イベルメクチン研究の最大のジャンルは「抗ガン」作用についてだった模様
どうという話ではないかもしれないのですが、ふと、
「イベルメクチンの抗腫瘍効果が検証されている医学論文がたくさんある」
ことに気づきました。
つまり、イベルメクチンが抗ガン剤としての優れた作用を持つ可能性が高いことが、ずいぶんと以前から研究されていたようです。
もちろん人間のガンに対して、です。
基本的に、イベルメクチンは主に動物の駆虫薬として知られており、あるいは日本では、ヒトに対してのダニによる疥癬の治療薬などとして承認されています。
新型コロナについての関係についての話題も数々出ていますが、コロナとの関係はともかくとして、イベルメクチンに「抗ガン剤としての強い作用の可能性」があることは知りませんでした。
いくつかの論文から「概要」の部分をご紹介します。
それぞれ、2019年から 2021年までの比較的新しい論文です。
それにしても……イベルメクチンって何もの?
ここからいくつかご紹介します。
イベルメクチンの抗腫瘍効果に関してのいくつかの論文
臨床的に実行可能な濃度でのイベルメクチンの抗腫瘍効果は、再配置された抗がん剤としての臨床開発をサポートする
Antitumor effects of ivermectin at clinically feasible concentrations support its clinical development as a repositioned cancer drug
PubMed.gov 2020年1月
目的: イベルメクチンは、前臨床試験で抗腫瘍効果を示す駆虫薬であるため、現在、癌治療のために再配置されている。ただし、前臨床試験での使用量に関しては相違がある。したがって、本研究の目的は、イベルメクチンの抗腫瘍効果が臨床的に実行可能な薬物濃度で観察可能かどうかを判断することだった。
方法: 28の悪性細胞株を5μMのイベルメクチンで処理した。細胞生存率、クローン原性、細胞周期、細胞死、一般的な細胞毒性薬との薬理学的相互作用、および幹細胞が豊富な集団での使用の結果を評価した。イベルメクチンの抗腫瘍インビボ効果も評価された。
結果: 乳房の MDA-MB-231、MDA-MB-468、MCF-7、および卵巣の SKOV-3 は、イベルメクチンに対して最も感受性の高い癌細胞株だった。逆に、前立腺癌細胞株 DU145 はその使用に対して最も耐性があった。
最も敏感な細胞では、イベルメクチンは、細胞周期制御に関連するタンパク質の調節を伴い、G0-G1期で細胞周期停止を誘発した。 さらに、イベルメクチンはドセタキセル、シクロホスファミドおよびタモキシフェンと相乗的だった。
イベルメクチンは、幹細胞が豊富な集団の細胞生存率とコロニー形成能力の両方を低下させた。 最後に、担癌マウスでは、イベルメクチンは腫瘍のサイズと重量の両方を正常に減少させた。
結論: イベルメクチンの抗腫瘍効果に関する我々の結果は、その臨床試験を裏付けている。
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イベルメクチンは、invitro および invivoで細胞周期の停止とアポトーシスを誘導することにより、神経膠腫細胞の増殖を阻害する
Ivermectin inhibits the growth of glioma cells by inducing cell cycle arrest and apoptosis in vitro and in vivo
PubMed.gov 2019年1月
概要
最も優勢な原発性悪性脳腫瘍である神経膠腫は、それに対しての効果的な治療法がないため、未治癒のままとなっている。したがって、成功する治療薬を開発することが不可欠だ。
本研究は、invitro および invivo で神経膠腫細胞におけるイベルメクチンの抗腫瘍効果とメカニズムを調査することを目的とした。
細胞生存率、細胞周期停止、アポトーシス率、および形態学的特徴に対するイベルメクチンの効果は、MTT アッセイ/コロニー形成アッセイ、フローサイトメトリー、および透過型電子顕微鏡によってそれぞれ決定された。
さらに、サイクル関連およびアポトーシス関連タンパク質の発現レベルを、ウエスタンブロット分析によって個別に調べた。細胞増殖およびアポトーシス分析は、TUNEL、Ki-67、切断型カスパーゼ-3、および切断型カスパーゼ-9免疫染色アッセイによって実施された。
我々の結果は、イベルメクチンが神経膠腫細胞のアポトーシス率に対して潜在的な用量依存的な阻害効果を有することを示した。一方、結果はまた、イベルメクチンがカスパーゼ-3 およびカスパーゼ-9 活性の増加、p53 および Bax の発現のアップレギュレーション、Bcl-2 のダウンレギュレーション、切断されたカスパーゼ-3 および切断されたカスパーゼ-9 の活性化、および細胞周期の遮断によってアポトーシスを誘導したことを明らかにした。
G0-G1相で、CDK2、CDK4、CDK6、サイクリンD1、およびサイクリンEのレベルをダウンレギュレートすることによる。
これらの発見は、イベルメクチンが細胞周期停止を引き起こし、invitro および invivo で細胞アポトーシスを誘導することにより、神経膠腫細胞の増殖を阻害する効果があることを示唆している。 そしておそらく神経膠腫を治療するための有望な薬剤であることを表している。
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イベルメクチンは結腸直腸がん細胞の成長を阻害する新しい用途を持つ
Ivermectin has New Application in Inhibiting Colorectal Cancer Cell Growth
PubMed.gov 2021年8月
概要
結腸直腸癌は、世界で 3番目に多い癌であり、まだ効果的な治療法がない。駆虫薬であるイベルメクチンは、抗炎症、抗ウイルス、および抗腫瘍の特性を持っていることが示されている。ただし、イベルメクチンが結腸直腸癌に影響を与えるかどうかはまだ不明だ。
本研究の目的は、結腸直腸癌の細胞株 SW480 および SW1116 を使用して結腸直腸癌に対するイベルメクチンの影響を評価することだった。
結果は、イベルメクチンが用量依存的に結腸直腸癌 SW480 および SW1116 細胞増殖を阻害し、続いて細胞アポトーシスを促進し、カスパーゼ-3/7 活性を増加させることを示した。さらに、イベルメクチンはアポトーシス促進タンパク質 Bax と切断された PARP の発現をアップレギュレートし、抗アポトーシスタンパク質 Bcl-2 をダウンレギュレーションした。
これらのメカニズム分析は、イベルメクチンが用量依存的にミトコンドリアの ROS 産生を促進することを示した。これは、結腸直腸癌細胞に N-アセチル-1-システイン(NAC)を投与することで排除できる。
NAC 処理後、イベルメクチンによって誘発された細胞増殖の阻害は逆転した。最後に、低用量(2.5および5 µM)のイベルメクチンは結腸直腸癌細胞停止を誘発した。全体として、イベルメクチンは、ROSを介したミトコンドリアのアポトーシス経路を促進し、CRC 細胞で S期停止を誘導することにより、細胞増殖を抑制した。
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イベルメクチンは、細胞周期の進行と WNT シグナル伝達を調節することにより、犬の乳腺腫瘍の増殖を阻害する
Ivermectin inhibits canine mammary tumor growth by regulating cell cycle progression and WNT signaling
PubMed.gov 2019年8月
概要
背景: 乳腺腫瘍は無傷の雌犬で最も一般的な自然発生腫瘍であり、その予後不良は依然として臨床的課題となっている。
よく知られている抗寄生虫剤であるイベルメクチンは、さまざまな種類のヒトの癌における潜在的な抗癌剤として関係している。しかし、犬の乳腺腫瘍におけるイベルメクチンの抗腫瘍効果を評価した報告はない。ここでは、イベルメクチンが犬の乳腺腫瘍の発生を阻害できるかどうかを調査し、関連するメカニズムを調査した。
結果: イベルメクチンは、犬の乳腺腫瘍細胞株の増殖を用量および時間依存的に阻害した。イベルメクチンによって誘発された抗腫瘍効果は、CDK4 およびサイクリンD1 発現のダウンレギュレーションを介して、G1期での細胞周期停止と関連しており、アポトーシスの有意な誘発はなかった。
さらに、イベルメクチンでの治療後に有意に減少したβ-カテニン核転座が観察され、WNT シグナル伝達の不活性化をもたらした。インビトロでの結果と一致して、イベルメクチンによる腫瘍増殖の有意な抑制が犬の乳腺腫瘍異種移植片で観察された。
結論: 有望な抗がん剤としてのイベルメクチンは、細胞周期の進行と WNT シグナル伝達を調節することにより、犬の乳腺腫瘍の増殖を阻害する。
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イベルメクチンの抗腫瘍効果の根底にある分子メカニズムの理解の進歩
Progress in Understanding the Molecular Mechanisms Underlying the Antitumour Effects of Ivermectin
PubMed.gov 2020年1月
概要
アベルメクチン(AVM)のジヒドロ誘導体であるイベルメクチンは、1981年に動物の健康のために獣医、農業、水産養殖の市場に導入された。
それ以来、イベルメクチンはヒトの病気を制御するためにも使用され、人間の健康と福祉に大きな影響を及ぼしてきた。
過去 10年間で、多くの公表された研究が癌におけるイベルメクチンの役割を決定しようと試みた。本レビューでは、イベルメクチンの特性評価における現在の進歩を定義するために、公開された研究を要約する。
イベルメクチンは、PAK1 を介した細胞増殖抑制性オートファジー、カスパーゼ依存性アポトーシス、および WNT-T細胞因子(TCF)、Hippo、Akt / mTORなどのいくつかの経路の調節を介した免疫原性細胞死(ICD)を誘導することにより、癌細胞株の細胞死を引き起こす。
イベルメクチンは癌細胞の成長と増殖に影響を与える可能性があり、さらに、イベルメクチンは多剤耐性タンパク質(MDR)を誘導し、強力な抗有糸分裂活性を持ち、血管新生を標的とし、癌幹細胞(CSC)を阻害する。
多くの研究が、イベルメクチンが抗腫瘍効果を発揮し、したがって十分な臨床試験の後に癌患者に利益をもたらす可能性があることを証明している。
他にも多くの論文がありましたが、このあたりまでとさせていただきます。
難解な専門用語が多いですが、時間的な問題により、個別には用語の解説は載せられませんでした。
すぐ上の論文にありますように、分子メカニズムとして明確にいくつかのガンへの阻害作用があるということのようです。
イベルメクチンに抗ガン剤としての作用があることがずいぶんと以前から知られていたことを初めて知りまして、ご紹介させていただいた次第です。
不思議な薬ですね。
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