今回のメインの話は、少し感覚的に気持ちの良くないものと感じられる方もいらっしゃるかもしれないですが、ご存じない方も多いと思われることを少し書いておきたいと思います。
狂想曲の中で
これは本題とは関係のない話ですが、私の住む近所には、歩いていて中の待合室が見える病院がいくつかあります。
先日、10月初日くらいだったか、散歩していて、そのうちのひとつの内科病院の待合室が「なんだか、ものすごく混んでいる」という光景に出くわしました。開業医の多くの病院はコロナ以降、外来が減ったとよく報じられていたので、
「先生、よかったじゃないの」
というように思い通り過ぎたのですが、次の他の小さな病院も「待合室が大混雑の様相」を呈している。コロナ以前でも、こんなに混み合う光景は見たことがないです。
「なんだ? この状況は?」
と思っていましたが、家に帰った後に以下の報道を見まして、地域は違いますけれど、「ああ、これか」と納得しました。
インフルワクチン接種開始 初日から予約殺到 「冷静に」
岐阜新聞 2020/10/02
新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行が懸念される冬を前に、インフルエンザワクチンの接種が1日から始まった。 厚生労働省は65歳以上の高齢者への優先接種を促しているが、岐阜県内には接種費用の助成を拡充する自治体もあり、例年より希望者が増えるとみられている。(略)
接種予約をホームページで受け付けるあわのこどもクリニックでは、1日午前0時の受け付け開始から4時間内に今季の枠800人分が全て埋まった。
どうやら、インフルエンザワクチンの接種に「殺到」しているようなんですね。
同じ日にワクチンに関しての他の報道も目にしました。
ロタのワクチンが定期接種に 10月から、0歳児対象
共同通信 2020/09/29
主に乳幼児に激しい嘔吐や下痢、腹痛を起こすロタウイルス胃腸炎のワクチンが10月1日から原則無料の定期接種として受けられるようになる。今年8月以降に生まれた0歳児が対象。
厚生労働省などによると、ロタウイルス胃腸炎は5歳までにほぼ全員がかかる感染症。
脱水症状や意識障害が出ることもある。毎年8万人近くが入院し、死亡の報告もある。感染性が高く、冬から春にかけて流行する。根本的な治療薬はない。
「ロタにも適用してきたか」と思いましたが、たとえば、この記事にもある以下の部分を考えてみていただきたいとも思います。
> 5歳までにほぼ全員がかかる感染症
「全員がかかる」のです。国立感染症研究所の説明では以下のようになります。
ロタウイルスは環境中でも安定で、感染力が非常に強いためたとえ衛生状態が改善されている先進国でもその感染予防はきわめて難しく、事実上生後6カ月から2歳をピークに、5歳までに世界中のほぼすべての児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症するとされている。 (NIID)
日本だけの話ではなく、
「世界中のすべての子どもたちがほぼ全員かかる感染症」
なのです。
ロタウイルスは衛生環境の悪い国や地域では、小さな子どもたちの死因として主要なものとなっていますが、日本などの普通の衛生環境の国では、基礎疾患等のない赤ちゃんや子どもの場合では、ほぼ死亡例はないはずです。
何より、「全員がかかる」というものであるということは、「人類として感染する意味がある」ことに他ならないはずだとは思います。
私は、基本的に「一般的な人生において例外的とはいえない健康事象には《生》にとって大きな意味がある」と考えます。
簡単にいえば、「かかる意味がある」と。
赤ちゃんには他にも「突発性発疹」という、やはりほとんどすべての子どもが発症する病気があり、90%以上が 0歳の時に発症しますが、突然、40℃近い高熱が出た後に全身に赤い発疹ができるのです。
私の子どもも 0歳の時になっていますが、突然 40℃などの熱が出るのだから、そりゃアセりますけれど、当時住んでいた東京・西荻窪の小児科の病院のお医者さんに、
「これは大丈夫だから」
と言われて、そのまま家に戻りました。40℃も熱があるわりには、子どもは普通に遊んでいまして、発疹もでましたけれど、それが収まって完治しました。
当時は赤ちゃんの病気をよく知らなかったのですけれど、「ほぼ全員がかかる」ということを知り、「何か人生を通した大事な免疫を獲得しているんだろうなあ」というようには思いました。
一生獲得し続けられるような重要な免疫や抗体がそれで得られているのだろうなと理解した次第です。
ちなみに、その小児科の先生は高齢のおじいちゃん先生で、もう診療時間外だったのですけれど、夜に電話をかけましたら、
「すぐ来なさい、自宅のドアのピンポン鳴らして」
と言って、駆けつけたときには隣接する自宅から出てきて診察してくれました。
関係ない話ですが、私は小さな頃とても体が弱く、しかも喘息なので放っておくと結構危険な部分がありまして、発作がでるたびに(当時は車がなかったので)父親が私を背負って病院まで走っていくことがよくありました。
当時の北海道の岩見沢という町のその小児科の先生は、夜中でも何時でも診てくれたのですね。夜中の往診もしてくれた記憶があります。
もちろん今でも一生懸命なお医者様がたはたくさんいらっしゃるでしょうけれど、当時の私を診てくれていたあの先生には頭が下がります。そして、そういう赤ちゃんや子どもたちが、成長して、その町で大人になっていくわけですから、そりゃ、町の誰からも尊敬されますよ。
私が生きながらえた理由のひとつには、あの先生の存在もあったかもしれません。
結局、今のような不良中年になってしまいましたが。
いずれにしましても、そういう「お医者さん像」を小さな頃に経験していましたので、西荻窪のおじいちゃん先生と会った時、少しだけそれを思い出しました。
話がそれましたけれど、「全員がかかる病気には、その存在の理由がある」ということを書きたかったのでした。
そのような「子ども時代にほぼ全員がかかる」という病気のひとつであるロタウイルスにも予防接種が義務づけられてきたのだなあと。
これからの子どもたちは、何か重要な免疫をまた子ども時代にひとつ失うことになるのかもしれませんが、決められてしまったものは仕方ありません。
さて。
しかし、今回の話は、こういうこととはちがう話です。
冒頭に「感覚的に気持ちの良くないもの」というように書きましたけれど、それに少しだけふれたいと思います。
ワクチンと倫理
先日、ブログ地球の記録で以下の記事を書きました。
新型コロナワクチン製造に必要なスクアレン確保のために「絶滅種のサメ50万匹が殺される」ことが判明
地球の記録:2020年10月5日
ワクチンを作るためには、実はいろいろなものが必要…なのかどうかはともかく、使われていまして、この深海のサメの肝臓から抽出される「スクアレン」という物質もそのひとつです。
インフルエンザワクチンなどの製造の際にも使われるようですが、新型コロナウイルスのワクチンが製造されることになれば、その製造量は壮絶なものとなりますので、おびただしい数のサメ(ウロコアイザメという種が多いらしいです)からスクアレンが採取されることになるようです。
しかし、これもまた本題とはまた違う話です。
スクアレンは「サメの肝臓」からの抽出物ですが、他にどんなようなものがワクチンに使われているかという話です。
以下は、2019年6月の BBC の報道からです。タイトルに出てくる単語をよくご覧いただきたいと思います。
米政権、「胎児組織」 使う研究を中止
BBC 2019/06/07
アメリカのトランプ政権は、人間の胎児組織を使った医学研究を、政府機関で打ち切ったと発表した。胎児組織の使用はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)やがんなどの治療研究において必要だと主張する科学者たちから、批判の声が上がっている。
米保健福祉省は、声明を発表。「受胎から自然死に至るまで、人命の尊厳を掲げることが、トランプ政権における最優先事項の1つ」と説明している。
(略)
胎児組織由来の細胞株は、関節炎から嚢胞性線維症に至る様々な疾患の治療法の開発をはじめ、風疹やアデノウイルス、狂犬病、水痘およびポリオのワクチン開発で役立てられてきた。
科学者は、胎児組織はHIVやジカウイルス症、小児がんなどの治療研究の唯一の方法だと主張している。
多くのワクチンに、「ヒトの胎児の組織が使われている」のです。
もちろん、このような場合、生きていたり「生前に同意している」献体などあり得ないと思われます。
つまり、それらは…まあ、言葉をためらいますが、中絶や流産によって死去した子どもたちが使われてきました。
このような人体の組織がワクチン開発に役立つことが見出されたのは 1962年のことで、それ以来、倫理的な議論にもなっていました。
以下は、2013年の科学誌ネイチャーの記事の冒頭です。
正常ヒト細胞株WI-38の光と影
Nature 2013/06/27
1962年、レオナルド・ヘイフリック(Leonard Hayflick)は中絶胎児から1つの細胞株を樹立した。 この細胞株は「WI-38」と名付けられ、その後50年以上にわたって研究用正常ヒト細胞の重要な供給源となってきた。 と同時に、さまざまな論争の原因にもなってきた。
彼が中絶胎児の肺から作り出したこの細胞株は、多くのワクチン製造に使われ、それらは現在も世界中で多くの人の命を救うために貢献している。
どの部分が議論されてきたかということに関しては、大阪大学大学院から「死亡胎児の組織利用をめぐる倫理的問題」という論文が出ていまして、その冒頭にそれが描かれています。
死亡胎児の組織利用をめぐる倫理的問題
胎児の神経、血液などの幹細胞は難病の治療に大きな効果を発揮し、また胎児組織の移植は成人間の移植よりも拒絶反応も起こりにくい。
胎児組織の移植が問題となりはじめたのは、1980年代後半に、パーキンソン病患者への移植による治療効果が報告されてからであるが、それ以前にも胸腺移植などの利用は行われていた。また最近では、始原生殖細胞の供給源としても死亡胎児の利用は注目されている。
しかし、胎児組織の利用は、中絶胎児も供給源の一つであることから、中絶の是非も問われることになり議論は複雑をきわめている。
人工妊娠中絶についてはいくつかの条件を満たせば法的に許容されるというのが欧米や日本での解釈であるが、倫理的な問題として許容されるかどうかという問題には活発な議論があり、また仮に人工妊娠中絶が法的、倫理的に許容されるとしても、その立場から中絶胎児を利用できるという主張へはいくつかのハードルが存在する。
中絶後の利用を前提とした妊娠や胎児組織の商業的売買が起こる可能性、中絶胎児の利用の容認が人工妊娠中絶における意思決定や数の増大などに影響を与えること、それからインフォームド・コンセントをめぐる問題などが指摘されている。(med.osaka-u.ac.jp)
私が、ワクチンにこのような人体組織が使われているということを知ったのはつい最近で、偶然読んだ医学系メデイアの記事で知りました。
しかし、それから調べてみますと、他にもいろいろと使われているのですね。
ここまで書きましたのはヒトの胎児ということで、こういう部分は感情的なことと結びやすい部分かと思いますが、そうでなくとも、「ワクチンには本当にいろいろなものが使われている」のです。
たとえば、先ほど「ロタウイルスワクチン」が定期接種化されたことについてふれました。
ロタウイルスワクチンにもいろいろとあるのでしょうけれど、アメリカで一般的に使われるワクチンには、ヒトは使われていないですが、成分表を見ますと、以下のようになっていました。
アメリカ CDC (アメリカ疾病予防管理センター)は、アメリカで使用されているワクチンを検査し、検出された成分をウェブサイトで公開していますが、以下は、その中の「ロタウイルスワクチン」の部分を拡大したものです。
アメリカのロタウイルスワクチンから検出された成分(CDC 2020年2月)
・CDC
二種類のロタウイルスワクチンが示されていますが、すべてを日本語化すると以下のようになります。専門用語として翻訳が間違っているものがあるかもしれません。
[ロタウイルスワクチン RotaTeq から検出された成分] スクロース、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一塩基性一水和物、水酸化ナトリウム、ポリソルベート80、細胞培養培地、ウシ胎児血清 [※ 豚サーコウイルス(PCV)1および2の DNA を検出。 PCV-1およびPCV-2がヒトに病気を引き起こすことは知られていない]
[ロタウイルスワクチン Rotarix から検出された成分] デキストラン、ダルベッコ改変イーグル培地(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸第二鉄(III)、リン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、D-グルコース、濃縮ビタミン溶液、L-シスチン、L-チロシン、アミノ酸、L-グルタミン 、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、およびフェノールレッド)、ソルビトール、スクロース、炭酸カルシウム、滅菌水、キサンタン [※ 豚サーコウイルス(PCV)1および2の DNA を検出。 PCV-1およびPCV-2がヒトに病気を引き起こすことは知られていない]
RotaTeq というワクチンには、ウシの胎児の血清が使われていて、また、どちらからも「豚サーコウイルス」というものの DNA が検出されています。
CDC は、「豚サーコウイルスがヒトに感染症を引き起こすことはない」というように注釈をつけています。豚サーコウイルスというのは、豚さんだけの感染症のようで、Wikipedia には以下のようにあります。
豚サーコウイルス感染症とは豚サーコウイルス感染を原因とする豚の感染症。豚サーコウイルスはサーコウイルス科サーコウイルス属に属するDNAウイルス。
豚サーコウイルスは豚腎株化細胞の迷入ウイルスである1型と離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の原因とされる2型に分類される。PMSVは発育不良、削痩、呼吸困難、下痢などの症状を示す。治療法は確立されていない。 (豚サーコウイルス感染症)
どうして、そんなものの DNA が検出されるのか、ちょっとそのあたりはわからないのですけれど、これについては、ずいぶん以前から「周知の事実」となっているようで、WHOは、2010年のリリースで「安全性に問題はない」と述べています。
この 10年前の WHO のリリースを読んで驚いたのは、その 2010年の時点で「すでに 1億回分以上のロタウイルスワクチンが供給されていた」ということでした。以下のようにあります。
Rotarix と RotaTeq は、上にでてきたふたつのロタウイルスです。
WHOの2010年7月のレポートより
Rotarix と RotaTeq の安全性は、大規模なライセンス前の臨床試験とライセンス後の広範な安全性の経験によってサポートされています。世界中で、6900万回以上の Rotarix と3700万回分の RotaTeq が配布されています。 (WHO)
ということは、今はさらに増えているのでしょうね。
なお、CDC の検出成分表を見ますと、「ウシの胎児の血清」は、「新三種混合ワクチン (MMR-II / 麻疹、おたふく風邪、風疹)」でも使われています。
また、先ほど書きましたように、私の近所の病院で高齢者の方々が殺到していました季節性インフルエンザワクチンですが、これについては、CDC のリストには、あまりにも種類があり、毎年変わるものなのだと思います。
ただ少し印象深かったのは、あくまで、ひとつの製品ですが、アメリカの 2019年のインフルエンザワクチンの「Fluad」という製品から検出された成分が以下のようになっていたことでした。
簡単な説明をカッコ内でさせていただいています。
2019年のインフルエンザワクチン Fluad から検出された成分
・スクアレン (サメの肝臓からの抽出物)
・ポリソルベート80 (合成乳化剤)
・トリオレイン酸ソルビタン (植物成長調整剤)
・クエン酸ナトリウム二水和物
・クエン酸一水和物
・ネオマイシン (抗生物質)
・カナマイシン (抗生物質)
・バリウム
・ヒドロコルチゾン (副腎皮質ホルモン)
・卵タンパク質
・臭化セチルトリメチルアンモニウム (殺菌剤)
・ホルムアルデヒド (有機化合物)
「いろいろと入っているのう…」と感嘆せざるを得ないですが、すべては「医学的に必要であるから入っている」ということになるのだとは思います。ホルムアルデヒドとか入っている理由はよくわからないですが。
植物成長調整剤のトリオレイン酸ソルビタンなども入っていて、
「オレたちは作物かよ」
という気分にもなりますが、それと共に、抗生物質が複数入っているのも印象的です。これは理由はわからないではないですけれど、知らずに抗生物質を投与されているというのもどうかと。
ワクチンは、水銀的なものが話題になったりすることもありますけれど、今回調べていて、ヒトやウシやサメの大量死の上に成り立っているということを知り、
「人間の尊厳の根幹」
に挑戦している存在なのかもしれないことも知りました。
すでにこれは悪魔的思想の人体への侵略………………いやまあ、こんな話はやめましょう。
いずれにしても、明日も明後日も、近所の病院には季節性インフルエンザの予防接種希望の方々が殺到するでしょうし、10月からは何十万人の日本の赤ちゃんたちがロタウイルスの予防に努めます。
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