今現在の騒動は「序章」かもしれない
まあ……最初に書いておきますと、今回お知らせする報道は、明るいものではありません。というか、なかなか暗いものです。これは、私たちの人間社会の先行きがわりと厳しいものになっていくのかもしれないということを裏付けます。
しかしですね、前回の緑茶の記事などでもふれましたけれど、新型コロナウイルスであろうと、他の感染症であろうと、最も良くないことのひとつが「ストレス」です。そういうこともあり、こういう暗いニュースにふれたとしても、
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
と笑い飛ばせるくらいの気持ちで生きていかないと、今後の世の中なんて生きていくことはできません。
では、今回ご紹介するものはどんなお話かといいますと、
「新型コロナウイルスが、エイズウイルスの特性を持っていることが確認された」
のです。
アハ…ハ…笑えないですね。
これは、昨日 4月12日に、香港の信頼できる報道メディア「サウスチャイナ・モーニングポスト」が報じたものです。
ただ、以前から「その気配」はたびたび科学の世界に出てきていました。
以下の記事でもご紹介したことがありましたが、1月下旬という早い段階で、インドの科学者たちが、遺伝子解析で、
「新型コロナウイルスに HIV (エイズウイルス)のタンパク質が挿入している」
ことを見出していました。
新型コロナウイルスに「HIV (エイズウイルス)」のタンパク質が挿入されていることをインド工科大学の科学者たちが発見。さらに「感染しても免疫を獲得できない示唆」を中国当局が示し、事態は新たな局面に
In Deep 2020年2月1日
この論文は、なぜか世界中の科学者たちの非難の的となり、結局、インドの科学者たちは、論文を取り下げる事態になりましたが、今回は、感染後の細胞の観察により、このことが裏付けられた形となったということなのかもしれません。
その特性を簡単に書きますと、新型コロナウイルスは、
「人間をウイルスから防御している T細胞を攻撃して死滅させる」
のです。
つまりは、新型コロナウイルスは、エイズウイルスのように、「人間の免疫機能を奪う」のです。
T細胞とは以下のようなものです。
感染症にかかったとき、いろいろな免疫細胞が出動して病原体と戦ってくれます。その免疫反応の司令塔の役割をしているのが、T細胞です。ひとつひとつのT細胞は、実はごく限られた相手しか攻撃できないのですが、体内には膨大な数のT細胞があり、全体としてはどんな病原体でも対応できるのです。
T細胞は、病原体が侵入してからつくられるのではありません。
会ったこともないような病原体に対してでも、それを見分けて攻撃できるT細胞はすでにつくられていて、待ち受けているのです。 (京都大学 再生医科学研究所)
見知らぬウイルスに対しても攻撃ができる優れた人間の防御機能を司る T細胞。
新型コロナウイルスは、免疫に最も重要なひとつであるこの T細胞を「殺す」のです。
まずは、サウスチャイナ・モーニングポストの記事をご紹介します。
新型コロナウイルスは免疫細胞を標的にすることで HIV のように免疫系を攻撃する可能性があると科学者たちが警告
Coronavirus could attack immune system like HIV by targeting protective cells, warn scientists
South China Morning Post 2020/04/12
中国とアメリカの研究者たちは、Covid-19 を引き起こすウイルスは、本来なら有害な侵入者から体を保護するはずの T細胞を破壊する可能性があることを発見した。中国の一人の医師は、HIVと同様の影響を懸念する医療関係者たちが増えていると述べた。
中国とアメリカの科学者たちが、Covid-19 を引き起こす新型コロナウイルスは、体内のウイルスを殺すための強力な免疫細胞を攻撃する可能性があると警告した。
上海とニューヨークの研究者チームによって行われたこの驚きの発見は、新型コロナウイルスが人間の免疫システムを攻撃し、HIV (エイズ)患者に見られるものと同様の損傷を引き起こす可能性があるという最前線の医師の観察と一致した。
上海復旦大学のル・ル(Lu Lu)博士とニューヨーク血液センターのジャン・シボー(Jang Shibo)氏は、実験室で増殖させた Tリンパ球細胞株に、新型コロナウイルス Sars-CoV-2 を結合させる実験をおこなった。
T細胞として知られている Tリンパ球は、体内に外部から侵入した病原体など異物を特定して排除する上で中心的な役割を果たしている。
Tリンパ球は、ウイルスに感染した細胞を捕獲し、その膜に穴を開け、有毒な化学物質を細胞に注入することによってこれを行う。これらの化学物質は、ウイルスと感染細胞の両方を殺し、それらをバラバラに引き裂く。
ところが、今回の実験で科学者たちが驚いたのは、本来はウイルスを排除する役割を持つ T細胞が、実験ではコロナウイルスの餌食となったのだ。また、研究者たちは、ウイルスのスパイクタンパク質に独特の構造を発見した。それらが接触すると、ウイルスのエンベロープと細胞膜の融合を引き起こすと思われる。
その後、コロナウイルスの遺伝子は T細胞に入り、 T細胞の保護機能を無効にしてしまった。
研究者たちは、同じコロナウイルスの SARS ウイルスでも同じ実験をおこなったが、SARS ウイルスには、T細胞に感染する能力がないことを見出した。
つまり、新型コロナウイルスだけが、T細胞を攻撃する能力を持っているのだ。
2003年の大流行で数百人が死亡した SARS は、ACE2 と呼ばれる特定の受容体タンパク質を運ぶ細胞にのみ感染する能力を持つが、この ACE2 タンパク質は T細胞には非常に低いレベルでしか存在しない (※ T細胞には SARS の受容体がないために、SARS は T細胞に感染できないが、新型コロナウイルスは受容できる能力を持つということ)。
T細胞への新型コロナウイルス感染をさらに調査した後、研究者たちは、「病原性メカニズムと治療的介入についての新しい考え方」が喚起されるだろうと査読付き科学誌(Cellular&Molecular Immunology)に掲載された論文で述べた。
中国北京の公立病院で Covid-19 の患者たちを治療している一人の医師は、この発見により、新型コロナウイルスが人間の免疫システムを直接攻撃する最も悪名高いウイルスのいくつかのように振る舞う可能性があるという医学界の懸念の高まりに対する新しい証拠が追加されたと述べた。
センシティブな問題であるため、医師は匿名を条件に以下のように述べている。
「新型コロナウイルスを HIV と比較する医療関係者たちがますます増えているのです」
中国人民解放軍・免疫学研究所の科学者であるチェン・ヨングェン(Chen Yongwen)氏たちは、 Covid-19 の患者たちのうち、特に高齢者あるいは集中治療室での治療を必要とする患者たちでは、T細胞数が著しく減少する可能性があることを警告する臨床報告を 2月に発表した。T細胞数が少ないほど、死亡のリスクは高くなる。
数々の遺体を見た医師たちは、死亡者の内臓の損傷が「 SARSとエイズの組み合わせと似ている」と語っている。
新型コロナウイルス Sars-CoV-2 の結合機能の背後にある遺伝子は、他のコロナウイルスでは見つかっていない。新型コロナウイルスだけのものだ。
しかし、エイズやエボラなどのいくつかの致命的なウイルスが同様の遺伝子配列を持っているため、今回のパンデミックが起きる前に、新型コロナウイルスは、長い期間、人間の社会で静かに広がっていたのではないかという憶測を促している。
しかし、新しい研究によると、新型コロナウイルス Sars-CoV-2と HIV (エイズウイルス)の間には 1つの大きな違いがあった。
エイズウイルスは T細胞内で複製し、 T細胞を複製工場に変えて、他の細胞に感染するためのより多くのコピーを生成することができる。
しかし、この実験では、 T細胞に入った後の新型コロナウイルスの成長を観察することはなかった。
これは、T細胞に入った後、新型コロナウイルスが T細胞が一緒に死滅してしまう可能性を示唆している。
この研究はいくつかの新しい疑問を引き起こす。
たとえば、新型コロナウイルスでは、多くの人々が、何週間もの間、症状を引き起こさずに体内に存在している可能性がある。症状がない場合、新型コロナウイルスは、これらの患者の中の T細胞とどのように相互作用するかは不明のままだ。
一部の重症患者では、免疫システムが過剰反応して健康な細胞を攻撃する「サイトカインストーム」も引き起こされている。
しかし、なぜ、新型コロナウイルスがサイトカインストームを誘発するのかはよくわかっていないままであり、そのメカニズムもわかっていない。
ここまでです。
記事の中に「このエイズウイルスのような特徴は、同じコロナウイルスである SARS にはなく、新型コロナウイルスにだけある」とありますが、これについては、インドの科学者たちの解析でもわかっていたことでした。
先ほどリンクしました過去記事から抜粋します。
1月30日に公開されたインド工科大学の論文より
新型コロナウイルスのタンパク質は、 SARS と最も近い祖先を共有しているため、その2つのウイルスのタンパク質をコードする配列を比較した。そうしたところ、新型コロナウイルスから、SARS ウイルスにはない、以下の 4種類のタンパク質の挿入が見つかった。
「GTNGTKR」(挿入1)
「HKNNKS」(挿入2)
「GDSSSG」(挿入3)
「QTNSPRRA」(挿入4)驚いたことに、挿入しているこれらの配列は SARS ウイルスのタンパク質に存在しなかっただけではなく、コロナウイルスの他の種にも見られないものだった。
ウイルスがこのような独自な挿入を短時間で自然に獲得することはほとんどあり得ないため、これは驚くべきことだった。
この 4種のタンパク質の挿入は、最近の臨床患者の分離株から入手可能な新型コロナウイルスのすべてのゲノム配列に存在することが観察された。
これらの挿入源を知るために、さらに解析を進めると、予想外に、すべての挿入がヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)と一致した。
この論文では、上にありますように、
> ウイルスがこのような独自な挿入を短時間で自然に獲得することはほとんどあり得ない
と記されていまして、この部分が、世界中の科学者たちの反感を買ったのです。
つまり、
「自然に獲得したのではないなら、人為的に挿入されたことになってしまう」
ということに世界中の科学者たちが反対意見を述べ、そのことにより、インドの科学者たちは論文を取り下げたのですが、今回の中国とアメリカの研究者による実験は、この「新型コロナウイルスは、ヒトの免疫を破壊するエイズの性質を持っている」ということを証明した形になるのかもしれません。
そして、このインドの科学者たちの「 ウイルスがこのような独自な挿入を短時間で自然に獲得することはほとんどあり得ない」という言葉から、このウイルスの起源を今再び思います。
しかし、それについては今回はふれません。
ただ、中国武漢にあるウイルス研究所とアメリカ政府の間に「面白い関係がある」ことが最近わかっていまして、次回ご紹介できるかもしれません。
それにしても、新型コロナウイルスがエイズウイルスの性質を持っているということが確定的になったわけですが、今後、パンデミックの状態がどのようになっていくのかということは気になります。
というのも、「エイズ」とはどんなものかといいますと、
「感染してから発症までの時間が非常に長い」
のです。
たとえば、以下は、財団法人エイズ予防財団のページからのものです。
ほとんどのウイルスの場合、感染による症状は数日から数週間で現れる。たとえば、インフルエンザ・ウイルスなら、1日から5日でインフルエンザを引き起こす。A型肝炎の場合は、発病までの期間は感染後約4週間だ。
HIVはそうではない。このウイルスに感染して数週間後に、感染者の70%が経験する概して軽い病気(発熱や喉のはれ、発疹)を除けば、ほとんどのHIV感染者には、最初の5年間ほどの間は何の症状も現れない。
感染者たちは健康そうに見えるし、気分が悪くなることもない-ただし、感染直後から他人に感染する可能性はある。一度感染すると、生涯感染したままである。
科学者たちは、感染者を治療する方法も、他人に対する感染力をなくす方法もまだ発見していない。現在明らかになっているのは、一部の例外を除き、HIV感染者のほとんどすべてが最終的にはエイズで死ぬということである。
こういうのを読みますと、現在の新型コロナウイルスについて言われることの多い、「若い人たちは感染しても症状が軽いか無症状」という「事実」に愕然とする部分もあるのですが……。
さらに、上の記述で気になります部分は、
> 一度感染すると、生涯感染したままである。
という部分でしょうか。
もし、新型コロナウイルスがこのような特徴を持っているとすれば……。
パンデミックの先行きを予測するのは、大変に難しくなりましたが、エイズのように、何年もかけて「発症と日和見感染が続いていく」というようなことになってしまう可能性もあるのでしょうか。このあたりは、医学的な概念にお詳しい方々に検討していただきたい部分です。
それにしても、私はこの新型コロナウイルスを「史上最強」だと言い続けていましたが、もはや常軌を逸した強さであり「悪魔のウイルス」という呼び方でもいいのかもしれないです。
以下の記事にありますように、人類史上で見たことのないような強い感染力を持つにも関わらず、多くの人で即時の発症力が弱いので、誰が感染しているのかわからないまま感染が拡大していく。
国際的な研究により、新型コロナウイルスは「332種類のヒトタンパク質」を利用してヒト細胞と結合できる驚異的な感染能力を持つことが見出される。治療薬開発は厳しい局面に
In Deep 2020年4月5日
もともとがそのように厄介なウイルスなのに、今回明らかになったように、そんな強い伝染力のあるウイルスが、エイズウイルスの性質である「 T細胞を攻撃する能力を持っている」と。
しかも、それは「変異」し続けている。
パンデミックの事態は、笑い飛ばしたくても、なかなかそうもいかない深刻な事態が含まれる可能性に進展してきているのかもしれません。
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