7月から屋外でのマスク着用が義務化されたフランスのリール。newsmax.com
若者が「胸腺の萎縮」による免疫力低下に見舞われている可能性
今日(8月4日)、一番気温の高い時間帯のあたりに買い物に行きました。
親子連れもたくさんいたのですけれど、これがまた、3歳前後くらいの子どもたちまでもが例外なくマスクをしているのですね。男の子も女の子も。しているというか、させられている。
炎天下の屋外で、かなりしっかりとしたマスクをして思いっきり自転車をこいでいる 4〜 5歳くらいの子どもの姿などもあり、「さすがに危険だろう、この暑さの中で、激しく運動しながらのマスクは」と思わざるを得ないものがあります。
今年の関東は、7月はほぼずっと雨ばかりで、しかも気温もほとんど上がらなかったために、梅雨明けのこの暑さにはまだ体が慣れていないはずで、私なんかも外を歩いていて気持ち悪くなってきたほどでしたが、このような状態の中で、少なくとも小さな子どもにマスクをさせてはいけないと思います。
小さな子どもは「自主的な判断でマスクを外す」ことができるわけもなく、親などが外すことを促すべきだと思うのですが、しかし、このように全体的にマスクをしている社会の中で、親の方もどこで「外しなさい」と促していいのかわからない部分もあるのだと思います。
メディアなどは「自主的な判断で、暑い時には、適切に外して下さい」というようなことを言いますが、この状況では、特に子どもには自主判断は無理です。
なら、「制度」として国でも保健当局でもいいですけど、「夏の間は小さな子どもはマスクをしてはいけない」ということを正式に日本全体に通達したほうがいいと思います。
適切に外すということを通達するのではなく、小さな子どもは「してはいけない」と伝えるのです。
このままだと、今後どれだけの健康被害が出るかわかったものではないですよ。
以下の FNN の報道の中で、種市尋宙さんという小児科の医師が「子どもたちが自分でマスクを外すという判断を下すのは難しい」と述べると共に、以下のように言っています。
種市医師の言葉
「通常、夏にマスクをすることなんて今までほとんど経験していないことなので、熱中症の方が明らかに危険です。子どもはいろいろなことに対して我慢してしまう傾向があるので、熱中症においては我慢とか強要というのは本当によくない。密閉空間にならないこと、距離をとることができれば、余裕をもってマスクを外してもらってもいい」 (FNN 2020/07/31)
まったくこのとおりで、熱中症の方が明らかに危険な状態となっています。しかし、街の様子を見ていますと、親もこの「子どものマスクを外すという判断」ができていないのが現状のようなんです。
熱中症も危険ですけれど、中長期的にそれ以上に心配なこともあります。
これまで、子どもは新型コロナウイルスに感染してもほとんど発症してきませんでした。しかし、「免疫が極端に下がれば」子どもだってどうなるかわからないです。
たとえば、人間の免疫を守っているもののひとつに免疫細胞である「 T細胞」というものがあります。新型コロナウイルスというのは、この T細胞をターゲットにしていることがわかっているのですが、しかし若い人たちは、T細胞の産生が多いので、感染しても発症に至らないのが普通でした。
新型コロナウイルスと T細胞の関係については以下の記事で取りあげています。
新型コロナウイルスは「人間の免疫機能の中心であるT細胞を攻撃」し、免疫系を完全に破壊する「HIV / エイズウイルスと同じ特徴を持っている」ことが米中の研究者により確認される
In Deep 2020/04/13
この免疫細胞である T細胞は、人間の胸部にある
「胸腺」
というリンパ器官から分化するものですが、この「胸腺」の働きは、胸腺 - Wikipedia では以下のように記されています。
胸腺中のリンパ球が最も多いのは思春期(10代前後)でピーク時の胸腺は30~40gに達する。その後は急速に萎縮し脂肪組織に置き換わる。この胸腺の退縮は70歳までにほぼ完了する。そのため胸腺は最も老化の早い器官といわれる。
つまり、人間というのは、思春期をピークにして、十代の時に最も「免疫力が高い状態」となっているのです。たとえば、若い人に次々と感染していくインフルエンザなども、高齢者と比較して、若い人での致死例や重症例がほとんど見られないのも、このようなことと関係があるのだと思われます。
若い人というのは、普通に生活していれば「病気に強い存在」なのです。
しかし、仮に、
「社会が不安定だったり、ストレスが強くかかる状態だと、若い人の場合でもどうなるか」
については、先ほどの Wikipedia の以下の記述などからも想像できます。
子供が虐待を受けると胸腺が高度に萎縮することが知られている。
本来なら、大きな胸腺を持っている子どもや若い人でも「虐待を受けると胸腺が高度に萎縮する」のです。
これは、つまり、
「強いストレスは胸腺を萎縮させる可能性がある」
ということだと理解できると思うのですが、そうなるとどうなるかというと、本来なら大きな胸腺を持つ子どもたちでも、「老人のように萎縮した胸腺となってしまう」と考えられるのです。
胸腺が萎縮すると、免疫細胞である T細胞の産生が低くなりますので、
「本来なら感染症に強い子どもたちが、感染症に弱くなってしまう」
わけです。
不安とストレスが強い社会の中で生きていると、もちろん人によってストレスの感じ方は異なるでしょうけれど、子どもによっては、「胸腺が萎縮して、免疫力が高齢者のように下がってしまう」可能性もあると思われるのです。
最近、読売新聞の以下の記事を読みまして、
「若い人たちは、やや深刻な状態なのかもなあ」
と感じています。
7月27日の読売新聞の記事からの抜粋です。
「疲れ」「だるい」ツイート急増、長期休校明けで心身に変調か…
NTTデータ(東京)が2年間の生徒・学生の学校に関するツイート約4億件を分析したところ、今年6月に全国で学校の再開が始まって以降、「疲れ」「だるい」といった投稿が急増していることがわかった。
新型コロナウイルスの影響で、学校は約3か月間の長期休校を余儀なくされ、大学もオンライン授業が続いており、そうした反動が若者の心身に表れている実態が明らかになった。 (読売新聞 2020/07/27)
同じ記事の中で、新潟青陵大の碓井真史教授が以下のように述べています。
新潟青陵大の碓井真史教授の話
「突然の一斉休校により卒業式や入学式がなくなり、実家にすら戻れなかった学生も多く、自粛期間も長く続いた」
「ただでさえ心身の調子が狂いやすい春の時期に休校となり、友だちとも会えずに先の見えない状況の中、生徒や学生は、様々な変化に対し、その都度適応しなければならず、二重三重のストレスが重なった」
「友人とも会えず、ツイッターではき出すしかない若者も少なくなかったと考えられる。大人は、ツイッター上に多くつぶやかれた『疲れ』や『だるい』といった心身への負担について、若者には大きな負荷がかかり、深刻なストレスにさらされているということをしっかり理解し見守り、対応する必要があるだろう 」 (読売新聞 2020/07/27)
全部の若者がこういうストレスを抱えているわけではないでしょうが、「通常よりはるかに多くの若者に強いストレスがかかっている」可能性はあると思います。
ストレスの影響を受けやすい若い人や子どもの中には、すでに「胸腺の萎縮」というようなことが起きていないとも限らないかもしれないのです。
最近になって、日本全国で急速に若い人たちの新型コロナウイルスへの感染事例が増えていますが、検査体制の変化の関係もあるのかもしれないですが、「胸腺の萎縮による免疫力の低下」ということも関係ないではないのかもしれないとも思います。
この「免疫力の低下」という現状だけ見てみても、「現在の本当の敵は何か」ということが本当なら国も保健当局も少し理解してもいいように思うのですが。
「なぜ人は病気になるか」という根本を無視して、得体の知れない物理的対策を突き進める中で、そろそろ取り返しのつかない社会ができあがりつつあるように感じます。
なお、『急性・慢性ストレスによる胸腺の萎縮』という医学論文には、以下のようにあり、強いストレスが「長時間持続した場合」は、萎縮した胸腺は完全には戻らないと思われます。
胸腺は精神的、物理的化学的等のストレッサーによって急性のストレス状態が生じ萎縮が起きるが、その原因が取り除かれると自発的な回復が起こる。しかし、回復の程度は萎縮の原因の刺激の程度により、あまりに強い刺激を受けた場合は完全に元の状態に回復することは不可能であり、障害を示す。(waseda.jp)
現在の強いストレス生活期間はそろそろ半年にも近くなろうとしています。
脳に恐怖を作り出すメカニズム
ところで今回本題として書こうとしていたのは、ここまで書いたこととは別のことでした。
マスクと関係していることではあるのですが、最近、海外の医学論文をいくつか見ている中で、
「パニック障害の発作を誘発する要因」
について、明らかとなっているものがあることがわかったのです。
私は、二十代の初めから五十代になるまでパニック障害だったのですけれど、そんな「数十年」という間、パニック障害だったのにもかかわらず、そんなことさえ知らなかったのですね。
そのパニック障害の発作を誘発するものは何かといいますと、
「二酸化炭素(CO2)」
のようなのです。
たとえば、以下の論文は 2009年のものですが、タイトルだけでも内容がわかるものだと思います。
・喫煙と35%の濃度の二酸化炭素がパニック障害患者のパニックを誘発した
Cigarette smoking and 35% CO(2) induced panic in panic disorder patients
タバコと二酸化炭素によってパニックが誘発されたということが示されたという研究でした。
そして、さらに論文を探すと、以下のようなタイトルのものが出てきたのです。タバコなど関係なく、二酸化炭素自体が「パニックを誘発する引き金となる」のです。
・パニック障害のリスクが高い被験者のCO2吸入に対する不安反応
Anxiety responses to CO2 inhalation in subjects at high-risk for panic disorder
これはつまり、「パニック障害を持つ人は、二酸化炭素の吸入で強い不安に駆られる可能性があることが示された研究」なのです。
さらに他にも、パニック障害と二酸化炭素の関係を示す論文は数多くありまして、
「へえそうだったんだ」
と今さらながらに知りました。
簡単に書けば、「二酸化炭素は脳に恐怖を誘発する」ようなんですね。
これらの研究から言えることとしては、通常の人たちはともかくとして、パニック障害や不安神経症などの不安系障害を持つ人たちは、
「二酸化炭素の吸入をできるだけ避けるのがのぞましい」
と言えると思われます。
つまり、できるだけ酸素の濃度が高い空気を吸っていたほうがいいと。
そこで私は今の「マスク社会」を思い出してしまったのです。
マスクをしていると、呼吸が再呼吸のような形となる場合が増えるために、二酸化炭素の吸入量は確実に増加するはずです。
特に、今のように気温が高くて汗をかきやすい時などの場合は、マスクの湿気の問題もあり、さらに呼吸の再流入が起こりやすくなり、それにより二酸化炭素の吸入が多くなると見られます。
「うーん・・・これはちょっとなあ・・・」
と考えてしまいました。
二酸化炭素がパニック発作を誘発することは、数々の論文から、ほぼ間違いないようですので、パニック障害や不安障害などをもたれている方においては、生活の中で工夫されていただきたいと思います。
というのも、何度も書いていますが、
「不安とストレスは人の免疫力を弱くする」
ことが確実なのです。
そして、当たり前のことですけれど、パニック発作や強い不安が、精神状態に良い作用を及ぼすはずもなく、パニック障害の人たちは、とにかく、パニックを避けて生きることを模索しているはずです。
ベンゾジアゼピン系の抗不安剤などでそれを抑制されている方もいらっしゃるでしょうし、さまざまなレメディや東洋医学でチャレンジされている方もいらっしゃると思います。
しかし、今の「新しい生活」の中で、まさか「二酸化炭素によるパニック誘発の可能性があることが浮上した」とは・・・。
ちなみに、この「二酸化炭素が恐怖を誘発するメカニズム」については、アメリカの国立衛生研究所のライブラリーに、以下の論文がありました。
・扁桃体は、二酸化炭素とアシドーシスを検出して恐怖行動を誘発する検知器だ
The Amygdala is a Chemosensor that Detects Carbon Dioxide and Acidosis to Elicit Fear Behavior
かなり難しい内容ですけれど、自分なりの解釈では、「高い二酸化炭素濃度を検出した時、脳の扁桃体がそのセンサーとなり、恐怖反応を引き起こす」ようなのです。
これは、パニック障害の人に限らず、誰においても多少はそのような「恐怖反応」のメカニズムがあるようなのですね。二酸化炭素の吸入が多くなればなるほど、脳は恐怖を感じやすくなるようなのです。
つまりは、どんな場合でも、
「できるだけ酸素の多い綺麗な空気を吸っているのが良い」
という何だか当たり前過ぎる結論にもなるのですが、しかし、「そんな当たり前のことができないのが今の現実」です。
社会に反逆する必要はないでしょうけれど、生活の上の工夫は必要なのかもしれません。
いろいろな意味で、私たちの社会は、相当厳しい現状に直面していて、そして相当厳しい未来に向かっているようです。
>> In Deep メルマガのご案内
In Deepではメルマガも発行しています。ブログではあまりふれにくいことなどを含めて、毎週金曜日に配信させていたただいています。お試し月は無料で、その期間中におやめになることもできますので、お試し下されば幸いです。こちらをクリックされるか以下からご登録できます。
▶ 登録へ進む