イタリアの報道より
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昨年の暮れ…というのは、つまり、ほんの少し前のことですが、「イタリアの人口密集地の地下にある超巨大火山に噴火の兆候が確認された」という報道が一斉になされていました。
これがまあ、本当に噴火を起こして、それがカルデラ噴火(破局噴火)だった場合は、とても物騒な話で、何百万人などというような数であらわされるような致命的な被害となる可能性を持つものです。
下は、それに関してのナショナルジオグラフィックの報道です。
超巨大火山に噴火の兆候、イタリア
ナショナルジオグラフィックニュース 2016/12/28
50万人が住むイタリアの大規模な火山性カルデラ盆地、カンピ・フレグレイの地下にある超巨大火山が、500年の休止期間を終え、“臨界状態”に近づく可能性があるという論文が、12月20日付の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。
近い将来、マグマの高熱のガスが突然噴出し、大規模な噴火を引き起こす可能性がある、と科学者たちは警告している。だが噴火する時期は今のところ予測不可能だ。
イタリア政府はこの発表を受け、噴火の警戒レベルを緑の「正常」から黄の「要警戒」に変更した。
冒頭のイタリアの「魚の大量死」のニュースは、その「超巨大火山のエリアにある湖」で起きていることです。
そして、このイタリアの火山は、噴火の方式によっては、地域的な影響にとどまらず、「世界中に壊滅的な影響を与える」可能性もあると思われるもので、そのあたりも含めて、ご紹介させていだこうと思います。
巨大火山に関しては、今、世界中のいくつかの火山にいろいろな兆候がありますが、その中でも、このイタリアの火山は、「日本のいくつかの火山と並んで」特別な存在といえるものだとも思えます。
現在の分類で世界で三番目に危険だとされる超巨大火山
・counselheal.com
最近、「噴火の兆候」が示されたと報道されているこのイタリアの火山のある場所は「フレグレイ平野(あるいは、イタリア語で、カンピ・フレグレイ)」と呼ばれ、冒頭の記事の魚が大量死を起こしている湖は、アヴェルヌス湖という湖です。
場所は大体、下のようになります。
フレグレイ平野とアヴェルヌス湖の場所
・Google Map
この地図でおわかりかと思うのですが、ナポリなど大都市と接しているというのが、この超巨大火山が他のさまざまな火山と、やや違う部分かもしれません。
参考までに、冒頭のイタリアの報道の内容を短くご紹介しておきたいと思います。フレグレイ平野にあるアヴェルヌス湖の魚の大量死に関してのもので、今年 1月7日のものです。レベルはわからないながらも、地下での活溌な活動の様子を想起させるものではあります。
EMISSIONI VULCANICHE IN CORSO, MORIA DI PESCI NEL LAGO D'AVERNO. ERA LA PORTA AGLI INFERI DEI ROMANI
火山性の硫化水素の噴出が進行し、アヴェルヌス湖では魚が大量死。この火山はかつてローマを地獄の扉へ導いた
ナポリ近くのアヴェルヌス湖のほとりで、大量の魚が死亡した。現場には強い硫黄の臭気が漂っている。ローマ人の文献によれば、この場所はかつてローマを地獄に導いた扉が開いた場所だ。
強い硫黄の匂いは、水面下の火山活動から来る水中の硫化水素の存在が原因だと考えられる。また、それにより、湖に酸素が欠乏した水域が発生し、淡水魚が死亡したと思われる。
現在、アヴェルヌス湖で魚が大量死を起こしている場所は1カ所ではなく、いくつかの場所で魚の死亡が確認されている。
というように、地下で何らかの活動が起きていることを示すような状況がさらに進行しているようなのですが、このフレグレイ平野の噴火の歴史は、科学での推定では以下のように考えられています。
ナショナルジオグラフィックの記事より
カンピ・フレグレイのカルデラは、ナポリのちょうど西にあり、直径は10キロを超える。
カンピ・フレグレイができたのは、数十万年も昔だと考えられている。
20万年前の大噴火では、広範囲にわたって空が大量の灰で覆われる、いわゆる「火山の冬」を引き起こし、気候に影響を及ぼした。これはヨーロッパ史上で最大の火山活動とされている。
噴火は、3万5000年前と1万2000年前にも起きた。
また、議論の余地はあるものの、4万年前の噴火は、ネアンデルタール人の絶滅をもたらした可能性があるとする論文が、2010年に発表されている。
ということで、現在の科学での「推定」としては、
・ヨーロッパ史上で最大の火山活動を起こした
・ネアンデルタール人の絶滅をもたらした可能性がある
というような、まあ、結構派手な推測がなされている超巨大火山であります。
フレグレイ平野でのカルデラ噴火のシミュレーション
・ANSA
もっとも、地球には同じような「派手な過去」を持つ超巨大火山はいくつもあり、日本でも数多くのカルデラ噴火が繰り返されたことがわかっています。
では、なぜ、このイタリアの火山が、このように大きく取りあげられているのかといいますと、「もともと危険度が高い火山として分類されていた」からです。
昨年、
・「噴火すれば最悪1億人が死亡と想定」 : 九州南方にある鬼界カルデラの活動の徴候の報道から再び「破局噴火の時代」をおもう
2016/11/20
という物騒なタイトルの記事の中で、2015年に英国の天体物理学者たちが発表した「世界で最も危険な火山 10」というものをご紹介したことがあります。
それは、以下の 10の火山でした。赤はこちらで入れています。
2015年版 世界で最も危険な火山 10
1位:硫黄島(東京都)
2位:アポヤケ山(ニカラグア)
3位:フレグレイ平野(イタリア)
4位:阿蘇山(熊本県)
5位:トランスメキシコ火山帯(メキシコ)
6位:アグン山(インドネシア)
7位:カメルーン山(カメルーン)
8位:タール山(フィリピン)
9位:マヨン山(フィリピン)
10位:ケルート山(インドネシア)
これは「カルデラ噴火を起こす危険性」としてのリストだと思われますが、これが現在の世界の火山の危険度の尺度のひとつということになると思います。
その中で、フレグレイ平野は、世界で最も危険な火山の3番目にリストされているのでした。
ちなみに、これをご紹介した過去記事の内容自体が、
「 7300年前の噴火で九州南部の縄文文化を滅ぼしたとされる鬼界カルデラに活動の兆候」
という記事をご紹介したもので、今回のイタリアの例と似たように、「超巨大火山に活動の兆候」という点では同じタイプの報道を取りあげたものでした。
・Google Map
噴火の予測はできないけれども確かに増えている「兆候」たち
こういうような、
・九州南部の縄文文化を滅ぼした可能性
とか、
・ネアンデルタール人を滅ぼした可能性
などの、物騒ながらも派手な過去を持つ可能性のある地質の事象に関して、これらの活動の可能性に言及する報道が、ここにきて急激に増えているということに、とても興味を持ちます。
こういうことの予測はできるかといいますと、たとえば、鬼界カルデラのマグマの活動に関しては、報道に
「現時点では噴火予測はできないが」
とあり、今回発表されたイタリアの超巨大火山に関しては、ナショナルジオグラフィックの記事に、
「私たちが生きている間に、何事も起こらない可能性もある、と学者たちは言う。確信をもって噴火する時期を特定するのは不可能なのだ」
と記述されています。
つまり、学術的な解説を別にすれば、「これから起きることはわからない」ということであり、この「わからない」というのが予測に関してのすべてをあらわしていると思います。これは地震にもよく当てはまることでもあります。
それにしても、最近まで「超巨大火山」に関しての活動の報告やニュースというものは、ずっとなかったわけですので、昨年後半から集中してきているように感じるたりもしまして、やはり「そういう時代なのかなあ」とも思います。
なお、世界のどの超巨大火山にしても、あるいは普通の火山でも「カルデラ噴火(破局噴火)」を起こした場合は、該当地域だけではなく、日照が遮られることによる天候の不順などを含め、世界の広範囲に大きな影響があると考えられています。
ただでさえ、今の気温や気候はカオス化していますが、巨大火山が噴火した場合、おそらく多くの場合は「寒冷化」をもたらすために、もし世界が寒冷化に進むのであれば、さらに加速する可能性があります。
超巨大火山の噴火、あるいは、カルデラ噴火の発生する確率は、何千年、何万年に1度という頻度の低いものでもあります。
それでも、確率は低いとしても、「いつかは起こるものではある」とすれば、その時期に今の人類が立ち会っているのか、そうでないのかという「選択」のようなものになるのかもしれません。
現世人類はネアンデルタール人ほど弱くはないでしょうが、しかし、ネアンデルタール人も、現世人類と同じく氷河期を生きのびた人たちです。それでも、生き残ることができなかったというほど、かつては荒れた環境がたびたび出現していたということになるのかもしれません。
ヨーロッパのネアンデルタール人が、最終的にイタリアの火山の噴火によって滅亡したというのは、ひとつの推測にしか過ぎないですが、世界中で繰り返し巨大火山の噴火が発生すれば、気候はものすごく異様なことになることは避けられないようには思います。
その場合、ネアンデルタール人たちが生き残れなかったような苛酷な環境(現世人類は生きのびましたが)が出現する可能性もあるのかもしれません。
そういうのが、私たちの時代に来るのかどうなのか。