昨日(7月7日)まで、イギリスで英国漁業協会という英国最大の漁業団体の設立 50周年を記念するシンポジウム(リンク)が、英国エクセター大学で5日間にわたっておこなわれました。
その中で講演したエクセター大学の魚類の専門家たちが驚くべき発表をおこなっていたことが報じられていました。
どのようなものかというと、
「英国の淡水魚たちの5分の1が《オスからメスへと》変化しつつある」
というショッキングなものでした。
これは英国でおこなわれた調査の結果ですが、その内容を読みますと、主要国ならどこでも当てはまるかもしれないというものでもあります。
まずは、その報道記事をご紹介します。記事では、オリジナルでも「トランスジェンダーとなっている」表現されていますので、そのまま記載しますが、厳密な意味でのトランスジェンダーでいいのかどうかはわかりません。
そして、この現実からふと気づいた「予想される地球の未来」について少し書かせていただきます。
ここからです。
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Male Fish Are Mysteriously Changing Gender
mysteriousuniverse.org 2017/07/05
オスの魚たちが不可解な性別の変化を起こしている
イギリスでの新しい試験では、試験したオス魚の 5分の1がトランスジェンダーとなっていることが判明した。そのオスたちは攻撃的ではない態度を示し、精子の数は減少し、それどころか卵さえ産生する。
今週、英国エクセター大学で開かれたイギリス漁業協会 50周年記念シンポジウムのオープニング講演で、エクセター大学の魚類生理学者で環境毒性学者であるチャールズ・タイラー教授(Professor Charles Tyler)が、英国の 50の異なる場所で捕獲された淡水魚のうちの約 20%がトランスジェンダーであったという報告を述べて、会場を驚かせた。
さらに衝撃的なデータとして、研究者たちは、このミステリアスな性転換の原因が、トイレや流し場などから川に入りこむ避妊薬(経口避妊薬 / ピル)であることを突き止めたのだ。
これは、体内から尿として排泄される分と、直接廃棄されて流されるものと両方が含まれる。
タイラー教授はこう述べる。
「私たちは、化学物質のいくつかが、これまで考えていたよりもはるかに魚に広く健康への影響を与えている可能性があることを知りました」
ヒトの避妊薬は、女性ホルモンであるエストロゲンを魚に異常な量を与える主要な原因だが、研究者たちは、魚にエストロゲン様の変化を引き起こす水域に、他にも 200種類以上の化学物質が存在することを発見した。
研究者たちは、以下のように述べている。
「他の研究では、下水処理によって排出される他の多くの化学物質が、魚に影響を与える可能性があることがわかってきています。たとえば、抗うつ薬を含むいくつかのの薬剤は、魚の臆病さを減少させ、それにより捕食者に対する反応がにぶくなってしまうことが示されているのです」
避妊薬と化学物質により、攻撃的でも競争的でもなくなったオスの魚たちは仲間を惹きつけることが難しくなる。この性質的な弱点は、次世代に受け継がれるわけではないが、それらの性質の変化により生殖行為の総数が減るため、結果として、その種の魚の数は減っていく。
行動に加えて、化学物質は魚の物理的特性にも影響を与えていることについても、研究者たちは下のように語った。
「特別に作ったトランスジェニック魚を使って、リアルタイムで魚の体内の化学物質への反応を見ることができます。たとえば、いくつかのプラスチックに含まれる物質は、魚たちの心臓の弁に影響することを示しました」
プラスチックは現在、太平洋に夥しい量が漂っていることがわかっているが、それらは、イギリスの魚の心臓不全も起こしているらしいのだ。
これらの解決法について、エクセター大学での講演で、魚生物学者たちは、「人間の行動の変化が伴わない限り、いかなる解決法もありません」と述べている。
つまり、尿から排水システムに大量の薬が流れていくような生活をやめて、プラスチックの過剰な廃棄をやめるしかないと言っている。
シンポジウムの主催者であるスティーブ・シンプソン博士(Dr. Steve Simpson)は、今できる最善の策として、「手遅れになる前に、この急速に変化する海と川の魚類の減少を防ぐ方法を私たちは議論しなければなりません」と言う。
しかし……もしかすると、もう手遅れだということはないのだろうか。
ここまでです。
講演の内容の主題は、
「河川に流入した避妊薬が魚たちの性質や生殖本能に影響を与えていて、そのために魚の総数が減っている」
というものです。
「また薬関係の話なのか……」と思わず呟きましたが、しかし、今までベンゾジアゼピン系の抗精神約や抗うつ剤のことや、血圧を下げる薬やコレステロールを下げる薬などの問題は書いたことがありますが、避妊薬というものについては考えたこともありませんでした。
というか、結果として「人間が服用する避妊薬が川の魚の生殖能力をそぎ落としている」ということになっていることに驚くと共に、これは、ここで取りあげられている避妊薬という問題を超えて、
「他にもいろいろなことが水の中で起きているのだろうなあ」
と考えざるを得ませんでした。
今までそんなことを考えたこともないということ自体が浅川マキ…じゃなくて浅はかだったとも思います。
どの部分を考えたことがなかったかといいますと、今回の記事の中に、
> 体内から尿として排泄される分
という下りがありますが、このことを考えたことがなかったのでした。
つまり、
・現在の主要国のほとんどの下水処理は水洗システム
・つまり、人間から排出されたものはほとんど自然の水の中に循環される
・ということは、口から体内に入った薬、化学物質は、尿などからそのまま水中に入っていく
ということから、つまり、
「人間が飲んでいる薬のほとんどすべては川に垂れ流されている」
ということになることに初めて気づいたのです。
と同時に、
「あー、こりゃダメだ。もう遅い」
と思わざるを得ませんでした。
薬という存在は結局、自然界を絶滅に導きそうであります
西洋からアジアにいたるまでの多くの主要国でどのくらいの薬が消費されているかを考えるのは難しいですが、私などは今まで、「人間の体内に入るものとしての薬」という側面だけを考えていました。
こういう浅川マキ…じゃない、浅はかな考えの下では「地球と人間」という関係は何も見えていなかったのだなと今は思います。
人間は常に「排出している」ということを忘れていた。
かつては人間の排出は、すべてが水循環システムの中に入っていくというわけでもなかったでしょうが、現在では、主要国ではほぼすべて、その他の国でもかなり多くが水洗の排出システムを使っています。
ですので、「体内に入ったものは、結局、大自然の水循環に戻っていく」ということになります。
自然からとられたものを体内に取り入れて、それがまた尿や便として自然の中に戻っていくのであれば、これは通常のサイクルとして認められますでしょうが、人間の消費の中で、
「薬」
というものが、途中で入り込み、人間を通して、自然の中に循環していく。西洋薬というのは基本的に化学物質ですから、そういう自然の中では通常産生されるものではない物質が人間の消費の段階で入り込んでしまう。
今回の記事で取りあげられていたのは避妊薬ですが、他のほぼあらゆる薬が、人間から水洗システムを通して水循環の中へ取り込まれていると思われ、最終的には、それらは海に到達してもいるはずですので、いかに海が広大とはいっても、現在の夥しい薬の消費量を考えますと、地球のすべての水循環が何らかの薬の影響を受けている可能性さえ考えられなくもないかもしれません。
これは重い話ではあります。
今回の記事の話は、
・避妊薬が魚のオスをメス化させている
ということでしたが、他にも、抗生物質や抗精神約など、水の中の生物たちに大きな影響を与えている可能性のある物質は多そうです。
たとえば、下のようなニュースも思い出します。
中国で「6割の児童の尿から抗生物質」 過剰摂取に警鐘 水・食物に原因か 消費は「米国の10倍以上」
産経新聞 2015/05/07
台湾の民放「中国広播」が伝えたところなどによると、復旦大公共衛生学院の研究グループが江蘇省、浙江省と上海市の8~11歳の児童計千人余りを対象に調査。58%の児童の尿から抗生物質が検出された。このうち25%の児童からは2種類以上を検出し、中には6種類が検出された児童もいたという。
ここでも「尿」の調査となっているように、薬のほとんどは尿から出ます。
人間は基本的には「口から入った異物を排出しようとする」わけですが、ほぼすべての西洋薬は「異物」ですので、ほぼすべての薬が、このように外に排出されているということになりそうです。人間にとっては飲むことにほとんど意味のない薬も自然の循環の中では大きな影響を与える可能性もあります。
ちなみに、今回の「避妊薬」については、その作用機序を見ますと、
1. 排卵の抑制
2. 子宮頚管粘液の性状の変化(精子の子宮内侵入を抑制)
3. 子宮内膜の変化(受精卵の着床抑制)
となっていまして、当たり前ではありますが、「妊娠させないようにする」薬ですので、今回は「オスのメス化」ですけれど、魚のメスの不妊化というものとも関係する可能性があるのかもしれません。つまり、普遍的な不妊化ということと関係するかもしれないということです。
そしてまあ、そこには「食物連鎖」があり、結局、人間に戻ってくると。
今、ヒトの世界も含めて、「不妊」という問題は多くの動物の間で広がっていることでもありますが、今回のようなことが関係あるのかないのかわからないですが、魚がすでに「汚染」されているという事実がある以上、その食物連鎖に関係する他の生き物たちに影響しても不思議ではないかもしれません。
魚を食べない人種はあまりいないですし。
つまり、今の地球は、もしかすると、
「常に避妊薬を飲んでいる状態の生き物の世界」
というようなことになりつつあるということなのかもしれません。
下の報道は今年3月のアメリカのものですが、アメリカでは、著しいペースで「男性が原因と考えられる不妊」が増えていて、また、男性の精子密度も「年率 1.5%」の割合で減少しているのだそうです。
2017年3月31日の米国報道より
・Sperm Killers and Rising Male Infertility
この記事は興味深くはあるのですが、下手な論文より長い、ものすごく長編の記事で、ちょっと気軽に翻訳できるようなものではないのですが、時間がある時にでも、少しずつ翻訳して、いつかご紹介してみたい気もします。
というのも、これはアメリカの話ですが、おそらく「どこの国も同じ」だろうと思われるからです。
不妊の原因や、男性の精子の減少の理由は今でもメカニズムが不明の部分が多いですが、今回の「魚の話」を読みまして、私たちの現代社会は、かなり罪深いことを自然に対してしているだけではなく、
「結局、自分たち人間社会がその影響を大きく受けている」
という可能性を感じます。
そして・・・どのくらいの時間がかかるかはわからないにしても、結局、私たち人類も、そして魚たちも絶滅していくという方向なのだと認識できます。
なるほど、そういうことか……と深く納得して、この世の未来がまたひとつよくわかった昨日今日でした。