠なワクチンを少しでも行き渡らせるために、WHO は、一人あたりのワクチンの投与量を減らすことまで検討しなければならなくなっていると専門家たちは JAMA に記した。

また、専門家たちは、「 WHOは、黄熱病対策に資金を動員する緊急委員会を招集しなければならない」と主張し、国際的な取り組みでワクチン生産を増加させるために WHO が陣頭指揮をとるべきだと述べる。

彼らは以下のように書いている。

「過去のエボラウイルスや、現在進行中のジカウイルスの流行などで WHO は緊急委員会の招集に遅れがあった。今後そのために多くの命が奪われるということを繰り返してはいけない。拡大する黄熱病の流行に対処するための行動が不可欠だ」

17世紀以降、アフリカ南部と南米では何度かの黄熱病の散発的な大流行があった。

ヨーロッパも、1730年と 1821年に黄熱病の流行が発生し、この時は、イギリスも影響を受けた。

また、アメリカでも黄熱病の集団発生が過去にあった。1793年にフィラデルフィアでの流行、1878年にはメンフィスでの流行、そして、1905年にはニューオーリンズで流行した。

黄熱病は、特に厄介な方法で人を死に至らしめる。感染した当初は、3日から4日間程度の発熱、重度の腰痛、震え、嘔吐などの症状を引き起こす。

しかし、それらの症状があらわれたうちの 15パーセントほどは回復したかのような状態になる。ところが、しばらくして、またひどい発熱と黄疸に見舞われる。

その後、さらに嘔吐やけいれんといった症状と共に、目、鼻、胃からの出血が始まる。このような深刻な症状に至った場合は、約半数が助からない。

固有の治療法はまったくない。

1980年代以降、医学界は、数多くの新しい病気の脅威の報告を受けた。中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、西ナイルウイルス、鳥インフルエンザや豚インフルエンザ、他にもいろいろとある。

なぜ、1980年代以降、新しい感染症が次々と出現したのかということに関しては、いくつかの理由は考えられるが、世界の人口が増えたことや、他の国へのアクセスが容易になったことも含まれると思われる。

あるいは、動物や植物が世界的に貿易で取引されていることや、気候変動のために自然生息している昆虫を含めた動物たちが他の場所へ移動する例が多くなったことも関係しているのかもしれない。

イギリスも気候変動によって気温が上昇したことで、ヒトスジシマカが自然に生息するようになり、黄熱病がイギリスにまで達する可能性もあり、そのことを科学者たちは懸念している。

ヒトスジシマカは、もともと自然に生息していた東南アジアから、わずか 20年でヨーロッパへと広がった。

ルセイ教授とゴスティン氏は、新しい病気を監視するための恒久的な機関を設置する時が来ているとして、

「 WHOが、緊急委員会を招集する必要はないと思いますが、その代わり、WHO は、各国の衛生部門も代表に的確なアドバイスができるような定期的な会合をおこなう委員会を設置すべきです」

と述べる。

WHO は先月、黄熱病は全世界への脅威であると述べたが、黄熱病に対しての緊急委員会の招集については、「検討中」としていた。

「アンゴラでの黄熱病の流行は、世界中への感染拡大の可能性について特に懸念される」と WHO は述べている。

そして、WHO は、1160万人分のワクチンをアンゴラに送り、コンゴ共和国には 220万人分のワクチンを送ったと述べた。

WHOはまた、流行地の予防接種キャンペーンを実施するためにアンゴラ政府とコンゴ共和国政府を支援し、蚊の駆除コントロールもおこなう。

WHO はウェブサイト上で、以下のように警告している。

「黄熱病の国際的な拡大のリスクは以前よりも大きい。過去の黄熱病の壊滅的な大流行は、港湾を中心に発生した。しかし、今日では、ほとんどの都市間が電車や飛行機などの、より迅速な手段によってつながれている」

「これまでのところは、黄熱ウイルスの拡大範囲は、過去の流行国の範囲内におさまっているが、しかし、今後、黄熱ウイルスが急速に拡大する可能性があり、蚊が多く生息している地域や、黄熱病に対して免疫を持たない人たちの集団の国や地域で流行が引き起こされる可能性がある」


 

ここまでです。

注目したいのは、

> ヨーロッパも、1730年と 1821年に黄熱病の流行が発生し、この時は、イギリスも影響を受けた。

という部分で、イギリスくらいの気温と気候で、蚊が媒介する黄熱病が流行したことがあるのなら、アジアなどは、ほぼ全域を含む相当な地域が「流行可能」ということになりそうです。

 

「蚊」が媒介する病気の驚異的な拡大

黄熱病もジカウイルスも、蚊が媒介します。

過去記事の、

ウイルス、そして「蚊」の意味とは何か?…
 2016/01/05

という記事に書いたことがありますが、蚊は、病気の媒介によって「人類史を何度も書き換えてきている」という事実があります。

たとえば、蚊が媒介する病気で、最も重大な影響を与えているもののひとつがマラリアですが、今でも、

「全世界で年間約2億人がマラリアに感染し、そのうち60万人が死亡している」

という事実があります。

そして、現在問題となっているジカウイルスも、そして今回取り上げている黄熱ウイルスも、やはり蚊が媒介するもので、どちらも場合によっては、人間社会に壊滅的な影響を与えるものです。

これらの多くは、主に、熱帯などに生息するネッタイシマカというものが媒介するとされています。

しかし、ジカウイルスの場合、ヒトスジシマカ(日本にも生息する普通のヤブカ)からウイルスが発見されているところから、おそらく、黄熱病もヒトスジシマカが媒介する可能性があるように思います。

インディペンデントの記事にあります、1700年代と 1800年代のヨーロッパでの黄熱病の流行は、イギリスも他のヨーロッパ地域にもネッタイシマカは生息できないことから、ヒトスジシマカによるものだったと思われます。

しかしまあ、ジカや黄熱の主な媒介主はネッタイシマカだとしますと、そのネッタイシマカの 2015年の生息分布は下のようになります。赤くなればなるほど、生息密度が高い場所、つまりたくさん生息している場所です。

2015年のネッタイシマカの生息分布

yellow-fever-mosquitoesEconomist

 

これは 2015年のものですが、今年オリンピックのある南米ブラジルや、現在、深刻な熱波と干ばつ状況にある南アジアから東南アジアなどはすべてネッタイシマカの生息地域となっています。

しかし、蚊の分布状況は「あっという間に」変わるはずで、たとえば、さきほどのインディペンデントの記事に、

> ヒトスジシマカは、もともと自然に生息していた東南アジアから、わずか 20年でヨーロッパへと広がった。

とありましたように、「その蚊にとって住みやすい環境になれば、それらの蚊は定着し、生息が一般的になる」ということで、それでは、ネッタイシマカにとってすみやすい環境とはどんなものかというと、

「気温が高くて、水が多くて、湿度が高いところ」

という単純な答えになりますが、さて、今の全世界の気温はどうなっているかといいますと、下は昨年1年間の地球の気温の「平年との差異」です。赤くなればなるほど、平年より気温が高い場所です。

2015年の地球間気温の平年との差異

temperature-anormaly-2015NASA, NOAA

 

気温、海水温共に極めて高い 2015年だったのですが、これは 2016年に入っても持続して加速しています。

そして、地域的には今年、「さらに加速する」可能性が出てきています。

現在まで続く異常な高温の気温分布の原因は(人為的な地球温暖化というのだけはないとしても)ひとつやふたつの理由ではないのでしょうけれど、主な原因として、エルニーニョ現象にあると言われてもいます。そのエルニーニョ現象は今年の夏ころまでに終息すると見られていますが、エルニーニョ現象が終わった後に、やはり海水温度の異常がもたらす「ラニーニャ現象」へ移行する可能性が強くなっています。

最近、これについては気象庁も 5月12日に正式に発表しています。

ラニーニャ現象、今年の夏発生する可能性高い

TBS Newsi 2016/05/12

世界的に異常気象をもたらすとされる「ラニーニャ現象」が、今年の夏の間に発生する可能性の高いことが、気象庁の分析でわかりました。

ラニーニャ現象は、南米ペルーの沖合から中部太平洋の赤道域にかけて、海面の水温が、平年に比べて低い状態が1年程度続く現象で、世界各地で高温や低温、記録的な大雨、干ばつなど異常気象の発生する可能性が高くなると考えられています。

ラニーニャ現象が発生すると、日本の夏の気温は高くなる傾向があるといわれていて、最近、ラニーニャ現象が観測された2010年の夏は、北日本などで記録的な猛暑となりました。

ラニーニャが発生した場合、日本の気温や天候がどうなるかは正確なところは誰にもわからないですが、「どこかでは必ず異常な気温となり、どこかでは必ず異常な天候となる」ことは間違いなく、とてつもなく気温が高くなる場所、とてつもない大雨、などの国や地域が出てくる一方で、その逆の場所も出てくるとは思いますが、気温に関しては、現在の状況を見ていると、全体としては「高くなる」傾向が強そうです。

約 200年前と 300年前に黄熱病の流行に襲われたヨーロッパですが、そのヨーロッパも今年の夏は、全体として「気温が高くて、雨が多い」という場所が多くなりそうです。

2016年夏のヨーロッパの天気の傾向の予測

european-summer-2016-weatherAccuWeather

 

今の世界を「気温や天候」から見てみると、「世界中どこでも蚊が往来できる夏」という状況になりそうなことがわかります。

まあ、蚊に悪意はないとはいえ、こちらとしても、ジカ熱や黄熱病にかかりたいわけでもないですし、夏から秋までの状況では、いろいろ注意するような感じになってきそうですね。

なお、ジカウイルスに関しては、東南アジアでもかなり蔓延しているのかもしれません。

というのも、韓国では 5月11日までにジカウイルス感染者が5人出ているのですが、そのうちの1人は「フィリピンから帰国後に感染(中央日報)」、そして、「ベトナムに出張した女性が感染(KBS)」という例もあり、5例のうち2例が東南アジアで感染したもので、南米だけが危険という認識ではなくなっています。

そして、今年はブラジルでオリンピックがあります。

ところが、5月12日にブラジル大統領が停職となり、オリンピックの開催中、ブラジルには「大統領がいない」ことが確定しつつあります(ブラジルのルセフ大統領、180日間の職務停止 リオデジャネイロオリンピック前に異常事態)。

他の面でも、人間社会は混乱していくばかりの夏になる中ですが、どうやら蚊たちにとって快適な環境の地域が拡大し続ける夏でもありそうで、状況次第では、歴史上類を見ない「複合パンデミックの発生」などという言葉も脳裏をよぎります。

もしかすると、またしても、「蚊が人類史を書き換える」時が近づいているのかもしれません。



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