6月3日現在、壊滅的な洪水に見舞われている国は、アメリカ、メキシコ、フランス、ロシア、オーストリアにオーストラリア。ベルギー、ドイツにウクライナ。中国、ドイツ、ルーマニア …
2016年6月2日 ドイツ・ジンバッハ
・EPA
国名を上げるだけで寿限無を唱えている気分になるほど多くの国や地域で、現在、大規模な洪水、中には 100年に1度」の洪水のようなものが発生し続けています。
この数年は毎年のように大きな洪水が起きていますが、思い起こせば、2012年の記事、
・私たちが経験している現在の気候変動は次の数万年の人類史への扉かもしれない : 洪水被害の報道が「ない日がない」日々の中で
2012/07/13
のあたりから、日本も含めて、豪雨の規模と頻度や、発生する洪水の規模の大きさが際立ち始め、そして、洪水が発生する地域も幅広い地域に渡るようになったような気がします。
ちなみに、前回の記事、
・異次元噴火 : 2016年の火山噴火の数は過去との比較で「別次元」の極端さになることがデータ上からほぼ確定。予測されるその数は平年の2倍強
2016/06/03
は、今年 2016年の火山の噴火の数が、現在までのところ半端ではなく多いということについて書きましたが、どうも「大規模洪水」のほうも同じようで、後で数字を示しますが、今年は現在までにかなり突出した数となっているようです。
どうやら、今年 2016年は、今のままの状態での推移が続けば、
・中規模以上の地震がとても多い年になるかもしれない
・新たな火山噴火が異常なほど多い年になるかもしれない
・大規模な洪水がとても多い年になるかもしれない
という可能性が強くなっています。
各地の洪水の状況と共に、それらのことを記してみたいと思います。
洪水は21世紀に入り急激に増え続けてきた
洪水に関しても、地震や火山のように、その現状を「数字」で示すことができればいいのですが、すべての洪水についてのデータは、探した限りは、下の 2009年までのものしかありませんでした。
しかし、このグラフでも、この数十年での全体的な洪水の増加の状況は見てとれるような気がします。2009年は少ないですが、これはデータが 2009年の途中までだからです。
1977年から2009年までの洪水の発生件数
・PLOS
このグラフは「すべての洪水」の推移ですが、これを「大規模な洪水」だけに限定すれば、現時点( 2016年5月30日)までの数字を示すことができます。
「大規模な洪水」の定義は、人的被害、経済的被害などが大々的にメディアで報じられた洪水ということですが、どれを大規模洪水にとるかは、データ作成者の主観に依存する部分があります。今回は、世界の大規模洪水を記録し続けている ワールド・フラッド・タイムラインのデータを見てみました。それによりますと、2000年からの大規模洪水の発生数は次のようになっています。
2000年から2016年までの大規模な洪水の発生件数
- 2000年 1件
- 2001年 2件
- 2002年 3件
- 2003年 0件
- 2004年 4件
- 2005年 4件
- 2006年 3件
- 2007年 8件
- 2009年 4件
- 2010年 19件
- 2011年 20件
- 2012年 4件
- 2013年 7件
- 2014年 8件
- 2015年 15件
- 2016年 11件(5月30日まで)
これらの洪水はどれも大規模なものだけで、普通に被害が発生している洪水の数は、この何倍何十倍あると思われます。
たとえば、2012年は「 4件」となっていますが、私はこの 2012年に、かなり多くの大洪水の記事を書きましたので、感覚としてはもっと多いです。
いずれにしましても、洪水に関しても、2010年あたりから急激に多くなっていて、2016年は 5月30日の時点で、すでに 11件となっていますが、洪水の発生は、どちらかというと夏から秋に集中しますので、このペースで増加すれば、今年は洪水の発生件数に関しても「記録的」になる可能性がありそうです。
過去記事、
・自然災害は予想以上の驚異的な勢いで地球の文明を崩壊させ続けている : ドイツの大学が発表した西暦1900年以降の災害損失データベースが示すこと
2016/04/20
という記事では、ドイツの大学が発表した西暦 1900年から 2015年までの自然災害での経済的損失と人的損失についてのレポートをご紹介しましたが、その中に、以下のようなくだりがあります。
1900年から 2015年までの自然災害による経済的損失の約3分の1は、洪水により引き起こされており、洪水による経済的損失の度合いは大きい。
そうなんですよ。洪水は、地震や火山の噴火よりもはるかに「人類の文明を破壊する」のです。
特に大規模な洪水では、破壊の度合いは強力です。
たとえば、2014年の 5月から 6月にかけてヨーロッパ各地で発生した大洪水の場合、特に被害の大きかったボスニアやセルビア、クロアチアでは、被害額は、数千億円以上といわれ、「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を上回る被害」となったと報じられていました。
今、各地で起きている洪水も、少しずつその地の文明と経済を疲弊させていっているはずです。
各地で起きている洪水の概要を記しておきたいと思います。
ドイツ、オーストリア / 数時間で数ヶ月分の異常な豪雨による大洪水
これは、
・ドイツでの黙示録的な洪水:「数時間で数ヶ月分の雨量を記録する」という異常な豪雨の中、瞬く間に街が水に飲まれる
地球ブログ 2016/05/31
という記事にも書きましたが、5月下旬からヨーロッパの多くの地域を襲っている洪水で、最も深刻な被害を受けたのがドイツです。地域によっては、「数時間で数ヶ月分の雨」という、ちょっと想像のつかない豪雨に見舞われた場所もあったようで、そのため、雨が降り出してからものすごく早いペースで被害が広がったようです。
南部のバイエルン州や、フランスやスイスとの国境を面しているバーデン=ヴュルテンベルク州という地域が最も大きな被害を受けて、現時点までに 11名が亡くなっています。上の写真は、洪水の水が引いた後のその地域の町の様子です。流された木や車が家屋や商店街を破壊しました。
周辺国のオーストリアやベルギー、そしてルーマニアなど、現在ヨーロッパの多くの国や地域が、ドイツほどではないにしても、洪水による大きな被害を受けています。
フランス / 1910年以来106年ぶりの大洪水
フランスでは、大雨によりセーヌ川の水位が過去 30年で最も高い6メートルを超えて、冠水などの被害の他、ルーブル美術館が 5月7日まで休館など影響が広がっています。
パリは、1910年にも大洪水に見舞われていて、その際には、セーヌ川の水位は8メートルを超えたそう。
1910年の洪水時のパリ・モンテーニュ通りの光景
・Paris 1910 Inondation
文字通り、フランスは 100年に 1度の洪水の渦中にあります。
オーストラリア
オーストラリアには現在、非常に複雑で強力な低気圧の気候構造が通過しているため、地域的に激しい天候と大きな洪水に見舞われていることが報じられています。下は、クィーンズランド州にあるブリスベンです。
・abc
地域的に1時間 100ミリを超えるような大雨が降り、それだけではなく、激しい強風を伴う嵐となっているようです。この気候は今後数日ほど続くとオーストラリア気象庁が述べていますので、今後被害が拡大する可能性があるのかもしれません。
オーストラリアも最近、天候がおかしく、ガーディアンの報道によれば、シドニーの5月の平均気温は過去 20年間で最も低かったそうです。
中国 / 各地で断続的に続く大雨で
中国も、詳しい状況はあまりわかりませんけれど、各地で荒れた天気による洪水が発生しているようです。
・CRI
中国の場合、近年、大きな川が氾濫することによる壊滅的な洪水が最近起きやすくなっているようで、毎年のように激しい洪水が発生しています。
そして、中国も含めたアジアの多くの地域では、洪水が多くなるのはこれからの季節ですので、今年も中国は洪水が多くなりそうな感じはあります。
米国テキサス州の洪水
アメリカでは、テキサス州が歴史的な洪水に見舞われています。
まだ被害の全貌は明らかになっていない部分もありそうですが、テキサス州知事は 31の郡に緊急災害事態を宣言し、軍隊を導入して対処しています。この洪水の最中に刑務所の囚人たちが脱走するということも起きたようで、混乱が広がっているようです。
アメリカも最近は大きな洪水が多いですが、アメリカも通常ですと、洪水の季節はこれからです。
日本も昨年の平成27年9月関東・東北豪雨では、茨城県常総市で鬼怒川が決壊して大変な被害が出ましたが、今の時代の状況を考えますと、今年も同じような被害が発生しても不思議ではないです。
先ほど書きましたように、現時点では、今年 2016年は世界中で非常に大規模な洪水が多い状態で推移しています。
いろいろな気象発生条件が複雑に絡む現状では、この夏とか、何ヶ月先とかの短期的な予測はできないですが、もう少し長い期間で見れば、洪水もまた、地球の文明を疲弊させていくもののひとつになっていくのではないかとは思います。
地震も噴火も洪水も同時に激しく増加していっているというあたりが今の時代の状況とシンクロして映ります。
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