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11月8日にメルマガコヴフェフェ大統領と金星人、そして「食と日本人の腸内細菌環境」のことを再び思い出すを発行させていただきました。

2024年からの世界 地球という場所の真実 拡大する自然災害

西暦1700年にマグニチュード9の地震を起こした「カスケード沈み込み帯」のあるカナダ沖で「1日2000回」の地震が発生中

投稿日:

3月21日のライブサイエンスより

livescience.com




 

カスケード沈み込み帯と隣接するエリアで

久しぶりに地震に関連する記事です。

今年 2024年は、日本の場合、元旦から大きな地震が発生したという年でもあり、また「何となく」のレベルでいえば、地震が増えているような実感はあります。

先日なども…特に名を秘す私の住んでいる地域で「緊急地震速報」などというものが鳴り響き、地震そのものは大したことはなかったんですが、緊急地震速報の警報音に驚いたオジイサンたちが各所で滑って転倒するという惨事が…(いいから、その話は)。

 

それで、科学メディアのライブサイエンスで、冒頭の記事を見たのですね。

「カナダ沖で 1日に 2,000回の地震が発生、海底が引き裂かれていることを示唆」

というタイトルの記事でした。

その記事を読んでいて、その「場所」を特定していたところ、

「あー、ここかよ」

ということになったのです。

1日に 2,000回の地震が発生した場所は、カナダのバンクーバー島海岸沖にある「フアン・デ・フカ海嶺」というところです。

場所としては、おおむね以下にあります。

フアン・デ・フカ海嶺

Google Map

フアン・デ・フカ海嶺などという馴染みのない呼び方には別にどうも感慨はないのですが、ここは「別の名称」が伴う場所でもあるのです。

それは、

「カスケード沈み込み帯」

という名称です。

このカスケード沈み込み帯という場所で「過去に何があったか」というと、

「西暦 1700年に、マグニチュード9の巨大地震が発生していた」

場所なのです。

10年以上前には、このカスケード沈み込み帯について書くこともよくありましたが、さほどの挙動もないまま現在に至っています。

最近(といっても、6年前の記事ですが)では以下の記事があります。

かつてマグニチュード9の巨大地震を発生させたアメリカ西海岸のカスケード沈み込み帯で「マントルが上昇している」ことが米オレゴン大学の調査により判明
In Deep 2018年8月2日

 

カスケード沈み込み帯は、アメリカで大地震が将来的に発生すると見られているサンアンドレアス断層と並んだ形で存在します。

おおむねですが、以下のような位置関係です。

カスケード沈み込み帯の場所

Google Map

このカスケード沈み込み帯で、西暦 1700年にマグニチュード9クラスの地震が発生したことを突きとめたのは、実は日本の研究者たちでした。

今から 21年前の 2003年に、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の研究者と東京大学地震研究所の研究者たちが共同で発表した論文によって明らかとなったことでした。

まだアメリカ合衆国が成立する前の時期であり、どのようにそれを判明させたかというと、

「日本の 300年前の古文書からの分析」

だったのです。

そのニュースリリースは今でも以下にあります。

北米西海岸で西暦1700年に発生した巨大地震の規模を日本の古文書から推定
産業技術総合研究所 2003年11月21日

冒頭には以下のようにあります。

研究の背景と経過

北米大陸の西海岸(米国北西部およびカナダ南西部)の沖(カスケード沈み込み帯)では、ファン・デフカ・プレートが北米プレートの下へ沈み込み、日本の南海トラフなどと似た地学的環境にある。

このような沈み込み帯では通常、プレート間巨大地震が百~数百年間隔で繰り返し発生するが、カスケード沈み込み帯では巨大地震の発生は記録されていなかった。

米国北西部やカナダ南西部では、歴史史料はおよそ 1850年ごろまでしか遡れないため、それ以前の地震の発生は記録されていない。

1990年頃から、米国やカナダの地質調査所の研究者らによって、北米大陸の西海岸の地殻変動や津波堆積物の調査が開始され、その結果、約 300年前に大地震が発生したことがわかった。

北米大陸の西海岸で発生した巨大地震であれば太平洋上に津波が発生し、日本にも到達するはずである。

産総研は旧地質調査所時代の1996年に、東京大学地震研究所の研究者と共同で日本の古文書を調べ、元禄12年12月8-9日(和暦)に日本各地で記録された波源の不明な津波がカスケード沈み込み帯の巨大地震によるものであると推定し、自然科学系雑誌 nature に発表した。

aist.go.jp

この西暦 1700年に、日本の太平洋側で「津波による大被害」が出たのですが、この津波の発生源は、アメリカの西海岸だったのです。

その時の古文書からの推定での津波被害は以下のようなもので、かなりの規模でした。

日本沿岸7ヶ所における古文書から推定した津波の高さ

aist.go.jp

津軽石という場所では、6メートル超の津波に襲われていた可能性がわかります。日本での地震の揺れはなかったために、おそらくは「予兆なく津波に襲われた」と考えられます。

以下は、WIRED に載せられていた「アメリカから日本への津波到達」の様子が示されたシミュレーションマップです。


wired.jp

シミュレーションでは、津波は地震発生後、約 14時間で日本に到達しましたが、その後も繰り返される余震で、何度も何度も太平洋側の日本沿岸は津波に襲われたようです。

ちなみに、研究によりわかったこととして、以下のことがあります。

カスケード沈み込み帯での巨大地震の発生間隔の平均は「 270年」だとわかっている。

平均ですので、大きなバラツキはあるでしょうが、約 270年ごとに、このような壊滅的な地震がカスケード沈み込み帯で起きていることがわかってきたとされています。

ということは、前回のカスケード沈み込み帯の大地震から、すでに 「 324年」が経過していますので、平均値からだけ見ますと「いつ起きても不思議ではない」時期に今はずっとあります。

今回のライブサイエンスの記事で、 1日 2000回の地震が指摘されていた場所は、まさにその場所であり、それで気になった次第です。

ライブサイエンスで取材されていた科学者たちは、「これは大きな地震の徴候を示すものではない」と述べていますが、そうなのかもしれないですが、なかなかないことが起きていることは事実です。以前、この海域での最大の群発地震は 1日 500回というものがありましたが、今回はそれを超えています。

まあ、西暦 1700年みたいなことが仮に起これば、カナダからアメリカの西海岸の一部地域は壊滅に陥るわけですから、そんなことは起きないほうがいいでしょうが、地質学的な統計では「約 270年ごとに起きている」場所ではあります。

今は、いろいろ地質も社会も物騒ですし。

そんなわけで、ライブサイエンスの記事をご紹介します。




 


カナダ沖で1日に2,000回の地震が発生、海底が引き裂かれていることを示唆、科学者たちが発表

2,000 earthquakes in 1 day off Canada coast suggest the ocean floor is ripping apart, scientists say
livescience.com 2024/03/21

バンクーバー島沖での記録的な地震活動は、新しい海洋地殻の誕生を示唆している。

今月初め、カナダ沖で 1日で約 2,000回の地震が発生したが、これは深海のマグマの破壊によって新しい海洋地殻が誕生しようとしている兆候である可能性がある。

しかし、この地震は人々に脅威を与えるものではない。それらは比較的小さく、バンクーバー島の海岸から約 150マイル(240キロメートル)離れたエンデバーサイトと呼ばれる場所に集中している。

この場所には多数の熱水噴出孔があり、海底が広がっているファン・デ ・フカ海嶺に位置している。この地域は、カスケード沈み込み帯(あるプレートが別のプレートの下のマントルに沈み込んでいる地域)とは別であり、大規模で破壊的な地震を引き起こす可能性のある海岸に近い場所にあるだけだと、オーストラリア大学の海洋地球物理学の博士候補者ゾーイ・クラウス氏は述べた。

「海洋中央部の海嶺は、実際にはマグニチュード 5をそれほど大きく上回るほどの大きな地震を引き起こすことはできません」とクラウス氏は語った。 「これはカスケード沈み込み帯で『大きな地震』を引き起こすわけではありません」

この地震は、海底がどのように引き裂かれ、新しい地殻が形成されるのかについて詳細を明らかにできるため、科学的に興味深いとクラウス氏は述べた。

エンデバーサイトでは、太平洋プレートとフアン・デ・フカ・プレートが引き離されている。この伸長によって長く直線的な断層が形成され、地殻が薄くなり、マグマが上昇することが可能になる。マグマが地表に到達すると冷えて固まり、新しい海洋地殻となる。

エンデバーサイトは、オーシャン・ネットワークス・カナダが運営する北東太平洋時系列海底ネットワーク実験の一環として継続的に監視されている。

クラウス氏によると、2018年以降、この地域では地震活動が活発になっているという。しかし、3月6日には活動が激化し、1時間あたり少なくとも 200回の小さな地震が海底を揺るがした。研究者たちは合計で 1日に約 1,850回の地震を検出した。

「大多数はマグニチュード1未満です。それらは小さな振動です」とクラウス氏は語った。 「しかし、これは非常に素晴らしいことです。なぜなら、どこで何が起こっているのか、どこで壊れているのか、どこで動いているのかを追跡できるからです」

クラウス氏は、地震の最も可能性の高い理由は、海底が最大限に伸び、多大な応力が蓄積していることだと述べた。エンデバーの現場では、これはプレートが約 3.3フィート(1メートル)引き離されるときに起こり、最終的にはマグマが薄くなった地殻内に上昇して冷えるときに応力が解放されると彼女は述べた。

これは約 20年周期で起こり、そのためこの地域は予定どおりに発生していると彼女は述べた。最後にこれほど地震が揺れたのは 2005年だったという。

クラウス氏によると、3月6日以降、背景レベルは若干高まっているものの、地震活動は沈静化しているという。彼女と同僚は現在、注意深く監視している。

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