この喜劇はもはや喜劇じゃない
対ロシア制裁が始まってからの「バカバカしさ」は、私が生きてきた数十年の中でも格別の感があり、もともとモンティパイソンなどのスラップスティック的笑いが好きだった私ですが、もうすでに笑えないほど馬鹿げたことが続いています。
その構造は一言でいえば、
「対ロシア制裁は、ロシアが利益ばかり得ていて、西側が自滅している」
ということなんですが、それが過度すぎる。
たとえば、非常に馬鹿馬鹿しい「結果」のひとつとしては、ウクライナ侵攻が始まったときに、
「マクドナルド全店舗がロシアから撤退!」
とか、
「 VISA やマスターカードが撤退!」
とか、いさましく報じられていましたけれど、その後、これらがどうなったかご存じでしょうか。
マクドナルドは、ロシアで 847店舗を展開していましたが、すべての営業を停止し、ロシアから撤退しました。
しかし、撤退するとはいっても、847店舗全部を爆破したり放火したりして、痕跡をなくすことができるわけでもなく、「店舗はそのまま」でした。
当時思ったのは、
「世界一の小麦生産国と大規模な牛肉の生産国に、それを利用できる 847店舗を無料で提供してあげただけじゃん」
ということでした。
そして、最近の報道を見ますと、その通りになっています。
(報道) マクドナルドがロシアの847のレストランを閉鎖した後、ロシア政府はそれらの名前を ロシア名の Uncle Vanya に変更して営業継続 (2022/03/24)
海外の報道では、以下のように書かれていました。
マクドナルドは、ロシアの 847店舗を閉鎖し、ビジネスの観点から完全にロシアを離れた。
その後、どうなったか?
ロシア政府は、以前マクドナルドだったすべてのレストランの名前を Uncle Vanya に変更した。そして、彼らは、以前と同じようにハンバーガーを提供している。しかし、これはすでにロシアの名称とロシアの支配下にある。
以下が、現在の元マクドナルドのロゴです。
今やロシア国営店のハンバーガー店チェーン Uncle Vanya のロゴ
mishtalk.com
考えてみれば、アメリカ企業のマクドナルドとはいっても、店員さんたちは全員ロシアに住んでいるロシア人だったわけですから、みんなノウハウは知っています。
つまり、
「それまで通り、ハンバーガーを作って、お客さんに出せばいい」
というだけで、それがロシアの国営店ということ以外は他は何も変わりません。
847もの「設備の整った店舗」が「無料で手に入った」というだけです。
ロシア側は嬉しかったでしょうね。
VISA とマスターカードの件については、海外の経済メディアが以下のように記しています。
VISA とマスターカードは、ロシアから撤退した。その代わりに、プーチンは、NSPK として知られるロシアの全国決済カードシステムを実装した。
これらのカードは、米国の支払いシステムを使用していない。
皮肉なことに、それまで VISA とマスターカードが受け取っていた手数料は、すべてロシア中央銀行の 82億ルーブルの純利益となった。ロシアは実際に VISA とマスターカードの制裁から高い利益を得たことになる。
ロシア中央銀行は嬉しかったでしょうね。棚からぼた餅とか、濡れ手に泡とか、そういう表現がありますが、何の苦労もせず、莫大な利益を上げることに成功しています。
「でも、ルーブルの価値が下がったではないか」という話もあると思います。
それはですね。
もう元に戻りました。
1月24日から3月30日までのドル / ルーブルの推移
zerohedge.com
ほぼ完全に、ウクライナ侵攻前の水準です。
ロシアの株式市場もほぼ侵攻前の価格に戻しています。
どこから見ても、ロシアは「得しただけ」となっています。
何も失っていない。
それどころか、このタイミングで、ここぞとばかりに「強烈な戦争」を仕掛けてきています。
私たち西側にとっては絶望的な「食糧と経済戦争」です。
ロシアはいろいろなことを発表していますが、最も驚いたのは、元ロシア大統領のメドヴェージェフ氏が、
「非友好国への食糧輸出を停止する」
と述べたことです。
以下の記事で、RT の報道をご紹介しています。
[記事] 「私たちロシアは、非友好国への食糧輸出を完全に停止する」と元大統領のメドヴェージェフ氏が計画を発表
地球の記録 2022年4月2日
その少し前に、ロシア議会で、「食糧輸出もルーブル決済限定にしてはどうか」という提案が議員により出されていました。
(報道) ロシアの議員が「肥料と穀物を含むすべての輸出をルーブル支払いにするべきだ」と提案 (2022/04/01)
その後、まさか「完全な輸出の停止」まで言及するとは。
ロシアの穀物に依存している国は大変に多く、日本に関しては、ロシア産の海産物などがそれにあたります。
なお、ロシアの「非友好国」とは、ロシアに経済制裁を課した国で、米国、英国、カナダ、オーストラリア、日本、台湾、韓国、スイス、EUの27か国すべてと、あといつくかの国の 40数カ国です。
他の世界 150数カ国は、ロシアの友好国ということになります。
ただ、フランスは EU ですが、これまで、欧米の主要国の多くが「ロシアから撤退した」という思い込みがあるかもしれないですが、フランスの企業の多くは撤退していないということが報じられています。
まあ、かつては、マクロン大統領とプーチン大統領は共に世界経済フォーラム「若きリーダー」メンバーのマブダチでしたし。以下の記事で少し取り上げています。
[記事] 「戦争」を仕掛けているのはプーチン氏かもしれない。そしてそれは世界経済フォーラムの崩壊まで続く最終戦争になるかも
In Deep 022年3月2日
それはともかく、ロシアへの制裁による今後の「西側へのブーメラン」は、今はまだそれほど明確には現れていないのかもしれないですが、ものすごいことになりそうです。
何しろ食糧と肥料とエネルギーが絡んでいるので、過去数十年、数百年の国家の対立とは異なります。
「飢餓と大量死」
というキーワードに満ちる国家対立となっています。
こうなってくると、
「誰に対しての戦争なんだ?」
と思わざるを得ません。
対ロシア制裁が始まってから、ほんの少し「これって……自分たち(西側)に向けた制裁になっていることをわかってやっているのでは……」と思うような部分もないではなかったのですが、その理由は、たとえば、
「西側で、コロナというキーワードが突然断ち切られた」
ということにも感じていました。
もっと端的にいえば、ディーガルの世界ですよ。
「アメリカ帝国と西側諸国を破壊するための(自死としての)対ロシア制裁」
ということです。
ディーガルについては、以下のような記事にあります。
[記事] アメリカの異常な孤立を見て思う、日本を含めた「対ロシア制裁国」の劇的な人口減少の原因は、戦争よりも凍死や餓死によるものになっていくのではという懸念
In Deep 2022年3月10日
[記事] これは「副作用」ではなく「本作用」だと認識しながら、人類類史上最大の事象がディーガルの分析した未来予測へと推し進める惨状を見続ける日々
In Deep 2021年6月18日
実際には、西洋を中心としたかなりの国や地域でコロナの事態は悪化しているのですが、しかし、コロナから「戦争と制裁」に話が強制的に移行されている。
こうなると、もう、みーんな怪しい。
何も信じられない。
もちろんプーチン大統領も、恍惚の人もです。
……新世界秩序、という言葉がありますが、もしかすると、私はこれを勘違いしていたのかもしれないと最近思います。
まあ……予測などしても仕方ないわけで、あと 2年も見ていればわかることではあるのですけれど、予想以上に不気味に世界は動いていると感じます。
私の考えはこのように曖昧ですので、最近見た海外の記事で、何となく言いたいことがわかるようなものがありましたので、ご紹介して締めさせていただきます。
今のままだと、日本も含めて西側が崩壊するのに、そんなに果てしない時間はかからないです。
西側の制裁の真のターゲットはロシアなのか
Is Russia the Real Target of Western Sanctions?
globalresearch.ca 2022/04/01
石油価格の高騰、エネルギー危機、食糧危機が間近に迫っている…この経済戦争の本当の標的は私たち自身である可能性はあるのだろうか
外交政策アナリストのクリント・アーリッヒ氏は、投稿で、ロシアルーブルはすでに西側の制裁によって引き起こされた落ち込みから回復し始めており、ほぼウクライナ侵攻以前のレベルにあると指摘している。
アーリッヒ氏は、「対ロシア制裁はルーブルの価値を崩壊させるように設計されたが、失敗した」と述べている。
よく言って対ロシア制裁はせいぜい無力であり、それどころか、最悪の場合は驚くほど西側にとって逆効果であるように思われる。
米国 / EU / NATO が、他国の経済を不自由にする方法を知らないわけではない。彼らは、キューバ、イラク、ベネズエラ、そしてリストに載せるにはあまりにも多くの他の人々を飢えさせる長年の練習をして、それを実践している。
しかし、ロシアはそれらの国よりも大きく、より発展した経済を持つと主張されることがあるかもしれない。それは事実だ。しかし米国とその同盟国は以前にロシア経済をかなり劇的に傷つけたことがあるのだ。
クリミア「併合」後の 2014年には、米国は自国の石油生産を大幅に増やし、その年の後半、当時の米国国務長官ジョン・ケリーの訪問後 、サウジアラビアも同じことをした。
OPEC の他のメンバー(主にベネズエラとイラン)からの反対にもかかわらず、サウジアラビアは市場に石油を氾濫させた。
これらの動きの結果、石油価格は数十年で最大の下落となり、2014年6月の 1バレル 109ドルから、2015年1月までに 44ドルに下落した。
この石油価格の下落は、当時のロシアを完全な不況に追い込み、プーチンがロシアのトップにある中で、ロシアの GDP が初めて縮小した。
繰り返しになるが、ちょうど 2年前、石油市場のシェアをめぐってロシアと競争したことの一環として、サウジアラビアは再び安価な石油で市場を氾濫させた。
これらのことから、西側諸国は、対ロシア制裁を本当に望んでいるのであれば、石油生産を増やし、市場を氾濫させることによって、ロシアを傷つける方法を知っているのだ。
しかし、米国は今回、石油生産を増やしただろうか。米国は以前と同じことをするために湾岸の同盟国に寄りかかっただろうか。
それはまったくない。
実際、米国当局は、「コロナによる人材不足」のために、石油生産を増やすことは「不可能」であると主張している。
同様に、サウジアラビアは石油市場を圧迫しているのではなく、意図的に価格を引き上げている。
現在、西側の同盟国がロシアとの「疑わしい」経済戦争にあるため、石油の価格は高騰しており、今後も続く可能性がある。
これはロシア経済にとって朗報であり、経済制裁による被害を埋め合わせる可能性さえある。
石油の価格が高くなり、「ロシアのガスに頼らない」または「ロシアからのエネルギー調達を排除する」必要があるため、私たちのエネルギー供給は間違いなく「グリーン」技術に何百万もの人々が注がれることになる。
これらの西側の制裁は、穀物や食料品全般を含むロシアの輸出も対象としている。
ロシアは食糧の大輸出国であり、輸入よりも多くの食料を輸出している。
逆に、西ヨーロッパの多くの国は、食料供給の 48%以上を輸入している英国を含め、輸入食品に依存している。
ヨーロッパがロシアの食糧を購入ことを拒否した場合、その正味の効果は、食糧を持っているのはロシアだということだ。ヨーロッパではない。
そして、石油と同じように、食糧価格の上昇はロシア経済を妨げるのではなく、助けるだけだろう。
ロシアが世界最大の輸出国である小麦を例にとってみれば、この小麦の大部分は、西側諸国に販売されておらず、代わりに中国、カザフスタン、エジプト、ナイジェリア、パキスタン等に販売されており、これらの国に対しての販売は制裁の対象にはならない。
それにもかかわらず、制裁と戦争は実際に小麦の価格をほぼ 30%上昇させた。
小麦価格の上昇は、ロシア経済にとって非常に良いことだ。
一方、米国 CNN によると、米国は 2023年までに本格的な不況に陥る可能性があり、フランスは食品配給制度を検討しており、世界中の国々が燃料の配給を開始する予定だ。
したがって、西側がロシアに対して課した抜本的な制裁措置は、ウクライナの侵略に対応したとされているものではあっても、ロシア経済を圧迫するという明確な目的を持っていない中で、石油の価格を押し上げ、潜在的なエネルギーと食糧不足を生み出している。そしても西側と「パンデミック」によって引き起こされた「生活費」危機を悪化させている。
オーウェルが、小説「1984年」に戦争の概念の進化をどのように説明したかを思い出してほしい。
戦争は、今では純粋に内政だ。過去には、すべての国の支配グループは、彼らの共通の利益を認識し、したがって戦争の破壊性を制限したかもしれないが、互いに戦い、勝利者は常に敗者を略奪した。
現在では、彼らはお互いにまったく戦っていない。戦争は各与党によってそれぞれの主題に対して行われ、戦争の目的は領土の征服を成し遂げたり阻止したりすることではなく、社会の構造を無傷に保つことだ。
コロナの結果として「 50年間で最悪の食糧不足」が予測されていたことを思い出してほしい。
しかし、コロナによる食糧不足はまったく実現しなかった。
同様に、私たちはコロナ関連のエネルギーの混乱と停電を経験すると予測していたが、英国のささやかなガソリン危機を除いて、コロナによるエネルギー危機は、実際に到着することはなかった。
しかし、今、私たちは、確実に食糧危機とエネルギー危機に進んでいる。
それは戦争と制裁のために起きた。
食料価格の上昇、化石燃料の使用減少、生活水準の低下、そして、公的資金が「再生可能エネルギー」に注ぎ込まれる。
これらはすべて非常によく知られている議題の一部でもある。
プーチン、ゼレンスキー、戦争全般、またはウクライナについてどのように感じているかに関係なく、巨大なものと対峙する時が来た。
私たちは考える必要がある。
「これらのロシア制裁の本当の目的は正確には何なのか?」
そして、
「なぜこれらはグレートリセットの内容と完璧に一致するのか?」
ということを。
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