・CDC
異常な世界が続いていく
パンデミック以来起きているさまざまなことが、少し前の世界から見ると現実だとは思えないような異常な出来事というか、「異常な物事の解釈」というのか、そういうことが続いていますが、そこにまたひとつ加わりました。
現在、アメリカで「サルモネラ菌」による歴史的な数の感染例が発生していまして、現在、全米 50州で 1000人の症例が確認されているということで、私が知ったのは今日だったのですけれど、1週間ほど前のアメリカの報道は以下のようになっていました。
奇妙なサルモネラ菌の大流行が急速にアメリカ全土に広がっている
Mysterious Salmonella outbreak quickly sweeping across the country
foodsafetynews.com 2020/07/24アメリカ連邦保健当局は 24日の午後、原因不明のサルモネラ菌の大流行が急速に広がっており、23州に増加していると語った。現在、 212人の患者がいることが CDC (アメリカ疾病予防管理センター)より報告されている。
原因と発生源は今のところわかっておらず、CDC は、「この発生の原因として、特定の食品、食料品店、またはレストランチェーンは特定されていない」と発表している。
7月24日には、この奇妙なサルモネラ菌の発生は、さらに、アリゾナ、フロリダ、アイダホ、メイン、ノースダコタ、ネブラスカ、サウスダコタ、バージニアの 8つの州に感染拡大した。
CDCによると、進行中の集団感染では、患者の年齢は 0歳から92歳までだという。CDCが病院の状態に関する情報を受け取った117人の患者のうち、117人のうち31人が入院した。死亡例は報告されていない。
そして、この報道の 1週間後には、感染者が発生した州は 50州に拡大し、患者は約 1000人で、1名が死亡している状態となっています。
CDC の報告は週に一度ですが、過去のグラフを見る限りは、おそらくは今もリアルタイムで増え続けていると思われます。
本来、サルモネラ菌というのは、乳幼児と高齢者を除けば、大したものではないのですけれど、この報道を最初に見た時に、重要な原因のひとつは、前回の以下の記事にも書きましたけれど、「今、不安やストレスにより人々の免疫力が極端に落ちている」ことだろうとは思いましたし、それは間違いないとは思います。
「細胞の状態は自分の意志で完全に変化させられる」ことを突き止めた米国CIAの研究。そして、不安とストレスは細胞の免疫力を徹底的に弱くする事実から思う「真の感染症予防」
In Deep 2020/08/01
この記事の中に、以下のように書いていますが、それのひとつだと思います。
普通なら感染しにくい、あるいは感染しても大したことのない感染症でも、国民全体の免疫力が極限まで下がっていれば、「一大事」になる可能性があるわけです。
サルモネラ菌というのは、この夏の時期なら普通の感染症でして、赤ちゃんとか、高齢者の場合以外は重篤になることも普通はないものです。
いろいろと生で食べるのが好きな私なんかは、これまで数え切れないほど感染して、発症もしているはずです。
それはともかく、このアメリカでの出来事の「当初の異常さ」は、
「感染発生範囲のあまりの広さ」
でした。
冒頭の地図でもおわかりかと思いますが、全米なんですね。
たとえば、日本でもこの時期なら、たまにサルモネラ菌の発生が報じられることはあります。しかし、日本ほどの国土面積の国でも、「日本全土でサルモネラ菌感染が発生」となったら、それは異常ですよね。
つまり、北海道から沖縄まですべて発生というようなことは想像もできない。
それがアメリカで起きているのです。
この不可解な現象の原因追及に CDC は奔走したのですが、7月30日までの時点では、 CDC はこの原因を、
「家で飼っているアヒルやニワトリから感染した可能性が高い」
と発表しました。
その日のアメリカの報道は以下のようになっていました。
CDCは、ルモネラ菌は、自宅で飼育されているニワトリやアヒルが感染源である可能性があると警告
CDC warns backyard chickens and ducklings responsible for salmonella outbreak
WTNH 2020/07/31アメリカ全土で、深刻なサルモネラ菌の発生が続いているが、CDCは、その原因が、自宅で飼育されているのニワトリとアヒルである可能性があると警告した。
このサルモネラ菌の大流行により、現在までに、約 1,000人のアメリカ人が発症し、150人が病院に送られ、1人が死亡している。
アメリカでは自宅の庭でアヒルやニワトリをペットとして飼育するのが人気だが、健康の専門家は、家禽類はサルモネラ菌の運搬役となる可能性があると述べる。 CDCは、自宅の家禽に触れないよう警告している。
この報道を見た時には、
「だいたいやねぇ・・・」
と呟きました。
「数千人規模でサルモネラ菌中毒が発生した理由が、庭でニワトリを飼育して、それら触ったことだっちゅーんか」と思わざるを得ない部分がありますが、同時に、「 CDC も相当苦しんでいるなあ」とも思いました。
普通の正常な思考なら、こんなこと正式に発表するとは思えないですから。
ところが。
そうしましたら、翌日、CDC は、「発生源を特定した」のですね。
CDCは、このサルモネラ菌の大発生の原因が、あるアメリカの流通企業によって出荷されている「タマネギ」だと特定し、断定したのです。
特定された企業は気の毒な気もしますが、CDC は、トムソン・インターナショナル社(Thomson International, Inc)という食品流通企業から出荷されたとされるタマネギがサルモネラ菌の感染源だとしたのです。
当初は、赤タマネギとしていたのですが、その後以下の CDC の写真に示されている通り、同社の「すべてのタマネギが感染源」だと。
しかし、「狂気」はここからなんですよ。
7月31日午後8時に発表された CDC (アメリカ疾病予防管理センター)のページをそのまま翻訳ご紹介します。
これは、CDC が皆さんを笑わそうとして発表したものではなく、おそらく真面目に発表しています。
CDC 食品安全警告 / タマネギに関連するサルモネラ菌感染の発生
Outbreak of Salmonella Newport Infections Linked to Red Onions
CDC 2020/07/31
消費者へのアドバイス
トムソン・インターナショナル社のタマネギ、またはこれらのタマネギで作られた製品を食べたり、提供したり、販売したりしないでください。
タマネギの種類には、赤、白、黄色の品種があります。
自宅で、これらのタマネギまたはそれらで作られた生鮮食品のいずれかについて、冷蔵庫とキッチンにそれがないかどうかを確認してください。
確認するには、パッケージをチェックするか、タマネギのステッカーを探して、それがトムソン・インターナショナル社からのものかどうかを確認して下さい。
そうである場合は、食べないで、廃棄して下さい。
タマネギの出所がわからない場合は、食べないで、廃棄して下さい。
タマネギを使った料理を作って、そのタマネギの出所が分からない場合は、食べないでください。誰も発症していない場合でも、その料理を廃棄してください。
タマネギやそのパッケージに接触した可能性のある表面(台所、冷蔵庫の引き出し、ナイフ、まな板など)は洗浄して消毒してください。
レストラン、小売業者、サプライヤーへのアドバイス
レストランや小売業者は、トムソン・インターナショナル社のタマネギ、またはこれらのタマネギを使用した調理品や食品を提供または販売しないでください。
タマネギの出所がわからない場合は、その調理品や食品を提供したり、販売したりしないでください。
まな板、スライサー、調理器具、収納ビンなど、タマネギが接触した可能性のあるすべての表面をきれいにして消毒してください。
ここまでです。
「だいたいやねぇ…」
と思われないでしょうか。
家でのタマネギの調理の件もですが、
「アメリカの外食や加工食品で、どのくらいタマネギが使われている?」
という話であり、しかも、報道では、このトムソン・インターナショナル社は、全米 50州にタマネギを輸出しているそうですので、基本的に全米にそのタマネギが存在する。
ということは、加工食品などを含めて、全米にその食品は広がっているはずです。
そもそも、店で調理している方々にしてみれば、「このタマネギは○○社によって流通しているものである」と認識している人などいないはずで、しかも、普通はタマネギなどは平積みされていて、どの流通からなどわからないはずです。
「どうしろっちゅーねん」という調理人たちの声が聞こえてきそうな話ではあります。
アメリカだけではないですが、タマネギというのは、あまりにも一般的な食材であり、それを否定するというのは、
「外で何も食べるな」
「加工食品は買うな」
と言っているようなものなんですよ。
ハンバーガーやホットドッグのようなジャンクフードから、高級料理まで、もう何にでも使われるのがタマネギでありまして、それに対して、
> タマネギの出所がわからない場合は、食べないで、廃棄して下さい。
というのはすごい台詞だと思います。
こんなすごい言葉を聞いたことがないほどです。
これは、エボラやペストの感染の話をしているのではなく、単なる「サルモネラ菌」の話ですよ。
加熱であっという間に死滅する脆弱な細菌の話ですよ。
サルモネラ菌の加熱への弱さに関しては、たとえばニチレイのサイトには以下のようにあります。
サルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバクターなどの食中毒菌の多くは、75℃以上 1分間の加熱でほとんど死滅する
要するに、生じゃなければ、これらのバクテリアはおおむね大丈夫なんです。
「うちのシチューは 50秒しか煮てないんですよ」という店や、「うちのハンバーグは加熱してないんですよ(ユッケバーガー)」というような店でなければ、サルモネラ菌感染など普通は起きないと思います。特にわりと生のものを食べないアメリカでは。
というより、仮にサルモネラ菌を接種したところで、普通の年齢の人たちで、普通の免疫と抵抗力があれば、サルモネラ菌は、感染して発症したところで、それほど問題になるようなものではないと思います。
実際には、たとえば私も含めて、日本人は生でタマゴを食べたり、あるいは、いろいろなものを生で食べますけれど、そのあたりから考えますと、毎年、夏にはものすごい数の日本人がサルモネラ菌に感染しているはずです。私なんかはおそらく数千回は感染しているはずです。
しかし、サルモネラ菌が「社会的大問題になった」というようなことは、幼稚園や高齢者施設などを別にすれば、少なくとも、日本でもアメリカでも、普通はあまりないことだと思われます。
それだけに、今回のアメリカの例を見ていますと、「みんなものすごく免疫が落ちているのだろうな」とは思います。
今は、日本人もかなりのストレス下にある方々が多いですので、同じようなことになる可能性はあるのかなとも思います。前回の記事に、アメリカ心理学会の 2006年のニュースリリースをご紹介しまして、そこには、以下のようにありました。
2006年のアメリカ心理学会のニュースリリースより
ストレスのかかった被験者の学生たちには、腫瘍やウイルス感染と戦うナチュラルキラー細胞の数が少なかった。
彼らの体では、免疫を増強するインターフェロンの産生が停止されており、感染と闘う免疫細胞である T細胞は、感染への刺激に対して弱くしか反応しなかった。
人間はストレス過多になると、免疫細胞そのものの働きが弱ってしまうようなんです。
本来なら、「そんなのは普通は大丈夫」というような病原体でも深刻な発症になってしまう可能性がありそうなのですね。
先ほどのニチレイのサイトでは、岩手大学名誉教授の品川邦汎さんが以下のように述べています。
「体調や抵抗力、大人と子どもの違いなどもありますが、サルモネラ属菌は通常 1万~ 10万個程度の菌量を摂取すると発症します」
つまり、仮に、サルモネラ菌に汚染されている食品を摂取したとしても、よほど大量でない限り、通常の免疫の状態では、発症しないのですよ。
ところが、長時間の不安やストレスで体の免疫の機能が衰えてくると、数千個あるいは数百個程度のサルモネラ菌で発症してしまう可能性が出てくる上に、普通以上に重症化する人たちが増えてしまう。
本来なら、今アメリカで問題となっているサルモネラ菌に関しては、熱に弱い上に、相当量を摂取しないと発症しない。さらにいえば、発症しても、普通の人なら大したことにはならない。
しかし現実として、今のアメリカのように、それが大きな問題に発展していて、そして、CDC は、
> タマネギを使った料理を作って、そのタマネギの出所が分からない場合は、食べないで、その料理を廃棄してください。
と警告している。
もう異常な世界ですよ・・・。
このような異常事態も、ロックダウンや「人と会うことができない」などによる人々の免疫力の低下と関係していることは明らかですが、しかし、実際にアメリカでこのようなことが起きているということは、同じようなストレスにさらされている多くの国や地域、つまり日本などでも人によっては同じように注意が必要なのかもしれません。
まあ・・・日本なら生卵とか、生肉とか避けるとか・・・ですかね(私は避けないですけれど)。
たくましい日本人の時代に戻りたい
それにしても、私が北海道から東京に出てきた後・・・まあ、30年前とかもっと前ですけれど、東京で暮らす人たちを見て、
「たくましいなあ」
と思いました。
たとえば、私は長く東京の西荻窪という町に暮らしていまして、そこに、今は有名になっているのかもしれないですが、カウンターだけの焼き鳥屋がありまして、とにかく安いので、よく行っていました。
焼き鳥屋さんですけれど、モツ煮込みとか、あと「レバ刺し」もあったんです。しかも、今も昔もご禁制の豚のレバ刺し(十数年前にメニューから消えました)。そういう生のものがあった店ですが、
「冷蔵庫はない」
のです。
焼く前の焼き鳥はカウンターの横に平積みになっていて、生のレバーもバケツに入れられて床の上に放置されている。
じゃあ、夏はどうしているのかというと、同じように床の上に放置されている(笑)。
注文すると、そのバケツから生のレバーをすくって出してくれるのです。当然、夏は暖かい状態です。
若い時、それを何百回食べましたかわからないですが、サルモネラ菌どころではない菌たちが活躍していただろうことは想像できます。
しかしお腹を壊したことはなかったですしね。
この「冷蔵庫なしで、床バケツに放置」というスタイルは、当時の東京ではどこでも見られたもので、東京の後楽園のある飲み屋さんでは、
「生のイカ」
を同じように冷蔵庫のない真夏の床に放置して、それを焼いて出していました。あれもよく食べましたけれど、そこにいたお客さんに「どうして、これで誰もお腹を壊さないんでしょうかね」と聞くと、「いろいろな薬が入っているから」という危険な答が返ってきていましたが、何にしても、ちょっと前の都会の人々はたくましかったです。
食中毒なんて想像することもなかったです。
「不衛生って素晴らしいことだよなあ」
としみじみと思い出します。
数年前に、「人間社会を滅ぼそうとしているのは、過度な衛生観念だ」ということに気づいてはいたのですが、今回のパンデミックでは、そのことをさらに実感しています。
衛生観念については以下の記事などをご参照下されば幸いです。
現在のパンデミックや、アメリカのサルモネラ騒動も、まったくこの記事で取り上げたことと同じ要因だということがおわかりになるかもしれません。
人類が花粉症やアレルギーから解放される唯一の手段… : 私たちは、誤った衛生観念を捨てる時に来ていると語るピューリッツァー賞受賞の記者が主張する「人類のこれまでとこれから」
In Deep 2019/04/04
そういえば、緊急事態宣言の頃からでしたか、やたらと「手を洗いましょう」と喧伝されていることに反発を覚えて、「だったら、いっさい消毒しない生活をしてやる」と決めて6ヵ月くらいになります。
パンデミックがなければ、こんなありがたい発想は出なかったわけで、いろいろと感謝する部分はないではないです。
いずれにしましても、読まれている方の中で、今の生活に不安やストレスを感じられている方は、免疫についての懸念がありますので、食中毒などを含めて、安全にお過ごしいただればと思います。普通であれば、サルモネラ菌くらいの食中毒は恐れるようなものではないことは事実ですが、時代は変わってしまったようです。
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